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【交通事故】人身傷害保険(人身傷害補償特約)と過失相殺
一 事例
私は,交通事故にあったことから人身傷害保険をつかい,600万円を受領しましたが,人身傷害保険をつかった後でも,未填補の損害があれば加害者に損害賠償請求できると聞きました。
そこで,私は加害者に損害賠償請求しようか検討していますが,今回の交通事故では私にも落ち度がありました。
仮に,裁判をした場合,損害額が1000万円と認定されたとしても,私の過失が5割となった場合には,過失相殺後の損害賠償請求権の額は500万円となってしまいます。
その場合,私は,既に人身傷害保険により600万円の支払を受けているので,加害者に損害賠償請求をすることはできないのでしょうか。
二 人身傷害保険(人身傷害補償特約)とは
人身傷害保険とは,交通事故の被害者が,傷害を被った場合,後遺障害が残った場合,または死亡した場合に,保険会社から,保険契約に定める基準に基づいて算定した損害額相当の保険金の支払を受けることができる保険です(自動車保険の特約の一つとして「人身傷害補償特約」ともいいます。)。
損害の填補にあたりますので,保険金を支払った保険会社は,被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得します。
保険金額は保険契約に定める基準(人傷基準)により算定するため,訴訟基準(裁判基準)により算定する損害額とは異なります。人傷基準で算定した金額は訴訟基準で算定した損害額より低くなり,被害者には未填補の損害額があることが通常です。
そのため,保険金の支払を受けた被害者は,未填補の損害額について加害者に損害賠償請求をすることができますので,人身傷害保険金の支払を受けた被害者の方は,さらに加害者に対し損害賠償請求をすることができないか,忘れずに検討しましょう。
三 過失相殺がある場合
では,被害者に過失があり,過失相殺される場合,人身傷害保険金の支払を受けた被害者は,どの範囲で加害者に損害賠償請求することができるのでしょうか。
この点については,絶対説,比例説,人傷基準差額説,訴訟基準差額説(裁判基準差額説)といった複数の説がありましたが,判例上,訴訟基準差額説がとられております。
訴訟基準差額説では,保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が,訴訟基準で算定した損害額を上回る場合に限り,その上回る部分の範囲で保険会社は代位取得します。
その結果,被害者は,過失相殺後の損害賠償請求権の額から,保険会社が代位取得した金額を控除した金額について,加害者に対し損害賠償請求をすることができます。
事例の場合,保険金額600万円と過失相殺後の損害賠償請求権の額500万円との合計額は1100万円であり,訴訟基準で算定した損害額1000万円を上回る100万円について保険会社は代位取得します。そして,被害者は,過失相殺後の損害賠償請求権の額500万円から保険会社が代位取得した100万円を控除した額である400万円について,被害者に対し損害賠償請求をすることができます。
四 まとめ
事例の場合,被害者は,5割の過失があったとしても,被害者に対し,400万円の損害賠償請求をすることができます。
その結果,被害者は,保険金600万円と被害者からの損害賠償金400万円の合計1000万円の支払を受けることができたことになり,訴訟基準での過失相殺前の損害額1000万円と同額の支払を受けることができ,損害全額の填補が受けられたことになります。
したがって,人身傷害保険を利用することで,過失相殺による損害の填補額の減額を回避することができますので(被害者の過失が大きい場合には,過失相殺される金額が保険金額を上回るため,被害者は損害全額の填補が受けられるわけではありませんが,保険金が支払われた分,減額される金額は低くなります。),被害者に過失がある場合には,人身傷害保険を利用すべきです。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【離婚】協議離婚無効確認
一 事例
先日,妻とケンカをしてしまい,勢いで離婚届にサインをしてしまいました。
あとで冷静になって考えてみると,やはり離婚はしたくないので,妻に離婚届を出さないように言ったのですが,妻は私の言うのを聞かずに離婚届を役所に出してしまいました。
どうすればいいでしょうか。
二 離婚したくないのに,離婚届が出されてしまった場合
協議離婚の有効要件として,①法律婚を解消しようとする意思(離婚意思)の合致,②戸籍法の定めによる届出が要求されております。
①離婚意思は,届出の時点に存在することが必要であるため,離婚届を書いた後で離婚意思がなくなった場合には,届出の時点で離婚意思を欠いていることになりますから,離婚は無効となります。
しかし,離婚意思を欠いていたとしても,離婚届が役所に提出されてしまうと,離婚届は受理され,戸籍に離婚した旨記載されてしまいます。
戸籍から離婚の記載を抹消するためには,協議離婚無効確認の調停の申立てをするか,協議上の婚無効確認の訴えを提起することが必要となります。
三 協議離婚無効確認の調停申立て・合意に相当する審判
協議上の離婚の無効を確認するにあたっては,まず家庭裁判所に,協議上の離婚無効確認の調停を申し立てる必要がありますが(調停前置主義),当事者の合意だけで離婚の無効が確認できるわけではなく,合意に相当する審判を得なければなりません。
調停の結果,当事者双方が,①協議上の離婚の無効を確認する審判を受けることに合意し,②無効原因について争わない場合には,家庭裁判所は,必要な事実を調査した上で,合意を正当と認めるときは,合意に相当する審判をすることができます(家事事件手続法277条1項)。
四 協議上の離婚無効確認の訴え
相手方が離婚の無効を争ってくる場合には,調停を申し立てても合意に相当する審判を得ることはできません。
その場合には,家庭裁判所に協議上の離婚の無効確認の訴え(人事訴訟法2条1号)を提起しなければなりません。
審理の結果,家庭裁判所が,夫婦の一方または双方が,離婚届の提出時に離婚意思がなかったと判断したときには,離婚無効確認の判決がなされます。
五 まとめ
以上のように,離婚する意思がないのに,離婚届が出されてしまった場合には,協議離婚無効確認調停の申立てや協議上の離婚無効確認の訴えを提起することができますが,大変な労力が必要となりますし,離婚無効が認められるかどうかも分かりません。
そのため,離婚する意思がない場合には,離婚届を出されないようにするために,速やかに離婚届の不受理申出書を役所に提出しておくべきです。

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【離婚】離婚届の不受理申出制度
1 事例
先日,夫とケンカをしてしまい,勢いで離婚届にサインをしてしまいました。
あとで冷静になって考えてみると,やはり離婚はしたくありません。
夫は離婚届をまだ役所に出していないようですが,どうしたらいいでしょうか。
2 不受理申出をします。
協議離婚の有効要件として,①法律婚を解消しようとする意思(離婚意思)の合致,②離婚の届出が要求されております。
離婚意思は届出の時点に存在することが必要であるため,離婚届を書いた後で離婚意思がなくなった場合には,届出の時点で離婚意思を欠いていることになりますから,離婚は無効となります。
しかし,離婚意思を欠いていたとしても,離婚届が役所に提出されてしまうと,離婚届は受理され,戸籍に離婚した旨記載されてしまいます。
戸籍から離婚の記載を抹消するためには,離婚無効確認の判決又は審判が必要となります。
これは大変な労力が必要となりますし,そもそも離婚無効が認められるかどうかも分かりませんので,届出がなされる前に対応することが必要となります。
このような場合に利用できる制度として,不受理申出制度があります。
本籍地又は住所地の市区町村役場に離婚届の不受理申出書を提出しておけば,相手が離婚届を提出しようとしても,離婚届は受理されません。
なお,従前は不受理届の有効期間が6カ月となっていましたが,現在では期間制限がありませんので,一度,不受理届を出しておけば,取り下げない限り離婚届が受理されることはありません。

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【労働問題】労働審判手続
労働審判手続は、原則として3回以内の期日で終了するため紛争の迅速な解決が図れます。
その一方で、労働審判手続では、期日が限られていることから、事前の準備が非常に重要となります。当事者双方とも、第1回期日が始まるまでに、事案を把握し、主張や証拠提出の準備をほぼ終えていなければ対応できませんので、労働審判手続においては専門知識に基づく迅速な対応が不可欠です。
以下、労働審判手続について簡単に説明します。
一 労働審判手続とは
労働審判手続とは、個別労働関係民事紛争に関し、裁判所において、労働審判委員会が、当事者の申立てにより、事件を審理し、調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み、その解決にいたらない場合には労働審判を行う手続であり、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的としています(労働審判法1条)。
二 労働審判の対象となる事件(個別労働関係民事紛争)
労働審判の対象は、「労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争」(個別労働関係民事紛争)です(労働審判法1条)。
解雇事件,残業代請求事件,退職金請求事件等、労働者と使用者との間の労働関係に関する民事紛争が労働審判手続の対象となります。
これに対し、集団的労使紛争、労働者間の紛争、行政事件(労災認定に対する不服申立て等)は、労働審判手続の対象とはなりません。
三 労働審判委員会
労働審判委員会は、労働審判官(地方裁判所の裁判官)1人と労働審判員(労働関係に関する専門的な知識経験を有する者 )2人で組織されます(労働審判法7条)。
四 労働審判の手続
労働審判手続は、特別の事情がある場合を除き、3回以内の期日において終了します(労働審判法15条2項)。
そのため、各当事者は、事前準備を十分に行うとともに、本人や関係者が期日に出席することができるようにスケジュールの調整を行うことが必要となります。
1 申立て
(1)申立書の提出
労働審判の申立ては、管轄裁判所に申立書を提出して行います(労働審判法5条2項)。
申立書には,申立ての趣旨及び理由(労働審判法5条3項2号)のほか、予想される争点、争点に関連する重要な事実、予想される争点ごとの証拠、当事者間の交渉その他の申立てに至る経緯の概要等を記載します(労働審判規則9条1項)。
(2)管轄裁判所
①相手方の住所、居所、営業所、事務所の所在地を管轄する地方裁判所
②労働者が現に就業する(または最後に就業した)事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所
③当事者が合意で定める地方裁判所
が管轄裁判所となります(労働審判法2条1項)。
なお、労働審判手続は、全ての地方裁判所で行われるわけではなく、一部の支部を除き、本庁でのみ行われています。
2 申立後から第1回期日まで
(1)答弁書の提出
相手方は、提出期限までに、答弁書を作成して提出しなければなりません。
答弁書では具体的な反論をしなければならず、民事訴訟のように「追って主張する。」ではいけません。
(2)補充書面の提出
答弁書に対する反論は労働審判期日に口頭で行いますが,補充書面を提出することもできますので(労働審判規則17条1項)、申立人は、第1回期日までに答弁書の内容を確認し、答弁書に対する反論があれば、補充書面を準備します。
3 第1回期日
労働審判委員会は、第1回期日に、争点及び証拠の整理を行い、可能な証拠調べを行います(労働審判規則21条1項)。第1回期日から本人や関係者の審尋も行われますので、本人や関係者が期日に出席できるよう予め準備しておく必要があります。
また、第1回期日から調停が試みられることや(労働審判規則22条)、審理が終結することもあります(労働審判法19条)。
4 第2回期日
やむを得ない事由がある場合を除き、主張や証拠書類の提出は第2回期日で終了します(労働審判規則27条)。
主張や証拠書類の提出が終了した後、労働審判委員会から調停案が示され、調停が行われることが通常です。
5 第3回期日
通常、第2回期日までに主張や証拠書類の提出は終了していますので、第3回期日では調停が行われます。
調停により解決できなかった場合には、審理が終結し、労働審判がなされます。
五 異議の申立て・労働審判の確定
労働審判に不服がある場合、当事者は、審判書の送達を受けた日(期日で告知を受けた場合には告知を受けた日)から2週間以内に裁判所に異議を申し立てることができます(労働審判法21条1項)。
適法な異議の申立てがあったときは、労働審判はその効力を失い(労働審判法21条2項)、申立て時に、訴えの提起があったものとみなされます(労働審判法22条1項)。
また、適法な異議の申立てがなかったときは、労働審判は裁判上の和解と同一の効力を有します(労働審判法21条4項)。

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【不動産問題:借家トラブル】契約期間の満了時の立退問題
一 事例
私は,自分の所有する建物を賃貸しておりますが,建物を取り壊そうと考えております。
そのため,賃借人には出ていってもらいたいと考えておりますが,近々,契約期間が満了しますので,契約期間満了時に賃借人に立退きを求めることができるでしょうか。
二 契約の更新
期間の定めのある賃貸借契約は,契約期間の満了により終了することになりますが,契約の更新をすることができます。
契約の更新は,当事者間の合意で行うことが一般的ですが(合意更新),賃借人保護の観点から自動的に更新される場合があります(法定更新)。
そのため,賃借人が期間満了後,契約を更新せずに,賃借人に立退きを求めたいと考えていても,契約が法定更新されると,立ち退いてもらうことができなくなります。
三 法定更新
1 法定更新される場合
(1)期間満了の1年前から6月前までに更新しない旨の通知をしない場合
賃貸人は,期間の定めのある賃貸借契約について契約を更新したくない場合には,期間満了の1年前から6月前までに賃借人に対し契約を更新しない旨通知しなければなりません。通知しないと,契約が法定更新されます(借地借家法26条1項)。
契約を更新しない旨の通知には,契約の更新を拒絶することについて正当な事由がなければなりません(借地借家法28条)。
(2)期間満了後の建物使用継続に遅滞なく異議を述べない場合
賃貸人が契約を更新しない旨通知した場合であっても,賃借人が期間満了後も建物の使用を継続する場合には,賃貸人が遅滞なく異議を述べないと,契約が法定更新されます(借地借家法26条2項)
2 法定更新された場合の契約の内容
法定更新された場合,契約内容は期間の点を除き,従前の契約と同じです。
期間については,期間の定めがないものとなります(借地借家法26条1項)。
四 解約の申入れ
法定更新された場合,期間の定めがない賃貸借契約となります。
その場合,賃貸人は,賃貸借の解約の申入れをすることができ,申入れの日から6月を契約することのよって,賃貸借契約は終了します(借地借家法27条)。
ただし,解約の申入れをするには,正当な事由がなければなりません(借地借家法28条)。
また,解約の申入れをした場合であっても,申入れの日から6月を経過した後も賃借人が建物の使用を継続する場合には,賃貸人が遅滞なく異議の述べないと,契約は法定更新されます(借地借家法27条2項,26条2項)。
五 正当な事由
賃貸人による更新拒絶の通知や解約の申入れは,正当な事由があると認められる場合でなければすることはできません。
正当事由があるかどうかについては,
・賃貸人が建物の使用を必要とする事情
・賃借人が建物の使用を必要とする事情
・建物の賃貸借に関する従前の経過
・建物の利用状況
・建物の現況
・建物の明渡しと引換に建物の賃借人に対して財産上の給付(いわゆる「立退料」です。)をする旨の申出をした場合にはその申出
が考慮されます。
なお,立退料の提供は正当事由の補完事由であり,立退料を提供するだけで正当事由が認められるわけではありませんし,事案によっては立退料の提供がなくても正当事由が認められることがあります。また,立退料の金額につきましても,立退料以外に正当事由がどの程度あるかによって変わってきます。
六 まとめ
以上のとおり,契約期間満了時に賃借人に立退きを求めるには,期間満了の1年前から6月前までに,賃借人に対し,契約を更新しない旨の通知をしなければなりません。
もっとも,更新拒絶には,正当な事由が必要ですから,通知をするだけで立退いてもらえるわけではありません。
賃貸人としては,正当な事由があるかどうかを検討し,立退料の提供が必要となることも考えておきましょう。

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【離婚】婚姻費用と住宅ローン
一 事例
私は,マンションを購入し,妻と共に居住していましたが,先日,マンションから出ていき,妻と別居しました。マンションは私の名義になっており,住宅ローンの債務者も私ですので,私は,別居後もマンションの住宅ローンを支払っております。
そうしたところ,妻が私に対し婚姻費用の支払を請求してきました。
私は,妻が生活しているマンションの住宅ローンを支払っていますので,ローンの支払分,婚姻費用の分担額を少なくすることができるのでしょうか。
二 婚姻費用と住宅ローン
婚姻費用分担額は,簡易算定方式や簡易算定表により算定することが一般的です。
簡易算定方式では,①権利者(婚姻費用を請求する者)と義務者(婚姻費用を請求される者)のそれぞれについて,総収入から公租公課や住居費等の特別経費を控除して基礎収入額を算定し,②双方の基礎収入の合計額をそれぞれの世帯に按分して婚姻費用分担額を算定します。
また,簡易算定表は,簡易算定方式に基づいて算定される婚姻費用を1万円または2万円の幅で表に整理したものです。
そのため,婚姻費用分担額の算定にあたっては,それぞれの住居費が考慮されますので,義務者が権利者の住居費を負担している場合には,その分,婚姻費用分担額から控除することになります。
したがって,義務者が,自身の家賃を負担しつつ,権利者が居住する物件の住宅ローンを支払っている場合には,義務者は権利者の住居費を負担しているといえるので,その分,婚姻費用分担額の算定において考慮されることになります。
ただし,住宅ローンの支払には,義務者の資産形成の側面もあります。
そのため,義務者が支払っている住宅ローンの全額について婚姻費用分担額から控除することができるわけではありません。
控除額の算定方法については,住宅ローン支払額の一定割合を控除する方法,権利者の収入に応じた標準的な住居費を控除する方法等,複数ありますので,当事者としては,具体的な事情を主張して,相当な金額が控除されるようにすべきでしょう。

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【離婚】年金分割請求しないことの合意
一 事例
妻が離婚を求めて調停を申し立てました。
私は妻が年金分割請求をしないのであれば,離婚に応じようと考えております。
今のところ,妻も,私が離婚に応じるなら,年金分割請求はしないと言っていますが,後で妻の気が変わって,年金分割請求をしてくるのではないか心配です。
妻に年金分割請求しないことを約束させることはできないでしょうか。
二 合意分割の場合
年金分割をする際,3号分割の場合を除き,当事者間で,どのような割合で按分するのか定めなければなりません(上限は0.5です。)。
按分割合は,当事者の合意により定めるのが原則ですが,合意ができない場合には,家庭裁判所に申立てをし,調停または審判で按分割合を決めることになります。
審判では按分割合を0.5とされることがほとんどですが,当事者が協議や調停で合意する場合には,0.5を下回る割合とすることも可能です。
また,①相手方が年金分割請求をしないなら,離婚に応じる,②相手方が年金分割請求をしないなら,慰謝料請求をしない,③相手方が年金分割請求をしないのであれば,その分,財産上の給付をする等,当事者間で,年金分割請求をしないことを離婚の条件とすることがあります。
その場合,当事者間で裁判所に申立てをしない旨合意することはでき,家庭裁判所に申立てをして按分割合を定めなければ年金分割請求もできませんので,「請求すべき按分割合に関する処分の審判もしくは調停の申立てをしない。」という条項を入れることで,当事者間で,合意分割をしないことを取り決めることができます。
なお,年金分割請求権は公法上の請求権ですので,当事者間で清算条項を入れたとしても,それだけでは年金分割請求ができなくなるわけではありませんので,ご注意ください。詳しくは,コラム【離婚】年金分割と清算条項をご覧ください。
三 3号分割の場合
3号分割の場合には,按分割合は0.5と固定されており,当事者間で按分割合を定める必要はありません。
そのため,家庭裁判所への申立ては不要ですから,調停条項や和解条項に,家庭裁判所に申立てをしない旨の条項を入れたとしても,当事者の一方は,年金分割請求をすることができます。
そのため,当事者間で3号分割をしない旨合意したにもかかわらず,当事者の一方が合意に違反して,年金分割請求した場合には,当事者間では合意の不履行について紛争が生じる可能性はありますが,年金分割自体は有効であると考えられます。

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【離婚】年金分割と清算条項
一 事例
私は,先日,調停で離婚しましたが,調停では年金分割について取り決めをしませんでした。
そこで,私は,元夫に年金分割について話し合いを求めましたが,元夫は,調停調書には「当事者間には何らの債権債務が存在しないことを確認する。」という条項(清算条項)があるから,年金分割はできないと言ってきました。
清算条項があると,年金分割請求はできなくなるのでしょうか?
二 清算条項があっても年金分割請求はできます。
調停や和解で成立した場合,紛争が解決したことを確認するため,「当事者間には何らの債権債務が存在しないことを確認する。」,「名目の如何を問わず,金銭その他の請求をしない。」という条項(清算条項)を入れるのが一般的です。離婚の場合にも,調停や和解成立後に,慰謝料請求や財産分与請求をされないようにするため,清算条項を入れることが多いです。
清算条項がある場合には,当事者間には債権債務や請求権がなくなってしまうため,年金分割請求をすることもできなくなってしまうのではないかと思われるかも知れません。
しかし,年金分割請求権は,厚生労働大臣等に対する公法上の請求権であり,当事者の一方から他方に対する請求権ではありません。
そのため,清算条項を入れて,当事者間に債権債務や請求権がないことを確認しても,離婚後に当事者の一方は年金分割請求を行うことができます。
したがって,先の事例では,調停調書に清算条項が入っていたとしても,離婚後に年金分割請求をすることができますので,合意分割の場合は,元夫が話合いに応じなければ,家庭裁判所に申立てをして,按分割合を決めることができますし,3号分割の場合には,元夫との話合いも不要ですので,年金事務所に必要書類を提出して年金分割請求することができます。
ただし,年金分割請求は離婚をした日の翌日から2年以内にしなければなりませんので,期限には注意してください。

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【民事訴訟】訴えの取下げ
民事訴訟は,①終局判決,②訴えの取下げ,③請求の放棄,④請求の認諾,⑤訴訟上の和解により終了します。
どのような事由により終了するかによって,解決までの期間や解決内容が異なってきますので,当事者としては,どのように訴訟を終わらせるかということを意識する必要があります。
ここでは,訴えの取下げについて簡単に説明します。
一 訴えの取下げとは
訴えは,判決が確定するまで,その全部又は一部を取り下げることができます(民事訴訟法261条1項)。
訴訟は,訴えの取下げがあった部分については,初めから係属していなかったものとみなされますので(民事訴訟法262条1項),訴えの全部を取り下げると訴訟は終了します。
訴えを提起したものの,その後,訴えを続ける必要性や理由がなくなった場合(例えば,訴え提起後に,当事者が訴訟外で和解をして紛争を解決させた場合)に訴えの取下げが利用されます。
二 訴え取下げの方法
訴えの取下げは書面でしなければなりません(民事訴訟法261条3項本文)。
ただし,口頭弁論,弁論準備手続または和解の期日では,口頭で訴えを取り下げることができます(民事訴訟法261条3項但書)。
訴え取下げが書面でなされたときは,その書面が被告に送達されます(訴え取下げが口頭でなされたときは,被告がその期日に出頭したときを除き,期日の調書の謄本が相手方に送達されます。)(民事訴訟法261条4項)。
三 相手方の同意
原告が訴えを取り下げてしまうと,訴えなかったこととみなされてしまいますので,紛争として解決したことになりませんが,被告としては,本案判決(請求内容についての判決)を得て紛争を解決したいと考えることがあります。
そのため,被告が本案について争う姿勢を示した後は,被告の同意がなければ訴えを取り下げることはできません。
具体的には,被告が本案について準備書面を提出し,弁論準備手続において申述をし,又は口頭弁論をした後は,被告の同意を得なければ,訴え取下げの効力が生じないとされています(民事訴訟法261条2項本文)。
ただし,訴えの取下げの書面の送達を受けた日(訴えの取下げが口頭弁論等の期日に口頭でなされた場合,被告が期日に出頭したときは訴えの取下げがあった日から,被告が出頭しなかったときは期日の調書の謄本が送達された日)から2週間以内に被告が異議を述べないときは,訴えの取下げに同意したものとみなされます(民事訴訟法261条5項)
四 訴え取下げの効果
1 訴えは初めから係属していなかったものとみなされます。
訴訟は,訴えの取下げがあった部分については,初めから係属していなかったものとみなされます(民事訴訟法262条1項)。
要するに,初めから訴えがなかったものと扱われます。
そのため,訴え取下げ後に,再び同一の訴えを提起することも原則としてできます。
また,訴え提起により時効中断効が生じますが,訴えを取下げると初めから訴えなかったものと扱われるため,時効中断の効果は消滅します(民法149条)。
2 再訴禁止効
訴え取下げ後に,再び同一の訴えを提起することも原則としてできるため,訴え提起,訴え取下げが繰り返されるおそれがないとはいえません。
そのため,訴え取下げの濫用を防止する観点から,本案について終局判決があった後に訴えを取下げた者は,同一の訴えを提起することは禁止されています(民事訴訟法262条2項)。
五 訴えの取下げの擬制
当事者が訴訟追行に不熱心な場合,訴訟をする気がないものとして,訴えを取下げたものとみなされることがあります。
具体的には,当事者双方が,口頭弁論・弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合や,弁論・弁論準備手続で申述しないで退廷・退席した場合に,1月以内に期日指定の申立てをしなかったときは,訴えの取下げがあったものとみなされますし,当事者双方が,連続して二回,口頭弁論・弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合や,弁論・弁論準備手続で申述しないで退廷・退席した場合も訴えの取下げがあったものとみなされます(民事訴訟法263条)。

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【民事訴訟】訴訟の終了
民事訴訟は,裁判所の終局判決により終了するほか,和解をする等,当事者の意思により終了させることができます。
どのような事由により終了するかによって,解決までの期間や解決内容が異なってきますので,当事者としては,どのように訴訟を終わらせるかということを意識する必要があります。
そこで,これから訴訟の終了について簡単に説明します。
一 裁判所の終局判決による終了
終局判決とは,ある審級の手続を終結させる効果をもつ判決のことです。
本案判決(請求の当否についての判決で,請求認容判決,請求棄却判決,一部認容・一部棄却判決があります。),訴訟判決(訴えが不適法な場合に,訴えを却下する判決です。)があります。
ただし,三審制(第一審,控訴審,上告審)ですので,終局判決が言い渡されたからといって,直ちに訴訟が終了するわけはなく,上訴があれば,上級審で争うことになり,判決が取消される可能性があります。
そのため,上訴により取消される可能性がなくなり,判決が確定することで,訴訟は終了します。
二 当事者の意思による終了
民事訴訟では,処分権主義がとられているため,訴訟を終わらせるかどうかについても当事者の意思に委ねられております。
原告の意思による終了として,訴えの取下げ,請求の放棄
被告の意思による終了として,請求の認諾
当事者双方の合意による終了として,訴訟上の和解
があります。
1 訴えの取下げ
訴えは,判決が確定するまで,その全部又は一部を取下げることができます(民事訴訟法261条1項)。
訴訟は,訴えの取下げがあった部分については,初めから継続していなかったものとみなされますので(民事訴訟法262条1項),訴えの全部を取り下げると訴訟は終了します。
なお,被告にも本案判決を得る利益がありますので,被告が本案について準備書面を提出し,弁論準備手続において申述をし,又は口頭弁論をした後は,原則として,被告の同意を得なければ,訴え取下げの効力が生じません(民事訴訟法261条2項本文)。
また,訴え取下げの濫用を防止する観点から,本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は,同一の訴えを提起することはできません(民事訴訟法261条2項)。
2 請求の放棄
請求の放棄とは,原告が,裁判所に対し,請求に理由がないことを認める意思表示をすることです。
原告が請求の放棄をすると,訴訟は終了します。
請求の放棄が調書に記載されたときは,その記載は確定判決と同一の効力を有します(民事訴訟法267条)。
3 請求の認諾
請求の認諾とは,被告が,裁判所に対し,原告の請求を認める意思表示をすることです。
被告が請求の認諾をすると,訴訟は終了します。
請求の認諾が調書に記載されたときは,その記載は確定判決と同一の効力を有します(民事訴訟法267条)。
4 訴訟上の和解
訴訟上の和解とは,訴訟係属中に,当事者が訴訟物である権利関係について互譲して和解をするとともに,訴訟を終了させる合意をすることです。
和解が調書に記載されたときは,その記載は確定判決と同一の効力を有します(民事訴訟法267条)。
和解の場合には,必ずしも訴訟物に拘束されず,上訴されることもないので,早期かつ柔軟な解決をすることができます。そのため,和解で解決することも多いです。

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