【不動産問題:借家トラブル】契約期間の満了時の立退問題

2015-04-16

一 事例

私は,自分の所有する建物を賃貸しておりますが,建物を取り壊そうと考えております。

そのため,賃借人には出ていってもらいたいと考えておりますが,近々,契約期間が満了しますので,契約期間満了時に賃借人に立退きを求めることができるでしょうか。

 

二 契約の更新

期間の定めのある賃貸借契約は,契約期間の満了により終了することになりますが,契約の更新をすることができます。

契約の更新は,当事者間の合意で行うことが一般的ですが(合意更新),賃借人保護の観点から自動的に更新される場合があります(法定更新)。

そのため,賃借人が期間満了後,契約を更新せずに,賃借人に立退きを求めたいと考えていても,契約が法定更新されると,立ち退いてもらうことができなくなります。

 

三 法定更新

1 法定更新される場合

(1)期間満了の1年前から6月前までに更新しない旨の通知をしない場合

賃貸人は,期間の定めのある賃貸借契約について契約を更新したくない場合には,期間満了の1年前から6月前までに賃借人に対し契約を更新しない旨通知しなければなりません。通知しないと,契約が法定更新されます(借地借家法26条1項)。

契約を更新しない旨の通知には,契約の更新を拒絶することについて正当な事由がなければなりません(借地借家法28条)。

(2)期間満了後の建物使用継続に遅滞なく異議を述べない場合

賃貸人が契約を更新しない旨通知した場合であっても,賃借人が期間満了後も建物の使用を継続する場合には,賃貸人が遅滞なく異議を述べないと,契約が法定更新されます(借地借家法26条2項)

 

2 法定更新された場合の契約の内容

法定更新された場合,契約内容は期間の点を除き,従前の契約と同じです。

期間については,期間の定めがないものとなります(借地借家法26条1項)。

 

四 解約の申入れ

法定更新された場合,期間の定めがない賃貸借契約となります。

その場合,賃貸人は,賃貸借の解約の申入れをすることができ,申入れの日から6月を契約することのよって,賃貸借契約は終了します(借地借家法27条)。

ただし,解約の申入れをするには,正当な事由がなければなりません(借地借家法28条)。

また,解約の申入れをした場合であっても,申入れの日から6月を経過した後も賃借人が建物の使用を継続する場合には,賃貸人が遅滞なく異議の述べないと,契約は法定更新されます(借地借家法27条2項,26条2項)。

 

五 正当な事由

賃貸人による更新拒絶の通知や解約の申入れは,正当な事由があると認められる場合でなければすることはできません。

正当事由があるかどうかについては,

・賃貸人が建物の使用を必要とする事情

・賃借人が建物の使用を必要とする事情

・建物の賃貸借に関する従前の経過

・建物の利用状況

・建物の現況

・建物の明渡しと引換に建物の賃借人に対して財産上の給付(いわゆる「立退料」です。)をする旨の申出をした場合にはその申出

が考慮されます。

なお,立退料の提供は正当事由の補完事由であり,立退料を提供するだけで正当事由が認められるわけではありませんし,事案によっては立退料の提供がなくても正当事由が認められることがあります。また,立退料の金額につきましても,立退料以外に正当事由がどの程度あるかによって変わってきます。

 

六 まとめ

以上のとおり,契約期間満了時に賃借人に立退きを求めるには,期間満了の1年前から6月前までに,賃借人に対し,契約を更新しない旨の通知をしなければなりません。

もっとも,更新拒絶には,正当な事由が必要ですから,通知をするだけで立退いてもらえるわけではありません。

賃貸人としては,正当な事由があるかどうかを検討し,立退料の提供が必要となることも考えておきましょう。

 

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