借家契約の種類

2017-07-05

建物賃貸借契約(借家契約)は,賃貸人が建物の使用及び収益を賃借人にさせることを約し,賃借人がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって成立します(民法601条)。

借家契約には,賃借人を保護するため,民法の特別法である借地借家法が適用されますが,借家契約の種類により保護の内容は異なります。

 

一 普通借家契約

1 期間の定めのある建物賃貸借契約

(1)期間の定めのある建物賃貸借契約とは

期間の定めのある建物賃貸借契約とは,契約の存続期間の定めがある建物賃貸借契約のことですが,期間は1年以上でなければなりません。

期間を1年未満とする建物の賃貸借は,期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項)。

 

(2)法定更新

期間の定めのある建物賃貸借においては,賃貸人が期間満了の1年前から6カ月前までの間に賃借人に対して更新拒絶の通知をしなかったときは,従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。

また,賃貸人が更新拒絶の通知をした場合であっても,建物の賃貸借の期間満了後,賃借人が使用を継続する場合は建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなければ法定更新されます(借地借家法26条2項)。

 

(3)法定更新後の契約内容

法定更新後の契約は,従前の契約と同一の条件となりますが,期間は定めがないものとなります(借地借家法26条1項)。

 

(4)更新拒絶の正当事由

更新拒絶の通知には正当の事由がなければならないとされており(借地借家法28条),賃借人の保護が図られています。

正当事由があるかどうかは,①賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情,②建物の賃貸借に関する従前の経過,③建物の利用状況,④建物の現況,⑤賃借人に対して財産上の給付(立退料)の申し出を考慮して判断されます。

 

2 期間の定めのない建物賃貸借契約

(1)期間の定めのない建物賃貸借契約とは

建物賃貸借契約において,契約の存続期間を定めなかった場合には,期間の定めのない建物賃貸借契約にあたります。

また,期間を1年未満とする建物の賃貸借は,期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項)。

 

(2)解約の申入れ

期間の定めのない建物賃貸借においても,賃貸人は,賃借人に対して,解約の申入れをすることができ,契約は解約の申入れの日から6カ月を経過することによって終了します(借地借家法27条1項)。

 

(3)解約の申入れの正当事由

解約の申し入れについても,更新拒絶の通知と同様,正当事由が必要とされており(借地借家法28条),賃借人の保護が図られています。

 

二 定期借家契約

1 定期借家契約とは

定期借家契約とは,契約期間の満了により,更新されることなく終了する建物賃貸借契約です(借地借家法38条)。

 

2 要件

定期借家契約が成立するには,以下の要件をみたす必要があります。

①期間の定めがある建物賃貸借契約であること(借地借家法38条1項)

②契約の更新がない旨の定めがあること(借地借家法38条1項)

③公正証書等書面によって契約すること(借地借家法38条1項)

④賃貸人が賃借人に対し,あらかじめ更新がなく期間の満了により賃貸借は終了する旨の書面(事前説明文書)を交付して説明すること(借地借家法38条2項,3項)

 

なお,定期借家契約では借地借家法29条1項の適用はありませんので,1年未満の期間を定めることも可能です。

 

3 契約の終了

期間が1年以上である場合には,賃貸人は,その期間満了の1年前から6カ月前までの間(通知期間)に,賃借人に対し,期間満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ,契約の終了を賃借人に対抗できません。

ただし,通知期間経過後に通知した場合には,通知をした日から6カ月を経過すれば,契約の終了を賃借人に対抗できます(借地借家法38条4項)。

 

4 賃借人の中途解約

床面積200平方メートル未満の居住用に供する建物の定期借家契約について,転勤,療養,親族の介護その他のやむを得ない事情により,自己の生活の本拠として使用することが困難となった場合には,賃借人は解約の申入れをすることができ,解約の申入れの日から1か月を経過することにより契約は終了します(借地借家法38条5項)

 

三 取壊し予定の建物賃貸借契約

1 取壊し予定の建物賃貸借契約とは

取壊し予定の建物賃貸借契約とは,取壊し予定の建物について建物を取り壊すときに終了する旨の特約がある建物賃貸借契約です(借地借家法39条)。

 

2 要件

取壊し予定の建物賃貸借契約といえるには以下の要件をみたす必要があります。

①法令又は契約により一定期間経過後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合であること(借地借家法39条1項)

②建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨の特約があること(借地借家法39条1項)

③建物を取り壊すべき事由を記載した書面により合意すること(借地借家法39条

2項)

 

3 効果

借地借家法39条の特約が有効である場合には,建物を取り壊すときに借家契約が終了します(借地借家法39条1項)。

 

四 一時使用目的の建物賃貸借契約

1 一時使用目的の建物賃貸借契約とは

一時使用目的の建物賃貸借契約とは,一時使用目的であり,借地借家法の借家契約に関する規定の適用がない建物賃貸借契約です(借地借家法40条)。

 

2 一時使用目的とは

建物賃貸借契約が「一時使用目的」であるとされるには,建物賃貸借の目的,動機その他諸般の事情から「一時使用」と客観的に判断されなければなりません。

契約期間が短いか長いかで判断されるわけではありませんし,契約書に「一時使用」と記載されていたとしても,それをもって一時使用目的の建物賃貸借契約であると判断されるわけではありません。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2016 ながせ法律事務所 All Rights Reserved.