【民事訴訟】訴えの取下げ
民事訴訟は,①終局判決,②訴えの取下げ,③請求の放棄,④請求の認諾,⑤訴訟上の和解により終了します。
どのような事由により終了するかによって,解決までの期間や解決内容が異なってきますので,当事者としては,どのように訴訟を終わらせるかということを意識する必要があります。
ここでは,訴えの取下げについて簡単に説明します。
一 訴えの取下げとは
訴えは,判決が確定するまで,その全部又は一部を取り下げることができます(民事訴訟法261条1項)。
訴訟は,訴えの取下げがあった部分については,初めから係属していなかったものとみなされますので(民事訴訟法262条1項),訴えの全部を取り下げると訴訟は終了します。
訴えを提起したものの,その後,訴えを続ける必要性や理由がなくなった場合(例えば,訴え提起後に,当事者が訴訟外で和解をして紛争を解決させた場合)に訴えの取下げが利用されます。
二 訴え取下げの方法
訴えの取下げは書面でしなければなりません(民事訴訟法261条3項本文)。
ただし,口頭弁論,弁論準備手続または和解の期日では,口頭で訴えを取り下げることができます(民事訴訟法261条3項但書)。
訴え取下げが書面でなされたときは,その書面が被告に送達されます(訴え取下げが口頭でなされたときは,被告がその期日に出頭したときを除き,期日の調書の謄本が相手方に送達されます。)(民事訴訟法261条4項)。
三 相手方の同意
原告が訴えを取り下げてしまうと,訴えなかったこととみなされてしまいますので,紛争として解決したことになりませんが,被告としては,本案判決(請求内容についての判決)を得て紛争を解決したいと考えることがあります。
そのため,被告が本案について争う姿勢を示した後は,被告の同意がなければ訴えを取り下げることはできません。
具体的には,被告が本案について準備書面を提出し,弁論準備手続において申述をし,又は口頭弁論をした後は,被告の同意を得なければ,訴え取下げの効力が生じないとされています(民事訴訟法261条2項本文)。
ただし,訴えの取下げの書面の送達を受けた日(訴えの取下げが口頭弁論等の期日に口頭でなされた場合,被告が期日に出頭したときは訴えの取下げがあった日から,被告が出頭しなかったときは期日の調書の謄本が送達された日)から2週間以内に被告が異議を述べないときは,訴えの取下げに同意したものとみなされます(民事訴訟法261条5項)
四 訴え取下げの効果
1 訴えは初めから係属していなかったものとみなされます。
訴訟は,訴えの取下げがあった部分については,初めから係属していなかったものとみなされます(民事訴訟法262条1項)。
要するに,初めから訴えがなかったものと扱われます。
そのため,訴え取下げ後に,再び同一の訴えを提起することも原則としてできます。
また,訴え提起により時効中断効が生じますが,訴えを取下げると初めから訴えなかったものと扱われるため,時効中断の効果は消滅します(民法149条)。
2 再訴禁止効
訴え取下げ後に,再び同一の訴えを提起することも原則としてできるため,訴え提起,訴え取下げが繰り返されるおそれがないとはいえません。
そのため,訴え取下げの濫用を防止する観点から,本案について終局判決があった後に訴えを取下げた者は,同一の訴えを提起することは禁止されています(民事訴訟法262条2項)。
五 訴えの取下げの擬制
当事者が訴訟追行に不熱心な場合,訴訟をする気がないものとして,訴えを取下げたものとみなされることがあります。
具体的には,当事者双方が,口頭弁論・弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合や,弁論・弁論準備手続で申述しないで退廷・退席した場合に,1月以内に期日指定の申立てをしなかったときは,訴えの取下げがあったものとみなされますし,当事者双方が,連続して二回,口頭弁論・弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合や,弁論・弁論準備手続で申述しないで退廷・退席した場合も訴えの取下げがあったものとみなされます(民事訴訟法263条)。