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【交通事故】自転車が加害者となる交通事故
交通事故には,自動車が加害者となる事故(自動車同士の事故,自動車と自転車の事故,自動車と歩行者の事故)以外に,自転車が加害者となる事故(自転車同士の事故,自転車と歩行者の事故)があります。 いずれの場合も,被害者は,加害者に対し,損害賠償請求することができますが,自転車が加害者となる交通事故には,以下のような特徴があります。
一 自動車損害賠償保障法が適用されないこと
自動車損害賠償保障法は,「自動車の運行によって人の生命または身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより,被害者の保護を図り,あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする」法律ですので(同法1条),自転車が加害者となる交通事故には適用がありません。
そのため,自転車が加害者となる事故には,①運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)はありませんし,②自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)または自動車損害賠償責任共済(自賠責共済)のような強制保険(自動車損害賠償保障法5条)はありませんし,③政府の自動車損害賠償保障事業による損害の填補はありません。
二 任意保険
自動車が加害者となる交通事故については,被害者に重大な損害が発生し,損害賠償額が高額になることが多々あるため,自動車の所有者は,自賠責保険とは別に任意保険に入っていることが通常です。
これに対し,自転車が加害者となる交通事故についても,任意保険として自転車保険がありますが,現状,自動車の場合程,任意保険に入ることが一般的となっているわけではありません。
自転車保険以外にも,自転車が加害者となる交通事故については,個人賠償責任保険で対応することができます。個人賠償責任保険は火災保険等の特約になっていることがよくありますし,家族の保険が使える場合もありますので,交通事故を起こしてしまった場合には,加入している保険をよく確認すべきです。
自転車が加害者となる事故であっても,被害者が重大な損害を被り,損害額が高額になる場合がありますし,自賠責保険のような強制保険がないので,自転車を所有する人は,任意保険に入りましょう。
三 後遺障害の等級認定
自動車が加害者となる交通事故の場合,自賠責保険制度があり,自賠責損害調査事務所等により後遺障害の等級が認定されますので,被害者は,認定された後遺障害等級に基づいて後遺障害慰謝料や逸失利益を算定し損害賠償請求することができます。
これに対し,自転車が加害者となる交通事故の場合,自賠責保険制度がなく,後遺障害の等級が認定されることもありません。そのため,被害者が,後遺障害慰謝料や逸失利益について損害賠償請求するには,自ら後遺障害の有無や程度を主張,立証しなければなりません。後遺障害の主張立証には,専門知識が必要ですので,弁護士に相談依頼することを検討すべきでしょう。
なお,自転車加害事故であっても,労災保険の適用がある場合には,労災保険で後遺障害の等級認定を受けることができますので,その認定に基づいて,後遺障害慰謝料や逸失利益を算定し損害賠償請求することが考えられます。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【労働問題】試用期間と試用期間中の解雇,本採用の拒否
一 試用期間とは
使用者が労働者を正社員として本採用するかどうか決めるために,一定期間,試みに使用することを「試用」といい,その一定期間のことを「試用期間」といいます。
試用期間中の使用者と労働者の契約については,通常の場合,使用者に解約権が留保された労働契約であると解されており,使用者は,試用期間中,解約権を行使することができます(試用期間中の解雇,本採用の拒否)。
使用者からすれば,通常,雇った者に従業員としての適性がない場合であっても,容易には解雇することができないため,解約権が留保される試用期間の制度は重要であるといえます。
もっとも,労働者からすれば,試用期間中は地位が不安定となりますので,労働者の立場にも配慮しなければなりません。
二 試用期間の長さ
試用期間の長さについては,特に制限があるわけではありませんが,通常は1か月から6か月程度であり,3か月とすることが多いといわれています。
試用期間が,合理的理由がなく,長すぎる場合には,公序良俗違反となることもあり得ます。
また,試用期間は,就業規則などに定めがなければ,原則として延長することはできないと解されております。
三 解約権の行使(試用期間中の解雇,本採用の拒否)
試用期間中,使用者には労働契約の解約権が留保されていると解されておりますので,使用者は,雇った者が従業員としての適性を欠く場合には,解約権を行使することができます(試用期間中の解雇,本採用の拒否)。
もっとも,試用期間中であっても,使用者は無制限に解約権を行使することができるわけではありません。
1 解雇予告,解雇予告手当の規定
解雇予告や解雇予告手当の規定(労働基準法20条)は,試用期間中の労働者であっても14日を超えて引き続き使用された場合には適用されます(労働基準法21条)。
そのため,試用期間中の労働者について解約権を行使するにあたって,当該労働者が14日を超えて使用されている場合には,解雇予告をするか,解雇予告手当を支払わなければなりません。
2 解約権の行使に客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であること
試用期間中は,通常の解雇の場合よりも,広い範囲で解約権の行使の自由が認められると解されておりますが,使用者の全くの自由というわけではなく,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当な場合のみ解約権の行使が認められると解されております。
そのため,労働者に何の問題もないにもかかわらず,単に使用者が労働者のことを気に入らないという理由だけでは解約できません。
労働者の勤務態度または勤務成績が不良であり,指導をしても,改善の見込みがない等客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当でなければ,解約はできません。

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【相続・遺言】相続分の放棄
一 相続分の放棄とは
相続分の放棄とは,相続人が自己の相続分を放棄することです。
相続分の放棄をすると,放棄をした者の相続分がなくなり,その分,他の相続人全員の相続分が増えます。
相続分の放棄は,相続放棄と名称は似ておりますが,異なる制度です。
相続放棄の場合,相続放棄をした者は,その相続に関し初めから相続人とならなかったものとみなされますが(民法939条),相続分の放棄の場合には,相続分の放棄をした者は,相続分がなくなるだけであり,相続人としての地位がなくなるわけではありません。
相続分の放棄をすることで,放棄をした者は,被相続人の積極財産を相続することができなくなりますが,被相続人の債権者を害さないよう被相続人の債務を免れることはないと解されております。
二 他の共同相続人の相続分への影響
相続分の放棄をすると,その分,他の相続人全員の相続分が増えます。
他の相続人の相続分が増える割合については,放棄をする者が別の意思を表示した場合を除き,一般的には,各相続人の相続分の割合に応じて増えると解されております。
例 相続人が配偶者と子2人の場合で,子の1人が相続分の放棄をしたとき
配偶者の法定相続分は2分の1,子の法定相続分は各4分の1であり,配偶者と放棄をしていない子1人の法定相続分の割合は,2:1(=2分の1:4分の1)ですので,相続分の放棄をした子の法定相続分4分の1については,その3分の2が配偶者に,3分の1が放棄をしていない子に移ります。
そのため,配偶者の相続分は3分の2(=元の法定相続分+増加分=2分の1+4分の1×3分の2=2分の1+6分の1),放棄をしていない子の相続分は3分の1(=4分の1+4分の1×3分の1=4分の1+12分の1)となります。
なお,相続放棄の場合は,相続放棄をした者は,相続人とならなかったものとみなされるため,相続人は,配偶者と放棄をしていない子の2人となり,相続分はいずれも2分の1となります。
三 相続分の放棄の手続
相続分の放棄した者は,原則として,遺産分割の当事者となる資格を失います。
そのため,遺産分割調停や遺産分割審判の申立前に相続分の放棄が判明している場合には,放棄した者を当事者から外して申し立てることができますし,申立後に放棄が判明した場合や申立後に相続分の放棄が行われた場合には,家庭裁判所は,排除の決定をすることができます(家事事件手続法43条1項,258条1項)。

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【相続・遺言】相続分の譲渡
一 相続分の譲渡とは
相続分の譲渡とは,相続人が,被相続人の死亡によって承継した権利・義務を,他者に譲渡する契約のことです。
相続分の全部を譲渡することも,相続分の一部を譲渡することもできます。
また,無償で譲渡することも,有償で譲渡することもできます。
譲渡する相手方は,相続人でも,相続人以外の第三者でもかまいません。
相続分の譲渡が行われることにより,譲渡人が譲渡した相続分は譲受人に移転し,その分,譲渡人の相続分はなくなります。
積極財産のみならず消極財産も譲受人に承継されますが,債権者が害されないよう債権者との関係では,譲渡人が債務を負うものと解されております。
二 相続分譲渡の方法
相続分を譲渡するにあたっては,譲渡人,譲受人の間で,相続分譲渡証書を作成するのが一般的です。
また,相続分譲渡証書には,印鑑登録証明書を添付します。
三 相続分の譲渡人の地位
相続分の譲渡人は,原則として,遺産分割の当事者となる資格を失います。
遺産分割調停や遺産分割審判の申立前に相続分の譲渡が判明している場合には,譲渡人を当事者から外して申し立てることができますし,申立後に譲渡が判明した場合や申立後に相続分の譲渡が行われた場合には,家庭裁判所は,排除の決定をすることができます(家事事件手続法43条1項,258条1項)。
四 相続分の譲受人の地位
相続分の譲受人は相続分を有しますので,遺産分割の当事者となります。
遺産分割調停や遺産分割審判の申立前に相続分の譲渡が判明している場合には,譲受人を当事者に加えて申し立てることになりますし,申立後に譲渡が判明した場合や申立後に相続分の譲渡が行われた場合には,譲受人は手続に参加することができます(家事事件手続法41条1項,258条1項)。家庭裁判所は当事者の申立てまたは職権で,譲受人を手続に参加させることができます(家事事件手続法41条2項,258条1項)。
五 相続分の取戻権
相続人以外の第三者に対して相続分が譲渡された場合には,遺産分割に相続人でない者が加わることになりますが,他の共同相続人からすれば,相続人以外の者が遺産分割に加わることを望ましく思わないことがあります。そのような場合には,他の共同相続人は,他の相続人は,相続分の取戻権を行使することができます。
共同相続人の一人が遺産分割前に相続分を第三者に譲渡したときは,他の共同相続人は,価額,費用を償還して,相続分を譲り受けることができます(民法905条1項)。
取戻権は,1か月以内に行使しなければなりません(民法905条2項)。

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【相続・遺言】遺留分の放棄
一 遺留分の放棄とは
相続の開始前に,家庭裁判所の許可を受けることで,遺留分の放棄をすることができます(民法1043条1項)。
遺留分とは,遺言によっても侵害されない相続人の権利であり,遺留分を侵害された相続人は,遺留分減殺請求をすることができます。
相続開始後に,遺留分を侵害された者が遺留分減殺請求をするかどうかは,本人の意思に委ねられておりますので,本人の意思で相続開始前に遺留分の放棄をすることもできます。
ただし,被相続人や他の相続人から,遺留分の放棄を強制されるおそれがありますので,家庭裁判所の許可がなければ,遺留分の放棄はできません。
二 遺留分の放棄の手続
1 申立て
遺留分権を有する相続人が,相続開始前に,家庭裁判所に,遺留分放棄許可の審判を申し立てます。
管轄裁判所は,被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所になります(家事事件手続法216条1項2号)。
2 審判
家庭裁判所は,遺留分の放棄が,遺留分権利者が真意に基づくものであるかのかどうか(他者から遺留分の放棄を強制されていないか等),遺留分放棄の理由に合理性,相当性があるのかどうか(遺留分の放棄の代償として,相当な財産を得ているのかどうか等)を調べた上で,遺留分の放棄を許可するか,申立てを却下するか審判します。
申立てをした者は,申立てを却下する審判に対して,即時抗告をすることができます(家事事件手続法216条2項)。
三 遺留分の放棄の効果
1 遺留分はなくなるが,相続人としての地位は残ります。
遺留分を放棄したことにより,放棄した者の遺留分はなくなりますが,相続人としての地位までなくなるわけではありません。
そのため,遺留分の放棄をしても,被相続人が遺言をしない場合には,遺留分を放棄した者も相続人として,遺産を相続することになります。
2 他の共同相続人の遺留分への影響
共同相続人の一人のした遺留分の放棄は,他の共同相続人の遺留分に影響を及ぼしません(民法1043条2項)。
そのため,相続人の一人が遺留分を放棄したとしても,他の共同相続人の遺留分が増えるわけではありません。
四 遺留分放棄の取消し
遺留分を放棄した後に事情が変化し,遺留分放棄の状態を存続させることが,客観的に不合理・不相当と認められる場合には,遺留分放棄許可の審判を取消しができると解されております。

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【お知らせ】年末年始の業務について
今年も大変お世話になりました。当事務所の年末年始の業務についてお知らせいたします。
平成27年12月29日(火)から平成28年1月4日(月)まで休業いたします。
平成27年は,12月28日(月)午後6時まで業務を行っております。
平成28年は,1月5日(火)午前10時より業務を行います。
なお,平成27年12月28日までに法律相談のご予約いただいた場合には,同月29日,30日についても対応いたします。
よいお年をお迎えください。

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【相続・遺言】特別縁故者に対する相続財産の分与
被相続人に相続人がいない場合,被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者)は,相続財産の分与を求めることができます。
一 特別縁故者に対する相続財産の分与とは
特別縁故者に対する相続財産の分与とは,被相続人に相続人がいない場合に,被相続人と特別の縁故があった者に相続財産を取得させることです。
相続人がいない場合には相続財産の帰属主体がいないことになるため,相続財産管理人を選任し,相続財産管理人により相続財産の清算手続が行われますが,その際,被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者)の請求があった場合,家庭裁判所は,相当と認めるときには,特別縁故者に,清算後残存すべき相続財産の全部または一部を与えることができます(民法958条の3)。
民法958条の3には「請求」とありますが,特別縁故者に相続財産に対する請求権があるわけではありません。特別縁故者が相続財産の分与を受ける権利は,家庭裁判所の審判により形成される権利です。
二 特別縁故者とは
財産分与を請求することができるのは,
①被相続人と生計を同じくしていた者
②被相続人の療養看護に努めた者
③その他被相続人と特別の縁故があった者
です(民法958条の3)。
被相続人の葬儀をしたり,被相続人が亡くなった後に事実上財産管理をする等,被相続人が亡くなった後の縁故(いわゆる死後縁故)も,特別の縁故にあたるのかどうかは争いがあります。
なお,相続財産管理人は,相続財産の管理費用を相続財産の中から支出することができますし,葬儀費用についても,家庭裁判所から権限外行為の許可を受けることで,相続財産の中から支出することができますので,被相続人が亡くなった後に管理費用を負担した人や葬儀費用を負担した人は,相続財産管理人と交渉すべきでしょう。
三 特別縁故者に対する相続財産分与の手続の流れ
1 相続財産分与の申立
相続人捜索の公告期間満了後,3か月以内に,特別縁故者は,家庭裁判所に対し,財産分与するよう申立てをします(民法958条の3)。
管轄裁判所は,相続が開始した地を管轄する家庭裁判所になります(家事事件手続法203条3号)
2 審判
家庭裁判所は,相当と認める場合には,相続財産の全部または一部を分与する審判をします(民法958条の3)。
審判は,相続人捜索の期間の満了後3か月を経過した後になされます(家事事件手続法204条1項)。
複数人から申立てがあった場合には,手続や審判は併合して行われます(家事事件手続法204条2項)。
また,家庭裁判所は,審判をするにあたって,相続財産管理人の意見を聴かなければなりません(家事事件手続法205条)。
3 不服申立て
特別縁故者に対する相続財産の分与の審判に対しては,申立人及び相続財産管理人は即時抗告をすることができます(家事事件手続法206条1項1号)。
申立てを却下する審判に対しては,申立人が即時抗告をすることができます(家事事件手続法206条1項2号)。
なお,審判が併合された場合,申立人の一人または相続財産管理人がした即時抗告は,申立人全員に対して効力を生じます(家事事件手続法206条2項)。
4 残余財産の国庫帰属
特別縁故者に対する相続財産の分与により処分されなかった残余の相続財産は国庫に帰属します(民法959条)。

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【損害賠償】使用者責任
人を使用する者(使用者)は,従業員(被用者)が不法行為をした場合,その使用者も損害賠償責任を負うことがありますが,使用者は,どのような場合に,どのような責任を負うのでしょうか。
一 使用者責任とは
ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(民法715条1項本文)。この責任を使用者責任といいます。
個人責任の観点からすれば,被用者が不法行為をした場合には,被用者が不法行為責任を負うことになりますが,被用者に損害賠償請求をするだけでは被害者の保護に欠ける場合がありますので,報償責任(利益を得ている者は損失も負うべき),危険責任(危険を支配する者は責任を負うべき)の観点から,使用者も損害賠償責任を負います。
使用者責任は「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったとき」には免責されるため(民法715条1項但書),無過失責任ではありませんが,使用者に立証責任が転換されていますし(中間責任),使用者の免責は容易には認められません。
二 使用者責任の要件
使用者責任とは,①ある事業のために他人を使用する者が,②その事業の執行について③被用者が第三者に損害を加えた場合に負う責任ですが,④使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときには免責されます。
1 「ある事業のために他人を使用する者」(使用関係の存在)
「ある事業」とは,広く仕事全般を意味します。事業は,一時的でもかまいませんし,適法か否か,営利的か否かは問われません。
また,「他人を使用する者」といえるためには,雇用契約が不可欠というわけではなく,使用者と被用者の間に実質的な指揮監督関係があればよいとされています。例えば,元請,下請の関係であっても,実質的な指揮監督関係があれば,使用関係が認められます。
2 「その事業の執行について」(事業執行性)
「事業の執行について」の要件をみたすかどうかは,被用者の行為の性質から検討されます。
(1)取引的不法行為の場合
取引行為の過程で行われる不法行為の場合には,使用者の事業の範囲に属するか,被用者の職務の範囲に属するかで判断され,被用者の職務の範囲に属しない場合であっても,その行為の外形から観察して,あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するものとみられる場合には,「事業の執行について」の要件をみたすと解されております(外形理論)。なお,外形理論は,外形を信頼した者を保護する理論であるため,被害者が,職務の範囲外であることを知っていた場合や重過失で知らなかった場合には,要件はみたさないと解されております。
(2)事実的不法行為の場合
交通事故や暴力行為等,被用者の事実行為が不法行為にあたる場合には,加害行為が使用者の支配領域内の危険に由来するかどうか,事業の執行行為と密接に関連するかどうかで判断されます。
3 被用者が第三者に損害を加えたこと(被用者の不法行為)
使用者責任は,被用者に代わって使用者に責任を負わせるものですから,被用者の行為が不法行為の要件(民法709条)をみたしていることが必要であると解されております。
4 免責事由
使用者が,被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたこと,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったことを立証すれば免責されます。
もっとも,免責が認められることは少ないです。
三 使用者の負う責任
1 不真正連帯債務
使用者責任が成立する場合,使用者は被害者に対し損害賠償債務を負います。
被用者も被害者に対し損害賠償債務を負い,使用者と被用者の債務は不真正連帯債務であると解されております。
そのため,被害者は,使用者と被用者にいずれに対しても,全額の損害賠償請求をすることができますが,いずれかが損害賠償金を支払えば,その限りで他方は免責されます。
2 求償
使用者が被害者に対し損害賠償した場合,使用者は被用者に対し求償することができます(民法715条3項)。
ただし,損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度に制限されます。

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【相続・遺言】相続人の不存在
相続人がいない人が亡くなった場合,その人の財産はどうなるのでしょうか。
一 相続人の不存在
相続人がいない場合には,相続財産の帰属主体がいないことになります。
そのため,相続開始時に,相続人の存在が明らかでないときには,相続財産自体を法人と擬制した上で(民法951条),相続財産管理人が選任され(民法952条),相続財産を管理しつつ,相続人を捜し,相続人が見つからなかった場合には,相続財産を清算します。
他方,相続人がいることが明らかになったときは,相続財産法人は成立しなかったものとみなされますが,相続財産管理人が権限内でした行為の効力は妨げられません(民法955条)。
二 手続の流れ
1 相続開始時
相続開始時に,「相続人のあることが明らかでないとき」は相続財産法人が成立します(民法951条)。
なお,相続人がいない場合であっても,相続財産の全部について包括受遺者が存在する場合には,包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することから(民法990条),「相続人のあることが明らかでないとき」にはあたらず,相続財産法人は成立しないと解されております。
2 相続財産管理人の選任・公告
(1)相続財産管理人の選任請求
相続財産法人が成立した場合,家庭裁判所は,利害関係人または検察官の請求によって,相続財産管理人を選任します(民法952条1項)。
利害関係人には,相続債権者や受遺者,特別縁故者等があたります。
(2)相続財産管理人選任の公告
相続財産管理人が選任されたときは,家庭裁判所は,遅滞なく公告し(民法952条2項),相続人が現れるのを待ちます。
3 相続債権者・受遺者に対する公告・弁済
(1)相続債権者・受遺者に対する公告
相続財産管理人選任の公告後,2か月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは,相続財産管理人は,遅滞なく,すべての相続債権者及び受遺者に対し,一定期間内(2か月以上)に請求の申出をすべき旨を公告します(民法957条1項)。
(2)相続債権者・受遺者に対する弁済
期間満了後,相続財産管理人は,まず債権者に弁済し,次いで受遺者に弁済します(民法957条2項,民法929条,民法931条)。
4 相続人捜索の公告
相続債権者・受遺者に対する公告の期間満了後,なお相続人のあることが明らかでないときには,家庭裁判所は,相続財産管理人または検察官の請求により,相続人があるならば,一定期間内(6か月以上)に権利を主張すべき旨を公告します(民法958条)。
期間内に相続人としての権利を主張する者がなかったときには,相続人,相続財産管理人に知られなかった相続債権者や受遺者は,権利行使ができなくなります(民法958条の2)。
5 特別縁故者に対する相続財産の分与(民法958条の3)
相続人捜索の公告で定めた期間満了後,3か月以内に,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者)の請求があった場合,家庭裁判所は,相当と認めるときには,特別縁故者に,清算後残存すべき相続財産の全部または一部を与えることができます(民法958条の3)。
6 国庫帰属
特別縁故者への財産分与によって処分されなかった相続財産は国庫に帰属します(民法959条)。
国庫に帰属する時期は,相続財産管理人が国庫に引き継いだときであると解されております。

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【離婚】婚姻の無効,婚姻の取消し
婚姻が成立するには,①婚姻意思の合致,②婚姻の届出,③婚姻障害事由の不存在が要件となりますが,婚姻の成立に瑕疵がある場合には,婚姻は無効となるか,取り消されます。
一 婚姻の無効
1 無効原因
①人違いその他の事由によって当事者間に婚姻する意思がないときや,②当事者が婚姻の届出をしないとき(方式を欠くだけの場合は除きます。)は,婚姻は無効となります(民法742条)。
2 効果
無効な婚姻は,訴訟や審判を経なくても当然に無効であると解されております。ただし,戸籍の訂正には婚姻無効の判決または審判が必要です(戸籍法116条)。
また,当事者のみならず,利害関係のある者は,無効を主張することができます。
3 手続
当然無効であり,訴訟や審判をしなくても婚姻の無効を主張することができますが,戸籍の訂正をするには法的手続をとることが必要です。
婚姻の無効を確認する法的手続としては,①婚姻無効の調停を申し立て,合意に相当する審判をする場合,②婚姻無効の訴えをする場合があります。
二 婚姻の取消し
1 取消事由
婚姻の取消しは,民法の規定がある場合に限定されております(民法743条)。
(1)不適法な婚姻の取消し
①婚姻適齢(民法731条),②重婚の禁止(民法732条),③再婚禁止期間(民法733条),④近親婚の禁止(民法734条),⑤直系姻族間の婚姻の禁止(民法735条),⑥養親子などの間の婚姻の禁止(民法736条)の各規定に違反した場合には,各当事者その他の取消権者は,婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法744条)。
なお,①婚姻適齢違反の場合,③再婚禁止期間違反の場合については,期間の経過等により取消しができなくなることがあります(民法745条,民法746条)。
(2)詐欺または強迫による婚姻の取消し
詐欺または強迫によって婚姻をした者は,婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法747条1項)。
詐欺を発見後または強迫を免れた後3か月を経過した場合や追認したときは取消しができなくなります(民法747条2項)。
2 効果
婚姻の取消しは将来に向かってのみ効力を生じます(民法748条1項)。
婚姻によって財産を得た場合には,利益を返還しなければなりません(民法748条2項,3項)。
3 手続
婚姻を取り消すには,家庭裁判所に婚姻の取消しを請求しなければなりません。
婚姻を取消す法的手続としては,①婚姻の取消しの調停,②婚姻の取消しの訴えがあります。

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