【交通事故】運行供用者責任

2015-07-17

交通事故により他人に損害を与えた場合,民法の不法行為責任を負いますが(民法709条,民法715条等),それとは別に,自動車損害賠償保障法3条は運行供用者責任を規定し,人身事故の被害者の保護を図っております。

これから,運行供用者責任について簡単に説明します。

 

一 運行供用者責任とは

自己のために自動車を運行の用に供する者(「運行供用者」といいます)は,その運行によって他人の生命または身体を害したときは,これによって生じた損害を賠償する責任を負います(自動車損害賠償保障法3条本文)。この責任を運行供用者責任といいます。

運行供用者責任には,以下のような特徴があります。

①証明責任の転換,事実上の無過失責任

民法709条の不法行為責任では被害者が加害者の過失を立証しなければなりませんが,運行供用者責任では証明責任が転換されており,運行供用者は免責要件に該当することを証明しない限り,責任を負います(自動車損害賠償保障法3条)。

また,免責の要件も厳格に解されており,事実上の無過失責任とされております。

②責任を負う者の範囲の拡大

自動車を運転していなくても,運行供用者であれば責任を負います。

③人身事故に限定

運行供用者責任は,人身損害(人損)に限定されております。

物損については,民法の不法行為(民法709条等)の規定により責任追及することになります。

 

二 運行供用者責任の要件

自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)は,その運行によって他人の生命または身体を害したときは,これによって生じた損害を賠償する責任を負います(自動車損害賠償保障法3条本文)。

 

1 運行供用者とは

運行供用者とは,自動車の運行について運行支配と運行利益が帰属する者をいうと解されています。

これは危険責任(危険な物を支配する者は重い責任を負うべきであるとする考え)や報償責任(利益を得る者は,それによる損失も負うべきであるとする考え)を根拠とします。

もっとも,被害者救済の観点から,運行供用者性を広く認める傾向にあり,運行供用者性の判断基準については運行支配の要件だけで足りるとする見解等,様々な見解があります。

自動車の所有者は,通常,自動車の運行を支配し,運行による利益が帰属しますので,運行供用者であると認められますが,自動車が盗難された場合や所有権留保の場合等,運行供用者性が否定されることもあります。

 

2 「運行によって」とは

(1)「運行」とは

「運行」とは「人又は物を運送するとしないとにかかわらず,自動車を当該装置の用い方に従い用いること」をいいます(自動車損害賠償保障法2条2項)。

「当該装置」とは,エンジンやハンドル,ブレーキ等の走行装置のほかに,クレーン車のクレーンやフォークリフトのフォーク等,特殊自動車に固有の装置までも含むと解されています。

また,走行中の場合だけでなく,駐停車している場合であっても,運行にあたると解されております。

(2)「によって」とは

「によって」とは,運行と事故との間に相当因果関係があることをいうと解されています。

自動車の危険な運転を避けるために転倒した場合(非接触事故),走行中に積み荷が落下した場合等,運行と事故との間に相当因果関係があれば,運行供用者責任が認められます。

3 「他人」とは

「他人」とは運行供用者及び自動車の運転者(「他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者」自動車損害賠償保障法2条3項)以外の人のことをいうと解されております。

運行供用者や運転者の生命または身体が害されても,「他人」にあたらないため,運行供用者責任は認められません。

 

三 運行供用者責任が免責される場合

運行供用者が,

①自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと

②被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと

③自動車に構造上の欠陥又は機能に障害がなかったこと

を証明したときは,責任を負いません(自動車損害賠償法3条但書)。

これらの免責要件は,厳格に解されており,事実上の無過失責任であるといえます。

 

四 自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)・自動車損害賠償責任共済(自賠責共済)

人身事故の被害者救済の観点から,運行供用者責任が規定されておりますが,加害者に資力がなければ被害回復が図れないため,それだけでは不十分です。

そこで,自動車損害賠償保障法は,自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)または自動車損害賠償責任共済の契約の締結を強制することで,被害者救済を図っています(自動車損害賠償保障法5条)。

もっとも,自賠責保険・自賠責共済には限度額があり,それだけでは被害者に十分な賠償ができないことが通常であるため,自動車の保有者は,任意保険に加入しておくべきです。

 

 

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