【相続・遺言】相続分の放棄

2015-12-25

一 相続分の放棄とは

相続分の放棄とは,相続人が自己の相続分を放棄することです。

相続分の放棄をすると,放棄をした者の相続分がなくなり,その分,他の相続人全員の相続分が増えます。

相続分の放棄は,相続放棄と名称は似ておりますが,異なる制度です。

相続放棄の場合,相続放棄をした者は,その相続に関し初めから相続人とならなかったものとみなされますが(民法939条),相続分の放棄の場合には,相続分の放棄をした者は,相続分がなくなるだけであり,相続人としての地位がなくなるわけではありません。

相続分の放棄をすることで,放棄をした者は,被相続人の積極財産を相続することができなくなりますが,被相続人の債権者を害さないよう被相続人の債務を免れることはないと解されております。

 

二 他の共同相続人の相続分への影響

相続分の放棄をすると,その分,他の相続人全員の相続分が増えます。

他の相続人の相続分が増える割合については,放棄をする者が別の意思を表示した場合を除き,一般的には,各相続人の相続分の割合に応じて増えると解されております。

 

例 相続人が配偶者と子2人の場合で,子の1人が相続分の放棄をしたとき

配偶者の法定相続分は2分の1,子の法定相続分は各4分の1であり,配偶者と放棄をしていない子1人の法定相続分の割合は,2:1(=2分の1:4分の1)ですので,相続分の放棄をした子の法定相続分4分の1については,その3分の2が配偶者に,3分の1が放棄をしていない子に移ります。

そのため,配偶者の相続分は3分の2(=元の法定相続分+増加分=2分の1+4分の1×3分の2=2分の1+6分の1),放棄をしていない子の相続分は3分の1(=4分の1+4分の1×3分の1=4分の1+12分の1)となります。

なお,相続放棄の場合は,相続放棄をした者は,相続人とならなかったものとみなされるため,相続人は,配偶者と放棄をしていない子の2人となり,相続分はいずれも2分の1となります。

 

三 相続分の放棄の手続

相続分の放棄した者は,原則として,遺産分割の当事者となる資格を失います。

そのため,遺産分割調停や遺産分割審判の申立前に相続分の放棄が判明している場合には,放棄した者を当事者から外して申し立てることができますし,申立後に放棄が判明した場合や申立後に相続分の放棄が行われた場合には,家庭裁判所は,排除の決定をすることができます(家事事件手続法43条1項,258条1項)。

 

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