【相続・遺言】特別縁故者に対する相続財産の分与

2015-11-20

被相続人に相続人がいない場合,被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者)は,相続財産の分与を求めることができます。

一 特別縁故者に対する相続財産の分与とは

特別縁故者に対する相続財産の分与とは,被相続人に相続人がいない場合に,被相続人と特別の縁故があった者に相続財産を取得させることです。

相続人がいない場合には相続財産の帰属主体がいないことになるため,相続財産管理人を選任し,相続財産管理人により相続財産の清算手続が行われますが,その際,被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者)の請求があった場合,家庭裁判所は,相当と認めるときには,特別縁故者に,清算後残存すべき相続財産の全部または一部を与えることができます(民法958条の3)。

民法958条の3には「請求」とありますが,特別縁故者に相続財産に対する請求権があるわけではありません。特別縁故者が相続財産の分与を受ける権利は,家庭裁判所の審判により形成される権利です。

 

二 特別縁故者とは

財産分与を請求することができるのは,

①被相続人と生計を同じくしていた者

②被相続人の療養看護に努めた者

③その他被相続人と特別の縁故があった者

です(民法958条の3)。

 

被相続人の葬儀をしたり,被相続人が亡くなった後に事実上財産管理をする等,被相続人が亡くなった後の縁故(いわゆる死後縁故)も,特別の縁故にあたるのかどうかは争いがあります。

なお,相続財産管理人は,相続財産の管理費用を相続財産の中から支出することができますし,葬儀費用についても,家庭裁判所から権限外行為の許可を受けることで,相続財産の中から支出することができますので,被相続人が亡くなった後に管理費用を負担した人や葬儀費用を負担した人は,相続財産管理人と交渉すべきでしょう。

三 特別縁故者に対する相続財産分与の手続の流れ

1 相続財産分与の申立

相続人捜索の公告期間満了後,3か月以内に,特別縁故者は,家庭裁判所に対し,財産分与するよう申立てをします(民法958条の3)。

管轄裁判所は,相続が開始した地を管轄する家庭裁判所になります(家事事件手続法203条3号)

2 審判

家庭裁判所は,相当と認める場合には,相続財産の全部または一部を分与する審判をします(民法958条の3)。

審判は,相続人捜索の期間の満了後3か月を経過した後になされます(家事事件手続法204条1項)。

複数人から申立てがあった場合には,手続や審判は併合して行われます(家事事件手続法204条2項)。

また,家庭裁判所は,審判をするにあたって,相続財産管理人の意見を聴かなければなりません(家事事件手続法205条)。

3 不服申立て

特別縁故者に対する相続財産の分与の審判に対しては,申立人及び相続財産管理人は即時抗告をすることができます(家事事件手続法206条1項1号)。

申立てを却下する審判に対しては,申立人が即時抗告をすることができます(家事事件手続法206条1項2号)。

なお,審判が併合された場合,申立人の一人または相続財産管理人がした即時抗告は,申立人全員に対して効力を生じます(家事事件手続法206条2項)。

4 残余財産の国庫帰属

特別縁故者に対する相続財産の分与により処分されなかった残余の相続財産は国庫に帰属します(民法959条)。

 

 

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