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【労働問題】みなし労働時間(事業場外労働,裁量労働制)

2018-03-29

残業代請求事件では,使用者側が,みなし労働時間の主張をしてくることがあります。

 

一 みなし労働時間

労働時間は実労働時間で把握するのが原則ですが,みなし労働時間制が採用される場合には,実際の労働時間にかかわらず,一定時間,労働したものとみなされます。

例えば,みなし労働時間が8時間の場合,12時間働いても,8時間働いたものとしかみなされません。そのため,本来,12時間働いた場合には,法定労働時間である8時間を超える4時間分は時間外労働となりますが,みなし労働時間が8時間であれば,8時間働いたものとしかみなされず,使用者は時間外労働の割増賃金を支払う必要がなくなります。
みなし労働時間制が採用されると,労働者がみなし労働時間を超える時間の労働をしても,使用者はその分の割増賃金を支払わなくてよくなりますので,使用者に濫用される危険があります。
そのため,みなし労働時間制を適用するための要件を満たすかどうかは厳格に判断されます。

 

二 みなし労働時間制がとられる場合

みなし労働時間制がとられる場合として,①事業場外労働(労働基準法38条の2),②専門業務型裁量労働制(労働基準法38条の3),③企画業務型裁量労働制(労働基準法38条の4)があります。

 

1 事業場外労働

労働者が事業場外で労働をしており,労働時間を算定し難いときは,所定労働時間,労働したものとみなされます(労働基準法38条の2第1項本文)。ただし,業務を遂行するために所定労働時間を超えて労働することが必要な場合は,通常必要とされる時間,労働したものとみなされます(同項但書)。
事業場外労働のみなし労働時間制は,使用者が労働者の実労働時間を把握することが困難であることから例外的に認められるものです。
そのため,労働者が事業場外労働をしている場合であっても,実労働時間の把握が困難とはいえないときは,みなし労働時間制をとることはできません。

 

2 専門業務型裁量労働制

業務の性質上,その遂行方法を労働者の裁量にゆだねる必要があるため,業務遂行の手段,時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める一定の業務(対象業務)については,一定の要件のもと,みなし労働時間制をとることができます(労働基準法38条の3,労働基準法施行規則24条の2の2)。
専門職で裁量のある労働者について適用されるものです。
対象業務であっても,補助的な業務にすぎない場合や使用者の具体的な指示を受けている場合等,労働者に裁量がない場合には,みなし労働時間制をとることはできません。

 

3 企画業務型裁量労働制

事業の運営に関する事項についての企画,立案,調査及び分析の業務であって,業務の性質上これを適切に遂行するには遂行方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため,業務遂行の手段,時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしない業務(対象業務)に,対象業務を適切に遂行するための知識,経験等を有する労働者が就く場合には,一定の要件のもと,みなし労働時間制をとることができます(労働基準法38条の4,労働基準施行規則24条の2の3)。
企業の本社等の中枢部門で企画,立案,調査,分析の業務を自らの裁量で遂行するホワイトカラーの労働者について適用されるものです。
労働者の個別的な同意があることが要件となっています。また,労働者に裁量がない場合は,みなし労働時間制をとることはできません。

 

三 休日労働や深夜労働との関係

みなし労働時間は,労働時間の算定について適用されるものであり(労働基準法施行規則24条の2第1項,24条の2の2第1項,24条の2の3第2項),休日労働や深夜労働には適用されません。
そのため,みなし労働時間が適用される場合であっても,労働者が休日労働や深夜労働をすれば,使用者は割増賃金支払義務を負います。

 

四 まとめ

みなし労働時間と認められる場合には,実労働時間にかかわらず,一定の時間労働したものとみなすため,使用者が,残業代の支払を免れるため,みなし労働時間制を濫用する危険性があります。
そのため,要件を満たすかどうか厳格に判断されることになりますので,使用者側が裁量労働制等のみなし労働時間を主張してきたとしても,その主張が認められることは容易ではありません。

【労働問題】固定残業代

2017-09-21

会社が固定残業代制度を採用している場合,労働者は時間外労働をしても残業代を請求できないのでしょうか。

 

一 固定残業代制度とは

固定残業代制度とは,実際の時間外労働の有無にかかわらず,一定時間分の時間外労働等をしたものとみなして,定額の割増賃金を支給する制度です。定額残業代,みなし残業代とも呼ばれています。
残業代を定額で支払うことも労働基準法37条により算定した割増賃金額を下回らない限り適法であるとされているため,残業代の抑制や事務処理上の便宜から固定残業代制度が採用されています。

 

二 固定残業代制度を採用している場合の残業代請求

残業代を固定額で支払うこともできますが,労働基準法37条に違反することはできません。
そのため,実際の労働時間に基づいて算定される割増賃金額が固定残業代の額を超える場合には,労働者は使用者に対し,その差額の支払を請求することができます。
例えば,基本給16万円,固定残業代4万円,1か月の所定労働時間160時間の場合,1時間当たりの割増賃金額は1250円となり,40時間の時間外労働をした場合には未払残業代は1万円となります。

計算式
・割増賃金単価
16万円÷160時間×1.25=1250円/時間
・未払残業代
1250円/時間×40時間-4万円=1万円

 

三 固定残業代が有効となるための要件

1 固定残業代支払の合意があること

(1)合意の存在

固定残業代制度を採用するには,使用者と労働者との間で固定残業代を支払うことの合意がなければなりません。
そのため,労働契約や就業規則等において,使用者と労働者の間で,固定残業代の支払があることを定めておく必要があります。

(2)合意が公序良俗に違反しないこと

①通常の労働時間についての賃金が著しく低額であり,固定残業代の額が多額である場合や,②固定残業代の基となる時間外労働時間が長すぎる場合には,固定残業代制度が公序良俗に違反するものとして無効と判断される可能性があります。

 

2 通常の労働時間についての賃金と明確に区別ができること

(1)差額の算定ができるようにするため

実際の労働時間に基づいて算定される割増賃金額が固定残業代の額を超える場合には,労働者は使用者に対しその差額の支払を請求することができますが,そのためには通常の労働時間についての賃金と割増賃金に相当する部分が明確に区別されていなければなりません。
そこで,固定残業代として有効となるには,通常の労働時間についての賃金と割増賃金に相当する部分が明確に区別ができることが必要です。

(2)基本給の中に含まれているとの主張

労働者が残業代を請求した場合に,使用者が基本給の中に割増賃金が含まれていると主張することがあります。
その場合,例えば,「基本給のうち○万円は○○時間分の時間外手当として支給する」といったように,割増賃金額が算定できるよう明確に区別されていればよいですが,単に「基本給の中に割増賃金が含まれている。」というだけでは使用者の主張は認められないでしょう。

(3)固定残業代を手当として支給する場合

使用者が固定残業代を手当として支給する場合,その手当が固定残業代の趣旨であることが分からなければなりません。
手当が割増賃金の趣旨であるかどうかわからない場合や,手当に割増賃金以外の性質のものも含まれていると解される場合には,明確な区別ができているとはいえないので,固定残業代とは認められないでしょう。

 

3 差額支払の合意や実態があること

実際の労働時間に基づいて算定される割増賃金額と固定残業代の額との差額を支払う旨の合意がない場合や,差額を支払っているという実態もない場合には,固定残業代制度が無効と判断されることがあります。
差額支払の合意や実態がない場合には,使用者は,労働時間の把握や割増賃金の算定をしておらず,そもそも割増賃金を支払う意思がないものと解されるため,固定残業代制度自体が無効と判断される可能性があります。

 

四 固定残業代が無効となる場合

固定残業代制度が無効となる場合,固定残業代の手当相当額を基礎賃金に組み入れて割増賃金を算定することになります。
例えば,基本給16万円,固定残業代4万円,1か月の所定労働時間160時間の場合,固定残業代が無効となるときには,1時間当たりの割増賃金額は1562.5円となり,40時間の時間外労働をした場合には未払残業代は6万2500円となります。

計算式
・割増賃金単価
(16万円+4万円)÷160時間×1.25=1562.5円/時間
・未払残業代
1562.5円/時間×40時間=6万2500円

 

五 まとめ

使用者が固定残業代制度を採用している場合であっても, 実際の労働時間に基づいて算定される割増賃金額が固定残業代の額を超えるときには,労働者はその差額を請求することができます。
その際,固定残業代制度の有効性が問題となり,有効となるか無効となるかによって,未払残業代の額が大きく異なります。

【労働問題】有期労働契約と雇止め

2017-08-28

非正規労働者の多くは使用者との間で有期労働契約を締結しております。使用者は,労働者と有期労働契約を締結することで,必要に応じて,契約を更新して雇用を継続することも,契約更新を拒絶すること(雇止め)で人員削減することもできますが,労働者の保護はどのように図られているのでしょうか。

 

一 有期労働契約

有期労働契約とは,期間の定めのある労働契約のことです。
有期労働契約では,期間が満了すると労働契約が終了しますが,契約を更新することで雇用が続いていきます。
正社員が無期労働契約(期間の定めのない労働契約)であるの対し,契約社員やアルバイト等の非正規労働者は有期労働契約であることが通常です。無期労働契約の正社員については,解雇権濫用法理等により解雇が制限されているのに対し,有期契約労働者については,期間が満了すれば労働契約が終了するので,使用者は,必要があれば契約を更新し,必要がなければ契約を終了させることで,労働者の数を調整することができますが,労働者からすれば不安定な立場に置かれることになります。
そのため,有期労働契約については労働基準法や労働契約法で規制されています。

 

二 契約期間

1 契約期間の上限

有期労働契約は,一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは,3年(高度の専門的知識等を有する労働者,60歳以上の労働者と契約する場合は,5年)を超える期間について締結することはできません(労働基準法14条1項)。
使用者が労働者を辞めさせないようにするため,長期間の有期労働契約を締結することがあるので,契約期間の上限が設けられています。

 

2 契約期間の下限

契約期間の下限について規定はありませんが,使用者は,有期労働契約について,その契約により労働者を使用する目的に照らして,必要以上に短い期間を定めることにより,契約を反復して更新することのないよう配慮しなければなりません(労働契約法17条2項)。
契約期間を短くし,更新を繰り返すことは,労働者からすれば,いつまで働けるのか分からず,地位が不安定になるからです。

 

三 契約期間中の解雇の制限

有期労働契約では,使用者は,やむを得ない事由がある場合でなければ,契約期間が満了するまで,労働者を解雇することはできません(労働契約法17条1項)。
「やむを得ない事由」とは,期間満了を待つことなく直ちに契約を解消せざるを得ない特別重大な事由がある場合であり,解雇権濫用規制における客観的合理的な理由・社会通念上の相当性よりも厳格に解されます。

 

四 無期労働契約への転換

1 無期労働契約への転換申込権

(1)転換の申込みができる場合

同一の使用者との間で締結された有期労働契約の契約期間が通算して5年を超える場合,労働者は使用者に対し,その契約期間中,無期労働契約(期間の定めのない労働契約)の締結を申し込むことができます。申込みがあったときは,使用者はこの申込みに承諾したものとみなされ(労働契約法18条1項),期間満了日の翌日から無期労働契約に転換されます。
なお,この規定は平成24年改正によるものであり,平成25年4月1日から施行されております。通算契約期間は施行日以後に開始する有期労働契約が対象となり,施行日前に開始する契約は対象となりません(改正附則2項)。

 

(2)転換申込ができる期間

契約期間中に通算契約期間が5年を超える場合,その期間中に無期転換の申込みをすることができます(労働契約法18条1項)。
契約期間中に転換の申込みをせず,契約が更新された場合には,更新された期間内に転換の申込みをすることができ,その期間満了日の翌日から無期労働契約に転換されます。

 

(3)転換後の労働条件

無期労働契約に転換された場合,契約期間以外の労働条件は,別段の定めがない限りは,従前と同じです(労働契約法18条1項)。

 

2 空白期間がある場合

ある有期労働契約と次の有期労働契約の間に空白期間があり,この空白期間が6か月(直前に満了した契約期間が1年未満であるときは,その2分の1の期間)以上である場合には,通算契約期間がリセットされ,一から通算契約期間がカウントされることになります(労働契約法18条2項)。

 

五 雇止めの制限

1 雇止め

雇止めとは,使用者が有期労働契約の更新を拒絶することです。
有期労働契約は期間満了により終了するものであり,契約を更新するかどうかは使用者の自由であるとも思われます。
しかし,有期労働契約が反復更新されており,実質的に無期労働契約と異ならない場合や,労働者が雇用継続を期待することに合理性がある場合にまで,使用者が無制約に更新を拒絶できるとすると,労働者があまりにも不安定な地位に置かれることになってしまいます。
そこで,以前は,これらの場合,更新拒絶に解雇権濫用法理を類推適用する判例法理(雇止め法理)により労働者の保護を図っていましたが,同法理は労働契約法で法定化されたため,現在は労働契約法19条により雇止めが制限されています。

 

2 労働契約法19条による雇止めの制限

①有期労働契約が過去に反復して更新されており,期間満了時に更新せず終了させることが無期労働契約の解雇による契約終了と社会通念上同視できると認められる場合,または,労働者が有期労働契約の期間満了時に契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合で

②労働者が,期間満了日まで更新の申込みをしたか,労働者が期間満了後遅滞なく契約の締結の申込みをしており

③使用者の申込みの拒絶が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないときは

使用者は労働者の申込みを承諾したものと見なされます(労働契約法19条)。

 

六 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

有期契約労働者の労働条件と無期契約労働者の労働条件との相違は,職務の内容(業務内容と責任の程度),職務の内容・配置の変更の範囲その他の事情を考慮して,不合理と認められるものであってはなりません(労働契約法20条)。

不合理と認められる場合には,その労働条件は無効になりますし,損害賠償請求ができると解されています。

【労働問題】歩合給・出来高給と残業代(割増賃金)

2017-08-18

契約件数・契約高に応じて賃金が定まる営業社員や,売上の一定割合が賃金として支払われるタクシー運転手のように,労働時間ではなく,売上等の出来高で賃金が決まる歩合給・出来高給の場合でも,時間外労働等をすれば残業代(割増賃金)が支払われるのでしょうか。

 

一 歩合給・出来高給の場合にも割増賃金が発生するか

労働基準法37条は,時間外労働,休日労働,深夜労働をした場合の割増賃金について規定しております。割増賃金は,使用者に通常の労働時間・労働日の賃金よりも割増の賃金を支払う義務を負わせることで,時間外労働等を抑制させるためのものです。
歩合給・出来高給の場合であっても,通常の労働時間にあたる賃金部分と時間外労働の割増賃金にあたる部分が区別されておらず,労働者が時間外労働等をしても金額が増えないときには,割増賃金を請求することができます。

 

二 歩合給・出来高給の場合の割増賃金の計算方法

割増賃金は,以下の計算式で計算します。

割増賃金=基礎賃金額×時間外労働・休日労働・深夜労働時間×割増率

 

月給制の場合,基礎賃金額は,月によって定められた賃金額を所定労働時間数(月によって異なる場合は1年間における1月平均所定労働時間数)で割った金額です(労働基準法施行規則19条1項4号)。
また,時間外労働をした場合,所定賃金に時間外労働時間分の賃金は含まれていませんので,通常の時間当たりの賃金に加え,割増分の賃金が請求できます(割増率は1.25となります。)。

例えば,ある月の労働時間が240時間(所定労働時間160時間,時間外労働時間80時間)で,賃金が36万円の場合,基礎賃金額は2250円(=36万円÷所定労働時間160時間)となり,割増賃金として22万5000円(=2250円×80時間×1.25)を請求することができます。

 

これに対し,歩合給・出来高給は,総労働時間における労働の対価です。
そのため,基礎賃金は,賃金算定期間における賃金総額を総労働時間で割った金額となります(労働基準法施行規則19条1項6号)
また,時間外労働をした場合には,割増分についてのみ請求できます(割増率は0.25となります。)。

例えば,ある月に240時間働き,歩合給として36万円もらった場合,1時間当たりの基礎賃金額は1500円(=36万円÷240時間)となります。時間外労働時間が80時間の場合,割増賃金として3万円(=1500円×80時間×0.25)を請求することができます。

 

三 固定給と歩合給の場合

賃金に固定給部分と歩合給部分がある場合には,固定給部分と歩合給部分に分けてそれぞれ割増賃金を算定します。

例えば,ある月の労働時間が240時間(所定労働時間160時間,時間外労働時間80時間)で,賃金が固定給24万円,歩合給12万円の場合, 固定給部分については,基礎賃金額は1500円(=24万円÷160時間)であり,割増賃金額は15万円(=1500円×80時間×1.25)となり,歩合給部分については,基礎賃金額は500円(=12万円÷240時間)となり,割増賃金額は1万円(=500円×80時間×0.25)となり,合計で16万円の割増賃金を請求することができます。

 

四 まとめ

以上のように,歩合給・出来高給の場合でも,時間外労働等をしていたときには割増賃金を請求することができますが,月給制の場合とでは計算方法が異なりますので,同じ時間,同じ賃金で働いたとしても,月給の場合と歩合給・出来高給の場合とでは残業代の金額は異なります。

残業代請求と管理監督者

2017-07-19

残業代請求事件で労働者が管理職や店長である場合には,使用者が,労働者は管理監督者であると主張して,残業代支払義務を争ってくることがあります。

 

一 管理監督者とは

労働基準法41条は,労働時間,休憩及び休日に関する規定の適用が除外される労働者を規定しております。そのうちの一つが「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」であり(労働基準法41条2号),これを「管理監督者」といいます。

管理監督者は,経営者に代わって労働者の労務管理を行う地位にあり,経営者と一体の立場にある者のことです。
管理監督者については労働時間等の規制になじまないので,労働時間等に関する規定が適用されません。

 

二 管理監督者にあたる場合

管理監督者にあたる場合には,労働基準法の労働時間,休憩,休日に関する規定が適用されません。
そのため,管理監督者は時間外労働や休日労働の割増賃金の支払を請求することはできません。
もっとも,深夜業の規制に関する規定は適用除外ではありませんので,管理監督者が深夜労働をした場合,深夜労働の割増賃金が所定賃金に含まれていなければ,割増賃金の支払を請求することができます。
また,年次有給休暇の規定(労働基準法39条)も適用除外ではありませんので,管理監督者は有給休暇を取ることができます。

 

三 管理監督者にあたるための要件

管理監督者にあたるかどうかは,労働者の肩書で判断するのではなく,実際の職務の内容や権限等から判断されます。
裁判等の実務では,
①事業主の経営に関する決定に参画し,労務管理に関する指揮監督権限があること
②自己の労働時間について裁量権を有すること
③地位や権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること
が管理監督者にあたるための要件であるとされています。

具体的には,①については,経営会議に参加しているか,職務の内容がある部門全体の統括的な立場にあるか,部下に関する労務管理上の決定等について一定の裁量権を有しているか,部下の人事考課や機密事項に接しているか,②については,自己の出退勤を自分で決める権限があるか,労働時間を管理されているか,③については,管理職手当・役職手当等の支給があり,これらの手当により時間外手当等が支給されないことが十分に補われているか,一般従業員と比べて賃金が高いかといったこと等から判断されます。

これらの要件にあたるかどうは厳しく認定されますので,肩書が管理職や店長であっても,管理監督者とは認められない場合が多いです。

 

四 まとめ

労働者が管理職や店長であったとしても,肩書だけで管理監督者にあたるとわけではありません。管理監督者にあたるための要件は厳しく,実際に管理監督者にあたると判断される場合はそれ程多くありませんので,管理職や店長であっても残業代請求が認められる可能性は十分にあります。
管理職や店長という肩書にして残業代を支払わないという,いわゆる「名ばかり管理職」「名ばかり店長」である可能性がありますので,注意しましょう。

労働事件では就業規則を確認しましょう

2017-07-14

労働事件では,労働者がどのような労働条件で働いていたのか問題となりますが,労働条件は就業規則の定めによることが通常ですから,就業規則にどのように定められているかが非常に重要となります。

 

一 就業規則とは

就業規則とは,職場の規律や労働条件などについて使用者が定める規則のことです。

就業規則は一つとは限らず,賃金規程や退職金規程等の別規程として定めることもあります。また,正社員,契約社員,パート等従業員の種類ごとに異なる定めをすることも可能です。

就業規則は,労働者や使用者の権利義務関係を明確にするためのものであり,後述のように労働契約の最低限の基準となったり,労働契約の内容を補充したりする等の効力があります。

 

二 就業規則を作成・届出しなければならない場合

常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し,所轄の労働基準監督署に届け出る義務を負います(労働基準法89条,労働基準法施行規則49条1項)。
「常時10人以上の労働者」がいるかどうかは,企業全体で判断するのではなく,事業場単位で判断します。
「常時10人以上」とは,通常10人以上いるということであり,一時的に10人未満になったことがあったとしても,就業規則作成・届出義務を負います。
また,「労働者」の人数は,正社員だけでなく,契約社員やパート等の非正規社員も含めて判断します。

なお,常時10人未満で就業規則の作成義務がない場合であっても,使用者が就業規則を作成することはできます。作成した場合には労働契約法上の効力が認められます。

 

三 就業規則ではどのようなことを定めるのか

就業規則では,以下の点を定めなければなりません(労働基準法89条)。
①始業・終業の時刻,休憩時間,休日,休暇,労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合は,就業時転換に関する事項
②賃金(臨時の賃金等を除く)の決定,計算,支払の方法,賃金の締切り・支払の時期,昇給に関する事項
③退職に関する事項(解雇の事由を含む)
③の2 退職手当の定めをする場合には,適用される労働者の範囲,退職手当の決定・計算,支払の方法,退職手当の支払の時期に関する事項
④臨時の賃金等(退職手当を除く),最低賃金額の定めをする場合は,これに関する事項
⑤労働者に食費,作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は,これに関する事項
⑥安全・衛生に関する定めをする場合は,これに関する事項
⑦職業訓練に関する定めをする場合は,これに関する事項
⑧災害補償,業務外の傷病扶助に関する定めをする場合は,これに関する事項
⑨表彰・制裁の定めをする場合は,その種類・程度に関する事項
⑩その他当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合は,これに関する事項

 

四 就業規則作成・変更の手順

使用者は,就業規則の作成・変更について,事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合,ない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴き,その意見を記した書面を添付して所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません(労働基準法90条)。
「過半数代表者」は,①労働基準法41条2号の管理監督者にあたらないこと,②労働基準法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票,挙手等の方法による手続により選出された者であることが必要となります(労働基準法施行規則6条の2)
なお,意見を聴かなければならないとされているだけですので,過半数労働組合や過半数代表者と協議や同意が必要というわけではありません。
また,過半数労働組合や過半数代表者が意見表明を拒んだり,書面を出すことを拒んだりした場合には,意見を聴いたことが証明できれば受理されます。

 

五 就業規則の周知義務

使用者は,就業規則を,①常時各作業所の見やすい場所へ掲示し,または備え付けること,②書面を交付すること,③磁気テープ,磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し,かつ,各作業場に労働者が記録の内容を常時確認できる機器を設置すること(パソコンで就業規則を見ることができるようにしておくこと等)によって,労働者に周知させなければなりません(労働基準法106条1項,労働基準法施行規則52条の2)。

なお,労働者の人数が常時10人未満であり,就業規則の作成・届出義務がない場合であっても,周知義務はあります。

 

六 就業規則の効力

1 就業規則の定めが労働条件の最低限となります。

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,その部分については無効となり,無効となった部分は就業規則で定める基準となります(労働契約法12条)。

就業規則で定める労働条件が最低限になるということですから,就業規則よりも労働者に有利な労働条件を労働契約で定めた場合には,労働契約で定めた労働条件が適用されることになります。

 

2 就業規則の定めが労働契約の内容となる場合

労働者と使用者が労働契約を締結する場合に,使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていたときには,労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件になります(労働契約法7条本文)。
ただし,労働者と使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた場合には,労働契約法12条に該当する場合を除き,合意した内容になります(労働契約法7条但書)。
就業規則よりも労働者に不利益な合意は労働契約法12条により無効となりますので,労働者に有利な合意をした場合には,その合意の内容が労働契約の内容となります。

 

3 就業規則の変更による労働条件の変更

(1)原則

労働契約の内容である労働条件を変更するには労働者と使用者の合意が必要です(労働契約法8条)。

使用者が就業規則を変更することにより労働者に不利益に変更することは,労働者との合意がなければ原則としてできません(労働契約法9条)。

 

(2)例外

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において,
①変更後の就業規則を労働者に周知させ,
②就業規則の変更が,労働者の受ける不利益の程度,労働条件変更の必要性,変更後の就業規則の内容の相当性,労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更にかかる事情に照らして合理的なものであるときは,
労働契約の内容である労働条件は,変更後の就業規則に定めるところによるものとなります(労働契約法10条本文)。
ただし,労働者と使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については,労働契約法12条に該当する場合を除き,合意した内容になります(労働契約法10条但書)。

 

4 就業規則が法令や労働協約に違反する場合

(1)就業規則と法令・労働協約の関係

就業規則は,法令または当該事業場に適用される労働協約に違反してはなりません(労働基準法92条1項)。
所轄の労働基準監督署長は法令または労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることができます(労働基準法92条2項,労働基準法施行規則50条)。
法令(強行法規)や労働協約が就業規則に優越するということです。

 

(2)法令・労働協約に違反する就業規則と労働契約の関係

就業規則が法令または労働協約に違反する場合,違反する部分については,法令・労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約に労働契約法7条,10条,12条の規定は適用されませんので(労働契約法13条),就業規則のうち法令や労働協約に違反する部分については労働契約の内容となることはありません。

労働基準法や労働協約で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,その部分については無効となり,無効となった部分は労働基準法や労働協約で定める基準によることになります(労働基準法13条,労働組合法16条)。

 

配転命令の拒否

2017-07-07

使用者から転勤等の配転命令が出された場合,労働者は従わなければならないのでしょうか?

労働者が配転命令を拒否した場合,解雇されてしまうのでしょうか?

 

一 配転とは

「配転」とは,労働者の職務内容または勤務場所を相当の長期間にわたり変更することです。

同一の勤務地内で所属部署を変更する場合を「配置転換」といい,勤務地を変更する場合を「転勤」といいます。

 

二 配転命令の有効性

使用者が労働者に配転を命じることを「配転命令」といいますが,配転命令が有効となるには,①労働契約上使用者に配転命令権があること,②権利の濫用にあたらないことが必要となります。

使用者に配転命令権がなかったり,配転命令権が濫用されたと認められた場合には,配転命令は無効となります。

また,強行法規に違反する場合にも配転命令は無効となります。

 

1 使用者の配転命令権

使用者に配転命令権があるかどうかについては,労働契約自体に配転命令についての合意が含まれているとする考え(包括合意説)と配転命令についての合意が必要であるとする考え(契約説)があります。

いずれの説によっても,就業規則に配転命令の規定があれば,使用者に配転命令権があると解されます。

また,職種や勤務地を限定する合意がある場合には,使用者は合意に反する配転命令をすることはできません。

 

2 配転命令権の濫用にあたらないこと

①業務上の必要性がない場合,②労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じる場合,③不当な動機・目的による場合には,配転命令権の濫用にあたります。

 

(1)業務上の必要性

業務上の必要性については,高度の必要性までは要求されておらず,企業の合理的運営に寄与するものであれば足りると解されています。

 

(2)労働者に通常甘受すべき著しく超える不利益が生じる場合

別居や単身赴任になる場合であっても,それだけでは通常甘受すべき程度を著しく超える不利益とはあたらないと解されています。病気の家族を介護している等,特別な事情が必要となります。

 

(3)不当な動機・目的による場合

労働者に嫌がらせをするために配転命令を出したり,労働者を退職に追い込むために配転命令を出したりする等,不当な動機や目的で配転命令を出した場合には権利の濫用にあたります。

 

3 強行法規に違反する場合

不当労働行為にあたる場合(労働組合法7条)や差別的取扱いにあたる場合(労働基準法3条,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律6条,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条)等,強行法規に違反する場合には配転命令は無効となります。

 

三 配転命令を拒否したことを理由とする解雇

配転命令が無効である場合には,配転命令を拒否したことを理由とする解雇も無効となります。

これに対し,配転命令が有効である場合には,配転命令の拒否は業務命令違反となり,懲戒解雇事由や普通解雇事由にあたりますが,手続的な相当性を欠き,懲戒解雇が無効と判断された裁判例もありますので,使用者が労働者に十分な説明や再考を促すこともせず,いきなり解雇した場合には解雇が無効となる可能性があります。

 

 

業務上の負傷・病気(業務災害)と解雇

2017-07-03

労働者が業務上負傷や病気をして働けなくなった場合,使用者はその労働者を解雇することができるでしょうか?

 

一 業務災害による療養中の解雇制限

1 労働基準法19条1項

労働基準法19条1項は「使用者は,労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間…は解雇してはならない。ただし,使用者が第81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては,この限りではない。」と規定しており,労働者が業務上負傷や病気をした場合には,療養のために休業する期間及びその後30日間は原則として解雇できません。

業務災害にあって療養中の労働者が解雇されないよう保護するための規定です。

 

2 「業務上」とは

労働基準法19条の解雇制限は「業務上」負傷または病気になった場合であり,業務災害による場合です。

通勤中に負傷・病気になった場合(通勤災害)は「業務上」ではないため,労働基準法19条の解雇制限の適用はありません。

通勤災害の場合は業務外の傷病として私傷病と同じ扱いになります。

 

3 「療養」とは

労働基準法19条の「療養」とは,労働基準法,労働災害補償保険法の療養補償・休業補償の「療養」と同じ意味であり,治癒(症状固定)した後の通院等は含まれないと解されています。

そのため,治癒(症状固定)した後に職場復帰できないことを理由に解雇しても,労働基準法19条の解雇制限に違反することにはなりません。ただし,解雇権濫用(労働契約法16条)にあたるか問題となります。

 

4 「休業」とは

労働基準法19条の「休業」には全部休業だけでなく,一部休業も含むと解されております。

そのため,全く出勤できない場合だけでなく,半日しか出勤できない場合であっても,解雇制限期間中は解雇できないと解されます。

 

5 「解雇」とは

  解雇制限期間中は普通解雇のみならず,懲戒解雇もできないと解されていますが,解雇制限期間満了後に解雇予告の効力が生じるよう解雇制限期間中に解雇予告することはできると解されています。

なお,労働基準法19条は解雇制限規定ですので,定年により労働契約が終了する場合や有期労働契約が期間満了により終了する場合には適用はないと解されます。

 

6 解雇制限の例外

(1)使用者が打切補償を行った場合

使用者が打切補償を行った場合には労働基準法19条の解雇制限はなくなります(労働基準法19条1項但書前段)。

 

労働基準法81条は「第75条の規定によって補償を受ける労働者が,療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては,使用者は,平均賃金の1200日分の打切補償を行い,その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。」と規定しておりますので,療養開始後3年を経過しても負傷・疾病がなおらない場合に使用者は打切補償が行うことで労働基準法19条の解雇制限をなくすことができます。

労働基準法75条1項は「労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかった場合においては,使用者は,その費用で必要な療養を行い,又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」と規定していますが,労災保険の給付は労働基準法上の災害補償に代わるものといえますから,労働者が労働災害補償保険法による療養補償給付を受けていた場合にも「第75条の規定によって補償を受ける労働者」にあたり,使用者は打切補償をして労働基準法19条の解雇制限を外すことができると解されています。

 

また,療養開始後3年を経過した日に傷病補償年金を受けている場合やその日以降に労災保険の傷病補償給付を受けることになった場合には打切補償をしたものとみなされますので(労働災害補償保険法19条),その場合にも労働基準法19条の解雇制限はなくなります。

 

(2)やむを得ない事由により事業の継続が不可能になった場合

天災事変その他やむを得ない事由の為に事業の継続が不可能になった場合に労働基準法19条の解雇制限はなくなります(労働基準法19条1項但書後段)。

その事由について行政官庁の認定を受けなければなりません(労働基準法19条2項)。

 

二 解雇権濫用規制

労働基準法19条の解雇制限の適用がなくなった場合であっても,労働契約法16条の解雇権濫用規制の適用はありますので,解雇が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合には解雇権の濫用にあたり無効となります。

労働者が労務を提供できないことは解雇理由となり得ますが,使用者が復帰支援をする,配置転換で対応する等解雇を回避するための努力をしなかった場合には解雇権の濫用にあたる可能性があります。

 

労働者の業務外の負傷・病気(私傷病)と解雇

2017-06-29

労働者が業務外で負傷や病気をして働けなくなった場合,使用者はその労働者を解雇することができるでしょうか?

 

一 私傷病により労務を提供できなくなったことによる解雇

労働者が業務と無関係な負傷や病気により労務を提供することができなくなった場合には,業務上災害による療養中の解雇制限(労働基準法19条1項)の適用はありませんので,使用者は労働者を解雇することができます。

もっとも,解雇権濫用規制(労働契約法16条)がありますので,早期回復の見込みがあるのに解雇した場合や,休職制度があるにもかかわらず,休職させず解雇した場合には,解雇権の濫用にあたり解雇が無効となるおそれがあります。

回復の見込みがなく,就労が不可能であることが明らかである場合には,休職させずに解雇しても解雇権の濫用とはならないでしょうが,後述の傷病休職制度がある場合には,いきなり解雇するのではなく,まずは休職させたほうが,トラブルを避ける意味で無難といえます。

また,傷病休職制度がない場合であっても,同程度の期間は労働者の回復を待ったほうが無難といえます。

 

二 傷病休職

1 休職とは

休職とは,労働者に労務への従事が不能または不適当な事由がある場合に,使用者がその労働者に対し,労働契約関係は維持しつつも労務への従事を免除または禁止することをいいます。

休職制度は,法令の規定に基づくものではありませんが,就業規則や労働協約に基づいて企業がもうけているものです。

 

休職の種類には,傷病休職(業務外の傷病による欠勤の場合),事故欠勤休職(傷病以外の自己都合による欠勤の場合),起訴休職(刑事事件で起訴された場合)等があります。

 

2 傷病休職とは

業務外の傷病による長期欠勤が一定期間に及んだ場合,使用者は労働者に休職を命じることができます。

労働者が休職期間中に傷病が治癒し就労可能となれば休職は終了し復職しますが,治癒せずに休職期間満了となれば自然退職または解雇となります。

 

この制度を傷病休職といい,解雇の猶予を目的としています。

 

3 傷病期間中の賃金

傷病休職中は,労務の提供がなされていませんし,使用者の責めに帰すべき事由もないので,特段の定めがない限り賃金は支払われません。

ただし,健康保険に加入していれば傷病手当金の支給はあります。

 

4 休職期間

休職期間の長さは就業規則等の定めによりますが,勤続年数,傷病の性質,企業の規模等によって異なるのが通常です。

 

5 自然退職と解雇

休職期間が満了しても治癒しない場合には,自然退職または解雇となります。

 解雇の場合には解雇予告等の解雇規制がありますが,自然退職の場合には当然に労働契約が終了しますので解雇規制の適用はありません。

そのため,使用者の立場からすれば,自然退職にしたほうがトラブルになりにくいといえるでしょう。

 

6 治癒したといえるかどうか

休職期間が満了するまでに治癒しないと自然退職または解雇となりますので,傷病休職では「治癒」したかどうかが大きな問題となります。

治癒したといえるには,原則として従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復していなければなりませんが,職種や職務の内容によっては,軽易な労務しかできない場合であっても,配置転換で対応できるときや,徐々に従前の職務を通常程度に行えるようになるときには,治癒したものと認められることがあります。

 

  また,治癒したかどうかは医師の診断によりますので,労働者は医師の診断を受けて,治癒を証明する診断書を提出します。使用者が医師を指定してきた場合,就業規則等の定めや合理的な理由があれば,労働者は指定医の診断を受けなければなりません。労働者が医師の診断を受けることに協力しない場合には,労働者に不利に判断されることがあります。

 

7 復職後に再び欠勤した場合

休職していた労働者が,復職後しばらくして再び体調を崩し,欠勤することがあります。

  就業規則等に,復職後一定期間内に同一または類似の事由で欠勤したり,労務提供ができなくなったりした場合には,復職を取消して休職させ,復職前の休職期間と通算する旨規定されていれば,使用者は,その規定に基づいて対応することになります。

そのような規定がない場合や一定期間経過後に欠勤した場合には,使用者は,改めて休職の手続をとるか,普通解雇を検討することになります。

【労働問題】解雇予告・解雇予告手当

2016-07-13

民法では,期間の定めのない雇用契約については,各当事者はいつでも解約の申入れをすることができ,申入れの日から2週間を経過することによって終了しますが(民法627条1項),解雇により労働者が被るダメージを考慮して,解雇予告・解雇予告手当の制度が設けられております。

 

一 解雇予告・解雇予告手当とは

使用者は,労働者を解雇しようとする場合,少なくとも30日前にその予告をしなければならず,30日前に予告をしない使用者は,30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。

予告の日数については,平均賃金を支払った日数分短縮することができます(労働基準法20条2項)。

ただし,①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合,②労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合には,解雇予告や解雇予告手当は必要なく,使用者は労働者を即時解雇することができますが(労働基準法20条1項但書),行政官庁(労働基準監督署長)の認定を受けることが必要となります(労働基準法20条3項,19条2項,労働基準法施行規則7条)。

 

二 解雇予告・解雇予告手当が不要である場合

以下の労働者については,解雇予告制度の適用はなく(労働基準法21条),解雇予告も解雇予告手当も必要ありません。

①日日雇い入れられる者

(1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)

②2か月以内の期間を定めて使用される者

(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)

③季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者

(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)

④試用期間中の者

(14日を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)

 

三 労働基準法20条に違反した場合

1 罰則

労働基準法20条に違反した場合には,処罰されます(労働基準法119条)。

 

2 解雇の効力

30日前の予告または解雇予告手当の支払をしないで行われた解雇については,即時解雇としての効力は生じませんが,使用者が即時解雇に固執する趣旨ではない限り,通知後30日を経過するか,解雇予告手当の支払をしたときに,解雇の効力が生じると解されております(相対的無効説)。

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