【労働問題】有期労働契約と雇止め

2017-08-28

非正規労働者の多くは使用者との間で有期労働契約を締結しております。使用者は,労働者と有期労働契約を締結することで,必要に応じて,契約を更新して雇用を継続することも,契約更新を拒絶すること(雇止め)で人員削減することもできますが,労働者の保護はどのように図られているのでしょうか。

 

一 有期労働契約

有期労働契約とは,期間の定めのある労働契約のことです。
有期労働契約では,期間が満了すると労働契約が終了しますが,契約を更新することで雇用が続いていきます。
正社員が無期労働契約(期間の定めのない労働契約)であるの対し,契約社員やアルバイト等の非正規労働者は有期労働契約であることが通常です。無期労働契約の正社員については,解雇権濫用法理等により解雇が制限されているのに対し,有期契約労働者については,期間が満了すれば労働契約が終了するので,使用者は,必要があれば契約を更新し,必要がなければ契約を終了させることで,労働者の数を調整することができますが,労働者からすれば不安定な立場に置かれることになります。
そのため,有期労働契約については労働基準法や労働契約法で規制されています。

 

二 契約期間

1 契約期間の上限

有期労働契約は,一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは,3年(高度の専門的知識等を有する労働者,60歳以上の労働者と契約する場合は,5年)を超える期間について締結することはできません(労働基準法14条1項)。
使用者が労働者を辞めさせないようにするため,長期間の有期労働契約を締結することがあるので,契約期間の上限が設けられています。

 

2 契約期間の下限

契約期間の下限について規定はありませんが,使用者は,有期労働契約について,その契約により労働者を使用する目的に照らして,必要以上に短い期間を定めることにより,契約を反復して更新することのないよう配慮しなければなりません(労働契約法17条2項)。
契約期間を短くし,更新を繰り返すことは,労働者からすれば,いつまで働けるのか分からず,地位が不安定になるからです。

 

三 契約期間中の解雇の制限

有期労働契約では,使用者は,やむを得ない事由がある場合でなければ,契約期間が満了するまで,労働者を解雇することはできません(労働契約法17条1項)。
「やむを得ない事由」とは,期間満了を待つことなく直ちに契約を解消せざるを得ない特別重大な事由がある場合であり,解雇権濫用規制における客観的合理的な理由・社会通念上の相当性よりも厳格に解されます。

 

四 無期労働契約への転換

1 無期労働契約への転換申込権

(1)転換の申込みができる場合

同一の使用者との間で締結された有期労働契約の契約期間が通算して5年を超える場合,労働者は使用者に対し,その契約期間中,無期労働契約(期間の定めのない労働契約)の締結を申し込むことができます。申込みがあったときは,使用者はこの申込みに承諾したものとみなされ(労働契約法18条1項),期間満了日の翌日から無期労働契約に転換されます。
なお,この規定は平成24年改正によるものであり,平成25年4月1日から施行されております。通算契約期間は施行日以後に開始する有期労働契約が対象となり,施行日前に開始する契約は対象となりません(改正附則2項)。

 

(2)転換申込ができる期間

契約期間中に通算契約期間が5年を超える場合,その期間中に無期転換の申込みをすることができます(労働契約法18条1項)。
契約期間中に転換の申込みをせず,契約が更新された場合には,更新された期間内に転換の申込みをすることができ,その期間満了日の翌日から無期労働契約に転換されます。

 

(3)転換後の労働条件

無期労働契約に転換された場合,契約期間以外の労働条件は,別段の定めがない限りは,従前と同じです(労働契約法18条1項)。

 

2 空白期間がある場合

ある有期労働契約と次の有期労働契約の間に空白期間があり,この空白期間が6か月(直前に満了した契約期間が1年未満であるときは,その2分の1の期間)以上である場合には,通算契約期間がリセットされ,一から通算契約期間がカウントされることになります(労働契約法18条2項)。

 

五 雇止めの制限

1 雇止め

雇止めとは,使用者が有期労働契約の更新を拒絶することです。
有期労働契約は期間満了により終了するものであり,契約を更新するかどうかは使用者の自由であるとも思われます。
しかし,有期労働契約が反復更新されており,実質的に無期労働契約と異ならない場合や,労働者が雇用継続を期待することに合理性がある場合にまで,使用者が無制約に更新を拒絶できるとすると,労働者があまりにも不安定な地位に置かれることになってしまいます。
そこで,以前は,これらの場合,更新拒絶に解雇権濫用法理を類推適用する判例法理(雇止め法理)により労働者の保護を図っていましたが,同法理は労働契約法で法定化されたため,現在は労働契約法19条により雇止めが制限されています。

 

2 労働契約法19条による雇止めの制限

①有期労働契約が過去に反復して更新されており,期間満了時に更新せず終了させることが無期労働契約の解雇による契約終了と社会通念上同視できると認められる場合,または,労働者が有期労働契約の期間満了時に契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合で

②労働者が,期間満了日まで更新の申込みをしたか,労働者が期間満了後遅滞なく契約の締結の申込みをしており

③使用者の申込みの拒絶が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないときは

使用者は労働者の申込みを承諾したものと見なされます(労働契約法19条)。

 

六 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

有期契約労働者の労働条件と無期契約労働者の労働条件との相違は,職務の内容(業務内容と責任の程度),職務の内容・配置の変更の範囲その他の事情を考慮して,不合理と認められるものであってはなりません(労働契約法20条)。

不合理と認められる場合には,その労働条件は無効になりますし,損害賠償請求ができると解されています。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2016 ながせ法律事務所 All Rights Reserved.