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【交通事故】遺族年金の損益相殺

2019-01-29

交通事故で亡くなった被害者の相続人が遺族年金を受給した場合,損害賠償額の算定にあたって遺族年金の受給額が控除されます。

 

一 遺族年金の受給による損益相殺

損益相殺とは,不法行為の被害者が,損害を被るのと同一の原因により利益を得た場合に,その利益の額を賠償すべき損害額から控除することをいいます。民法に損益相殺の規定はありませんが,公平の見地から認められています。

交通事故で亡くなった被害者の相続人が遺族年金を受給した場合には,交通事故により利益を受けたといえますので,損益相殺されることになります。

 

二 控除する遺族年金の範囲

損益相殺は損害が現実に補填されたといえる範囲に限られべきであることから,損害額から控除されるのは既に給付を受けた金額または支給を受けることが確定した金額に限られます。
未だ支給が確定していない金額については,給付を受けられるかどうか不確実ですので,控除されません。

 

三 控除される損害

損益相殺は給付と同一性のある損害について行われます。
そのため,遺族年金の受給により控除される損害は逸失利益に限られます。慰謝料等,他の損害項目からは控除されません。
また,控除される逸失利益は,年金収入の逸失利益に限らず,給与収入等他の逸失利益も含まれます。

 

四 控除される相続人の範囲

被害者の相続人の範囲と遺族年金の受給権者の範囲は異なりますので,被害者の相続人には遺族年金を受給できる人とそうでない人がいます。
遺族年金を受給した相続人の損害額から控除されますが,遺族年金を受給していない相続人の損害額からは控除されません。

【交通事故】年金の逸失利益性(死亡事故の損害)

2019-01-20

交通事故の被害者が亡くなり,生きていれば受給できた年金が亡くなったことにより受給できなくなることがあります。その場合,年金を受給することができなくなったことが損害と認められるか問題となります。

 

一 逸失利益性が認められる年金の種類

年金には様々な種類があり,逸失利益性が認められるものと,認められないものがあります。

 

1 逸失利益性が認められる年金

退職年金,老齢年金,障害年金等,被害者が保険料を拠出しているものについては,逸失利益性が認められます。

 

2 逸失利益性が否定される年金

障害年金の加給分や遺族年金等,被害者が保険料を拠出しておらず,社会保障的性格のものや一身専属的なものについては,逸失利益性が否定されています。

なお,遺族年金の受給により,支給が停止された年金がある場合には,遺族年金の逸失利益は認められませんが,支給が停止された年金について逸失利益を認める裁判例があります。

 

二 被害者が亡くなった時点で年金を受給していなかった場合

被害者が亡くなった時点で既に年金を受給している場合は年金の逸失利益性が認められることは問題ないですが,亡くなった時点で未だ年金を受給していない場合には,逸失利益性が認められるか問題となります。

 

1 年金の受給資格がある場合

被害者が亡くなった時点で未だ年金を受給していないが,受給資格があった場合には,将来年金を受給することができたといえますので,逸失失利益性が認められるものと解されます。

 

2 年金の受給資格がない場合

被害者が亡くなった時点で,年金の受給資格がなかった場合には,年金を受給できるか不確実であるので,逸失利益性が否定されるものと解されます。
もっとも,受給資格をみたす直前であった等,年金を受給できる蓋然性が高いときには,逸失利益性が認められることがあります。

 

三 年金の逸失利益の計算方法

死亡逸失利益は,一般的には,「基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」という計算式で算定しますが,年金の逸失利益については以下のように計算します。

 

1 基礎収入額

死亡時に既に年金を受給していた場合には,その受給額を基礎収入額として逸失利益を算定します。
死亡時に年金を受給していない場合には,受給できるときの見込額を基礎収入額として算定します。

 

2 生活費控除額

年金収入は生活費に当てられる割合が高くなるのが通常であると考えられますから,年金収入の逸失利益は稼働収入の逸失利益の場合と比較して生活費控除率を高くする傾向があります。

なお,被害者に稼働収入と年金収入がある場合には,①稼働収入の逸失利益と年金収入の逸失利益を分けて計算し,年金収入の生活費控除率を稼働収入の生活費控除率より高く計算する方法と,②稼働している期間と年金収入のみの期間を分けて,年金収入のみの期間の生活費控除率を高く算定する方法があります。

 

3 期間

逸失利益の算定において就労可能年数は原則として67歳までとされていますが,年金の場合は平均余命までの期間で計算します。

【交通事故】埼玉県で自転車保険加入が義務となりました。

2018-05-09

自転車事故には自動車事故の自賠責保険のような強制保険がありませんが,いくつかの自治体では自転車保険の加入が義務とされております。
埼玉県でも「埼玉県自転車の安全な利用の促進に関する条例」が改正され,平成30年4月1日より自転車損害保険等(自転車の利用によって他人の生命または身体を害した場合の損害を填補するための保険または共済)への加入が義務化されました。

埼玉県の条例では,自転車の利用者(未成年者の場合には保護者),事業者,自転車の貸付業者は自転車保険等に加入することが義務付けられました(11条)。
また,自転車の小売業者は自転車購入者に対し,学校は児童や生徒に対し,それぞれ自転車保険等の加入の有無を確認することや,未加入時には自転車保険等に関する情報を提供することが努力義務とされました(12条)。
加入義務に違反しても罰則があるわけではありませんが,義務化されたことで,今後は自転車事故の損害賠償について保険で対処されることが増えるものと思われます。

自転車保険等には,自転車向けの保険のほか,個人賠償責任保険(個人の日常生活において損害賠償責任を負った場合の保険)やTSマーク付帯保険等がありますし,事業者については施設所有者賠償責任保険があります。個人賠償責任保険は,自動車保険,火災保険,傷害保険等の特約として付いている場合が多いので,契約内容をよく確認しましょう。

自転車保険等は自動車保険ほど補償が充実しているわけではありませんが,保険料が安いですし,万一,事故が起こったときには非常に心強いので,義務化されているか否かにかかわらず,加入しておいたほうがよいでしょう。
また,加入するにあたっては,自転車事故でも損害が高額になることがありますので,限度額が高い保険に加入したほうがよいですし,示談代行特約のある保険であれば,保険会社が被害者との交渉を代行してくれますので,示談代行特約のある保険にしたほうがよいでしょう。

【交通事故】将来介護費

2018-02-26

交通事故被害者に重度の後遺障害があり,将来にわたって介護が必要な場合には,将来介護費が損害となります。

 

一 将来介護費

1 将来介護費とは

交通事故により被害者に介護を要する重度の後遺障害が残存した場合には,将来にわたり被害者の介護が必要となりますので,将来生じる介護費用も損害と認められます。
将来介護費が損害と認められる場合としては,自賠責保険後遺障害別表第1の1級(常に介護を要する後遺障害)または2級(随時介護を有する後遺障害)に該当する場合が多いですが,高次脳機能障害で介護が必要な場合等,後遺障害の内容や程度によっては,3級以下の後遺障害であっても認められることがあります。

 

2 介護費用の金額

介護費用の額は,職業付添人の場合は実費全額,近親者付添人の場合は1日8000円が目安とされていますが,後遺障害の内容や程度,介護の具体的な状況によって金額は増減します。

3 損害額の算定

将来介護費は一時金賠償方式が通常であり,損害額は被害者の平均余命までの期間にかかるであろう介護費用の額から中間利息を控除して計算します。
加害者側は,被害者が平均余命まで生存する可能性は少ないと主張して,介護を要する期間の長さを争ってくることがありますが,特別な事情がない限り,被害者は平均余命まで生存するものとして将来介護費を算定するのが通常です。

例 被害者の平均余命までの30年間,職業介護(日額2万円)をする場合
将来介護費=職業介護費(年額)×30年のライプニッツ係数
=2万円×365×15.3725=112,219,250円

また,現在は近親者介護をしている場合であっても,近親者が高齢になった場合には職業介護に切り替えることが想定されますので,近親者介護は近親者付添人が就労可能年齢である67歳になるまでとし,それ以降は職業介護によるものとして損害額を算定することが考えられます。

例 被害者の平均余命までの30年間,近親者が67歳となるまでの10年間は近親者介護(日額8000円)をし,それ以降の20年間は職業介護(日額2万円)をする場合

将来介護費=近親者介護費(年額)×10年のライプニッツ係数+職業介護費(年額)×(30年のライプニッツ係数-10年のライプニッツ係数)
=8000円×365×7.7217+2万円×365×(15.3725-7.7217)=22,547,364円+55,850,840円=78,398,204円

 

二 被害者が死亡した場合

後遺障害の逸失利益については,事故と別の原因で被害者が死亡した場合でも,事故の時点で死亡の原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り就労可能期間の認定上考慮しないと解されており(最高裁判所平成8年4月25日),死亡後の期間も損害となります(継続説)。
これに対し,交通事故被害者が事故のため介護を要する状態になった後に別の原因で死亡した場合には,死亡後の期間の介護費用を損害賠償請求することはできないと解されております(最高裁判所平成11年12月20日判決)。
逸失利益の場合と異なり介護費用の賠償は死亡時までに限定されておりますが(切断説),介護費用の賠償は被害者が現実に支出すべき費用を補填するものであり,死亡後は支出の必要がなくなるからです。

なお,将来介護費の一時金賠償を認める判決が確定した場合に,被害者が死亡したことにより,加害者が,請求異議の訴えをして将来の給付を免れたり,不当利得返還請求をして既払金の返還を求めたりすることができるかどうかは,別途問題となります。

 

三 定期金賠償方式

1 一時金賠償方式と定期金賠償方式

将来介護費の賠償は一時金賠償方式によることが通常ですが,定期金賠償方式によることもあります。
一時金賠償方式では平均余命まで生存するものとして将来介護費用を計算するため,被害者がいつまで生存するか不確実であるという問題点がありますが,定期金賠償方式では被害者が死亡するまで毎月一定額を支払うことになりますので,被害者の生存期間の不確実性は問題とならず,当事者にとって公平であるといえます。
また,定期金賠償を認める確定判決については,損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更がある場合には変更を求める訴えを提起することができますので(民事訴訟法117条),判決後に介護費用の額が不相当になった場合にも対応できます。

2 被害者が一時金賠償を求めている場合に定期金賠償とすることは許されるか

被害者が定期金賠償を求めている場合に定期金賠償を命じる判決をすることは基本的に問題ありません。
これに対し,被害者が一時金賠償を求めている場合に定期金賠償を命じる判決をすることは,処分権主義の観点や,被害者側からすれば賠償義務者の資力が将来どうなるか分からず,将来にわたって履行を受け続けることができるか不確実であるという不安があることから問題があります。
この点,最高裁判所昭和62年2月6日判決では,被害者が一時金賠償を求めている場合には,定期金賠償を命じる判決をすることは許されないとしていますので,被害者が将来介護費の一時金賠償を求めている場合に定期金賠償を命じる判決をすることは許されないと判断されることが多いといえます。
もっとも,一時金賠償方式では当事者間の公平を著しく欠く結果を招く危険がある等として,被害者が一時金賠償を求めているにもかかわらず定期金賠償を認めた裁判例(東京高裁平成25年3月14日判決)もあります。最高裁判所昭和62年2月6日判決は,民事訴訟法が改正される前のものであり,当時は民事訴訟法117条の規定はありませんでしたし,その後,介護費用の賠償は死亡時までとする最高裁判所平成11年12月20日判決が出されておりますので,今後はどのように判断されるか分かりません。

【交通事故】治療関係費

2018-02-19

交通事故で傷害を負った場合の主な損害としては,①積極損害(治療関係費,文書料その他の費用等),②休業損害,③傷害慰謝料(入通院慰謝料)がありますが,ここでは治療関係費について説明します。

 

一 治療費,入院費

治療費や入院費は原則として実費全額が損害となりますが,損害と認められるには,事故との間に相当因果関係がなければなりませんので,必要性・相当性がなければなりません。
必要性,相当性を欠く場合には損害と認められませんので,実際に治療費や入院費が発生していても,過剰診療(診療行為に医学的な必要性や合理性がない場合)や高額診療(診療報酬額が特段の事由がないにもかかわらず,通常の水準より著しく高い場合)であるとの理由で損害と認められないことがあります。

 

二   入院中の特別室使用料(個室使用料,差額ベッド代等)

入院中の特別室使用料(個室使用料,差額ベッド代等)は,医師の指示がある場合や,症状が重篤である,空室がない等特別の事情がある場合に損害と認められます。
入院中,通常の大部屋の利用でも治療が可能であるにも関わらず,被害者が好みで個室等の特別室を利用しても損害とは認められないでしょう。

 

三 医療行為以外の症状改善のための費用

整骨院,接骨院,鍼灸,マッサージの施術費,温泉療養費等,医師による医療行為以外の症状改善のための費用については,医師の指示がある場合や必要性・有効性・合理性・相当性がある場合には相当額が損害と認められます。

 

四 症状固定後の治療費

症状固定(治療しても症状が改善しない状態)後の治療費は,原則として損害とは認められません。
もっとも,症状の内容や程度,治療の内容によっては,症状の悪化を防ぐ等の必要性があれば,症状固定後のリハビリ費用等の治療費が損害と認められることがありますし,将来行われる予定の治療行為や手術の費用が損害と認められることもあります。

【交通事故】共同不法行為責任と求償

2018-02-08

交通事故の被害者が複数の加害者に対して共同不法行為責任を追求することができる場合,被害者は各加害者に損害賠償額の全額を請求することができますが,被害者に過失があるときには,過失相殺はどうなるのでしょうか。

 

一 共同不法行為責任と過失相殺

共同不法行為の場合の過失相殺の方法としては,①損害発生の原因となったすべての過失の割合(絶対的過失割合)に基づいて過失相殺をする方法(絶対的過失相殺)と,②各行為者と被害者ごとの過失割合に応じて,それぞれ過失相殺する方法(相殺的過失相殺)があります。どちらの方法によるかは,事案ごとに検討していくことになります。

 

二 絶対的過失相殺

1 絶対的過失相殺が認められる場合

複数の加害者の過失と被害者の過失が競合する一つの交通事故において,交通事故の原因となったすべての過失割合(絶対的過失割合)を認定することができるときには,絶対的過失相殺の方法がとられます(最判平成15年7月11日)。
絶対的過失割合が認定できる場合としては,三者間で起こった交通事故など,複数当事者間に同一場所で同時に発生した交通事故が考えられます。

例えば,被害者の損害額が1000万円で,絶対的過失割合が,被害者:加害者A:加害者B=1:1:2の場合,被害者の絶対的過失割合は2割5分(=1÷(1+1+2))となり,2割5分の過失相殺がなされますので,被害者は,加害者AとBの双方に対し750万円(=1000万円×(1-0.25))の損害賠償請求をすることができます。

 

2 求償

公平の観点から,共同不法行為者の一人が被害者の損害の全部または一部を賠償した場合には,自分の負担部分を超えて支払った額について他の共同不法行為者に求償することができると解されています。
先の例では,加害者Aと加害者Bの過失割合は1:2であり,Aの負担額は250万円(=750万円×1/3)となりますので,Aが被害者に750万円を支払った場合には,AはBに500万円(=750万円-250万円)を求償することができます。

 

三 相対的過失相殺

1 相対的過失相殺が認められる場合

複数の行為について共同不法行為が成立しても,一つの事故とはいえず,絶対的過失割合が認定できない場合には,相対的過失相殺の方法がとられます。
判例では,交通事故と医療過誤が競合し共同不法行為にあたる事案について相対的過失相殺の方法が採用されています(最判平成13年3月13日)。

例えば,被害者の損害額が1000万円で,被害者と各加害者の過失割合が,被害者:加害者A=2:8,被害者:加害者B=4:6の場合,加害者Aの損害賠償債務については2割の過失相殺がされて800万円(=1000万円×(1-0.2))となるのに対し,加害者Bの損害賠償債務については4割の過失相殺がされて600万円(=1000万円×(1-0.4))となり,AとBの債務は600万円の範囲で不真正連帯債務となります。

 

2 求償

相対的過失相殺が行われる場合も,共同不法行為者の一人が不真正連帯債務となっている部分について自己の負担部分を超えて支払った場合には,他の共同不法行為者に求償することができます。
各共同不法行為者の負担割合については,被害者との過失割合の対比によるのではなく,各行為者の損害発生への寄与度によるものと思われます。
先の例で,例えば,加害者Aと加害者Bの負担割合が4:6だとした場合,Aの負担部分は240万円(=600万円×4/10)となりますので,Aが被害者に800万円(Aのみが負う部分200万円とA・Bの不真正連帯債務となる部分600万円)を支払ったときは,AはBに360万円(=600万円-240万円)を求償することができます。

【交通事故】傷害慰謝料(入通院慰謝料)

2018-01-12

交通事故で傷害を負った場合の主な損害としては,①積極損害(治療関係費,文書料その他の費用等),②休業損害,③傷害慰謝料(入通院慰謝料)がありますが,ここでは傷害慰謝料(入通院慰謝料)について説明します。

 

一 傷害慰謝料(入通院慰謝料)とは

傷害慰謝料は,受傷したことによる肉体的・精神的な苦痛や,治療のために入通院したことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。
傷害慰謝料の金額は基本的に入通院期間を基準に決まりますので,入通院慰謝料ともいいます。

 

二 自賠責保険基準

慰謝料は,1日につき4200円とされています。
慰謝料の対象となる日数は,被害者の傷害の態様,実治療日数その他を勘案して,治療期間の範囲内とされています。
基本的には,入院期間を含む実治療日数の2倍の日数(ただし,治療期間の範囲内)が対象日数となります。

 

三 裁判基準

裁判基準でも,基本的に入通院期間を基礎として慰謝料額が決まります。

赤い本の基準では,傷害の内容により別表Ⅰまたは別表Ⅱを使用し,各表の入通院期間に該当する金額が慰謝料の基準額となります。

別表Ⅰは通常の場合(別表Ⅱ以外の場合)です。
基本的に実際に入通院した期間を用いますが,被害者側の事情で入院期間を短縮した場合には慰謝料を増額したり,入院待機中や自宅療養の場合も入院期間とみることがありますし,通院が長期にわたる場合には症状,治療内容,通院頻度をふまえ,実通院日数を基に通院期間が修正されることがあります。また,傷害の部位・程度によって,慰謝料額が増額されることがあります。

別表Ⅱはむち打ち症で他覚的所見がない場合や軽い打撲や軽い挫創(傷)の場合です。
別表Ⅱの場合は別表Ⅰの場合より金額が低くなっています。別表Ⅱの場合も,通院が長期にわたるときには症状,治療内容,通院頻度をふまえ,実通院日数を基に通院期間が修正されることがあります。

 

【交通事故】後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)

2018-01-07

交通事故の被害者に後遺障害が残存する場合の損害として,①後遺障害逸失利益と②後遺障害慰謝料があります。ここでは後遺障害慰謝料について説明します。

 

一 後遺障害慰謝料とは

後遺障害とは,これ以上治療しても症状の改善が望めない状態になったとき(症状固定時)に残存する障害のことであり,後遺障害慰謝料とは後遺障害による精神的損害に対する損害賠償のことです。
自賠責保険には後遺障害等級認定制度があり,後遺障害慰謝料の額は,基本的に自賠責保険で認定された後遺障害等級認定を基に決まります。

 

二 近親者の慰謝料

民法711条は「他人の生命を侵害した者は,被害者の父母,配偶者及び子に対しては,その財産権が侵害されなかった場合にはおいても,損害の賠償をしなければならない。」と規定していますが,被害者が死亡していない場合であっても,死亡した場合と比肩すべき精神的苦痛を被ったと認められるときは,民法709条,710条により近親者に固有の慰謝料請求権が認められると解されています。
そのため,被害者が後遺障害を負った場合にも,1級,2級等介護を要するような重度の後遺障害の場合には,近親者に固有の慰謝料請求権が認められることがあります。

 

三 自賠責基準

自賠責保険の支払基準では,後遺障害に対する慰謝料等の額は,認定された等級に応じて以下のように定められています。

 

1 自動車損害賠償法施行令別表第1(介護を要する後遺障害)の場合

1級1600万円,2級1163万円です。 被扶養者がいるときは,1級1800万円,2級1333万円です。

また,初期費用等として,1級の場合は500万円,2級の場合は250万円が加算されます。

 

2 自動車損害賠償法施行令別表第2(別表第1以外の後遺障害)の場合

1級1100万円,2級958万円,3級829万円,4級712万円,5級599万円,6級498万円,7級409万円,8級324万円,9級245万円,10級187万円,11級135万円,12級93万円,13級57万円,14級32万円です。
被扶養者がいるときは,1級1300万円,2級1128万円,3級973万円です。

 

四 裁判基準

裁判基準でも,自賠責保険で認定された後遺障害等級を基に後遺障害慰謝料額が決まるのが通常です。
ただし,裁判所は,自賠責保険の等級認定に拘束されず,独自に等級認定することができますので,訴訟では自賠責保険で認定された等級とは異なる等級が認定されることがあります。

赤い本の基準では,被害者本人の後遺症慰謝料は,1級2800万円,2級2370万円,3級,1990万円,4級1670万円,5級1400万円,6級1180万円,7級1000万円,8級830万円,9級690万円,10級550万円,11級420万円,12級290万円,13級180万円,14級110万円が基準とされています。また,1級や2級等の重度の後遺障害の場合には,別途,近親者の慰謝料請求が認められるとしていますが,慰謝料額については基準は定められていません。

慰謝料額は被扶養者の数が多い場合や加害者が悪質な場合には増額されることがありますし,逸失利益の算定が困難または不可能な場合や将来の手術費の算定が困難または不可能な場合には慰謝料で考慮されることがあります。
また,14級に至らない後遺症がある場合でも慰謝料が認められることがありますし,後遺障害の等級が認定されているけれども,より上級の等級に至らない場合には,症状によっては認定等級の慰謝料額に相当額が加算されることがあります。

【交通事故】被害者が死亡した場合の損害 死亡慰謝料

2017-12-21

交通事故で亡くなった場合の損害としては,主に①逸失利益,②慰謝料,③葬儀費用がありますが,ここでは死亡慰謝料について説明します。

 

一 死亡慰謝料

慰謝料とは,不法行為によって生じた精神的損害に対する損害賠償のことです。民法710条は財産以外の損害についても賠償請求できるとしておりますので,精神的損害についても賠償請求することができます。

死亡慰謝料は,被害者が死亡したことによる慰謝料のことであり,被害者本人の慰謝料と遺族固有の慰謝料があります。

 

1 被害者本人の慰謝料

慰謝料請求権は被害者の死亡によって当然に発生し,これを放棄,免除する等の特別の事情がなければ,被害者の相続人が相続するものと解されています。

 

2 遺族固有の慰謝料

民法711条は「他人の生命を侵害した者は,被害者の父母,配偶者及び子に対しては,その財産権が侵害されなかった場合にはおいても,損害の賠償をしなければならない。」と規定しており,被害者が死亡した場合,被害者の父母,配偶者,子は固有の慰謝料請求をすることができます。
また,民法711条所定の者以外の者(内縁配偶者,兄弟姉妹,祖父母,孫等)であっても,被害者との間に民法711条所定の者と実質的に同視できる身分関係があり,被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者については,民法711条の類推適用により,固有の慰謝料請求ができると解されています。固有の慰謝料が認められるかどうかは,同居の状況,扶養の状況,事故の重大性・悪質性等の具体的な事情を総合考慮して判断されます。

 

二 自賠責基準

自賠責保険の支払基準では,
死亡者本人の慰謝料は350万円
遺族の慰謝料については,請求権者を被害者の父母,配偶者,子とし,請求権者が1人であれば550万円,2人であれば650万円,3人以上であれば750万円とされており,被害者に被扶養者がいれば200万円を加算する
とされています。

 

三 裁判基準

裁判基準(いわゆる赤い本の基準)では,死亡慰謝料について,
一家の支柱の場合(被害者の世帯が主として被害者の収入によって生計を維持している場合)は2800万円
母親,配偶者の場合は2500万円
その他の場合(独身,子供,幼児等)は2000万円から2500万円
が基準とされています。
上記の金額は被害者本人及び遺族の慰謝料を合わせた金額です。
また,上記金額は
一応の目安であり,具体的事情により金額は増減するものとされています。
具体的な事情としては,扶養家族の人数や加害者の悪質性等が考慮されます。

【交通事故】自賠責保険と任意保険との関係

2017-12-06

自動車保険には自賠責保険と任意保険がありますが,どのような関係にあるでしょうか。

 

一 自賠責保険と任意保険

自賠責保険は,すべての自動車について加入が義務づけられている強制保険であり,自動車の運行によって他人の生命・身体を害した場合に加害者が損害賠償責任を負うことによる損害を填補する保険です。
これに対し,任意保険は,任意に加入する保険であり,自賠責保険では填補されない損害を補償する保険です。任意保険では人損事故に限らず,対物事故も対象となりますし(対人賠償責任保険,対物賠償責任保険),自損事故保険,無保険車傷害保険,搭乗者傷害保険,人身傷害補償保険,弁護士費用保険,車両保険等,様々な特約があります。

人損事故の損害賠償責任保険としては,自賠責保険と任意保険(対人賠償責任保険)がありますが,対人賠償責任保険では自賠責保険で支払われる金額を超える金額のみ支払われます。そのため,対人賠償責任保険は自賠責保険の上積み保険または上乗せ保険であるといわれています。
ただし,自賠責保険では,運行によって他人の生命又は身体を害した事故が対象となるのに対し,対人賠償責任保険では,自動車の所有,使用または管理に起因して他人の生命または身体を害した事故が対象となり,「所有,使用または管理」は「運行」よりも広いので,自賠責保険では支払われない場合であっても,対人賠償責任保険で支払われることがあります。

 

二 一括払制度

1 一括払制度とは

一括払制度とは,対人賠償責任保険の保険会社が,被害者に対し自賠責保険から支払われる金額を含めて損害賠償金額の全額を一括して支払ってから,自賠責保険支払分を自賠責保険会社に請求する制度です。
自賠責保険と任意保険から個別に支払を受けなければならないとすると手続が煩雑になりますので,一括払制度により,任意保険会社が自賠責保険分も含めて支払をすることができます。
なお,自賠責保険と任意保険で保険会社が異なる場合でも一括払制度を利用することはできます。

 

2 被害者にとってのメリット

一括払制度により,加害者の任意保険会社が医療機関に被害者の治療費を直接支払ってくれます。
また,示談代行制度により任意保険会社は加害者に代わって被害者と示談交渉をすることができますので,被害者は任意保険会社と示談交渉することで,任意保険会社から自賠責保険分も含めて支払を受けることができます。

 

3 一括払制度を利用しない場合

被害者は,一括払制度を利用しないこともできます。
その場合には,被害者は,自賠責保険に被害者請求をしてから,不足分について加害者の任意保険会社から支払を受けることができます。

 

三 事前認定

任意保険会社は,一括払いをする場合,自賠責保険から支払われるのか知るため,加害者の損害賠償責任の有無,重過失減額の有無,後遺障害の有無・程度(等級)について,損害保険料算出機構の下部組織である自賠責調査事務所に事前認定をしてもらうことができます。
事前認定の結果を基に,任意保険会社は被害者と示談交渉を行いますし,被害者も事前認定された後遺障害の等級を基に損害額を計算し,損害賠償請求をすることができます。
また,被害者は,事前認定の結果に不服がある場合には,任意保険会社宛てに異議申立てをすることができます。

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