Archive for the ‘交通事故’ Category

【交通事故】埼玉県で自転車保険加入が義務となりました。

2018-05-09

自転車事故には自動車事故の自賠責保険のような強制保険がありませんが,いくつかの自治体では自転車保険の加入が義務とされております。
埼玉県でも「埼玉県自転車の安全な利用の促進に関する条例」が改正され,平成30年4月1日より自転車損害保険等(自転車の利用によって他人の生命または身体を害した場合の損害を填補するための保険または共済)への加入が義務化されました。

埼玉県の条例では,自転車の利用者(未成年者の場合には保護者),事業者,自転車の貸付業者は自転車保険等に加入することが義務付けられました(11条)。
また,自転車の小売業者は自転車購入者に対し,学校は児童や生徒に対し,それぞれ自転車保険等の加入の有無を確認することや,未加入時には自転車保険等に関する情報を提供することが努力義務とされました(12条)。
加入義務に違反しても罰則があるわけではありませんが,義務化されたことで,今後は自転車事故の損害賠償について保険で対処されることが増えるものと思われます。

自転車保険等には,自転車向けの保険のほか,個人賠償責任保険(個人の日常生活において損害賠償責任を負った場合の保険)やTSマーク付帯保険等がありますし,事業者については施設所有者賠償責任保険があります。個人賠償責任保険は,自動車保険,火災保険,傷害保険等の特約として付いている場合が多いので,契約内容をよく確認しましょう。

自転車保険等は自動車保険ほど補償が充実しているわけではありませんが,保険料が安いですし,万一,事故が起こったときには非常に心強いので,義務化されているか否かにかかわらず,加入しておいたほうがよいでしょう。
また,加入するにあたっては,自転車事故でも損害が高額になることがありますので,限度額が高い保険に加入したほうがよいですし,示談代行特約のある保険であれば,保険会社が被害者との交渉を代行してくれますので,示談代行特約のある保険にしたほうがよいでしょう。

【交通事故】将来介護費

2018-02-26

交通事故被害者に重度の後遺障害があり,将来にわたって介護が必要な場合には,将来介護費が損害となります。

 

一 将来介護費

1 将来介護費とは

交通事故により被害者に介護を要する重度の後遺障害が残存した場合には,将来にわたり被害者の介護が必要となりますので,将来生じる介護費用も損害と認められます。
将来介護費が損害と認められる場合としては,自賠責保険後遺障害別表第1の1級(常に介護を要する後遺障害)または2級(随時介護を有する後遺障害)に該当する場合が多いですが,高次脳機能障害で介護が必要な場合等,後遺障害の内容や程度によっては,3級以下の後遺障害であっても認められることがあります。

 

2 介護費用の金額

介護費用の額は,職業付添人の場合は実費全額,近親者付添人の場合は1日8000円が目安とされていますが,後遺障害の内容や程度,介護の具体的な状況によって金額は増減します。

3 損害額の算定

将来介護費は一時金賠償方式が通常であり,損害額は被害者の平均余命までの期間にかかるであろう介護費用の額から中間利息を控除して計算します。
加害者側は,被害者が平均余命まで生存する可能性は少ないと主張して,介護を要する期間の長さを争ってくることがありますが,特別な事情がない限り,被害者は平均余命まで生存するものとして将来介護費を算定するのが通常です。

例 被害者の平均余命までの30年間,職業介護(日額2万円)をする場合
将来介護費=職業介護費(年額)×30年のライプニッツ係数
=2万円×365×15.3725=112,219,250円

また,現在は近親者介護をしている場合であっても,近親者が高齢になった場合には職業介護に切り替えることが想定されますので,近親者介護は近親者付添人が就労可能年齢である67歳になるまでとし,それ以降は職業介護によるものとして損害額を算定することが考えられます。

例 被害者の平均余命までの30年間,近親者が67歳となるまでの10年間は近親者介護(日額8000円)をし,それ以降の20年間は職業介護(日額2万円)をする場合

将来介護費=近親者介護費(年額)×10年のライプニッツ係数+職業介護費(年額)×(30年のライプニッツ係数-10年のライプニッツ係数)
=8000円×365×7.7217+2万円×365×(15.3725-7.7217)=22,547,364円+55,850,840円=78,398,204円

 

二 被害者が死亡した場合

後遺障害の逸失利益については,事故と別の原因で被害者が死亡した場合でも,事故の時点で死亡の原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り就労可能期間の認定上考慮しないと解されており(最高裁判所平成8年4月25日),死亡後の期間も損害となります(継続説)。
これに対し,交通事故被害者が事故のため介護を要する状態になった後に別の原因で死亡した場合には,死亡後の期間の介護費用を損害賠償請求することはできないと解されております(最高裁判所平成11年12月20日判決)。
逸失利益の場合と異なり介護費用の賠償は死亡時までに限定されておりますが(切断説),介護費用の賠償は被害者が現実に支出すべき費用を補填するものであり,死亡後は支出の必要がなくなるからです。

なお,将来介護費の一時金賠償を認める判決が確定した場合に,被害者が死亡したことにより,加害者が,請求異議の訴えをして将来の給付を免れたり,不当利得返還請求をして既払金の返還を求めたりすることができるかどうかは,別途問題となります。

 

三 定期金賠償方式

1 一時金賠償方式と定期金賠償方式

将来介護費の賠償は一時金賠償方式によることが通常ですが,定期金賠償方式によることもあります。
一時金賠償方式では平均余命まで生存するものとして将来介護費用を計算するため,被害者がいつまで生存するか不確実であるという問題点がありますが,定期金賠償方式では被害者が死亡するまで毎月一定額を支払うことになりますので,被害者の生存期間の不確実性は問題とならず,当事者にとって公平であるといえます。
また,定期金賠償を認める確定判決については,損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更がある場合には変更を求める訴えを提起することができますので(民事訴訟法117条),判決後に介護費用の額が不相当になった場合にも対応できます。

2 被害者が一時金賠償を求めている場合に定期金賠償とすることは許されるか

被害者が定期金賠償を求めている場合に定期金賠償を命じる判決をすることは基本的に問題ありません。
これに対し,被害者が一時金賠償を求めている場合に定期金賠償を命じる判決をすることは,処分権主義の観点や,被害者側からすれば賠償義務者の資力が将来どうなるか分からず,将来にわたって履行を受け続けることができるか不確実であるという不安があることから問題があります。
この点,最高裁判所昭和62年2月6日判決では,被害者が一時金賠償を求めている場合には,定期金賠償を命じる判決をすることは許されないとしていますので,被害者が将来介護費の一時金賠償を求めている場合に定期金賠償を命じる判決をすることは許されないと判断されることが多いといえます。
もっとも,一時金賠償方式では当事者間の公平を著しく欠く結果を招く危険がある等として,被害者が一時金賠償を求めているにもかかわらず定期金賠償を認めた裁判例(東京高裁平成25年3月14日判決)もあります。最高裁判所昭和62年2月6日判決は,民事訴訟法が改正される前のものであり,当時は民事訴訟法117条の規定はありませんでしたし,その後,介護費用の賠償は死亡時までとする最高裁判所平成11年12月20日判決が出されておりますので,今後はどのように判断されるか分かりません。

【交通事故】治療関係費

2018-02-19

交通事故で傷害を負った場合の主な損害としては,①積極損害(治療関係費,文書料その他の費用等),②休業損害,③傷害慰謝料(入通院慰謝料)がありますが,ここでは治療関係費について説明します。

 

一 治療費,入院費

治療費や入院費は原則として実費全額が損害となりますが,損害と認められるには,事故との間に相当因果関係がなければなりませんので,必要性・相当性がなければなりません。
必要性,相当性を欠く場合には損害と認められませんので,実際に治療費や入院費が発生していても,過剰診療(診療行為に医学的な必要性や合理性がない場合)や高額診療(診療報酬額が特段の事由がないにもかかわらず,通常の水準より著しく高い場合)であるとの理由で損害と認められないことがあります。

 

二   入院中の特別室使用料(個室使用料,差額ベッド代等)

入院中の特別室使用料(個室使用料,差額ベッド代等)は,医師の指示がある場合や,症状が重篤である,空室がない等特別の事情がある場合に損害と認められます。
入院中,通常の大部屋の利用でも治療が可能であるにも関わらず,被害者が好みで個室等の特別室を利用しても損害とは認められないでしょう。

 

三 医療行為以外の症状改善のための費用

整骨院,接骨院,鍼灸,マッサージの施術費,温泉療養費等,医師による医療行為以外の症状改善のための費用については,医師の指示がある場合や必要性・有効性・合理性・相当性がある場合には相当額が損害と認められます。

 

四 症状固定後の治療費

症状固定(治療しても症状が改善しない状態)後の治療費は,原則として損害とは認められません。
もっとも,症状の内容や程度,治療の内容によっては,症状の悪化を防ぐ等の必要性があれば,症状固定後のリハビリ費用等の治療費が損害と認められることがありますし,将来行われる予定の治療行為や手術の費用が損害と認められることもあります。

【交通事故】共同不法行為責任と求償

2018-02-08

交通事故の被害者が複数の加害者に対して共同不法行為責任を追求することができる場合,被害者は各加害者に損害賠償額の全額を請求することができますが,被害者に過失があるときには,過失相殺はどうなるのでしょうか。

 

一 共同不法行為責任と過失相殺

共同不法行為の場合の過失相殺の方法としては,①損害発生の原因となったすべての過失の割合(絶対的過失割合)に基づいて過失相殺をする方法(絶対的過失相殺)と,②各行為者と被害者ごとの過失割合に応じて,それぞれ過失相殺する方法(相殺的過失相殺)があります。どちらの方法によるかは,事案ごとに検討していくことになります。

 

二 絶対的過失相殺

1 絶対的過失相殺が認められる場合

複数の加害者の過失と被害者の過失が競合する一つの交通事故において,交通事故の原因となったすべての過失割合(絶対的過失割合)を認定することができるときには,絶対的過失相殺の方法がとられます(最判平成15年7月11日)。
絶対的過失割合が認定できる場合としては,三者間で起こった交通事故など,複数当事者間に同一場所で同時に発生した交通事故が考えられます。

例えば,被害者の損害額が1000万円で,絶対的過失割合が,被害者:加害者A:加害者B=1:1:2の場合,被害者の絶対的過失割合は2割5分(=1÷(1+1+2))となり,2割5分の過失相殺がなされますので,被害者は,加害者AとBの双方に対し750万円(=1000万円×(1-0.25))の損害賠償請求をすることができます。

 

2 求償

公平の観点から,共同不法行為者の一人が被害者の損害の全部または一部を賠償した場合には,自分の負担部分を超えて支払った額について他の共同不法行為者に求償することができると解されています。
先の例では,加害者Aと加害者Bの過失割合は1:2であり,Aの負担額は250万円(=750万円×1/3)となりますので,Aが被害者に750万円を支払った場合には,AはBに500万円(=750万円-250万円)を求償することができます。

 

三 相対的過失相殺

1 相対的過失相殺が認められる場合

複数の行為について共同不法行為が成立しても,一つの事故とはいえず,絶対的過失割合が認定できない場合には,相対的過失相殺の方法がとられます。
判例では,交通事故と医療過誤が競合し共同不法行為にあたる事案について相対的過失相殺の方法が採用されています(最判平成13年3月13日)。

例えば,被害者の損害額が1000万円で,被害者と各加害者の過失割合が,被害者:加害者A=2:8,被害者:加害者B=4:6の場合,加害者Aの損害賠償債務については2割の過失相殺がされて800万円(=1000万円×(1-0.2))となるのに対し,加害者Bの損害賠償債務については4割の過失相殺がされて600万円(=1000万円×(1-0.4))となり,AとBの債務は600万円の範囲で不真正連帯債務となります。

 

2 求償

相対的過失相殺が行われる場合も,共同不法行為者の一人が不真正連帯債務となっている部分について自己の負担部分を超えて支払った場合には,他の共同不法行為者に求償することができます。
各共同不法行為者の負担割合については,被害者との過失割合の対比によるのではなく,各行為者の損害発生への寄与度によるものと思われます。
先の例で,例えば,加害者Aと加害者Bの負担割合が4:6だとした場合,Aの負担部分は240万円(=600万円×4/10)となりますので,Aが被害者に800万円(Aのみが負う部分200万円とA・Bの不真正連帯債務となる部分600万円)を支払ったときは,AはBに360万円(=600万円-240万円)を求償することができます。

【交通事故】傷害慰謝料(入通院慰謝料)

2018-01-12

交通事故で傷害を負った場合の主な損害としては,①積極損害(治療関係費,文書料その他の費用等),②休業損害,③傷害慰謝料(入通院慰謝料)がありますが,ここでは傷害慰謝料(入通院慰謝料)について説明します。

 

一 傷害慰謝料(入通院慰謝料)とは

傷害慰謝料は,受傷したことによる肉体的・精神的な苦痛や,治療のために入通院したことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。
傷害慰謝料の金額は基本的に入通院期間を基準に決まりますので,入通院慰謝料ともいいます。

 

二 自賠責保険基準

慰謝料は,1日につき4200円とされています。
慰謝料の対象となる日数は,被害者の傷害の態様,実治療日数その他を勘案して,治療期間の範囲内とされています。
基本的には,入院期間を含む実治療日数の2倍の日数(ただし,治療期間の範囲内)が対象日数となります。

 

三 裁判基準

裁判基準でも,基本的に入通院期間を基礎として慰謝料額が決まります。

赤い本の基準では,傷害の内容により別表Ⅰまたは別表Ⅱを使用し,各表の入通院期間に該当する金額が慰謝料の基準額となります。

別表Ⅰは通常の場合(別表Ⅱ以外の場合)です。
基本的に実際に入通院した期間を用いますが,被害者側の事情で入院期間を短縮した場合には慰謝料を増額したり,入院待機中や自宅療養の場合も入院期間とみることがありますし,通院が長期にわたる場合には症状,治療内容,通院頻度をふまえ,実通院日数を基に通院期間が修正されることがあります。また,傷害の部位・程度によって,慰謝料額が増額されることがあります。

別表Ⅱはむち打ち症で他覚的所見がない場合や軽い打撲や軽い挫創(傷)の場合です。
別表Ⅱの場合は別表Ⅰの場合より金額が低くなっています。別表Ⅱの場合も,通院が長期にわたるときには症状,治療内容,通院頻度をふまえ,実通院日数を基に通院期間が修正されることがあります。

 

【交通事故】後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)

2018-01-07

交通事故の被害者に後遺障害が残存する場合の損害として,①後遺障害逸失利益と②後遺障害慰謝料があります。ここでは後遺障害慰謝料について説明します。

 

一 後遺障害慰謝料とは

後遺障害とは,これ以上治療しても症状の改善が望めない状態になったとき(症状固定時)に残存する障害のことであり,後遺障害慰謝料とは後遺障害による精神的損害に対する損害賠償のことです。
自賠責保険には後遺障害等級認定制度があり,後遺障害慰謝料の額は,基本的に自賠責保険で認定された後遺障害等級認定を基に決まります。

 

二 近親者の慰謝料

民法711条は「他人の生命を侵害した者は,被害者の父母,配偶者及び子に対しては,その財産権が侵害されなかった場合にはおいても,損害の賠償をしなければならない。」と規定していますが,被害者が死亡していない場合であっても,死亡した場合と比肩すべき精神的苦痛を被ったと認められるときは,民法709条,710条により近親者に固有の慰謝料請求権が認められると解されています。
そのため,被害者が後遺障害を負った場合にも,1級,2級等介護を要するような重度の後遺障害の場合には,近親者に固有の慰謝料請求権が認められることがあります。

 

三 自賠責基準

自賠責保険の支払基準では,後遺障害に対する慰謝料等の額は,認定された等級に応じて以下のように定められています。

 

1 自動車損害賠償法施行令別表第1(介護を要する後遺障害)の場合

1級1600万円,2級1163万円です。 被扶養者がいるときは,1級1800万円,2級1333万円です。

また,初期費用等として,1級の場合は500万円,2級の場合は250万円が加算されます。

 

2 自動車損害賠償法施行令別表第2(別表第1以外の後遺障害)の場合

1級1100万円,2級958万円,3級829万円,4級712万円,5級599万円,6級498万円,7級409万円,8級324万円,9級245万円,10級187万円,11級135万円,12級93万円,13級57万円,14級32万円です。
被扶養者がいるときは,1級1300万円,2級1128万円,3級973万円です。

 

四 裁判基準

裁判基準でも,自賠責保険で認定された後遺障害等級を基に後遺障害慰謝料額が決まるのが通常です。
ただし,裁判所は,自賠責保険の等級認定に拘束されず,独自に等級認定することができますので,訴訟では自賠責保険で認定された等級とは異なる等級が認定されることがあります。

赤い本の基準では,被害者本人の後遺症慰謝料は,1級2800万円,2級2370万円,3級,1990万円,4級1670万円,5級1400万円,6級1180万円,7級1000万円,8級830万円,9級690万円,10級550万円,11級420万円,12級290万円,13級180万円,14級110万円が基準とされています。また,1級や2級等の重度の後遺障害の場合には,別途,近親者の慰謝料請求が認められるとしていますが,慰謝料額については基準は定められていません。

慰謝料額は被扶養者の数が多い場合や加害者が悪質な場合には増額されることがありますし,逸失利益の算定が困難または不可能な場合や将来の手術費の算定が困難または不可能な場合には慰謝料で考慮されることがあります。
また,14級に至らない後遺症がある場合でも慰謝料が認められることがありますし,後遺障害の等級が認定されているけれども,より上級の等級に至らない場合には,症状によっては認定等級の慰謝料額に相当額が加算されることがあります。

【交通事故】被害者が死亡した場合の損害 死亡慰謝料

2017-12-21

交通事故で亡くなった場合の損害としては,主に①逸失利益,②慰謝料,③葬儀費用がありますが,ここでは死亡慰謝料について説明します。

 

一 死亡慰謝料

慰謝料とは,不法行為によって生じた精神的損害に対する損害賠償のことです。民法710条は財産以外の損害についても賠償請求できるとしておりますので,精神的損害についても賠償請求することができます。

死亡慰謝料は,被害者が死亡したことによる慰謝料のことであり,被害者本人の慰謝料と遺族固有の慰謝料があります。

 

1 被害者本人の慰謝料

慰謝料請求権は被害者の死亡によって当然に発生し,これを放棄,免除する等の特別の事情がなければ,被害者の相続人が相続するものと解されています。

 

2 遺族固有の慰謝料

民法711条は「他人の生命を侵害した者は,被害者の父母,配偶者及び子に対しては,その財産権が侵害されなかった場合にはおいても,損害の賠償をしなければならない。」と規定しており,被害者が死亡した場合,被害者の父母,配偶者,子は固有の慰謝料請求をすることができます。
また,民法711条所定の者以外の者(内縁配偶者,兄弟姉妹,祖父母,孫等)であっても,被害者との間に民法711条所定の者と実質的に同視できる身分関係があり,被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者については,民法711条の類推適用により,固有の慰謝料請求ができると解されています。固有の慰謝料が認められるかどうかは,同居の状況,扶養の状況,事故の重大性・悪質性等の具体的な事情を総合考慮して判断されます。

 

二 自賠責基準

自賠責保険の支払基準では,
死亡者本人の慰謝料は350万円
遺族の慰謝料については,請求権者を被害者の父母,配偶者,子とし,請求権者が1人であれば550万円,2人であれば650万円,3人以上であれば750万円とされており,被害者に被扶養者がいれば200万円を加算する
とされています。

 

三 裁判基準

裁判基準(いわゆる赤い本の基準)では,死亡慰謝料について,
一家の支柱の場合(被害者の世帯が主として被害者の収入によって生計を維持している場合)は2800万円
母親,配偶者の場合は2500万円
その他の場合(独身,子供,幼児等)は2000万円から2500万円
が基準とされています。
上記の金額は被害者本人及び遺族の慰謝料を合わせた金額です。
また,上記金額は
一応の目安であり,具体的事情により金額は増減するものとされています。
具体的な事情としては,扶養家族の人数や加害者の悪質性等が考慮されます。

【交通事故】自賠責保険と任意保険との関係

2017-12-06

自動車保険には自賠責保険と任意保険がありますが,どのような関係にあるでしょうか。

 

一 自賠責保険と任意保険

自賠責保険は,すべての自動車について加入が義務づけられている強制保険であり,自動車の運行によって他人の生命・身体を害した場合に加害者が損害賠償責任を負うことによる損害を填補する保険です。
これに対し,任意保険は,任意に加入する保険であり,自賠責保険では填補されない損害を補償する保険です。任意保険では人損事故に限らず,対物事故も対象となりますし(対人賠償責任保険,対物賠償責任保険),自損事故保険,無保険車傷害保険,搭乗者傷害保険,人身傷害補償保険,弁護士費用保険,車両保険等,様々な特約があります。

人損事故の損害賠償責任保険としては,自賠責保険と任意保険(対人賠償責任保険)がありますが,対人賠償責任保険では自賠責保険で支払われる金額を超える金額のみ支払われます。そのため,対人賠償責任保険は自賠責保険の上積み保険または上乗せ保険であるといわれています。
ただし,自賠責保険では,運行によって他人の生命又は身体を害した事故が対象となるのに対し,対人賠償責任保険では,自動車の所有,使用または管理に起因して他人の生命または身体を害した事故が対象となり,「所有,使用または管理」は「運行」よりも広いので,自賠責保険では支払われない場合であっても,対人賠償責任保険で支払われることがあります。

 

二 一括払制度

1 一括払制度とは

一括払制度とは,対人賠償責任保険の保険会社が,被害者に対し自賠責保険から支払われる金額を含めて損害賠償金額の全額を一括して支払ってから,自賠責保険支払分を自賠責保険会社に請求する制度です。
自賠責保険と任意保険から個別に支払を受けなければならないとすると手続が煩雑になりますので,一括払制度により,任意保険会社が自賠責保険分も含めて支払をすることができます。
なお,自賠責保険と任意保険で保険会社が異なる場合でも一括払制度を利用することはできます。

 

2 被害者にとってのメリット

一括払制度により,加害者の任意保険会社が医療機関に被害者の治療費を直接支払ってくれます。
また,示談代行制度により任意保険会社は加害者に代わって被害者と示談交渉をすることができますので,被害者は任意保険会社と示談交渉することで,任意保険会社から自賠責保険分も含めて支払を受けることができます。

 

3 一括払制度を利用しない場合

被害者は,一括払制度を利用しないこともできます。
その場合には,被害者は,自賠責保険に被害者請求をしてから,不足分について加害者の任意保険会社から支払を受けることができます。

 

三 事前認定

任意保険会社は,一括払いをする場合,自賠責保険から支払われるのか知るため,加害者の損害賠償責任の有無,重過失減額の有無,後遺障害の有無・程度(等級)について,損害保険料算出機構の下部組織である自賠責調査事務所に事前認定をしてもらうことができます。
事前認定の結果を基に,任意保険会社は被害者と示談交渉を行いますし,被害者も事前認定された後遺障害の等級を基に損害額を計算し,損害賠償請求をすることができます。
また,被害者は,事前認定の結果に不服がある場合には,任意保険会社宛てに異議申立てをすることができます。

【交通事故】自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)

2017-12-01

自動車保険には自賠責保険と任意保険がありますが,自賠責保険とはどのようなものでしょうか。

 

一 自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)とは

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)とは,自動車損害賠償責任保障法(自賠法)に基づいて契約が強制されている保険であり,自動車の運行によって他人を死傷させたことにより,加害者が被害者に対し法律上の損害賠償責任を負うことによる損害を填補するための保険です(自賠法5条,11条)。
自賠責保険とは別に自動車損害賠償責任共済(自賠責共済)もありますが,ほぼ同じものです。
自賠責保険は人身事故の被害者の保護を目的とするものであり,被害者保護の観点から,強制保険であること,免責事由や過失相殺が制限されていること,被害者請求ができること等の特徴があります。

 

二 自賠責保険により填補される損害

自賠法3条は「自己のために自動車を運行の用に供する者は,その運行によって他人の生命又は身体を害したときは,これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」と規定しており,自賠責保険は,この責任を負うことによる損害を填補するものです(自賠法11条,3条)。
自動車の運行によって他人の生命・身体を害した事故が対象となりますので,自損事故や物損事故は対象となりません。
また,加害者が①自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと,②被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと,③自動車に構造上の欠陥又は機能に障害がなかったことを証明したときには,加害者は責任を負いませんので(自賠法3条但書),被害者は自賠責保険から支払を受けることはできません。

 

三 強制保険

適用外自動車(自賠法10条)を除き,自動車を運行の用に供する場合には,自賠責保険か自賠責共済のいずれかと契約しなければなりません(自賠法5条)。契約は,自動車一両ごとに締結します(自賠法12条)。
契約していない自動車を運転すると処罰されます(自賠法86条の3)。

また,強制保険であることから,契約の解除は制限されていますし(自賠法20条の2),保険会社は契約の締結を拒否できません(自賠法24条)。

 

四 免責事由の制限

自賠責保険では,被害者保護の観点から免責事由が制限されており,重複契約の場合(自賠法82条の3)を除いては,保険契約者または被保険者の悪意によって生じた損害についてのみ免責されます(自賠法14条)。

 

五 請求方法

1 被保険者からの保険金請求(加害者請求)

被保険者は,被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度において,保険会社に対し保険金の支払を請求することができます(自賠法15条)。

 

2 被害者からの損害賠償額の請求(被害者請求)

被害者は,保険会社に対し,保険金額の限度において,損害賠償額の支払を請求することができます(自賠法16条1項)。

 

3 仮渡金の請求

損害賠償責任の有無が賠償額が確定しない場合であっても,被害者は,保険会社に対し,賠償額の一部を仮渡金として請求することができます(自賠法17条)。
仮渡金の額は,死亡の場合は290万円,傷害の場合は,傷害の内容に応じて,40万円,20万円,5万円です(自賠法施行令5条)。

 

六 支払額

保険金等の支払には支払基準があり,請求者には,支払基準で算定した金額が保険金額の限度で支払われます。
自賠責保険では損害賠償額の全額が支払われるわけではありませんので,不足分は加害者に損害賠償請求することになります。

 

1 支払基準

支払基準では,傷害による損害は①積極損害(治療関係費,文書料,その他の費用),②休業損害,③慰謝料,後遺障害による損害は①逸失利益,②慰謝料等,死亡による損害は①葬儀費,②逸失利益,③死亡本人の慰謝料,④遺族の慰謝料とし,それぞれの損害及び金額の算定についての基準を定めています。

 

2 保険金額(支払限度額)

自賠責保険の保険金額は,被害者一人につき,死亡による損害については3000万円,傷害による損害については120万円,介護の要する後遺障害による損害については1級4000万円,2級3000万円,それ以外の後遺障害による損害については1級3000万円,2級2590万円,3級2219万円,4級1889万円,5級1574万円,6級1296万円,7級1051万円,8級819万円 ,9級616万円,10級461万円,11級331万円,12級224万円,13級139万円,14級75万円です(自賠法施行令2条,別表1,2)。
傷害を負ってから死亡した場合の保険金額は傷害の120万円と死亡の3000万円となりますし,後遺障害がある場合の保険金額は傷害の120万円と後遺障害の等級に応じた金額になります。

 

3 減額される場合

(1)重過失減額

自賠責保険では,被害者保護の観点から過失相殺が制限されており,被害者に重大な過失がある場合に限り,損害額(損害額が保険金額以上となる場合には,保険金額)から減額されます。
傷害にかかるものについては,被害者の過失が7割以上ある場合には2割減額され,後遺障害または死亡にかかるものについては被害者の過失が7割以上8割未満の場合には2割,8割以上9割未満の場合には3割,9割以上10割未満の場合には5割減額されます。
なお,被害者の損害額が20万円以下の場合には減額されません。
被害者の過失が7割未満の場合には自賠責保険からの支払額は減額されませんので,自賠責保険の支払額が損害賠償額を上回ることがあります。

 

(2)受傷と死亡・後遺障害との因果関係が不明な場合の減額

被害者に既往症などがあり,死因や後遺障害発生原因が明らかでない場合など,受傷と死亡・後遺障害との間の因果関係の有無の判断が困難な場合には,死亡による損害・後遺障害による損害について損害額(損害額が保険金額以上となる場合には,保険金額)から5割減額されます。

 

七 損害調査

1 損害保険料算出機構の自賠責損害調査センターの損害調査

自賠責保険から支払われるかどうかは,損害保険料算出機構の自賠責損害調査センターの損害調査によります。
損害保険料算出機構の自賠責損害調査センターは,全国に地区本部と自賠責損害調査事務所を設置し,自賠責保険の損害調査を行っています。
損害調査では,自賠法上の請求権の存在,被保険者の賠償責任の有無,損害額の調査が行われます。
また,その中で後遺障害の等級認定も行われます。

 

2 損害調査の流れ

①請求者(加害者または被害者)は,保険会社に対し,自賠責保険の請求書等の必要書類を送ります。
②保険会社は,契約の存在や書類に不備がないことを確認し,自賠責損害調査事務所に書類を送付します。
③自賠責損害調査事務所が損害調査を行います。
特定事案(認定困難事案や異議申立事案)については自賠責保険審査会で審査が行われ,特定事案以外で自賠責損害調査事務所では判断が困難な事案については地区本部や本部で審査が行われます。
④自賠責損害調査事務所は保険会社に調査結果を報告します。
⑤保険会社は支払額を決定し,請求者に支払います。

 

3 調査結果や支払金額に不服がある場合

調査結果や支払金額に不服がある場合は,保険会社に異議申立てをすることができますし,自賠責保険・共済紛争処理機構に紛争処理申請を行うこともできます。

 

八 時効

1 加害者請求の時効期間

加害者請求権の消滅時効期間は以前は2年でしたが,平成22年4月1日以降は3年です(自賠法23条,保険法95条1項)。
加害者は被害者に損害賠償債務を履行した場合に保険会社に請求できますので,時効の起算点は,加害者が被害者に損害賠償債務を履行した日になります。

 

2 被害者請求の時効期間

被害者からの請求権の消滅時効期間は3年です(自賠法19条)。
以前は時効期間は2年であり,平成22年3月31日までに発生した事故の時効期間は2年でしたが,平成22年4月1日以降に発生した事故の時効期間は3年になります。
時効の起算点は,基本的には事故日ですが,後遺障害による損害については症状固定日,死亡による損害については死亡日です。
時効にかかるおそれがある場合には,保険会社に請求するか時効中断の手続を取りましょう。

【交通事故】物損 修理費

2017-11-24

交通事故により車両が損壊し,被害者が車両を修理した場合,被害者は修理費について損害賠償請求することが考えられますが,どのようなことが問題となるでしょうか。

 

一 どのような場合に修理費が損害と認められるのか

①技術的にも経済的にも修理ができる場合(全損ではない場合)には,②必要かつ相当な範囲で,修理費が損害と認められます。

 

1 全損ではないこと

技術的に修理ができない場合(物理的全損)や,技術的には修理できても,修理費用が車両の時価等を上回る場合(経済的全損)には全損と判断されます。
全損の場合には車両の時価額や買替費用が損害となり,修理費は損害とはなりません。

 

2 必要かつ相当な範囲であること

修理ができる場合であっても,必要かつ相当な範囲の修理費が損害と認められます。
修理費の全額が損害と認められるとは限りませんので注意しましょう。
例えば,塗装の範囲(全塗装が必要なのか,部分塗装で足りるのか)が問題となり,全塗装しても部分塗装の限度で損害と認められることがあります。
また,部品交換の必要性(部品交換が必要なのか,板金修理で足りるのか)が問題となり,部品を交換しても板金修理の限度で損害と認められることがあります。

 

二 未修理の場合でも請求できるか

車両の修理がなされていない場合であっても,現実に損傷を受けている以上,損害は既に発生しているといえます。
修理が必要な場合には,修理費相当額分,車両の価値が下落しているので,修理費相当額が損害に当たると考えられます。

 

三 所有権留保やリースの場合でも請求できるか

所有権留保されている車両やリースされている車両の場合には,車両の使用者(所有権留保付売買契約の買主,リース契約のユーザー)は所有者ではありませんが,修理費の損害賠償請求はできると考えられています。
使用者が修理をし,修理費を負担した場合には,損害賠償による代位の規定である民法422条の類推適用により,使用者は損害賠償請求権を代位取得し,損害賠償請求権を代位行使できると考えることができます。
また,未だ修理していない場合であっても,所有権留保の場合には実質的な所有権は買主にある,買主は担保価値を維持する義務がある等の理由で,リース契約の場合には使用者が修理義務を負っている等の理由で,民法709条により,使用者は修理費相当額の損害賠償請求ができると考えることができます。

 

四 修理費を損害賠償請求するにあたっての注意点

1 修理費の全額が損害と判断されるとは限りません

全損にあたる場合には車両の時価額等が損害となりますし,必要かつ相当な範囲を超える修理費は損害とは認められませんので,実際に車両の修理をしても,修理費の全額が損害と認められるとは限りません。
修理するのであれば,加害者側との間で修理の範囲,方法,金額を確認してから,修理したほうがよいでしょう。

 

2 車両の損傷状況を証拠に残しておく必要があります

加害者側が,交通事故の発生の有無,事故態様,車両の損傷箇所,修理の必要性・範囲等について争ってきている場合には,車両の損傷状況を確認する必要性がありますが,修理してしまうと車両の損傷状況が分からなくなってしまいます。
修理してから損害賠償請求する場合には,少なくとも修理前に車両の損傷個所の写真を撮影する等して損傷状況が分かるよう証拠に残しておくべきです。

 

3 代車を使用する場合

事故後,修理するまでの間に代車を使用した場合には,修理に必要な相当期間の代車使用料が損害と認められます。
相手方との交渉期間についても合理的な範囲であれば相当期間に含められますが,交渉が長引いた場合には,代車使用料の全額が損害と認められるとは限りませんので,早めに修理したほうがよいでしょう。

 

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