【交通事故】会社役員の休業損害、逸失利益

2021-10-15

交通事故被害者が会社役員の場合、休業損害や逸失利益はどのように算定するのでしょうか。

 

一 会社役員の基礎収入

休業損害は「基礎収入×休業期間」、後遺症逸失利益は「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」、死亡逸失利益は「基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」で計算しますので、休業侵害や逸失利益を算定するにあたって基礎収入を把握する必要があります。

 

被害者が給与所得者(会社従業員)の場合には給与額を基礎収入とするのが基本ですが、被害者が会社役員の場合には役員報酬額がそのまま基礎収入となるわけではありません。

 

役員報酬には労務対価部分と利益配当部分があるとされており、基礎収入となるのは労務対価部分であり、利益配当部分は基礎収入に含まれないと解されています。

 

二 労務対価部分と利益配当部分

役員報酬のうち、どの部分が労務対価部分で、どの部分が利益配当部分なのかについては、明確な基準があるわけではありません。

 

会社の規模、同族企業か否か、会社の利益状況、被害者である役員の地位・職務内容・年齢・役員報酬額、他の役員の報酬額や従業員の給与額との比較、事故後の報酬額の推移、同種企業との比較等の事情を総合考慮して、個別具体的に判断することになります。

事案によって、役員報酬全額が労務の対価だと判断され、役員報酬全額が基礎収入とされることもありますし、役員報酬に利益配当部分も含まれると判断され、役員報酬の何割かが基礎収入となることもあります。

また、労務対価部分の判断をするにあたっては、賃金センサスの平均賃金を参考とすることもあります。

 

例えば、大企業の雇われ役員の場合には役員報酬は労務対価と判断されやすいでしょう。これに対し、小規模な同族会社の親族役員の場合には役員報酬に利益配当部分が含まれると判断されやすいでしょう。

 

役員報酬が役職、職務内容、年齢からして高額な場合や他の役員の役員報酬や従業員の給与と比較して高額すぎる場合には役員報酬のうち相当な部分が利益配当部分にあたると判断されやすいでしょう。

また、名目だけの役員で職務を行っていない場合は、役員報酬は労務対価とはいえないでしょう。

 

また、休業したことにより役員報酬が支払われなかった場合には、支払われなかった役員報酬は労務対価と判断されやすいでしょう。

 

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