【交通事故】醜状障害

2021-11-25

交通事故の被害者に傷あとが残った場合、醜状障害として後遺障害が認定されるか問題となります。

また、醜状障害が後遺障害と認定された場合、被害者が損害賠償請求するにあたって、どのようなことが問題となるのでしょうか。

 

一 醜状障害とは

醜状障害は、症状固定後に残った傷あとのことです。

事故によって直接生じたものだけでなく、治療(処置や手術)によるものも含まれます。

 

醜状障害には、外貌の醜状、上肢下肢の露出面の醜状、日常露出しない部位の醜状があります。

 

二 醜状障害の後遺障害等級

1 外貌の醜状障害

「外貌」とは、頭部、顔面部、頸部のように、上肢及び下肢以外の日常露出する部分のことです。

 

外貌の醜状障害には、7級12号「外貌に著しい醜状を残すもの」、9級16号「外貌に相当程度の醜状を残すもの」、12級14号「外貌に醜状を残すもの」があります。

かつては男女で区別されていましたが、男女の区別はなくなりました。

 

どの等級に該当するかは、瘢痕の面積や線状痕の長さ等で判断されます。

なお、線状痕や瘢痕が複数ある場合、それらが隣接しまたは相まって一つの線状痕や瘢痕と同程度以上の醜状となる場合には、長さや面積を合計して評価されます。

 

また、後遺障害として認定されるには、人目につく程度以上のものであることが必要です。眉毛、頭髪等に隠れる部分は、醜状とは扱われません。

 

(1)7級12号「外貌に著しい醜状を残すもの」

原則として、①頭部に、てのひら大(指の部分は含みません。)以上の瘢痕または頭蓋骨のてのひら大以上の欠損、②顔面部に、鶏卵大面以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没、③頸部に、てのひら大以上の瘢痕がある場合で、いずれの場合も、人目につく程度以上のものをいいます。

 

(2)9級16号「外貌に相当程度の醜状を残すもの」

原則として、顔面部に、長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のものをいいます。

 

(3)12級14号「外貌に醜状を残すもの」

原則として、①頭部に、鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損、②顔面部に、10円硬貨大以上の瘢痕または長さ3センチメートル以上の線状痕、③頸部に、鶏卵大面以上の瘢痕がある場合で、いずれの場合も、人目に付く程度以上のものをいいます。

 

2 上肢下肢の露出面の醜状障害

「上肢の露出面」は、肩関節から指先までの部分、「下肢の露出面」は股関節から足の背までの部分です。

 

上肢下肢の醜状障害については、14級4号「上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」または14級5号「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」の後遺障害があります。

 

また、てのひらの大きさの3倍程度以上の大きさの場合は、12級相当と認定されます。

 

3 日常露出しない部位の醜状障害

胸部及び腹部または背部及び臀部の全面積の4分の1以上の範囲に瘢痕が残る場合は14級相当、2分の1以上の範囲に瘢痕が残る場合は12級相当と認定されます。

 

三 醜状障害の後遺障害逸失利益,後遺障害慰謝料

後遺障害が認定された場合、後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料が損害となりますが、醜状障害の場合は、どうでしょうか。

 

1 後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益は、認定された後遺障害等級に応じた労働能力喪失率をもとに算定するのが通常ですが、醜状障害の場合には労働能力に直接影響がないことを理由に逸失利益が否定されることがあります。

もっとも、外貌の醜状障害があることが原因で配置転換されることや、就職や転職が不利になること等、労働能力に直接影響を及ぼす場合がありますので、被害者の性別、年齢、職業等によっては逸失利益が認められることがあります。

また、逸失利益が認められる場合でも、労働能力喪失が低く認定されることがあります。

 

2 後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は認定された等級に応じて相場があります。

醜状障害の場合も、他の後遺障害の場合と同様、認定された等級に応じて慰謝料額が算定されるのが通常です。

 

醜状障害について逸失利益が否定された場合には、労働能力に直接的な影響はないが、労働能力に間接的な影響を及ぼすおそれがあることを理由に、慰謝料が増額されることがあります。

 

 

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