【交通事故】自賠責保険の重過失減額

2021-05-31

交通事故の被害者が損害賠償請求する場合に被害者に過失があるときは,被害者の過失割合に応じて過失相殺されますが,自賠責保険では被害者に重過失がない限り,減額されません。

 

一  自賠責保険の重過失減額

自賠責保険では,被害者保護の観点から過失相殺が制限されており,被害者に重大な過失がある場合に限り,減額されます。

 

1 減額の対象

自賠責保険の支払基準で算定された損害額から減額されます。

損害額が保険金額以上となる場合には,保険金額から減額されます。

 

2 減額割合

(1)傷害にかかるもの

被害者の過失が7割未満の場合には減額されませんが,被害者の過失が7割以上ある場合には2割減額されます。

ただし,被害者の損害額が20万円以下の場合には減額されません。

 

(2)後遺障害または死亡にかかるもの

被害者の過失が7割未満の場合には減額されませんが,7割以上の場合には以下の割合で減額されます。

 

①7割以上8割未満の場合  2割

②8割以上9割未満の場合  3割

③9割以上10割未満の場合 5割

 

二 重過失減額の認定

1 損害保険料率算出機構の自賠責損害調査センターの損害調査

自賠責保険から支払われるかどうかは,損害保険料率算出機構の自賠責損害調査センターの損害調査によります。

損害保険料率算出機構の自賠責損害調査センターでは,全国に地区本部と自賠責損害調査事務所があります。損害調査は自賠責損害調査事務所で行われますが,自賠責保険(共済)から支払われないか減額される可能性がある事案等,自賠責損害調査事務所では判断が困難な事案は地区本部,本部で審査が行われます。

また,死亡事案で全く支払われないか減額される可能性がある事案等については,外部の専門家の参加する自賠責保険(共済)審査会で審査が行われます。

 

2 認定に不服がある場合

重過失減額の認定に不服がある場合は,保険会社に異議申立てをすることや,自賠責保険・共済紛争処理機構に紛争処理申請をすることができます。

 

また,裁判所は,自賠責保険の支払基準に拘束されずに損害賠償額の算定をすることができますので,訴訟を提起して訴訟手続の中で過失割合を争うことも考えられます。

 

三 被害者に重過失がある場合に訴訟提起する場合の注意点

訴訟手続では,裁判所は自賠責保険の支払基準に拘束されずに損害賠償額の算定をすることができますが,被害者の過失割合に応じた過失相殺をします。

そのため,被害者の過失が大きい場合には,損害額自体は自賠責保険の支払基準よりも高額であっても,過失相殺により,訴訟手続で認定される損害賠償額が自賠責保険の支払額を下回ってしまうことがあります。

 

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