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【離婚】有責配偶者からの婚姻費用・養育費の請求
不貞行為をした有責配偶者が別居した後に婚姻費用分担請求をしてきた場合,婚姻費用を分担しなければいけないのでしょうか。
また,離婚して有責配偶者が子を養育することになった場合には,養育費を支払わなければならないのでしょうか。
1 有責配偶者からの婚姻費用分担請求
婚姻関係が破綻している場合であっても,婚姻関係が続いている以上は婚姻費用分担義務がなくなるわけではないと解されています。
もっとも,有責配偶者の婚姻費用分担請求は,権利の濫用にあたるものとして,請求が認められなかったり,減額されたりすることがあります。
どのような場合に権利濫用であると判断されるのかについては,婚姻費用分担額の算定を簡易迅速に行う必要性から,権利者(請求する側)が不貞行為をしたことが証拠上明らかである場合等,権利者に有責性があることが明白である場合に限られると解されております。
義務者(請求される側)が,権利者が勝手に出て行って別居したのだから婚姻費用は支払わないと主張することがありますが,勝手に別居したというだけでは権利の濫用にあたるとはいえませんので,義務者は婚姻費用の分担を免れることはできません。
また,権利者が有責であったとしても,子に責任はありませんから,権利者が子を監護している場合には,子の監護費用相当額については,義務者は支払を免れることはできません。婚姻費用分担額が減免されるのは,有責配偶者の分に限られます。
2 有責配偶者からの養育費請求
養育費は,子の養育のために支払われるものですから,養育費を請求する親が有責配偶者であるかどうかは,養育費の支払義務や額に影響しません。
そのため,権利者が有責配偶者であっても,義務者は養育費を支払う義務を負います。
なお,権利者が有責配偶者である場合,義務者は権利者に対し慰謝料請求をすることができることから,権利者が慰謝料を支払う代わりに,義務者との間で,慰謝料請求権と養育費請求権を相殺することを合意し,養育費の支払を減免することがありますが,子が生活に困窮することがないよう配慮すべきでしょう。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【離婚】婚姻費用(簡易算定方式と簡易算定表)
婚姻費用分担額の算定方法としては,簡易算定方式を用いる方法と簡易算定表を用いる方法があります。
表にあてはめるという分かりやすさから,簡易算定表を用いて婚姻費用分担額を算定することが多いですが,簡易算定表は標準的なケースを想定したものであり,事案によっては簡易算定表がつかえない場合があります。
その場合には,簡易算定方式を基に,婚姻費用分担額を算定することになりますので,簡易算定方式の考え方を理解しておく必要があります。
※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→https://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/
1 簡易算定方式
(1)簡易算定方式とは
簡易算定方式は,夫婦と子が同居していると仮定して,世帯全体の基礎収入を算定して,それを義務者(婚姻費用分担義務を負う人)の世帯と権利者(婚姻費用分担の請求をする人)の世帯に按分し,権利者世帯按分額と権利者の基礎収入の差額を義務者が分担する額とする方式です。
婚姻費用の分担は,生活保持義務(自分と同程度の生活を保障する義務)に基づくものであるため,義務者は,権利者世帯(権利者及び権利者と同居する子)が自分と同程度の生活ができるように,婚姻費用を分担します。
(2)簡易算定方式での養育費算定の基準
養育費算定の手順は以下のとおりです。
①権利者と義務者の基礎収入(収入のうち生活に充てられる分)を算定します。
給与所得者の場合,基礎収入は,総収入額から公租公課,職業費(被服費,交通費等),特別経費(住居費等)を控除した金額であり,概ね総収入の34%から42%の範囲(高額所得者ほど低い)とされております。
給与所得者の基礎収入=総収入額-公租公課-職業費-特別経費
自営業者の場合,基礎収入は,所得金額から公租公課,特別経費を控除した金額であり,概ね総所得の47%から52%の範囲(高額所得者ほど低い。)とされております。
自営業者の基礎収入=所得金額-公租公課-特別経費
②権利者と義務者の基礎収入の合計額を,権利者世帯と義務者世帯に按分します。
親の生活費の割合(生活費指数)を100,0歳から14歳の子の割合を55,15歳から19歳の子の割合を90として計算します。
権利者世帯の按分額
=(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)
③権利者世帯の按分額から権利者の基礎収入額を控除した金額が婚姻費用分担額となります。
婚姻費用分担額=権利者世帯の按分額-権利者の基礎収入
(3)計算式
婚姻費用分担額(月額)
={(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)-権利者の基礎収入}÷12
例えば,妻が(年収100万円の給与所得者,基礎収入38万円)が子2人(16歳と10歳)を連れて別居し,夫(年収400万円の給与所得者,基礎収入156万円)に婚姻費用の分担を請求した場合
婚姻費用分担額(月額)
={(156万円+38万円)×(100+90+55)÷(100+100+90+55)-38万円}÷12≒8万3140円
2 簡易算定表
簡易算定表は,標準的なケースについて,簡易算定方式に基づいて算定される婚姻費用を1万円または2万円の幅で表に整理したものです。
簡易算定表には,①夫婦のみ(子がいない場合),②子1人(0~14歳),③子1人(15~19歳),④子2人(第1子及び第2子0~14歳),⑤子2人(第1子15~19歳,第2子0~14歳),⑥子2人(第1子及び第2子15~19歳),⑦子3人(第1子,第2子及び第3子0~14歳),⑧子3人(第1子15~19歳,第2子及び第3子0~14歳),⑨子3人(第1子及び第2子15~19歳,第3子0~14歳),⑩子3人(第1子,第2子及び第3子15~19歳)の10種類があり,権利者が養育している子の人数や年齢があてはまる表を用います。
表の縦軸を義務者の年収(給与所得者の場合0円~2000万円,自営業者の場合0円~1409万円),横軸を権利者の年収(給与所得者の場合0円~1000万円,自営業者の場合0円~710万円)とし,縦軸の義務者の年収が表示されているところから横に延ばした線と,横軸の権利者の年収が表示されているところから縦にのばした線の交わるところの数値が婚姻費用分担額(月額)となります。
年収については,給与所得者の場合は源泉徴収票の「支払金額」であり,自営業者の場合は,確定申告書の「課税される所得金額」(ただし諸々修正されます。)です。
例えば,妻(年収100万円の給与所得者)が子2人(16歳と10歳)を連れて別居し,夫(年収400万円の給与所得者)に婚姻費用の分担を請求した場合,簡易算定表によると,婚姻費用分担額は月額8万円から10万円の範囲となります。
3 簡易算定表がつかえない場合
①簡易算定表は,子が0人から3人までの場合しかありません。
そのため,子が4人以上いる場合には,簡易算定方式により婚姻費用分担額を算定することになります。
②簡易算定表は,権利者のみが子と同居していることが前提となっております。
そのため,義務者も子と同居している場合や,義務者が前妻の子の養育費を負担している等,他に養育,扶養する者がいる場合には,どのように婚姻費用分担額を算定するか問題となります。
③簡易算定表では,給与所得者の場合と自営業者の場合しかありません。
それ以外の場合(年金収入の場合等),婚姻費用分担額をどのように算定するのか問題となります。
④簡易算定表では,収入に上限があります。
義務者の年収が算定表の上限を超える場合,婚姻費用分担額をどのように算定するか問題となります。
⑤簡易算定表では,標準的な生活費を基にしております。
例えば,教育費について,簡易算定表では,子が公立学校に通うことを前提としていますが,子が私立学校に通う等,特別な事情がある場合には,婚姻費用分担額をどのように算定するか問題となります。
また,義務者が権利者が居住する住居の住宅ローンを負担している場合に,婚姻費用分担額をどのように算定するか問題となります。

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【お知らせ】平成28年夏季休暇のお知らせ
当事務所は、平成28年8月11日(木)から平成28年8月15日(月)まで、夏季休暇とさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い申し上げます。

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【離婚】養育費(簡易算定方式と簡易算定表)
養育費の算定方法としては,簡易算定方式を用いる方法と簡易算定表を用いる方法があります。
表にあてはめるという分かりやすさから,簡易算定表を用いて養育費を算定することが多いですが,簡易算定表は標準的なケースを想定したものであり,事案によっては簡易算定表がつかえない場合があります。
その場合には,簡易算定方式を基に,養育費を算定することになりますので,簡易算定方式の考え方を理解しておく必要があります。
※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→https://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/
1 簡易算定方式
(1)簡易算定方式とは
簡易算定方式は,子が義務者(子を養育していない親)と同居していると仮定した場合に子のために消費される生活費を計算し,これを義務者と権利者(子を養育している親)の収入で按分して義務者が支払うべき養育費を算定する方式です。
養育費の支払は,生活保持義務(自分と同程度の生活を保障する義務)に基づくものであるため,義務者は,子が自分と同程度の生活ができるように,権利者との間で,子の生活費を分担します。
(2)簡易算定方式での養育費算定の基準
養育費算定の手順は以下のとおりです。
①権利者と義務者の基礎収入(収入のうち生活に充てられる分)を算定します。
給与所得者の場合,基礎収入は,総収入額から公租公課,職業費(被服費,交通費等),特別経費(住居費等)を控除した金額であり,概ね総収入の34%から42%の範囲(高額所得者ほど低い)とされております。
給与所得者の基礎収入=総収入額-公租公課-職業費-特別経費
自営業者の場合,基礎収入は,所得金額から公租公課,特別経費を控除した金額であり,概ね総所得の47%から52%の範囲(高額所得者ほど低い。)とされております。
自営業者の基礎収入=所得金額-公租公課-特別経費
②義務者が子と同居していると仮定して,義務者の基礎収入を義務者の生活費と子の生活費に按分します。
親の生活費の割合(生活費指数)を100とすると,0歳から14歳の子の割合を55,15歳から19歳の子の割合を90として計算します。
子の生活費=義務者の基礎収入×子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数
③子の生活費を義務者と権利者の基礎収入で按分します。
養育費の額=子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
(3)計算式
養育費(月額)
=義務者の基礎収入×子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数
×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)÷12
例えば,10歳の子と8歳の子がいる夫婦が離婚し,母(年収100万円の給与所得者,基礎収入38万円)が子2人の親権者となり,父(年収400万円の給与所得者,基礎収入156万円)に養育費を請求した場合
養育費(月額)
=156万円×(55+55)÷(100+55+55)×156万円÷(156万円+38万円)÷12=5万4757円
2 簡易算定表
簡易算定表は,標準的なケースについて,簡易算定方式に基づいて算定される養育費を1万円または2万円の幅で表に整理したものです。
簡易算定表には,①子1人(0~14歳),②子1人(15~19歳),③子2人(第1子及び第2子0~14歳),④子2人(第1子15~19歳,第2子0~14歳),⑤子2人(第1子及び第2子15~19歳),⑥子3人(第1子,第2子及び第3子0~14歳),⑦子3人(第1子15~19歳,第2子及び第3子0~14歳),⑧子3人(第1子及び第2子15~19歳,第3子0~14歳),⑨子3人(第1子,第2子及び第3子15~19歳)の9種類があり,権利者が養育している子の人数や年齢があてはまる表を用います。
表の縦軸を義務者の年収(給与所得者の場合0円~2000万円,自営業者の場合0円~1409万円),横軸を権利者の年収(給与所得者の場合0円~1000万円,自営業者の場合0円~710万円)とし,縦軸の義務者の年収が表示されているところから横に延ばした線と,横軸の権利者の年収が表示されているところから縦にのばした線の交わるところの数値が養育費の金額(月額)となります。
年収については,給与所得者の場合は源泉徴収票の「支払金額」であり,自営業者の場合は,確定申告書の「課税される所得金額」(ただし諸々修正されます。)です。
例えば,10歳の子と8歳の子がいる夫婦が離婚し,母(年収100万円の給与所得者)が子2人を養育し,父(年収400万円の給与所得者)に養育費を請求した場合,簡易算定表によると,養育費は月額4万円から6万円の範囲となります。
3 簡易算定表がつかえない場合
①簡易算定表は,子が1人から3人までの場合しかありません。
そのため,子が4人以上いる場合には,簡易算定方式により養育費を算定することになります。
②簡易算定表は,権利者のみが子を養育していることが前提となっております。
そのため,義務者も子を養育している場合や,義務者が再婚している場合等,他に養育,扶養する者がいる場合には,どのように養育費を算定するか問題となります。
③簡易算定表では,給与所得者の場合と自営業者の場合しかありません。
それ以外の場合(年金収入の場合等),養育費をどのように算定するのか問題となります。
④簡易算定表では,収入に上限があります。
義務者の年収が算定表の上限を超える場合,養育費の額をどのように算定するか問題となります。
⑤簡易算定表では,標準的な生活費を基にしております。
例えば,教育費について,簡易算定表では,子が公立学校に通うことを前提としていますが,子が私立学校に通う等,特別な事情がある場合には,養育費をどのように算定するか問題となります。

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【労働問題】解雇予告・解雇予告手当
民法では,期間の定めのない雇用契約については,各当事者はいつでも解約の申入れをすることができ,申入れの日から2週間を経過することによって終了しますが(民法627条1項),解雇により労働者が被るダメージを考慮して,解雇予告・解雇予告手当の制度が設けられております。
一 解雇予告・解雇予告手当とは
使用者は,労働者を解雇しようとする場合,少なくとも30日前にその予告をしなければならず,30日前に予告をしない使用者は,30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。
予告の日数については,平均賃金を支払った日数分短縮することができます(労働基準法20条2項)。
ただし,①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合,②労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合には,解雇予告や解雇予告手当は必要なく,使用者は労働者を即時解雇することができますが(労働基準法20条1項但書),行政官庁(労働基準監督署長)の認定を受けることが必要となります(労働基準法20条3項,19条2項,労働基準法施行規則7条)。
二 解雇予告・解雇予告手当が不要である場合
以下の労働者については,解雇予告制度の適用はなく(労働基準法21条),解雇予告も解雇予告手当も必要ありません。
①日日雇い入れられる者
(1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
②2か月以内の期間を定めて使用される者
(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
③季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
④試用期間中の者
(14日を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
三 労働基準法20条に違反した場合
1 罰則
労働基準法20条に違反した場合には,処罰されます(労働基準法119条)。
2 解雇の効力
30日前の予告または解雇予告手当の支払をしないで行われた解雇については,即時解雇としての効力は生じませんが,使用者が即時解雇に固執する趣旨ではない限り,通知後30日を経過するか,解雇予告手当の支払をしたときに,解雇の効力が生じると解されております(相対的無効説)。

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【労働問題】解雇規制
解雇により,労働者は職を失い,経済的に大きなダメージを受けることになりますので,労働契約法や労働基準法,その他の法律で解雇は規制されております。
解雇の規制としては,①解雇権濫用規制,②契約期間中の解雇規制,③解雇予告,④国籍,信条,社会的身分による差別的取扱いによる解雇の禁止,⑤業務上災害による療養中の解雇の禁止,⑥産前産後の休業中の解雇の禁止,⑦不当労働行為としての解雇の禁止,⑧雇用機会均等法による解雇の禁止,⑨育児介護休業法による解雇の禁止,⑩パートタイム労働法による解雇の禁止,⑪法律違反を監督機関に申告したことを理由とする解雇の禁止,⑫個別労働関係紛争解決促進法による解雇の禁止,⑬公益通報したことを理由とする解雇の禁止等があります。
1 解雇権濫用規制
解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効となります(労働契約法16条)。
2 契約期間中の解雇規制
期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については,やむを得ない事由がある場合でなければ,契約期間が満了するまで解雇することはできません(労働契約法17条1項)。
3 解雇予告
使用者は,原則として,労働者を解雇しようとする場合には,30日前にその予告をするか,30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。
予告の日数は,1日について平均賃金を支払った分,日数を短縮することができます(労働基準法20条2項)。
4 国籍,信条,社会的身分による差別的取扱いによる解雇の禁止
使用者は,労働者の国籍,信条または社会的身分を理由として,賃金,労働時間その他の労働条件について,差別的取扱をしてはならず(労働基準法3条),労働者の国籍,信条または社会的身分を理由に解雇することは禁止されます。
5 業務上災害による療養中の解雇の禁止
使用者は,労働者が業務上負傷し,または疾病にかかり療養のために休業する期間とその後30日間は解雇してはなりません。ただし,使用者が打切補償(労働基準法81条)支払う場合,天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合を除きます(労働基準法19条)。
6 産前産後の休業中の解雇の禁止
使用者は,6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合には就業させてはなりません(労働基準法65条1項)。
また,使用者は,産後8週間を経過しない女性を就業させてはなりません。ただし,産後6週間を経過し,女性が請求した場合,医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えありません(労働基準法65条2項)。
使用者は,産前産後の女性が労働基準法65条の規定により休業する期間とその後30日間は解雇してはなりません。ただし,天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合を除きます(労働基準法19条)。
7 不当労働行為としての解雇の禁止
使用者は,労働者が組合員であること,労働組合に加入しようとしたこと,労働組合を結成をしようとしたこと,労働組合の正当な行為をしたこと,労働委員会に申立てをしたこと等を理由に解雇してはなりません(労働組合法7条1号,4号)。
8 雇用機会均等法による解雇の禁止
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(雇用機会均等法)は,性別を理由として解雇することは禁止されています(6条4号)。
また,使用者は婚姻,妊娠,出産,産前産後の休業を理由として女性労働者を解雇することはできません(9条2項,3項)。妊娠中の女性労働者,出産後1年を経過しない女性労働者の解雇は原則として無効となります(9条4項)。
また,労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたことや調停の申請をしたことを理由に解雇することは禁止されています(17条2項,18条2項)。
9 育児介護休業法による解雇の禁止
育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)では,育児休業,介護休業,子の看護休暇,介護休暇,所定外労働の制限,時間外労働の制限,深夜業の制限,所定労働時間の短縮措置等の規定があり,労働者が,それらの利用の申出・請求をしたり,利用したりしたことを理由とする解雇は禁止されています(10条,16条,16条の4,16条の7,16条の9,18条の2,20条の2,23条の2)。
また,労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたことや調停の申請をしたことを理由に解雇することは禁止されています(52条の4第2項,52条の5第2項)。
10 パートタイム労働法による解雇の禁止
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)では,通常の労働者と同視すべき短時間労働者について,短時間労働者であることを理由として差別的取扱をしてはならず(8条1項),短時間労働者であることを理由とする解雇は禁止されています。
また,短時間労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたことや調停の申請をしたことを理由に解雇することは禁止されています(21条2項,22条2項)。
11 法律違反を監督機関に申告したことを理由とする解雇の禁止
労働者が,法律違反を監督機関に申告したことを理由とする解雇は禁止されています(労働基準法104条2項,最低賃金法34条2項等)。
12 個別労働関係紛争解決促進法による解雇の禁止
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律では,労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたことや,あっせんの申請をしたことを理由に解雇することは禁止されています(4条3項,5条2項)。
13 公益通報したことを理由とする解雇の禁止
公益通報者保護法では,労働者が,同法で定める要件を満たす公益通報をした場合,公益通報したことを理由とする解雇は無効となります(3条)。

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【労働問題】整理解雇
1 整理解雇
整理解雇とは,使用者が経営不振など経営上の理由により人員削減のために行う解雇のことです。
整理解雇も普通解雇の一種ですが,労働者の責に帰すべき事由があるわけではなく,使用者の経営上の理由から行われることに特徴があります。
2 整理解雇の有効性
整理解雇についても,解雇権濫用規制(労働契約法16条)が適用されるため,客観的に合理的理由がなく,社会通念上相当であると認められなければ,無効となります。
整理解雇が有効かどうかは,①人員削減の必要性,②解雇回避の努力,③人選の合理性,④手続の相当性で判断されると解されています。
①から④のすべてを満たさなければ整理解雇が有効と認められないとする考え(要件説)もありますが,近時は,①から④を総合的に判断して有効性を判断すること(要素説)が多いといわれています。
例えば,人員削減の必要性が高い場合には,他の要素が不十分でも整理解雇が有効と認められることがあります。
(1)人員削減の必要性
整理解雇の有効性の判断にあたっては,経営不振など経営上の理由から人員削減をする必要性があるかどうかが考慮されます。
企業が倒産の危機に瀕している場合だけでなく,企業の合理化・効率化の観点から不採算事業を縮小・廃止する場合にも,人員削減の必要があるといえます。
(2)解雇回避の努力
整理解雇の有効性の判断にあたっては,使用者が解雇を回避すべき努力をしたかどうかが考慮されます。
使用者は,新規採用の削減,配転・出向,希望退職者の募集など他の手段をとり,解雇を回避するために努力する義務を負い,解雇回避の努力もせず,いきなり解雇した場合には,解雇が無効となるのが通常です。
(3)人選の合理性
整理解雇の有効性の判断にあたっては,誰を解雇するかの選定に合意性があるかが考慮されます。
選定が合理的であるかどうについては,①誰を解雇するかの基準(整理基準)が設けているかどうか,②基準が合理的であるかどうか,③基準が公正に適用されているかどうかが問題となります。
会社への貢献度や,整理解雇によるダメージの低さを基準として選定することは合理性があると解されています。
正社員よりも非正規労働者を先に整理解雇することも合理性があると解されております。
(4)手続の相当性
整理解雇の有効性の判断にあたっては,使用者が労働組合や労働者に対し,整理解雇の必要性や時期,規模,方法等につき,説明し,協議したかどうかが考慮されます。
労働協約に協議・説明義務の定めがある場合には,使用者が協議・説明をせずにした整理解雇は無効となりますし,定めがない場合であっても,信義則上,使用者には,協議・説明する義務があると解されております。

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【労働問題】懲戒解雇
解雇には普通解雇と懲戒解雇があります。
懲戒解雇について,説明します。
一 懲戒解雇とは
懲戒解雇は,懲戒処分として行われる解雇です。
懲戒処分とは,使用者が,業務命令や服務規律に違反した労働者に対し,制裁として行う不利益措置であり,懲戒解雇は,最も重い懲戒処分です。
なお,懲戒処分としての解雇には,懲戒解雇以外に諭旨解雇もあります。
諭旨解雇とは,労働者に退職願を提出させた上で解雇することであり(労働者に退職願を提出させ退職扱いとする場合には,諭旨退職といいます。),退職金の支払の点等で,懲戒解雇よりも軽い処分です。
二 普通解雇と懲戒解雇の違い
普通解雇と懲戒解雇は,いずれも使用者が労働契約を解約することではありますが,懲戒解雇は,懲戒処分である点,以下のような違いがあります。
①退職金規程に,懲戒解雇の場合には,退職金の全部または一部を支給しないと規定されていることがあります。
②労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合には解雇予告や解雇予告手当は必要ありません(労働基準法20条)。「労働者の責に帰すべき事由」と懲戒解雇事由は必ずしも一致するわけではありませんが,懲戒解雇する場合には,通常,解雇予告や解雇予告手当もなく即時に解雇されます。
③懲戒解雇の場合,使用者は,離職票の離職理由の「重責解雇(労働者の責めに期すべき重大な理由による解雇)」の欄にチェックを入れるのが通常であり,重責解雇の場合には雇用保険の給付制限があります(雇用保険法33条)。
三 どのような場合に懲戒解雇をすることができるのか
1 就業規則上の定めがあること
使用者が懲戒処分をするには懲戒事由や懲戒処分の種類や程度を就業規則に定めておかなければなりません。
そのため,使用者が懲戒解雇をするには,就業規則に,懲戒解雇事由や懲戒解雇の定めがあることが必要となります。
就業規則に懲戒解雇事由や懲戒解雇の定めがない場合には,使用者は労働者を懲戒解雇することはできません。
2 懲戒権の濫用規制,解雇権の濫用規制
懲戒解雇は,懲戒処分として行われる解雇ですので,懲戒権の規制と解雇の規制の双方の適用を受けます。
労働契約法15条は「使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及びその態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると求められない場合は,その権利を濫用したものとして,当該懲戒は無効とする。」と規定しており,懲戒権の濫用を規制しておりますので,懲戒解雇は同条の規制を受けます。
また,労働契約法16条は「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」と規定しており,解雇権の濫用を規制しておりますので,懲戒解雇は同条の規制も受けます。
懲戒解雇は,普通解雇よりも労働者の不利益が大きいので,普通解雇の場合よりも,厳しく規制されます。
四 懲戒解雇事由に該当する場合に,普通解雇をすること
懲戒解雇は,普通解雇よりも労働者の不利益が大きいので,普通解雇の場合よりも,厳しく規制されるため,普通解雇としては有効でも,懲戒解雇としては無効とされることがあります。
そのようなことから,使用者は,懲戒解雇事由がある場合であっても,懲戒解雇ではなく,普通解雇することがあります。
懲戒解雇と普通解雇のどちらを選択するかは使用者が判断することですので,懲戒解雇事由がある場合であっても,懲戒解雇せずに,普通解雇することは,通常できます。
また,使用者が労働者を普通解雇する場合には,普通解雇として有効かどうかが問題となります。
五 懲戒解雇から普通解雇への転換
使用者が懲戒解雇をした後に,労働者が懲戒解雇の有効性を争い,懲戒解雇としては無効でも,普通解雇としては有効であるといえる場合には,懲戒解雇を普通解雇に転換して,普通解雇として有効であると認めてよいかという問題がありますが,懲戒解雇と普通解雇は別のものであり,労働者の地位を著しく不安定にするので,そのようなことはできないと解されております。
ただし,使用者は,労働者を懲戒解雇をした場合であっても,予備的に普通解雇をすることもできると解されておりますので,使用者が予備的に労働者を普通解雇したといえる場合には,懲戒解雇としては無効であっても,普通解雇として有効であると認められることがあります。

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【労働問題】労働契約が終了する場合
労働契約が終了する場合として,①解雇,②辞職,③合意解約,④定年,⑤有期労働契約における期間の満了,⑥当事者の消滅があります。どのような原因で労働契約が終了したかによって,規制の内容が異なります。以下,簡単に説明します。
1 解雇
解雇とは,使用者から労働契約を解約することです。
解雇には,普通解雇と懲戒解雇(懲戒処分として行われる解雇)があります。
また,経営上の必要から人員削減のために行われる整理解雇があります。
解雇は労働者の不利益が大きいことから,解雇濫用規制(労働契約16条),解雇予告・解雇予告手当(労働基準法20条)等,規制されています。
2 辞職
辞職とは,労働者から労働契約を解約することです。
辞職は,労働者の一方的な解約の意思表示であり,使用者に意思表示が到達した時点で効力が生じるため,到達後は撤回できません。
また,辞職には解雇の規制は及ばないため,使用者が,解雇の規制を免れようとして労働者に退職勧奨をし,辞職させようとすることがあります。
使用者が退職勧奨すること自体は問題ありませんが,執拗に退職勧奨した場合には不法行為となることがありますし,辞職の意思表示に瑕疵があるものとして無効・取消し原因となることがあります。
3 合意解約
合意解約とは,使用者と労働者が,合意により,労働契約を将来に向けて解約することです。
依願退職は,労働者が退職願を出し,使用者が承諾して退職するのが通常であるため,合意解約であると解されます。
退職願は合意解約の申し込みであり,使用者が承諾することで合意解約が成立するため,使用者が承諾するまでは撤回することができます。
また,合意解約には解雇の規制は及ばないため,使用者が,解雇の規制を免れようとして労働者に退職勧奨をし,労働契約を合意解約しようとすることがありますが,執拗な退職勧奨は不法行為となることがありますし,退職の意思表示の無効・取消し原因となることがあります。
4 定年
労働者が一定の年齢に達したときに労働契約が終了する制度を定年制といい,その年齢のことを定年といいます。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)により,原則として,定年は60歳を下回ることはできません(同法8条)。また,事業主は,65歳までの安定した雇用を確保するため,定年の引上げ,継続雇用制度,定年制の廃止のいずれかを講じなければなりません(同法9条)。
使用者が雇用継続制度を導入する場合,使用者と労働者は新たに労働契約を締結することになりますが,使用者が再雇用を拒否した場合には,解雇権濫用法理が類推適用され,再雇用が拒否できないことがあります。
5 有期労働契約における期間の満了
期間の定めがある労働契約(有期労働契約)は,期間の満了により終了します。
期間満了前は,やむを得ない事由がある場合でなければ解雇できません(労働契約法17条1項)。
有期労働契約については,更新されることがあります。
更新により契約期間が一定期間に達した場合,労働者の申込みにより,有期労働契約は期間の定めのない労働契約に転換されます(労働契約法18条)。
また,更新が繰り返されている場合に,使用者が更新を拒否すること(雇止め)については,従前は解雇権濫用法理を類推適用されていましたが(雇止め法理),現在は労働契約法19条により規制されています。
6 当事者の消滅
労働契約の当事者が死亡したときや,会社が解散して清算手続が完了し法人格がなくなったときには,労働契約は終了します。
なお,事業が承継された場合には,労働契約も承継されるか問題となります。

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【後見】後見制度支援信託
後見人が本人(被後見人)の財産を横領するという事案が度々,新聞やテレビ等で報道されます。
成年後見において,本人の財産管理が適切に行われることは非常に重要なことであり,そのための制度の一つとして,後見制度支援信託があります。
1 後見制度支援信託とは
後見制度支援信託とは,本人の財産のうち,日常的な支払に必要な金銭を預貯金等として後見人が管理し,通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する制度です。
後見人は,日常的に必要な金銭の管理を行いますが,本人の収入よりも支出が多い場合には,信託銀行等は,信託財産から必要な金額を定期的に交付することができます。
通常使用しない金銭については,信託銀行等が管理し,信託契約締結後の定期交付金の金額の変更,一時金の交付,信託財産の払戻や信託契約の解約をするには家庭裁判所の指示書が必要となります。
2 どのような場合に利用されているのか
成年後見と未成年後見の場合で,親族が後見人となるときに利用することが想定されております。なお,信託契約の締結は専門職後見人が行います。
すべての件で後見制度支援信託が利用されるわけでなく,後見制度支援信託に適している場合に利用されます。
なお,保佐,補助,任意後見の場合には,利用できません。
3 どのような財産が信託されるのか
金銭に限られます。
不動産や動産,株式等の金融商品は信託されません。
4 手続の流れ
(1)後見開始または未成年後見人選任の申立て
申立ては,家庭裁判所の許可がなければ取り下げることはできませんので(家事事件手続法121条,180条),申立人は後見制度支援信託の利用が嫌だからといって申立てを取り下げることはできません。
(2)審理
後見開始の申立て等があった場合には,家庭裁判所は後見制度支援信託の利用を検討すべきかも審理します。
(3)審判
家庭裁判所は,後見制度支援信託の利用を検討すべきと判断した場合には,専門職(弁護士,司法書士等)を後見人に選任します。
また,専門職と親族を後見人に選任すること(複数選任)もあります。
(4)専門職後見人の検討
①専門職後見人は,後見制度支援信託の利用に適しているか検討します。
②専門職後見人が,後見制度支援信託の利用に適していると判断した場合には,信託する信託銀行等,信託する財産の額,親族後見人が日常的に支出に充てる額等を設定し,家庭裁判所に信託契約を締結する旨の報告書を提出します。
③専門職後見人が,後見制度支援信託の利用に適していないと判断した場合には,家庭裁判所は再検討します。
後見制度支援信託の利用に適していない場合とは,本人に遺言がある場合や親族間で紛争があり,親族が後見人となることに適していない場合,等です。
(5)信託契約の締結
家庭裁判所は,報告書の内容を確認し,後見制度支援信託の利用に適していると判断した場合には,専門職後見人に指示書を発行します。
専門職後見人は信託銀行等に指示書を提出し,信託契約を締結します。
(6)専門職後見人の辞任
専門職後見人は辞任します。
専門職後見人のみしか選任されていなかった場合には,親族後見人を選任します。
専門職後見人は,管理していた本人の財産を親族後見人に引き渡します。

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