【労働問題】解雇規制

2016-07-05

解雇により,労働者は職を失い,経済的に大きなダメージを受けることになりますので,労働契約法や労働基準法,その他の法律で解雇は規制されております。

解雇の規制としては,①解雇権濫用規制,②契約期間中の解雇規制,③解雇予告,④国籍,信条,社会的身分による差別的取扱いによる解雇の禁止,⑤業務上災害による療養中の解雇の禁止,⑥産前産後の休業中の解雇の禁止,⑦不当労働行為としての解雇の禁止,⑧雇用機会均等法による解雇の禁止,⑨育児介護休業法による解雇の禁止,⑩パートタイム労働法による解雇の禁止,⑪法律違反を監督機関に申告したことを理由とする解雇の禁止,⑫個別労働関係紛争解決促進法による解雇の禁止,⑬公益通報したことを理由とする解雇の禁止等があります。

 

1 解雇権濫用規制

解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効となります(労働契約法16条)。

 

2 契約期間中の解雇規制

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については,やむを得ない事由がある場合でなければ,契約期間が満了するまで解雇することはできません(労働契約法17条1項)。

 

3 解雇予告

使用者は,原則として,労働者を解雇しようとする場合には,30日前にその予告をするか,30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。

予告の日数は,1日について平均賃金を支払った分,日数を短縮することができます(労働基準法20条2項)。

 

4 国籍,信条,社会的身分による差別的取扱いによる解雇の禁止

使用者は,労働者の国籍,信条または社会的身分を理由として,賃金,労働時間その他の労働条件について,差別的取扱をしてはならず(労働基準法3条),労働者の国籍,信条または社会的身分を理由に解雇することは禁止されます。

 

5 業務上災害による療養中の解雇の禁止

使用者は,労働者が業務上負傷し,または疾病にかかり療養のために休業する期間とその後30日間は解雇してはなりません。ただし,使用者が打切補償(労働基準法81条)支払う場合,天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合を除きます(労働基準法19条)。

 

6 産前産後の休業中の解雇の禁止

使用者は,6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合には就業させてはなりません(労働基準法65条1項)。

また,使用者は,産後8週間を経過しない女性を就業させてはなりません。ただし,産後6週間を経過し,女性が請求した場合,医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えありません(労働基準法65条2項)。

使用者は,産前産後の女性が労働基準法65条の規定により休業する期間とその後30日間は解雇してはなりません。ただし,天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合を除きます(労働基準法19条)。

 

7 不当労働行為としての解雇の禁止

使用者は,労働者が組合員であること,労働組合に加入しようとしたこと,労働組合を結成をしようとしたこと,労働組合の正当な行為をしたこと,労働委員会に申立てをしたこと等を理由に解雇してはなりません(労働組合法7条1号,4号)。

 

8 雇用機会均等法による解雇の禁止

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(雇用機会均等法)は,性別を理由として解雇することは禁止されています(6条4号)。

また,使用者は婚姻,妊娠,出産,産前産後の休業を理由として女性労働者を解雇することはできません(9条2項,3項)。妊娠中の女性労働者,出産後1年を経過しない女性労働者の解雇は原則として無効となります(9条4項)。

また,労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたことや調停の申請をしたことを理由に解雇することは禁止されています(17条2項,18条2項)。

 

9 育児介護休業法による解雇の禁止

育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)では,育児休業,介護休業,子の看護休暇,介護休暇,所定外労働の制限,時間外労働の制限,深夜業の制限,所定労働時間の短縮措置等の規定があり,労働者が,それらの利用の申出・請求をしたり,利用したりしたことを理由とする解雇は禁止されています(10条,16条,16条の4,16条の7,16条の9,18条の2,20条の2,23条の2)。

また,労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたことや調停の申請をしたことを理由に解雇することは禁止されています(52条の4第2項,52条の5第2項)。

 

10 パートタイム労働法による解雇の禁止

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)では,通常の労働者と同視すべき短時間労働者について,短時間労働者であることを理由として差別的取扱をしてはならず(8条1項),短時間労働者であることを理由とする解雇は禁止されています。

また,短時間労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたことや調停の申請をしたことを理由に解雇することは禁止されています(21条2項,22条2項)。

 

11 法律違反を監督機関に申告したことを理由とする解雇の禁止

労働者が,法律違反を監督機関に申告したことを理由とする解雇は禁止されています(労働基準法104条2項,最低賃金法34条2項等)。

 

12 個別労働関係紛争解決促進法による解雇の禁止

個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律では,労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたことや,あっせんの申請をしたことを理由に解雇することは禁止されています(4条3項,5条2項)。

 

13 公益通報したことを理由とする解雇の禁止

公益通報者保護法では,労働者が,同法で定める要件を満たす公益通報をした場合,公益通報したことを理由とする解雇は無効となります(3条)。

 

 

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