【離婚】婚姻費用(簡易算定方式と簡易算定表)

2016-08-02

婚姻費用分担額の算定方法としては,簡易算定方式を用いる方法と簡易算定表を用いる方法があります。

表にあてはめるという分かりやすさから,簡易算定表を用いて婚姻費用分担額を算定することが多いですが,簡易算定表は標準的なケースを想定したものであり,事案によっては簡易算定表がつかえない場合があります。

その場合には,簡易算定方式を基に,婚姻費用分担額を算定することになりますので,簡易算定方式の考え方を理解しておく必要があります。

※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→https://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/

 

1 簡易算定方式

(1)簡易算定方式とは

簡易算定方式は,夫婦と子が同居していると仮定して,世帯全体の基礎収入を算定して,それを義務者(婚姻費用分担義務を負う人)の世帯と権利者(婚姻費用分担の請求をする人)の世帯に按分し,権利者世帯按分額と権利者の基礎収入の差額を義務者が分担する額とする方式です。

婚姻費用の分担は,生活保持義務(自分と同程度の生活を保障する義務)に基づくものであるため,義務者は,権利者世帯(権利者及び権利者と同居する子)が自分と同程度の生活ができるように,婚姻費用を分担します。

 

(2)簡易算定方式での養育費算定の基準

養育費算定の手順は以下のとおりです。

 

①権利者と義務者の基礎収入(収入のうち生活に充てられる分)を算定します。

給与所得者の場合,基礎収入は,総収入額から公租公課,職業費(被服費,交通費等),特別経費(住居費等)を控除した金額であり,概ね総収入の34%から42%の範囲(高額所得者ほど低い)とされております。

 

給与所得者の基礎収入=総収入額-公租公課-職業費-特別経費

 

自営業者の場合,基礎収入は,所得金額から公租公課,特別経費を控除した金額であり,概ね総所得の47%から52%の範囲(高額所得者ほど低い。)とされております。

 

自営業者の基礎収入=所得金額-公租公課-特別経費

 

②権利者と義務者の基礎収入の合計額を,権利者世帯と義務者世帯に按分します。

親の生活費の割合(生活費指数)を100,0歳から14歳の子の割合を55,15歳から19歳の子の割合を90として計算します。

 

権利者世帯の按分額                            

=(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)

 

③権利者世帯の按分額から権利者の基礎収入額を控除した金額が婚姻費用分担額となります。

 

婚姻費用分担額=権利者世帯の按分額-権利者の基礎収入

 

(3)計算式

 

婚姻費用分担額(月額)                         

={(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)-権利者の基礎収入}÷12

 

例えば,妻が(年収100万円の給与所得者,基礎収入38万円)が子2人(16歳と10歳)を連れて別居し,夫(年収400万円の給与所得者,基礎収入156万円)に婚姻費用の分担を請求した場合

 

婚姻費用分担額(月額)

={(156万円+38万円)×(100+90+55)÷(100+100+90+55)-38万円}÷12≒8万3140円

 

2 簡易算定表

簡易算定表は,標準的なケースについて,簡易算定方式に基づいて算定される婚姻費用を1万円または2万円の幅で表に整理したものです。

簡易算定表には,①夫婦のみ(子がいない場合),②子1人(0~14歳),③子1人(15~19歳),④子2人(第1子及び第2子0~14歳),⑤子2人(第1子15~19歳,第2子0~14歳),⑥子2人(第1子及び第2子15~19歳),⑦子3人(第1子,第2子及び第3子0~14歳),⑧子3人(第1子15~19歳,第2子及び第3子0~14歳),⑨子3人(第1子及び第2子15~19歳,第3子0~14歳),⑩子3人(第1子,第2子及び第3子15~19歳)の10種類があり,権利者が養育している子の人数や年齢があてはまる表を用います。

表の縦軸を義務者の年収(給与所得者の場合0円~2000万円,自営業者の場合0円~1409万円),横軸を権利者の年収(給与所得者の場合0円~1000万円,自営業者の場合0円~710万円)とし,縦軸の義務者の年収が表示されているところから横に延ばした線と,横軸の権利者の年収が表示されているところから縦にのばした線の交わるところの数値が婚姻費用分担額(月額)となります。

年収については,給与所得者の場合は源泉徴収票の「支払金額」であり,自営業者の場合は,確定申告書の「課税される所得金額」(ただし諸々修正されます。)です。

 

例えば,妻(年収100万円の給与所得者)が子2人(16歳と10歳)を連れて別居し,夫(年収400万円の給与所得者)に婚姻費用の分担を請求した場合,簡易算定表によると,婚姻費用分担額は月額8万円から10万円の範囲となります。

 

3 簡易算定表がつかえない場合

①簡易算定表は,子が0人から3人までの場合しかありません。

そのため,子が4人以上いる場合には,簡易算定方式により婚姻費用分担額を算定することになります。

 

②簡易算定表は,権利者のみが子と同居していることが前提となっております。

そのため,義務者も子と同居している場合や,義務者が前妻の子の養育費を負担している等,他に養育,扶養する者がいる場合には,どのように婚姻費用分担額を算定するか問題となります。

 

③簡易算定表では,給与所得者の場合と自営業者の場合しかありません。

それ以外の場合(年金収入の場合等),婚姻費用分担額をどのように算定するのか問題となります。

 

④簡易算定表では,収入に上限があります。

義務者の年収が算定表の上限を超える場合,婚姻費用分担額をどのように算定するか問題となります。

 

⑤簡易算定表では,標準的な生活費を基にしております。

例えば,教育費について,簡易算定表では,子が公立学校に通うことを前提としていますが,子が私立学校に通う等,特別な事情がある場合には,婚姻費用分担額をどのように算定するか問題となります。

また,義務者が権利者が居住する住居の住宅ローンを負担している場合に,婚姻費用分担額をどのように算定するか問題となります。

 

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