【離婚】子の親権者の指定

2015-05-12

未成年の子がいる場合,婚姻中は父母である夫婦が共同して親権を行うのが原則ですが(民法818条3項),夫婦が離婚する場合には,夫婦の一方を親権者と定めなければなりません(民法819条)。

夫婦間で離婚すること自体に争いがない場合でも,親権者の指定をめぐって争いになることがよくあります。

そこで,子の親権者の指定について簡単に説明させていただきます。

 

一 協議離婚の場合

協議離婚とは,話合いによって離婚することをいいます。

民法819条1項は,「父母が協議上の離婚をするときは,その協議で,その一方を親権者と定めなければならない。」と定めていますので,協議離婚をする際には,親権者をどちらにするのか定めなければなりません。

話合いで親権者を決める場合には,特に決まりがあるわけではありませんが,子の立場に立って,最善の結論を導くために,父母が冷静に話し合いをすることが望まれます。

 

協議離婚の場,離婚届の未成年の子の氏名欄に,夫が親権を行う子,妻が親権を行う子の氏名をそれぞれ記入し,離婚届を提出することで,親権者が指定されます。

親権者が定まっていないと離婚届は受理されませんので,夫婦は協議離婚することができません。

そのため,夫婦が離婚すること自体には合意していても,親権者を誰にするか合意することができず,協議離婚自体ができないことがよくあります。

 

二 調停離婚の場合

夫婦間で親権に関する話し合いがまとまらなかった場合には,家庭裁判所に離婚調停を申立て,調停委員などの第三者を交えて,離婚の問題とともに親権者を誰にするかを話し合うことになります。

調停で話合いがついた場合,調停調書に離婚の合意や親権者の指定などの内容を記載すると,調停離婚が成立します。

調停はあくまで話し合いの場ですので,夫婦間の合意が前提となります。

どちらを親権者とするかについて話合いがまとまらず,離婚自体についても話合いがつかない場合には調停は不成立となります。その場合には,離婚訴訟を提起して,その附帯処分として親権者を決めることになります。

また,離婚自体については合意しているけれども,親権者について決まらない場合には,離婚について調停を成立させ,親権者の指定については,調停に代わる審判(家事事件手続法284条)がなされることもあります。

 

三 裁判離婚の場合

1 子の親権者指定の申立て

調停で離婚の話合いがつかなかった場合には,家庭裁判所に離婚訴訟を提起することになり,附帯処分として親権者の指定の申立てをします。

裁判所は,離婚を認める判決において,夫婦に未成年の子がいる場合には,申立てがなくても職権で親権者の指定をしなければなりませんが(民法819条2項,人事訴訟法32条3項),当事者が親権者の指定の申立てをするのが一般です。

2 審理

親権者の指定は子の利益を基準として判断されます。

そのため,有責配偶者だから親権者となることができないというわけではなく,例えば,不貞行為をした配偶者であっても親権者となることができます。

裁判所は,子の親権者を指定する場合に事実の調査をすることができ(人事訴訟法33条1項),家庭裁判所の調査官に事実の調査をさせることができます(人事訴訟法34条)。

また,15歳以上の子がいる場合には,その子の意見が聴取されます(人事訴訟法32条4項)。

3 裁判離婚の場合の子の親権者の指定

(1)判決

離婚を認容する判決がなされた場合には,あわせて親権者が指定されます。

(2)訴訟上の和解

訴訟手続中に話し合いがなされ,離婚や親権者の指定などについて,当事者に合意ができた場合には,和解により親権者を指定することができます。

(3)親権者の指定がある場合には請求の認諾はできません。

離婚訴訟では被告が請求を認諾することができますが(人事訴訟法37条1項本文),親権者の指定などの附帯処分の裁判を要する場合には請求の認諾はできません(同項但し書)。

 

四 まとめ

どのような方法で親権者を定める場合であっても,当事者は,子の利益が最優先であることをしっかり認識することが必要です。

相手方に対する反感から親権を主張したり,離婚条件の交渉材料として親権を主張したりするべきではありません。

親権者を定める場合に,両親の離婚によりすでに精神的に大きなダメージを受けている子を,さらに傷つけることがあってはなりません。

 

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