Author Archive
【交通事故】交通事故の損害 弁護士費用
交通事故の被害者が負担する弁護士費用も交通事故の損害となります。
1 弁護士費用を加害者に負担させることができるか
(1)判決の場合
民事訴訟では,判決で訴訟費用を敗訴者に負担させることができますが,弁護士費用は訴訟費用には含まれないため,被害者が弁護士に依頼して弁護士費用を負担しても,訴訟費用として加害者に負担させることはできません。
そこで,被害者が負担する弁護士費用について,交通事故の損害として,加害者に賠償させることができるかどうか問題となりますが,相当な範囲であれば交通事故の損害として,加害者に負担させることはできます。
不法行為の被害者が自分で訴訟活動をすることは容易ではなく,弁護士に依頼するのでなければ十分な訴訟活動をすることはできないため,不法行為の被害者が弁護士に依頼した場合の弁護士費用は,相当な範囲内のものであれば,不法行為と相当因果関係のある損害であると考えられるからです。
(2)示談,調停,和解の場合
示談,調停,和解は当事者の合意により成立しますので,弁護士費用を損害として加害者に負担させることができるかどうかは当事者次第ではありますが,調整金として支払額に上乗せされることがあります。
2 弁護士費用は,どの程度,損害として認められるのか
交通事故の被害者が弁護士に依頼した場合,その弁護士費用の全額が,交通事故の損害と認められるわけではありません。
実務上,交通事故の損害賠償請求訴訟では,請求認容額の10%程度に相当する額が,弁護士費用として交通事故と相当因果関係のある損害と認められることが多いです。
もっとも,必ず10%ということではなく,事件の難易等,事案によって異なります。
認容額が高額な場合には10%を下回ることがありますし,逆に認容額が少額な場合には10%を上回ることがあります。
3 弁護士費用特約がある場合
被害者が弁護士費用特約を利用した場合には,被害者が負担する弁護士費用について保険金が支払われます。
その場合でも弁護士費用が損害にあたるかどうか問題となりますが,弁護士費用特約を利用したことにより支払われる保険金は,被害者側が支払った保険料の対価ですから,被害者が弁護士費用特約を利用した場合であっても,弁護士費用は交通事故の損害となると考えられます。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【離婚】財産分与と特有財産
夫婦の財産には,夫婦が共有する財産(夫婦共有財産)と夫婦の一方の固有財産(特有財産)があります。夫婦共有財産は,離婚に伴う財産分与で夫婦間で清算されますが,特有財産はどのように扱われるのでしょうか。
1 夫婦共有財産と特有財産
夫婦の財産には,①名実ともに夫婦の一方の財産であるもの(特有財産),②名実ともに,夫婦の共有に属する財産(共有財産),③夫婦一方の名義ではあるけれども,夫婦の協力によって形成された財産であり,実質的に夫婦の共有に属するもの(実質的共有財産)があります。
民法762条1項は「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は,その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。」と規定しておりますが,夫婦一方の名義の財産でも,夫婦の協力によって形成されたものについては,第三者との関係では名義人の財産として扱われるけれども,夫婦間では夫婦の共有財産として扱われます。
2 特有財産は清算的財産分与の対象とはならないのが原則です。
財産分与で清算の対象となる財産は,名義の如何を問わず夫婦が婚姻中に協力して形成した財産ですから,共有財産や実質的共有財産は清算の対象となります。
これに対し,夫婦が婚姻中に協力して形成した財産とはいえない,夫婦が婚姻前から有していた財産や,婚姻中であっても,夫婦の一方が相続した財産や贈与を受けた財産等,夫婦の一方の固有財産(特有財産)は,清算的財産分与の対象とならないのが原則です。
財産分与が争いとなる場面では,ある財産が共有財産にあたるのか,特有財産にあたるのか争いになることが良くありますが,夫婦のいずれかに属するか明らかではない財産は,共有に属するものと推定されますので(民法762条2項),特有財産であると主張する側が特有財産であることを立証しなければならないと考えられます。
3 特有財産が財産分与の対象となる場合
特有財産であるからといって,必ずしも財産分与の対象とならないわけではありません。
夫婦の一方の特有財産であっても,その財産の維持(減少の防止)や増加に夫婦の他方が寄与した場合には,その財産の一定割合が財産分与されることがあります。
夫婦として一緒に暮らしていたからといって,それだけでは特有財産の維持や増加に寄与しているとはいえませんので,特有財産について財産分与を請求する場合には,どのような寄与をしたのか具体的に主張すべきでしょう。
4 夫婦共有財産と特有財産が原資となっている財産について
ある財産を取得するにあたって,夫婦共有財産と特有財産が原資となっている場合には,その財産について,原資の割合に応じて,夫婦共有財産部分と特有財産部分があると考えます。
例えば,3000万円の不動産を購入するにあたって,購入代金の1割にあたる300万円を妻の親から贈与されたお金で支払い,残り9割にあたる2700万円を夫婦共有財産で支払った場合,妻の親から贈与された財産は妻の特有財産と考えられますので,不動産の1割が妻の特有財産となり,残り9割が夫婦共有財産となります。
そして,夫婦が離婚する際,不動産の時価が2000万円である場合には,妻の取得分は,1100万円(特有財産部分にあたる200万円(2000万円の1割)と夫婦共有財産部分の2分の1にあたる900万円(2000万円の9割の2分の1)の合計額)となり,夫の取得分は900万円(夫婦共有財産の2分の1)となります。
そのため,妻が不動産を単独で取得する場合には,妻は夫に対し900万円を支払うことになりますし,夫が不動産を単独で取得する場合には,夫は妻に対し1100万円を支払うことになります。
5 まとめ
以上のとおり,特有財産は,夫婦の一方のものであり,清算的財産分与の対象とはならないのが原則です。
財産分与が争いとなる場合には,特有財産であるかどうかが良く争点となりますが,きちんと資料や証拠をそろえて,主張・立証しなければ,特有財産であることが認められないおそれがありますので,不安がある場合には,弁護士に相談や依頼をすべきでしょう。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【民事訴訟】和解のメリット・デメリット
民事裁判では,判決でなければ終了しないというわけではなく,和解で解決することが多いですが,和解で解決することには,どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
一 和解のメリット
1 早期の解決ができる。
和解調書の記載は確定判決と同一の効力を有しますので(民事訴訟法267条),和解が成立することにより民事訴訟は終了します。
判決の場合は,終局判決が確定することにより民事訴訟が終了しますが,終局判決をするには,争点整理や証人尋問・当事者尋問を行う等,時間がかかりますし,判決が出ても,控訴や上告をされると判決が確定しないので,解決まで長期間を要します。
これに対し,裁判所は,訴訟がいかなる程度にあるかを問わず,和解を試みることができますので(民事訴訟法89条),早期に和解をして紛争を解決させることができます。
2 相手方からの任意の履行が期待できる。
判決の場合,相手方に支払能力があるかどうかや,相手方が納得するかどうか関係ありません。
そのため,判決が確定しても,相手方に支払能力がなければ,相手方は履行できませんし,支払能力があっても,相手方が判決に納得していない場合には,なかなか支払おうとせず,強制執行しなければならないことがあります。
これに対し,和解の場合,相手方は,支払可能な金額や条件でなければ和解しないでしょうし,和解で決めたことを履行するつもりがなければ和解しないでしょうから,和解成立後は,相手方が和解したとおりに履行してくることが期待できます。
3 柔軟な解決ができる。
和解は,当事者の合意による解決であり,当事者が合意できれば,請求内容以外についても取り決めをすることができます。
そのため,和解は,柔軟な解決をすることができますので,事案によっては,判決よりも和解で解決するほうが,妥当な解決ができることがあります。
4 敗訴を回避することができる。
判決では,どのような判決がなされるのかわかりませんし,一審で勝訴したとしても,控訴審や上告審で,判決の内容が変わる可能性があります。
敗訴の危険性がある場合,和解をすることで,相手方にある程度譲歩させた解決をすることができますので,最悪の結果を避けることができます。
二 和解のデメリット
和解は互譲が前提であるため,譲歩させられるというデメリットがあります。
相手方に金銭の支払を請求している事案で和解をする場合,相手方が請求額を全て認め,支払時期や支払方法(分割払い等)の約束をする和解ができることもありますが,相手方の反論や支払能力を考慮して,請求額を減額させられることがよくあります。
また,相手方から金銭の支払を請求されている事案で和解をする場合,相手方への支払い義務がないことを確認する和解ができることもありますが,通常は,相手方への支払義務をある程度認め,支払の約束をさせれられます。
勝訴の可能性が高い場合,和解で譲歩させられることは納得できないかもしれませんが,和解のメリットを念頭に置いて,どの範囲であれば譲歩してもよいか考えるべきでしょう。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【離婚】清算的財産分与の2分の1ルール
夫と離婚の話合いをしている際,財産分与についても話し合ったのですが,夫は,自分が働いて得た財産だから,専業主婦である妻には,半分も渡したくないと主張しています。
専業主婦の場合,財産分与は半分よりも少なくなるのでしょうか。
一 清算的財産分与の2分の1ルール
財産分与には,①清算的財産分与(夫婦が婚姻中に協力して形成した財産を清算すること),②扶養的財産分与(離婚後の扶養として財産分与すること),③慰謝料的財産分与(離婚の慰謝料を財産分与に含めること)があり,このうち清算的財産分与が財産分与の中心です。
清算的財産分与は,夫婦が協力して形成した財産を夫婦で分けることですが,どの割合で分けるのかについて,かつては妻が専業主婦の場合には,妻の寄与度を低くみて,妻への分与の割合を2分の1より低くしていた時期もありました。
しかし,最近では,特段の事情がない限り,夫婦は財産の形成に等しく貢献しているものとみて,専業主婦であるか,共働きであるかどうか問わず,特段の事情がない限り,財産分与の割合は2分の1とされています(清算的財産分与の「2分の1ルール」といいます。)。
そのため,清算的財産分与については,原則として以下のように計算します。
清算的財産分与の額=(請求者の財産+義務者の財産)÷2-請求者の財産
二 2分の1ルールが修正される場合
清算的財産分与については,2分の1ルールが原則であり,多くの場合,2分の1の割合で算定されますが,例外がないわけではありません。
夫婦の一方が特別な才能,専門知識や努力により多額な収入を得て,財産が形成された場合には,特段の事情があるものとして,割合が修正されることがあります。
例えば,夫が会社経営者等で特別な才能,専門知識や努力により多額の収入を得ていた場合には,夫の寄与割合が2分の1より高いと判断されることがあります。
また,夫婦共働きで妻に夫と同程度以上の収入があるだけでなく,妻が家事育児のほとんどを行っていた場合や,夫が仕事も家事育児もせず,妻だけが仕事や家事育児をしていた場合には,妻の寄与割合が2分の1より高いと判断されることがあります。
三 まとめ
以上のとおり,夫婦共有財産の形成における夫婦の貢献の程度は等しいものとして,2分の1の割合で分与するのが原則です。
そのため,専業主婦だからというだけで,清算財産分与の割合が2分の1より低くなるということは通常ありません。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【離婚】離婚原因(性格の不一致)
夫婦の性格や価値観が合わないことから離婚を考えているけれども,相手方が離婚に応じない場合には離婚することはできないのでしょうか?
一 婚姻を継続し難い重大な事由
夫婦が離婚することに合意する場合には,離婚原因があるかどうかは問題となりませんので,性格の不一致を理由として離婚することができます。実際にも,性格の不一致が原因で離婚する夫婦が多いといわれています。
これに対し,夫婦の一方が離婚することに反対している場合には,協議離婚や調停離婚,和解離婚はできませんので,最終的に,判決離婚が認められるかどうかになります。
判決離婚ができるかどうかは,民法770条1項の規定する離婚原因(①不貞行為,②悪意の遺棄,③3年以上の生死不明,④回復の見込みのない強度の精神病,⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由)がなければなりません。
性格の不一致の場合は,①から④にはあたりませんので,⑤の婚姻を継続し難い重大な事由があるかどうかが問題となります。
婚姻を継続し難い重大な事由とは,婚姻関係が破綻しており,回復の見込みがないことをいいます。
婚姻を継続し難い重大な事由があるかどうかは,①夫婦の意思(婚姻継続の意思があるか,関係修復の意思があるか等),②夫婦の関係(会話,交流,性的関係,喧嘩等の有無・程度),③夫婦の言動や態度,④夫婦の年齢,職業,健康状態等,⑤子の有無,年齢,子との関係,⑥婚姻期間,同居期間の長さ,⑦別居の有無や別居期間の長さ等具体的な事情を総合的に考慮して判断されます。
二 性格の不一致が婚姻を継続し難い重大な事由にあたるか
人によって性格や価値観が違うのは当然のことであり,夫婦の性格や価値観に違いがあるのは普通のことです。
そのため,性格が極めて異常で婚姻関係を続けていくことができないような場合は別として,単に性格や価値観が違うというだけでは婚姻関係を継続し難い重大な事由があるとはいえないでしょう。
離婚したいと考える場合には,単に性格の不一致があるだけではなく,夫婦間で様々な問題が起こっているはずですから,そういった具体的な事情を離婚原因として主張すべきです。
例えば,性格の不一致が原因で夫婦が不仲になったことにより,喧嘩が絶えなくなったり,暴力や暴言,虐待があったりした場合には,それらの事実を離婚理由として主張することが考えられます。
また,夫婦が別居し,別居期間が長期に及ぶ場合には,婚姻関係が破綻していると判断されることがあります。どの程度の期間,別居していれば,婚姻関係が破綻しているといえるのかについては,明確な基準があるわけではありません。同居期間との比較や,具体的な事情によって,破綻していると判断される別居期間の長さは異なります。
三 まとめ
夫婦が性格や価値観の違いから離婚に至ることは多いですが,相手方が離婚に同意しない場合には,性格の不一致だけでは,通常,婚姻を継続し難い重大な事由があるとはいえず,離婚は難しいでしょう
そのため,離婚したい場合には,まずは相手方が離婚に同意するよう説得することを検討すべきです。
それでも,相手方が離婚に応じない場合には,判決離婚ができるかどうか,婚姻を継続し難い重大な事由があるのかどうか検討することになります。性格の不一致以外の事情から,婚姻関係の破綻が認められることもありますので,どのような事情を主張することができるのか良く検討しましょう。
長期間の別居により婚姻関係の破綻が認められることもありますので,長期間別居した上で離婚を求めることも,考えられます。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
不貞行為があった場合、離婚や離婚条件にどのような影響があるか
離婚事件では,主に①離婚できるかどうか,②慰謝料,③財産分与,④親権,⑤面会交流,⑥養育費,⑦年金分割が問題となりますが,配偶者の一方が不貞行為をした場合,どのような影響があるでしょうか。
一 不貞行為がある場合の影響
1 離婚できるかどうか
(1)不貞行為をされた配偶者からの離婚請求
配偶者の不貞行為は離婚事由にあたるため(民法770条1項1号),不貞行為をされた配偶者は,不貞行為をした配偶者と離婚することができます。
ただし,不貞行為がある場合であっても,裁判所が一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認め,離婚を認めないこともありますので(裁量棄却。民法770条2項),不貞行為があっても,必ず離婚できるというわけではありません。
なお,不貞行為とは,配偶者がいる者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性交渉をすることをいうため,性交渉がないプラトニックな恋愛の場合は民法770条1項1号の離婚事由にはあたりませんが,「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)にあたり,離婚が認められることはあります。
(2)不貞行為をした配偶者からの離婚請求
不貞行為をした配偶者からの離婚請求は,有責配偶者からの離婚請求になり,原則として認められませんが,一切認められないわけではありません。
婚姻関係が破綻しており,有責配偶者からの離婚請求が信義則上容認される場合には,離婚が認められると解されております。
離婚を認めても信義則に反しないかは,①別居期間が両当事者の年齢及び同居期間を対比して相当の長期間に及ぶかどうか,②未成熟の子が存在しないかどうか,③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないかどうかといった点を総合的に考慮して判断されます。
2 慰謝料請求
不貞行為は,不貞行為をされた配偶者に対する不法行為にあたるため,既に婚姻関係が破綻していた場合等特段の事情がない限り,不貞行為をした配偶者は,他方配偶者に対し,慰謝料を支払う義務を負います。
慰謝料額は,不貞行為をした配偶者の有責性の程度(不貞行為の期間や回数,同棲の有無等),不貞行為をされた配偶者の精神的苦痛の大きさ,婚姻生活の状況,婚姻期間や年齢,未成年の子の有無,双方の資力等,具体的な事情により異なります。
3 財産分与
財産分与には,①清算的要素,②扶養的要素,③慰謝料的要素があり,このうち①清算的要素が財産分与の中心です。
不貞行為は,扶養的財産分与や慰謝料的財産分与に影響しますが,清算的財産分与については,夫婦が婚姻中に形成した財産を清算するものですから,影響しないと解されます。
4 親権
離婚した場合,夫婦のどちらが親権者となるかについては,子の利益を最優先に考慮しなければなりませんので,不貞行為をしたからといって,そのことをもって親権者になれないというわけではありません。
5 面会交流
面会交流は,子の福祉を最優先に判断されるため,不貞行為をしたからといって,それだけで面会交流が認められなくなるわけではありません。
6 養育費
養育費は,子の養育のために支払われるものです。
そのため,養育費を請求する親が不貞行為をした有責配偶者であったとしても,養育費の支払義務や額に影響しません。
7 年金分割
年金分割には,合意分割と3号分割があります。
3号分割については,2分の1と割合が決まっているため,不貞行為をしたかどうかは関係ありません。
また,合意分割については,当事者が合意で按分割合を決めることができますが,合意ができなければ,家庭裁判所が按分割合を決めることになります。その際,裁判所は,殆どの場合,按分割合を0.5としており,不貞行為をしたことだけで按分割合が異なるということはないでしょう。
二 まとめ
以上のとおり,不貞行為があった場合には,不貞行為をされた配偶者の離婚請求や慰謝料請求は,原則として認められるでしょう。
これに対し,清算的財産分与,親権,面会交流,養育費,年金分割については,不貞行為があっても,通常,影響はありません。
そのため,不貞行為をされた配偶者からすれば,相手方の不貞行為が原因で離婚することになったのだから,離婚条件は自分の思い通りになるはずだとお考えになるかもしれませんが,必ずしも思い通りになるとは限りません。不貞行為をした配偶者から得られる慰謝料額よりも,不貞行為をした配偶者への財産分与額のほうが高くなる場合もありますので注意しましょう。
また,不貞行為があった場合でも,不貞行為をした配偶者が不貞行為の事実を否認したり,不貞行為があったことを立証できなかったりすることもありますので, 相手方が不貞行為を認めているかどうか,不貞行為の証拠があるかどうかについても注意しましょう。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【相続・遺言】遺産分割の方法(遺産の分け方)
共同相続人間で遺産分割をする際,遺産の分け方としては,①現物分割,②代償分割,③換価分割,④共有分割の4種類があります。
どのような方法がとられるかは,相続人の利害に関わる重要な問題です。
一 遺産分割の方法
1 現物分割
現物分割とは,「相続人Aは,別紙遺産目録記載の土地を取得する。」,「相続人Bは,別紙遺産目録記載の預金を取得する。」といったように,遺産である個々の財産を,そのまま相続人に取得させる分割方法です。
2 代償分割
代償分割とは,「相続人Aは,別紙遺産目録記載の土地を取得する。相続人Aは,相続人Bに対し,上記遺産取得の代償として,金○○○万円を支払う。」といったように相続分を超える遺産を現物で取得した相続人が,他の相続人に対し,債務を負担する方法です。
債務の負担方法については,代償金の支払が通常ですが,遺産分割協議や調停では,相続人固有の財産を提供することもできます。
3 換価分割
換価分割とは,遺産を売却して,売却代金を分割する方法です。
換価方法については,①競売の場合と②任意売却の場合があります。
また,換価の時期については,①遺産分割で換価について取り決めをし,遺産分割後に換価をする場合と,②遺産分割手続中に換価して,売却代金を分割する場合があります。
4 共有分割
共有分割とは,「相続人A及びBは,別紙遺産目録記載の土地を各2分の1の割合で共有取得する。」といったように,遺産の全部または一部を共同相続人が共有または準共有する方法です。
共有分割後に共有関係を解消するには,共有物分割の手続をとることになります。
二 どの方法がとられるか
1 遺産分割協議,遺産分割調停の場合
遺産分割協議や遺産分割調停では,共同相続人間で合意ができれば,どのような方法をとることもできますし,審判よりも柔軟な解決を図ることができます。
どのように分割するか各相続人が自由に希望を述べることができますが,合意ができなければ,審判になりますので,審判になったらどうなるのか考えた上で,話し合いをすべきでしょう。
2 遺産分割審判の場合
遺産分割審判では,家庭裁判所が,「遺産に属する物又は権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して」(民法906条)どのように遺産を分割するか決めます。
遺産分割方法については,①現物分割,②代償分割,③換価分割,④共有分割の順に検討されます。
①まず,原則的な分割方法である現物分割が検討され,②現物分割ができない場合等「特別の事情」がある場合に代償分割の方法がとられます(家事事件手続法195条)。
③取得を希望する相続人がいなかったり,いても代償金を支払う能力がなかったりする等の理由で,現物分割も代償分割もできない場合には,換価分割の方法(終局審判で競売を命じる場合と中間処分として競売または任意売却を命じる場合(家事事件手続法194条)があります。)がとられます。
④共有分割の方法は,後で共有者間で争いになる可能性がありますので,最後の手段であり,他の分割方法がとれない場合や,共有を望む相続人がおり,共有にしても特段不当ではない場合等に限定されます。
三 まとめ
遺産の内容や相続人の人数,相続人の希望によって,どのような遺産の分け方をすればよいのかが違ってきますので,後悔しないようによく考えましょう。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【お知らせ】平成28年年末年始の営業について
今年も大変お世話になりました。当事務所の年末年始の業務についてお知らせいたします。
平成28年12月29日(木)から平成29年1月4日(水)まで休業いたします。
平成28年は,12月28日(水)午後6時まで業務を行っております。
平成29年は,1月5日(木)午前10時より業務を行います。
よいお年をお迎えください。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【離婚】熟年離婚・高齢離婚(妻から離婚を求められた夫の対応)
子が独立して子育てが終わった後や定年退職した後に,妻から離婚を求められることがあります。
夫からすれば,長年,夫婦として一緒にやってきたのに,なぜ今になって離婚を求められるのか理解できないかもしれませんが,長年,婚姻生活が続いていたからといって,夫婦関係が良かったとは限りません。
夫が気付いていなかっただけで,妻はずっと我慢していただけということがあります。
妻は,子育て中は子供のために我慢して婚姻生活を続けていたけれども,子育てが終わった後は自分のための人生を送りたいと考え,離婚を求めていることもあれば,妻は,夫が働いているうちは夫が家にいないので我慢できたけれども,夫が定年退職後,家にずっといることに,我慢できなくなって離婚を求めているということもあります。
このような場合,妻から離婚を求められた夫としては,どのように対応すればよいのでしょうか。
1 離婚に応じるかどうか
離婚を求められた夫としては,離婚したくない場合には無理に離婚に応じる必要はありません。妻が離婚したくても,夫が離婚に応じない限り,協議離婚や調停離婚はできません。
しかし,妻は,どうしても離婚したいという場合には,離婚訴訟を提起することができます。離婚訴訟では,裁判所が,婚姻関係が破綻しており,離婚原因があると認めれば,判決により強制的に離婚させられてしまいますので,夫としては,離婚訴訟になったら,どうなるのか考えて対応する必要があります。
浮気(不貞行為)等の明確な離婚原因がなくても,妻の離婚意思が強く,関係回復の見込みがない場合には婚姻関係が破綻しており,「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)があると認定されることがありますので,夫としては,単に離婚に反対するだけであったり,妻を非難したりするのではなく,妻がなぜ離婚をしようと考えているのか理解し,どのようにすれば関係が修復できるのか考えて,行動する必要があります。
熟年離婚や高齢離婚の場合,妻は長年積もり積もった思いがあって,離婚を求めていることがありますので,関係修復は簡単ではないでしょうが,夫としては妻との関係修復に向けて努力すべきです。当事者だけで話合うことが難しい場合には,夫婦関係調整(円満)調停(円満調停)の申立てをして,関係修復に向けて,家庭裁判所で話し合うことも考えられます。
2 離婚条件をどうするか
熟年離婚や高齢離婚では,住宅ローンの支払が終わっていたり,退職金の支払があったりする等して,夫婦に多額の財産がある場合が多いので,離婚に応じる場合には,離婚後の自分の生活のことを考えて,離婚条件について,きちんと話合いをしましょう。
慰謝料や財産分与等,離婚条件について,自分のケースでは相場がどれくらいなのか把握した上で,納得できる離婚条件であれば離婚に応じるというスタンスで,妻と話合いをするべきです。
相場からかけ離れた離婚条件を提案しても妻は応じないでしょうが,妻が早く離婚したいということであれば,話合いで,ある程度の譲歩は引き出せる可能性があります。
また,妻が,慰謝料,財産分与,年金分割について過大な期待を抱いて,離婚を求めている場合には,離婚条件の話合いをし,妻の期待どおりにはいかないと気付かせることで,妻に離婚自体を諦めさせることができるかもしれません(その場合でも,妻に不満は残ったままですので,夫としては,妻との関係回復に向けて努力はすべきでしょう。)。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【相続・遺言】遺産分割はお早めに(数次相続)。
相続が開始し,共同相続人間で遺産分割をしなければならないけれども,様々な事情から,遺産分割をしないまま放置されていることがあります。
また,相続開始後,相続人が被相続人の自宅の名義を調べてみたら,被相続人の親の名義で登記されていた場合のように,遺産分割しないまま放置されていた財産が見つかることもあります。
このように遺産分割をしないで放置していた場合,どうなるのでしょうか。
相続開始後,遺産分割をしないうちに,相続人を被相続人とする相続が開始することを数次相続といいます。
最初の相続(第1次相続)開始後に共同相続人の1人が亡くなった場合,亡くなった相続人が有していた相続分は,亡くなった相続人の相続人が相続することになるため(第2次相続),他の第1次相続の相続人は,第2次相続の相続人との間で遺産分割をしなければならなくなります。
例えば,被相続人Xの相続人が子A,Bの2人だけの場合,AとBの2人で遺産分割をすることになります。
しかし,Xの相続について遺産分割をしないうちに,Aが亡くなり,Aに子C,D,E,Fがいる場合には,Xの遺産についてのAの相続分はC,D,E,Fが相続しますので,Xの遺産について,B,C,D,E,Fの5人で遺産分割をしなければならなくなります。
さらに,遺産分割を放置して,BからFについて相続が開始した場合には,それぞれの相続人とも,Xの遺産分割をしなければならなくなります。
このようなことから,長期間,遺産分割をしないで放置しておくと,当初,数人であった相続人が,いつの間にか,数十人あるいは,百人を超える人数になってしまうことがありますし,複数人の相続が絡んできますので,非常に複雑になることがあります(先の例でいえば,Xの相続だけではなく,Aの相続もあり,Aの相続をめぐってAの相続人間で争いが生じた場合,その争いはXの相続にも影響します。)。
遺産分割は,共同相続人全員で行わなければなりませんが,相続人が多数いる場合,相続人全員で合意することは難しいですし,面識がない相続人がいたり,所在が分からない相続人がいたりして,話合いをすること自体が難しくなるため,相続人が多くなればなる程,遺産分割は困難になります。
だからといって,遺産分割をしないで放置しておくと,さらに相続人が増え,遺産分割が,さらに困難になってしまいます。
したがって, 相続開始後,遺産分割が必要なのに放置しておくと,遺産分割が困難となりますし,将来,ご自身の相続人に迷惑をかけることになりますので,相続が開始した後は面倒でも放置せず,早期に解決を図るべきでしょう。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。