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【離婚】不貞行為の慰謝料請求をした場合の不倫相手からの反論
夫が不倫をした場合,妻は,不法行為に基づき(民法709条),夫の不倫相手に対して不貞行為の慰謝料請求をすることができますが,慰謝料請求をされた不倫相手のよくある反論として,以下のようなものがあります。
1 不貞行為はしていない(不貞行為の不存在)
不倫相手が不貞行為はしていないと言って不貞行為の事実を否認した場合,妻は,不貞行為の存在を裏付ける証拠を相手方や裁判所に示さなければなりません。
証拠となるのは,夫と不倫相手との間に性的関係があったことを直接示すもの(性行為そのものを撮影した写真や動画など)や,それを強く推認させるもの(肉体関係の存在を示す内容のメール,同室に宿泊したことがわかる写真など)が必要になります。不貞行為の事実を否認する不倫相手は,証拠が出されても,様々な弁解をしてきますので,そのような弁解を封じられるような確実な証拠を取得しておくことが重要です。
不倫相手が不貞行為の存在を否認し,後から不貞行為の確実な証拠が出された場合には,不倫相手の悪質性が顕著ということになり,慰謝料増額事由になるでしょう。
2 婚姻関係は破綻していた
不貞行為開始時において,夫婦の婚姻関係がすでに破綻していた場合には,妻の婚姻共同生活の維持という権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないため,特段の事情がない限り,不倫相手は不法行為責任を負いません。
不貞行為の慰謝料請求事件において,不倫相手からこの種の反論がなされることは非常に多いのですが,破綻とは,夫婦関係を全体として客観的に評価して,完全に修復の見込みがないと判断される場合に限られます。裁判所は,夫婦関係が円満ではなかった,夫婦関係に不満があったという程度では,婚姻関係の破綻を容易には認めない傾向にあります。
3 結婚していたとは知らなかった(故意過失の不存在)
不法行為責任は,故意過失が要件となりますので,不倫相手に対する慰謝料請求が認められるためには,不倫相手が,夫が既婚者であること(婚姻関係が破綻していないこと)を知っていたか,あるいは知りえたにもかかわらず関係をもったという事情が必要です。
不倫相手が,当初は夫が既婚者であることを知らなかったとしても,その事実を知った後も夫との不貞関係を続けていれば,知った後の行為について,不法行為が成立します。不倫相手がいつ知ったのかが問題となりますが,妻から不倫相手に対して不貞行為をやめるように通知をしていた場合には,少なくとも通知を受け取った以降も夫との関係を続けていれば,その行為自体が不法行為に当たると主張することができます。
不倫相手が,夫から,婚姻関係が破綻していると聞かされていたのでそれを信じたという反論もよくありますが,夫の話を鵜呑みにしただけで事実関係を確認していなければ,裁判所はほとんど不倫相手の反論を認めません。
このように,不倫相手は,様々な反論をして,責任を免れようとすることが多いですから,慰謝料請求をする場合には事前に対応を検討しておきましょう。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【債権回収】貸金返還請求事件
「お金を貸したのに返してくれない。返してもらいたけれども,どうすればよいか。」
貸主が借主に対し貸金の返還を求めることを貸金返還請求といいます。貸金返還請求事件では,どのようなことが問題となるのでしょうか。
一 貸金返還請求権
1 消費貸借契約
貸金返還請求権は,金銭の消費貸借契約に基づきます。
消費貸借契約は,当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって効力を生ずる要物契約であり(民法587条),①当事者間で金銭の返還の合意をしたこと(返還約束),②金銭を交付したことが契約成立の要件となります。
また,売買代金債務等貸金債務以外の債務を当事者の合意で金銭消費貸借債務に改めることもできます(民法588条)。これを準消費貸借契約といいます。
2 貸主は,いつ借主に貸金返還請求ができるのか
(1)返還時期の合意
金銭消費貸借契約が成立していても,いつでも貸金返還請求ができるというわけではありません。
当事者間で返還時期を合意した場合には,合意した返還時期が到来しなければ貸金返還請求はできません。
(2)返還時期の合意をしなかった場合
当事者が返還時期について合意をしなかった場合には,貸主は,相当の期間を定めて返還の催告をすることができ(民法591条1項),その期間が経過しなければ借主に返還請求することはできません。
なお,条文では「相当の期間を定めて返還の催告」となっていますが,相当の期間を定めないで催告した場合であっても,相当期間が経過すれば,貸主は借主に返還請求することができると解されております。
(3)分割返済の合意をした場合
「毎月〇万円ずつ返済する」といったように当事者が分割返済の合意をした場合,借主が分割金の支払を滞らせても,貸主は返還時期が到来した分についてしか返還請求ができないのが原則です。
もっとも,期限の利益喪失条項(借主が分割弁済を怠ったときは,期限の利益を失い,残額につき弁済期が経過したものとする旨の合意)があれば,借主が分割弁済を怠ったときに,貸主は残額全部について借主に返還請求ができるようになります。
貸主としては,分割返済の合意をする場合には期限の利益喪失条項をいれることを忘れないようにしましょう。
3 利息
(1)利息の支払を請求できる場合
当事者間で利息支払の合意をした場合や,商人間で金銭の消費貸借をした場合(商法513条1項)には,貸主は借主に利息の支払を請求することができます。
(2)利率
利率については,合意があればそれによりますが(利息制限法による制限があります。),合意がない場合は民事法定利率の年5分(民法404条)または商事法定利率の年6分(商法514条)となります。
(3)利息が生じる期間
利息の生じる期間は,契約成立日から弁済期までです。
4 遅延損害金
弁済期を経過しても借主が返還しない場合には,貸主は借主に遅延損害金の支払を請求することができます。
遅延損害金の額は,法定利率によって定められますが,約定利率が法定利率を上回るときは約定利率によって定められます(民法419条1項)。
二 貸金返還請求をするにあたって検討すべきこと
1 借主が争ってきている場合
貸金返還請求をした場合,借主が,金銭を受け取っていない,受け取ったけれでも貰ったものだ等と主張して契約の成立を争ってくることがあります。
金銭消費貸借契約書や借用書がある場合には,契約の成立が争いになることはあまりないでしょうが,契約書や借用書がない場合には,どうやって契約の成立を立証するか問題となります。
また,借主が,契約書等があっても公序良俗違反,錯誤,詐欺,脅迫等の抗弁を主張して契約の効力を争ったり,弁済,相殺,消滅時効等の抗弁を主張して債務は消滅したと争ってくることもあります。
借主が争ってきている場合,貸主は,借主の主張を検討し,対応を検討する必要があります。
2 回収可能性
貸金返還請求事件では,借主が支払能力がないと主張してくることがよくあります(いわゆる無資力の抗弁です。)。
借主が支払能力がないと主張してきている場合,本当に資力がないのか,支払いたくないのでそのような主張をしているだけなのか見極める必要があります。
安易に減額に応じるべきではありませんが,勝訴しても回収できないこともありますので,回収可能性を考慮して,ある程度譲歩し,借主が返済可能な条件で和解したほうが良い場合もあります。この点については判断が難しいところです。
3 どのような手続をとるか
交渉で解決できない場合には,法的手続をとることになりますが,支払督促,少額訴訟,民事訴訟,民事保全,民事執行等様々な手続があり,どの手続をとるのか検討が必要となります。
借主が争ってくる可能性や債権の回収可能性(差押え可能な財産の有無等)を考慮して,手続を選択する必要があります。
三 トラブルになるリスクを減らすにはどうすればよいか
1 金銭消費貸借契約書・借用書の作成
金銭消費貸借契約書・借用書を作成しておけば,契約の成立や内容で争われる可能性が低くなりますし,執行認諾文言付きの公正証書にしておけば,訴訟等をせずに強制執行ができます。
また,分割返済の合意をする場合には,期限の利益喪失条項を入れておきましょう。
2 担保をとること
お金を貸す場合には,抵当権等の物的担保や連帯保証人等の人的担保をとっておきましょう。
担保をとっておけば,回収不能のリスクを減らすことができます。
四 まとめ
お金がないから,お金を借りるのが通常ですから,貸金返還請求事件では,借主に返済できる資力があるかどうかが大きな問題となります。
そのため,請求が認められるかどうかということだけでなく,債権回収ができるかどうかということも考えなければなりません。
トラブルになった場合には,弁護士に相談や依頼をすることをおすすめします。

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【離婚】DV防止法の保護命令
DV(ドメスティック・バイオレンス)の事案では,配偶者から危害を受けないよう身の安全を守ることが重要です。
配偶者から危害を受けるおそれがある場合には, 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)による保護命令の申立てをすることが考えられます。
一 DV防止法の保護命令とは
DV防止法の保護命令とは,配偶者から身体に対する暴力や生命・身体に対する脅迫を受けた被害者が,配偶者からの身体に対する暴力により,生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに,生命・身体に危害が加えられることを防止するために,裁判所が配偶者に対し接近禁止や退去等を命じる命令です(DV防止法10条)。
保護命令に違反した場合,違反者には刑事罰が科されます(DV防止法29条)。
「配偶者」は,法律婚の配偶者のみならず,事実婚の配偶者も含みます(DV防止法1条3項)。また,同居中の交際相手(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいない場合は除きます。)から暴力等を受けている場合にも,保護命令の申立てができます(DV防止法28条の2)。
二 保護命令の種類
保護命令には,①接近禁止命令,②退去命令,③子への接近禁止命令,④親族等への接近禁止命令,⑤電話等禁止命令があります(DV防止法10条)。
③から⑤の命令は,①の命令の実効性を確保するために出されますので,①の命令と同時か既に出されている場合にのみ発令されます。
1 接近禁止命令
(1)接近禁止命令とは
加害者に対し,命令の効力が生じた日から6か月間,被害者の住居(加害者と共に生活の本拠としている住居は除きます。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい,又は被害者の住居,勤務先その他その通常所在する場所の付近を徘徊してはならないとする命令です(DV防止法10条1項1号)。
(2)要件
①配偶者から身体に対する暴力または生命・身体に対する脅迫を受けた被害者にあたること(DV防止法10条1項)
②配偶者からの身体に対する暴力により,生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きいこと(DV防止法10条1項)
③配偶者暴力相談支援センターか警察に相談等を求めたこと(DV防止法12条1項5号)
または,被害者が,配偶者から暴力を受けた状況等の供述書面を作成し,公証人の認証を受けたこと(DV防止法12条2項)
2 退去命令
(1)退去命令とは
加害者に対し,命令の効力が生じた日から2か月間,被害者と同居している住居(被害者と共に生活の本拠としている住居)から退去すること,当該住居の付近を徘徊してはならないことを命じる命令です(DV防止法10条1項1号)。
被害者が引越しの準備をするためにもうけられたものです。
(2)要件
被害者への接近禁止命令の要件と同じですが,加害者を自宅から退去させるものであり,加害者への影響が大きいので,厳しく判断されます。
3 子への接近禁止命令
(1)子への接近禁止命令とは
加害者に対し,命令の効力が生じた日から6か月間,子の住居(加害者と共に生活の本拠としている住居は除きます。),就学する学校その他の場所において子の身辺につきまとい,または子の住居,就学する学校その他その通常所在する場所の付近を徘徊してはならないとする命令です(DV防止法10条3項)。
「子」は,被害者と同居中の未成年の子を指します(DV防止法10条3項)。別居中の子や成年の子への接近禁止命令が必要な場合には,親族等への接近禁止命令の申立てをします。
また,子が15歳以上の場合は,子の同意が必要となります。
子への接近禁止命令は,被害者が子に関して加害者と会わざるを得なくなる状態を防ぐためになされるものであり,子の保護を目的とするものではありません。
(2)要件
①被害者への接近禁止命令の要件をみたすこと
②被害者が未成年の子と同居していること
③被害者が,子に関して配偶者と会わざるを得なくなる状態を防ぐ必要があること
④子が15歳以上であるときは,その子の書面による同意があること(DV防止法10条3項但書,保護命令手続規則1条2項,3項)
4 親族等への接近禁止命令
(1)親族等への接近禁止命令とは
加害者に対し,命令の効力が生じた日から6か月間,親族等の住居(加害者と共に生活の本拠としている住居は除きます。)その他の場所において親族等の身辺につきまとい,または親族等の住居,勤務先その他その通常所在する場所の付近を徘徊してはならないとする命令です(DV防止法10条4項)。
「親族等」とは,親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者をいいます。被害者と同居している子や加害者と同居している者は除きます(DV防止法10条4項)。
また,申立てには,親族等(被害者の15歳未満の子は除きます。)の同意が必要となります(DV防止法10条5項)
親族等への接近禁止命令は,被害者が親族等に関して加害者と会わざるを得なくなる状態を防ぐためになされるものであり,親族等の保護を目的とするものではありません。
(2)要件
①被害者への接近禁止命令の要件をみたすこと
②被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者(被害者と同居している子や加害者と同居している者は除きます。)であること
③被害者が親族等に関して加害者と会わざるを得なくなる状態を防ぐ必要があること
④親族等(被害者の15歳未満の子は除きます。)の書面による同意があること(DV防止法10条5項,保護命令手続規則1条2項,3項)
5 電話等禁止命令
(1)電話等禁止命令とは
加害者に対し,命令の効力が生じた日から起算して6か月間,以下の各行為をしてはならないとする命令です(DV防止法10条2項)。
①面会を要求すること
②行動を監視していると思わせるような事項を告げ,又はその知りうる状態に置くこと
③著しく粗野又は乱暴な言動をすること
④電話をかけて何も告げないこと,又は緊急やむを得ない場合を除き,連続して,電話,ファックス送信,電信メールの送信をすること
⑤緊急やむを得ない場合を除き,午後10時から午前6時までの間に,電話,ファックス送信,電子メールの送信をすること
⑥汚物,動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し,又は知りうる状態に置くこと
⑦名誉を害する事項を告げ,又は知り得る状態に置くこと
⑧性的羞恥心を害する事項を告げ,若しくは知りうる状態に置くこと,又は性的羞恥心を害する文書,図画その他の物を送付し,若しくは知り得る状態に置くこと
(2)要件
被害者への接近禁止命令の要件と同じです。
四 保護命令申立ての手続
1 申立権者(申立てができる人)
(1)配偶者から身体への暴力等を受けている被害者
配偶者(事実婚の配偶者も含みます。)から身体への暴力や生命・身体に対する脅迫を受けている人は,今後も身体に暴力を受け,生命・身体に暴力を受けるおそれが大きいときには,保護命令の申立てをすることができます。
(2)同居中の交際相手から暴力等を受けている被害者
生活の本拠を共にする交際相手(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものは除きます。)から身体への暴力や生命・身体に対する脅迫を受けている人は,今後も身体に暴力を受け,生命・身体に暴力を受けるおそれが大きいときには,保護命令の申立てをすることができます(DV防止法28条の2)。
(3)離婚・婚姻の取消・関係解消した場合
離婚・婚姻の取消・関係解消前から,身体への暴力や生命・身体に対する脅迫を受けており,離婚・婚姻の取消・関係解消後も,引き続き身体に対する暴力を受け,生命・身体に暴力を受けるおそれが大きいときには,保護命令の申立てをすることができます(DV防止法10条1項,28条の2)。
これに対し,婚姻中や交際中は暴力や脅迫はなく,離婚・婚姻の取消・関係解消後に暴力・脅迫を受けるようになった場合は,保護命令の申立てはできません。そのような場合には,ストーカー規制法での対応を検討することになります。
2 管轄裁判所
①相手方の住所(日本国内に住所がないときや住所が知れないときは居所)の所在地
②申立人の住所または居所の所在地
③配偶者からの身体に対する暴力または生命等に対する脅迫が行われた地
のいずれかを管轄する地方裁判所に申立てをします(DV防止法11条)
3 申立ての方法
保護命令の申立ては,裁判所に必要事項を記載した書面(申立書)を提出して行います(DV防止法12条)。申立てにあたっては,手数料(収入印紙)や郵券の納付も必要となります。
(1)申立書の記載事項
申立書には,以下の事項を記載します(DV防止法12条1項,配偶者暴力等に関する保護命令手続規則1条1項)。
①配偶者からの身体に対する暴力または生命などに対する脅迫を受けた状況(DV防止法12条1項1号)
②配偶者からの更なる身体に対する暴力または配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後の配偶者から受ける身体に対する暴力により,生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる申立時における事情(DV防止法12条1項2号)
③子への接近禁止命令を申し立てる場合は,被害者が同居する子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため発令の必要があると認めるに足りる申立時における事情(DV防止法12条1項3号)
④親族等への接近禁止命令を申し立てる場合は,被害者が親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため発令の必要があると認めるに足りる申立時における事情(DV防止法12条1項4号)
⑤配偶者暴力相談支援センターの職員や警察職員に対し,相談,援助,保護を求めた事実の有無,相談等をした機関名,日時,場所,内容,とられた措置(DV防止法12条1項5号)
⑥その他(当事者や代理人の氏名・住所,申立ての趣旨・理由,「子」の氏名・生年月日,「親族等」の氏名・被害者との関係等 保護命令手続規則1条1項)
(2)添付書類
申立書には,①警察等に相談等をした事実がないときは,申立人の供述を記載し,公証人の認証を受けた宣誓供述書(DV防止法12条2項),②子への接近禁止命令の申立てをする場合で,子が15歳以上のときは,その同意書(保護命令手続規則1条2項,3項),③親族等への接近禁止命令の申立てをする場合は,親族等の同意書(保護命令手続規則1条2項,3項),④書証(診断書や陳述書等)の写し,⑤その他(戸籍謄本,住民票等)の書類を添付します。
(3)申立人の住所
申立書には申立人の住所を記載しますが,DV事案では,被害者がどこにいるのか配偶者に知られないように配慮しなければなりません。
そのため,被害者が,住居から避難した場合には,避難先の住所ではなく,元いた住居の住所を記載する等,居場所を知られないようにしましょう。
また,申立書や提出書類は,当事者が閲覧・謄写ができますので(DV防止法19条),申立人の居場所やその手掛かりとなるような情報の記載がないか十分注意しましょう。
4 裁判所から警察等への書面提出の請求
申立てを受理した後,裁判所は,申立書に記載された支援センターや警察署に相談・保護を求めた状況やどのような措置を執ったのか書面で回答を求めます(DV防止法14条2項)。
5 審尋
裁判所は,申立人の面接を行い,次いで,相手方の意見聴取のための審尋期日を開き,相手方の言い分を聞いてから,保護命令を発令するか決めます。
6 決定
裁判所は,審理の結果,保護命令発令の要件を満たしていると判断した場合には,申立を認容する決定(保護命令)をします。
保護命令は,相手方に対する決定書を送達するか,期日に言い渡すことにより,効力が生じます(DV防止法15条2項)。
決定に不服がある者は即時抗告をすることができます(DV防止法16条)。
また,決定がでても,保護命令が取り消されることもあります(DV防止法17条)。
7 再度の申立て
保護命令の効力には期間制限がありますので,保護命令の発令後,再度の申立てをすることができます。
再度の申立てをする場合には,再度の申立ての時点で保護命令の要件をみたす必要があります。
また,退去命令の再度の申立ての場合には,転居しようとする被害者が責めに帰すことができない事由により2か月以内に転居を完了できないときその他退去命令を再度発令する必要があると認められなければなりませんし(DV防止法18条1項本文),配偶者の生活に特に著しい支障が生じると認められるときは命令が発せられないことがあります(DV防止法18条1項但書)。
五 保護命令の効果
1 警察や支援センターへの通知
保護命令が発令された場合,裁判所書記官は,申立人の住所や居所を管轄する警察に通知します(DV防止法15条3項)。また,申立人が支援センターに相談していたことが申立書に記載されていた場合には,支援センターにも通知されます(DV防止法15条4項)。
2 刑事罰
保護命令に違反した場合には,1年以下の懲役まはた100万円以下の罰金に処されます(DV防止法29条2項)。
保護命令には民事上の執行力はないので,強制執行はできませんが(DV防止法15条5項),違反した場合には刑罰が科されるにより,保護命令の実行性が担保されることになります。
三 まとめ
配偶者から暴力等を受けている被害者の方が,配偶者から危害を加えられるおそれがある場合には,DV防止法の保護命令の申立てを検討しましょう。
保護命令の申立てが必要となるような事案では,本人だけで対応することは難しい場合が多いでしょうから,弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

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【損害賠償請求】使用者責任
ある会社の従業員が勤務中に交通事故を起こした場合,被害者は,直接の加害者である従業員だけでなく,その使用者である会社に対しても使用者責任を追及して損害賠償請求をすることができます。
一 民法715条の使用者責任
民法715条1項は「ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし,使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは,この限りでない。」と規定しております。この使用者が負う責任のことを使用者責任といいます。
使用者責任については,選任・監督上のミスをした使用者の自己責任であり,立証責任を転換して,使用者に免責事由があることの立証責任を負わせる中間責任であるとする見解もありますが,一般的には,報償責任(利益を得る者は損失も負う)または危険責任(危険を支配する者は責任も負う)に基づくものであり,使用者が被用者に代わって責任を負う代位責任であると解されております。
二 要件
1 使用関係(事業のため他人を使用)
「事業のために他人を使用」している関係が必要です。
使用関係があるかどうかは,実質的な指揮監督関係があるかどうかで判断されます。
使用関係がある場合としては,雇用契約がある場合が典型ですが,実質的な指揮監督関係がある場合であれば,請負契約(元請人と下請人)や委任契約でも使用関係があると判断されます。
被害者保護の観点から使用関係の要件は広く解されており,実質的な指揮監督関係があれば,一時的な関係でも,営利性がなくても,違法な関係でも,契約関係がなくてもかまいません。
2 業務執行性
被用者の行為は「事業の執行について」なされたものでなければなりません。
(1)外形理論(外形標準理論)
「業務の執行について」なされたといえるかどうかは,使用者の事業の範囲に属し,被用者の職務の範囲内であるかで判断されますが,被用者の職務の範囲に属しないものであっても,行為の外形から観察して,被用者の職務の範囲内であるとみられる場合には事業の執行につきなされたものと判断されます(外形理論・外形標準説)。
外形理論(外形標準理論)は,被害者の外形に対する信頼を保護するものですから,被害者が被用者の職務の範囲内に属しないことを知っていた場合(悪意)や重大な過失により知らなかった場合(重過失)には,被害者の信頼を保護する必要はありませんので,「事業の執行について」なされた行為にはあたらないと解されております。
例えば,被用者から取引を持ちかけられて金銭を騙し取られた場合(取引的不法行為),被害者が,被用者の職務の範囲内だと思っていた場合には,重過失がない限り,「事業の執行について」なされたと判断されます。
(2)事実的不法行為の場合
交通事故や暴力行為等,事実行為による不法行為のことを,事実的不法行為といいます。
事実的不法行為の場合にも,外形理論(外形標準理論)で判断する判例はありますが,取引的不法行為の場合とは異なり,被害者が外形を信頼したかどうか問題とならず,外形理論(外形標準理論)が基準として適当ではないことがあります。
そのような場合には,加害行為が,使用者の支配領域内の危険に由来するものであるかどうか(被用者が交通事故を起こした場合),使用者の事業の執行行為を契機とし,これと密接な関連性を有するかどうか(被用者が暴力行為をした場合)といった基準で,「業務の執行について」なされたといえるか判断されます。
3 被用者の不法行為
使用者責任は,代位責任であると解されておりますし,使用者は被用者に求償することができるので(民法715条3項),被用者が不法行為責任を負うことが前提となっております。
そのため,被用者について不法行為の要件を満たすことが必要となります。
4 免責事由の不存在
使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきときは使用者は責任を免れます(民法715条1項但書)。
免責事由が存在することは,責任を免れる側である使用者が立証しなければなりませんが,使用者責任は無過失責任に近いものと考えられているため,免責事由の存在は容易には認められません。
三 使用者の責任
1 不真正連帯債務
使用者責任の要件を満たす場合,使用者は,被害者に対し損害賠償義務を負いますが,被用者も民法709条により不法行為責任を負います。
使用者の責任と被用者の責任は,不真正連帯債務の関係にあたると解されており,被害者は,使用者と被用者のどちらに対しても,全額について損害賠償請求をすることができますが,一方が支払った場合,他方はその限度で責任を免れます。
2 求償
使用者が被害者に対し損害賠償義務を履行した場合,使用者は被用者に対し求償権を行使することができますが(民法715条3項),損害の公平な分担の見地から,信義則上,使用者の求償権の行使が制限され,全額は求償できないことがあります。
逆に,被用者が被害者に対し損害賠償義務を履行した場合,被用者は使用者に対し求償すること(逆求償)ができるのかどうか問題となります。被用者が使用者に求償できるとする条文はありませんが,逆求償を認めた裁判例もあります。被用者が故意に不法行為をした場合は別として,過失の場合,被用者と使用者のどちらが先に損害賠償するかによって被用者の負担が異なるのはおかしいので,事案によって逆求償は認められるべきでしょう。
四 代理監督者の責任
民法715条2項は「使用者に代わって事業を監督する者も,前項の責任を負う。」と規定しており,使用者に代わって事業を監督する者(代理監督者)も民法715条1項の責任を負います。
代理監督者は,客観的にみて,使用者に代わって現実に被用者を選任・監督する地位にある者のことをいい,肩書だけで判断されるわけではありません。
例えば,法人である使用者の代表取締役の場合,代表取締役という肩書があるだけでは代理監督者にはあたりませんが,現実に被用者の選任・監督をしていた場合には,代理監督者にあたります。
五 まとめ
直接の加害者に賠償能力がない場合であっても,使用者責任を追及することができる場合には,被害者は,加害者の使用者から損害賠償を受けることができますので,直接の加害者だけでなく,使用者に責任を追及することができる事案かどうか確認しましょう。
また,使用者からすれば,被用者が不法行為をした場合には,使用者自身も責任を追及されるおそれがありますので,被用者が問題を起こさないよう選任や監督に注意すべきですし,保険に入る等の対応をすべきでしょう。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【交通事故】物損 所有権留保の場合
自動車を分割払やローンで購入した場合,代金やローンの完済するまで売主やローン会社に自動車の所有権が留保されることがあります。
その場合,自動車の買主は,代金等を完済するまで自動車の所有権を有しないことになりますが,完済前に物損事故にあったとき,買主は損害賠償請求をすることができるのでしょうか。
一 全損の場合
全損には,物理的に修理が不能な場合(物理的全損)と,修理費が自動車の時価を上回り経済的に全損と扱われる場合(経済的全損)があり,自動車の事故時における時価相当額が損害となります(ただし,事故車両に経済的価値がある場合には,自動車の事故時における時価相当額から事故車両の売却代金を控除した差額)。
全損の場合,自動車の交換価値が滅失されたことが損害となりますので,自動車の交換価値を把握する自動車の所有者が損害賠償請求権を取得します。
そのため,買主が自動車の代金を完済していない場合には,自動車の所有権は売主にありますので,売主が損害賠償請求権を取得し,買主は損害賠償請求をすることはできないと解されます。
もっとも,事故後であっても,代金を完済すれば,買主は損害賠償請求をすることができるようになります。
また,経済的全損の場合,廃車せずに修理して使用を続けることもあります。その場合,買主は,修理費を負担することにはなりますが,時価相当額の範囲で損害賠償請求をすることができるものと考えられます。
二 修理費
買主が修理して修理費を負担した場合には,買主が修理費について損害賠償請求をすることができます。
修理していない場合でも,買主が修理費を負担する義務を負うときには,買主は修理費相当額の損害賠償請求をすることができると解されます。
三 代車使用料
買主が,修理期間中や買替期間中に,実際に代車を使用し,代車使用料を負担した場合には,買主は代車使用料について損害賠償請求をすることができます。
四 評価損
評価損は,自動車の交換価値が低下したことによる損害ですから,自動車の交換価値を把握する自動車の所有者の損害です。
そのため,代金等を完済するまでは,買主は評価損について損害賠償請求をすることはできないと解されます。
五 まとめ
全損や評価損のように自動車の交換価値が滅失・低下したことによる損害については,自動車の交換価値を把握する所有者の損害となるため,完済していない場合には買主が損害賠償請求することができないのが原則です(もっとも,買主の損害賠償請求を認めた裁判例もありますので,争う余地がないわけではありません。所有権留保は担保の趣旨であり,実質的な所有者は買主であると考えることもできるのではないでしょうか。)。
これに対し,修理費や代車料等,買主が負担するものについては,買主の損害として,損害賠償請求することができると解されます。
所有権留保の場合,買主と売主等との契約内容によって結論が異なる可能性がありますので,契約内容の確認をすべきでしょう。

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【離婚】離婚届 創設的届出と報告的届出
離婚する方法には,①協議離婚,②調停離婚,③審判離婚,④和解離婚,⑤認諾離婚,⑥判決離婚があります。
いずれの方法による離婚でも,届出(離婚届の提出)が必要となりますが,協議離婚の場合には,届出によって離婚の効力が生じるのに対し(創設的届出),協議離婚以外の離婚の場合には,届出がなくても離婚の効力は生じており,届出は離婚したことの報告となります(報告的届出)。
一 協議離婚の場合(創設的届出)
協議離婚は,戸籍法の定めるところにより,届け出ることによって,その効力を生じます(民法764条,739条1項)。
届け出は,当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で,または,これらの者から口頭でしなければなりませんが(民法764条,739条2項),届け出は書面(離婚届)で行うのが一般的です。
協議離婚する場合には,役所や役場から離婚届の用紙をもらってきて,その用紙に必要事項を記入し,夫婦双方が署名押印し,証人2人に署名押印をしてもらい,本籍地または所在地の市区町村の役所や役場に離婚届を提出します。本籍地以外の役所や役場に届け出る場合は,戸籍謄本または戸籍事項全部証明書が必要となります。
また,夫婦に未成年の子がいる場合,協議離婚するときには,一方を親権者と定めなければなりませんので(民法819条1項),離婚届には,夫が親権を行う子の氏名または妻が親権を行う子の氏名を記載します。
離婚届は,当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で,または,これらの者から口頭でなされたこと(民法764条において準用する民法739条2項),親権者の定めがあること(民法819条1項)その他の法令の規定に違反しないことが認められた後でなければ,受理されませんが(民法765条1項),違反して受理された場合であっても,離婚の効力は妨げられません(民法765条2項)。
また,離婚届作成後に離婚意思がなくなった場合,役所・役場に離婚届が受理される前に不受理申出をしておけば,離婚届は受理されなくなりますので(離婚届不受理申出制度),離婚届を作成後に離婚意思がなくなった場合や,離婚意思がないが相手方や第三者が勝手に離婚届を出すおそれがある場合には,離婚届を出される前に不受理申し出をしておきましょう。
二 協議離婚以外の離婚の場合(報告的届出)
①調停離婚は調停の成立,②審判離婚は審判の確定,③和解離婚は和解の成立,④認諾離婚は請求の認諾,⑤判決離婚は判決の確定により,それぞれ離婚の効力が生じます。
これらの場合,離婚の効力が成立した日から10日以内に報告的届出をしなければなりません(戸籍法77条1項,63条1項)。
届出は,離婚届(用紙は協議離婚の用紙と同じです。)に必要事項を記入し,①調停調書の謄本,②審判書の謄本と確定証明書,③和解調書の謄本,④認諾調書の謄本,⑤判決書の謄本と確定証明書,のいずれかを添付して,本籍地または所在地の役所や役場に提出します。
協議離婚の場合とは異なり,証人は不要です。
届け出は,原則として申立人(原告)が行いますが,申立人が10日以内に届け出を行わない場合には相手方(被告)も届け出をすることができます(戸籍法77条1項,63条2項)。
また,相手方が届出をしたい場合には,調停条項や和解条項で「相手方(被告)の申出により離婚する」としておけば,相手方(被告)が届け出をすることができます。
なお,当事者が協議離婚の形をとることを望み,調停条項や和解条項で協議離婚の合意をすることがありますが,その場合には調停離婚や和解離婚ではありませんので,協議離婚の場合の届出をしないと離婚の効力は生じません。

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【民事訴訟】判決に不服がある場合(控訴)
民事訴訟では,三審制がとられており,第一審,控訴審,上告審があります。
第一審の判決に不服がある場合には,控訴をすることができます。
1 控訴ができる場合(控訴の利益,不服の利益)
第一審の判決に不服がある場合には,控訴をすることができます(民事訴訟法281条)。
控訴をするにあたっては不服(控訴の利益,不服の利益)がなければなりませんので,第一審が全部勝訴(全部認容判決)の場合には控訴はできません。
また,第一審で一部勝訴(一部認容判決)の場合は,原告,被告双方に敗訴部分がありますので,原告,被告とも控訴ができます。
2 控訴裁判所
控訴裁判所は,第一審の裁判所が簡易裁判所である場合は地方裁判所となり(裁判所法24条3号),第一審の裁判所が地方裁判所である場合は高等裁判所となります(裁判所法16条1号)。
3 控訴期間
控訴は,控訴人となる当事者が判決正本の送達を受けた日から2週間以内に提起しなければなりません(民事訴訟法285条)。
ただし,控訴期間の末日が,日曜日,土曜日,祝日,1月2日,1月3日,12月29日から31日までにあたるときは,その翌日に満了します(民事訴訟法95条3項)。
控訴期間は不変期間(法定期間のうち,裁判所が伸長・短縮できないもの)です。控訴期間を過ぎると,追完ができる場合(民事訴訟法97条)を除いて控訴することができなくなりますので,控訴期間を徒過しないようよう注意しましょう。
4 控訴提起
控訴提起は,控訴期間内に,控訴裁判所宛ての控訴状を第一審の裁判所に提出して行います(民事訴訟法286条1項)。
第一審の裁判所は,控訴状を審査して,控訴が不適法で補正ができない場合は控訴を却下の決定をしますが(民事訴訟法287条1項),問題がなければ,控訴裁判所へ訴訟記録が送付され(民事訴訟規則174条),事件番号が付され,期日が指定されます。
また,控訴状に第一審判決の取消しまたは変更を求める理由を記載しなかった場合には,控訴提起後,50日以内に控訴理由書を提出する必要があります(民事訴訟規則182条)。
5 控訴審の審理
控訴審は,続審主義が採用されており,第一審の裁判資料に加えて,控訴審で収集された新たな資料に基づいて,控訴審の口頭弁論終結時を基準として,第一審判決の当否が判断されます。
6 控訴審の終了
(1)訴えの取下げ,請求の放棄・認諾,訴訟上の和解
控訴審も第一審同様,訴えの取下げ,請求の放棄・認諾がある場合や訴訟上の和解が成立した場合には,終了します。
なお,控訴審で訴えを取り下げた場合,第一審で本案判決がなされたときには,本案について終局判決があった後に訴えを取り下げたことになるので,同一の訴えを提起することができなくなります(再訴禁止効。民事訴訟法262条2項)
(2)控訴の取下げ
控訴は,控訴審の終局判決があるまで取り下げることができます(民事訴訟法292条1項)。
取り下げると,初めから控訴はなかったものとされます(民事訴訟法292条2項,262条1項)。
控訴を取り下げた時点で控訴期間が過ぎている場合には,あらためて控訴提起することはできなくなるので,第一審の判決は確定します。
控訴の取下げは,控訴自体を取り下げるものであり,訴えの取下げ(訴え自体の取り下げ)とは違いますので注意して下さい。
(3)終局判決
①控訴却下判決
控訴が不適法な場合には,却下判決がなされます。
②控訴棄却判決
控訴に理由がない場合には,棄却判決がなされます。
③控訴認容判決
控訴に理由があり,第一審判決の判断が不当な場合(民事訴訟法305条)や,第一審判決の手続が法律に違反する場合(民事訴訟法306条)には認容判決がなされ,第一審判決は取り消されます。
第一審判決が取り消された場合,自判(控訴審が自ら裁判をすること),差戻し(事件を第一審裁判所に戻すこと),移送(管轄違いを理由に第一審判決を取り消す場合に,管轄のある第一審裁判所に移送すること。民事訴訟法309条)のいずれかの措置がとられます。
控訴審は事実審ですので,自判が原則ですが,第一審判決が訴え却下判決の場合は,事件について更に弁論をする必要がない場合を除き,事件を第一審裁判所に差し戻さなければなりませんし(必要的差戻し。民事訴訟法307条),それ以外の場合でも,更に弁論をする必要があるときには,第一審裁判所に差し戻すことができます(任意的差戻し。民事訴訟法308条1項)。
第一審判決の取消し,変更は,不服申立ての限度でのみできますので(民事訴訟法304条),控訴人が不服を申し立てた範囲を超えて不利益な判決を受けることはありませんし(不利益変更禁止の原則),不服を申し立てていない部分につき有利な判決を受けることもありません。
7 附帯控訴
控訴された当事者(被控訴人)は,控訴手続を利用して,自分に有利な判決を求めて,附帯控訴をすることができます(民事訴訟法293条)。
附帯控訴は,控訴に付随するものであるため,控訴期間の制限はなく,控訴期間徒過後でもできますが,控訴審の口頭弁論終結後は附帯控訴できなくなります(民事訴訟法293条1項)。
また,控訴の取下げや却下の場合には附帯控訴の効力もなくなりますが(民事訴訟法293条2項),附帯控訴が控訴の要件を満たしていれば独立の控訴として扱われ,控訴審は続行します(民事訴訟法293条2項但書)。

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【民事訴訟】弁護士費用を相手方に請求できるか(訴訟費用)
訴状の請求の趣旨に「訴訟費用を被告の負担とする」と書いてあるので,相手方に弁護士費用を負担させることができるのかと質問されたり,逆に相手方の弁護士費用を負担しなければならないのかと質問されたりすることがよくありますが,弁護士費用は各自が負担しなければなりません。
「訴訟費用」は,訴え提起の際に裁判所に納める収入印紙代などの手数料,裁判所が書類を送付・送達するための費用など訴訟において要した費用のことであり,弁護士費用は含まれません。
また,弁護士費用を敗訴者に負担させるという敗訴者負担制度をつくるべきではないかという議論もありますが,現在のところ採用されていません。
日本では,弁護士に依頼せず,本人で訴訟を追行することができ,弁護士に依頼するかどうかは当事者本人の自由ですので,弁護士費用は,弁護士に依頼した人が負担することになります。
したがって,勝訴しても相手方に弁護士費用を負担させることはできませんし,敗訴しても相手方の弁護士費用を負担しなければならないわけではありません。
ただし,交通事故などの不法行為に基づく損害賠償請求では,被害者は,一定範囲で弁護士費用の損害として加害者に賠償請求することができますので,その限りでは弁護士費用を相手方に負担させることができます。

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【民事訴訟】訴訟告知
保証債務の履行請求訴訟で保証人が敗訴した場合,保証人は主債務者に求償することが考えられますが,主債務者が主債務の存在を否定し求償を拒まれ,二重に敗訴するおそれがあります。
また,ある物を買った者が,売り主以外の者から所有権に基づく返還請求訴訟を提起されて敗訴した場合,買い主は売り主に損害賠償請求をすることが考えられますが,売り主が自分に所有権があったと主張して損害賠償義務を争われ,二重に敗訴するおそれがあります。
そのような場合,訴訟告知をすることが考えられます。
一 訴訟告知とは
訴訟告知とは,当事者が,訴訟の係属中に,補助参加等,参加することができる第三者にその訴訟係属の事実を通知することです(民事訴訟法53条1項)。
訴訟告知は,訴訟告知をされた人(被告知者)に訴訟に参加する機会を与えるとともに,訴訟告知をした人(告知者)が敗訴した場合には,被告知者が訴訟に参加しなかったとしても,被告知者に参加的効力を及ぼすことができるという制度です(民事訴訟法53条4項)。
例えば,保証債務の履行請求訴訟で,保証人が主債務者に訴訟告知をした場合,主債務者は参加的効力により,主債務の存在を否定して求償を拒むことができなくなりますし,所有権に基づく返還請求訴訟で,買い主が売り主に訴訟告知をした場合,売り主は参加的効力により,自分の所有物であったと主張することができなくなり,損害賠償を拒むことができなくなります。
二 訴訟告知の要件
1 訴訟の係属中であること
訴訟告知は,被告知者に訴訟係属の事実を通知して,訴訟に参加する機会を与えるものですから,訴訟の係属中でなければなりません。
なお,控訴審や上告審でも訴訟告知をすることはできますが,被告知者が十分な攻撃防御をすることができない時期に訴訟告知をした場合には,被告知者に対する参加的効力が及ぶか問題となるでしょう。
2 告知者
訴訟告知は,当事者(民事訴訟法53条1項)のほか,補助参加人も当事者のためにできますし(民事訴訟法45条1項),被告知者もさらに訴訟告知をすることができます(民事訴訟法53条2項)。
3 被告知者
被告知者は,訴訟に参加することができる第三者のことです(民事訴訟法53条1項)。
参加は,補助参加の場合が多いですが,独立当事者参加や共同訴訟参加も含まれます。
三 訴訟告知の方式
訴訟告知は,「告知の理由」および「訴訟の程度」を記載した書面(訴訟告知書)を裁判所に提出して行います(民事訴訟法53条3項)。
「告知の理由」としては,被告知者が参加するかどうかを判断することができるようにするため,被告知者が訴訟にどのような利害関係を有しているか,訴訟の結果,告知者と被告知者との間でどのような紛争が生じる可能性があるかを具体的に記載します。
「訴訟の程度」としては,訴訟が係属している裁判所名と,審理の段階(一般的には次回期日の予定)を記載します。
裁判所に訴訟告知書の原本のほか,被告知者に送達する副本を提出するとともに,相手方当事者には訴訟告知書の写しを送付します(民事訴訟規則22条)。
訴訟告知には,手数料は不要ですが,送達費用(郵券)の予納は必要となります。
四 訴訟告知の効果
1 参加的効力
被告知者は,訴訟に参加しなければならないわけではありませんが,参加しなかった場合でも,参加することができるときに参加したものとみなされ,被告知者に参加的効力(民事訴訟法46条)が生じます(民事訴訟法53条4項)。
参加的効力とは,判決が確定した場合に,被告知者が告知者に対して判決が不当であると主張することを禁じる効力であり,判決理由中の判断についても及びます。
なお,被告知者に参加的効力が生じるのは,被告知者が補助参加することができることが前提ですから,被告知者が補助参加する利益を有する場合でなければならず,告知者が敗訴した場合に被告知者が告知者に対し求償義務や損害賠償義務を負う関係にあることが必要となります。
また,訴訟が和解で終了した場合には,参加的効力は生じません。
2 時効中断
手形法や小切手法では,裏書人について訴訟告知に時効中断の効力があります(手形法86条,小切手法73条)。
また,訴訟告知が,告知者から被告知者からの催告と認められる場合には,訴訟終了後6か月以内に裁判上の請求等をすれば,時効中断の効力が生じます(民法153条)。
五 訴訟告知された場合
訴訟告知された場合には,訴訟に参加しなくても参加的効力が及びますので,補助参加等をするかどうか検討しましょう。訴訟告知をされた場合には,弁護士に相談することをおすすめします。

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【離婚】離婚原因(配偶者の親族との不和)
嫁姑の仲が悪い等,夫婦の一方と他方の親族との不和が原因で,離婚問題に発展することがありますが,配偶者の親族との不和を理由に離婚することはできるのでしょうか。
夫婦が離婚に合意する場合には離婚原因の有無にかかわらず,離婚できますが,夫婦の一方が離婚することに反対している場合には,最終的に離婚訴訟の判決で離婚が認められなければなりません。
判決で離婚が認められるには,民法770条1項の規定する離婚原因(①不貞行為,②悪意の遺棄,③3年以上の生死不明,④回復の見込みのない強度の精神病,⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由)がなければなりませんが,親族との不和の場合は,①から④にはあたりませんので,⑤の婚姻を継続し難い重大な事由があるかどうかが問題となります。
婚姻を継続し難い重大な事由とは,婚姻関係が破綻しており,回復の見込みがないことをいいます。
婚姻を継続し難い重大な事由があるかどうかは,①夫婦の意思(婚姻継続の意思があるか,関係修復の意思があるか等),②夫婦の関係(会話,交流,性的関係,喧嘩等の有無・程度),③夫婦の言動や態度,④夫婦の年齢,職業,健康状態等,⑤子の有無,年齢,子との関係,⑥婚姻期間,同居期間の長さ,⑦別居の有無や別居期間の長さ等具体的な事情を総合的に考慮して判断されます。
夫婦の一方が他方の親族と不仲になったとしても,それだけでは婚姻を継続し難い重大な事由にはあたらないのが通常です。
もっとも,夫婦の一方と他方の親族との不和が原因で夫婦関係が悪化し,回復の見込みがない状態になったときには,婚姻を継続し難い重大な事由にあたり,離婚が認められます。
例えば,妻が夫の親族と不仲になり,妻が離婚請求した場合,夫が自分の親族に加担したり,不和を解消する努力を怠ったりしたときには,婚姻を継続し難い重大な事由があると判断されることがあります。
また,親族との不和が原因で夫婦関係が悪くなり,不倫や浮気(不貞行為),暴力(DV),長期間の別居等,別の離婚原因が生じ,それにより離婚に至ることもあります。

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