【民事訴訟】判決に不服がある場合(控訴)

2017-03-29

民事訴訟では,三審制がとられており,第一審,控訴審,上告審があります。

第一審の判決に不服がある場合には,控訴をすることができます。

 

1 控訴ができる場合(控訴の利益,不服の利益)

第一審の判決に不服がある場合には,控訴をすることができます(民事訴訟法281条)。

控訴をするにあたっては不服(控訴の利益,不服の利益)がなければなりませんので,第一審が全部勝訴(全部認容判決)の場合には控訴はできません。

また,第一審で一部勝訴(一部認容判決)の場合は,原告,被告双方に敗訴部分がありますので,原告,被告とも控訴ができます。

 

2 控訴裁判所

控訴裁判所は,第一審の裁判所が簡易裁判所である場合は地方裁判所となり(裁判所法24条3号),第一審の裁判所が地方裁判所である場合は高等裁判所となります(裁判所法16条1号)。

 

3 控訴期間

控訴は,控訴人となる当事者が判決正本の送達を受けた日から2週間以内に提起しなければなりません(民事訴訟法285条)。

ただし,控訴期間の末日が,日曜日,土曜日,祝日,1月2日,1月3日,12月29日から31日までにあたるときは,その翌日に満了します(民事訴訟法95条3項)。

控訴期間は不変期間(法定期間のうち,裁判所が伸長・短縮できないもの)です。控訴期間を過ぎると,追完ができる場合(民事訴訟法97条)を除いて控訴することができなくなりますので,控訴期間を徒過しないようよう注意しましょう。

 

4 控訴提起

控訴提起は,控訴期間内に,控訴裁判所宛ての控訴状を第一審の裁判所に提出して行います(民事訴訟法286条1項)。

第一審の裁判所は,控訴状を審査して,控訴が不適法で補正ができない場合は控訴を却下の決定をしますが(民事訴訟法287条1項),問題がなければ,控訴裁判所へ訴訟記録が送付され(民事訴訟規則174条),事件番号が付され,期日が指定されます。

また,控訴状に第一審判決の取消しまたは変更を求める理由を記載しなかった場合には,控訴提起後,50日以内に控訴理由書を提出する必要があります(民事訴訟規則182条)。

 

5 控訴審の審理

控訴審は,続審主義が採用されており,第一審の裁判資料に加えて,控訴審で収集された新たな資料に基づいて,控訴審の口頭弁論終結時を基準として,第一審判決の当否が判断されます。

 

6 控訴審の終了

(1)訴えの取下げ,請求の放棄・認諾,訴訟上の和解

控訴審も第一審同様,訴えの取下げ,請求の放棄・認諾がある場合や訴訟上の和解が成立した場合には,終了します。

なお,控訴審で訴えを取り下げた場合,第一審で本案判決がなされたときには,本案について終局判決があった後に訴えを取り下げたことになるので,同一の訴えを提起することができなくなります(再訴禁止効。民事訴訟法262条2項)

 

(2)控訴の取下げ

控訴は,控訴審の終局判決があるまで取り下げることができます(民事訴訟法292条1項)。

取り下げると,初めから控訴はなかったものとされます(民事訴訟法292条2項,262条1項)。

控訴を取り下げた時点で控訴期間が過ぎている場合には,あらためて控訴提起することはできなくなるので,第一審の判決は確定します。

控訴の取下げは,控訴自体を取り下げるものであり,訴えの取下げ(訴え自体の取り下げ)とは違いますので注意して下さい。

 

(3)終局判決

①控訴却下判決

控訴が不適法な場合には,却下判決がなされます。

②控訴棄却判決

控訴に理由がない場合には,棄却判決がなされます。

③控訴認容判決

控訴に理由があり,第一審判決の判断が不当な場合(民事訴訟法305条)や,第一審判決の手続が法律に違反する場合(民事訴訟法306条)には認容判決がなされ,第一審判決は取り消されます。

第一審判決が取り消された場合,自判(控訴審が自ら裁判をすること),差戻し(事件を第一審裁判所に戻すこと),移送(管轄違いを理由に第一審判決を取り消す場合に,管轄のある第一審裁判所に移送すること。民事訴訟法309条)のいずれかの措置がとられます。

控訴審は事実審ですので,自判が原則ですが,第一審判決が訴え却下判決の場合は,事件について更に弁論をする必要がない場合を除き,事件を第一審裁判所に差し戻さなければなりませんし(必要的差戻し。民事訴訟法307条),それ以外の場合でも,更に弁論をする必要があるときには,第一審裁判所に差し戻すことができます(任意的差戻し。民事訴訟法308条1項)。

 

第一審判決の取消し,変更は,不服申立ての限度でのみできますので(民事訴訟法304条),控訴人が不服を申し立てた範囲を超えて不利益な判決を受けることはありませんし(不利益変更禁止の原則),不服を申し立てていない部分につき有利な判決を受けることもありません。

 

7 附帯控訴

控訴された当事者(被控訴人)は,控訴手続を利用して,自分に有利な判決を求めて,附帯控訴をすることができます(民事訴訟法293条)。

附帯控訴は,控訴に付随するものであるため,控訴期間の制限はなく,控訴期間徒過後でもできますが,控訴審の口頭弁論終結後は附帯控訴できなくなります(民事訴訟法293条1項)。

また,控訴の取下げや却下の場合には附帯控訴の効力もなくなりますが(民事訴訟法293条2項),附帯控訴が控訴の要件を満たしていれば独立の控訴として扱われ,控訴審は続行します(民事訴訟法293条2項但書)。

 

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