民事訴訟の手続の流れ
民事訴訟を起こそうとお考えの方や、民事訴訟を起こされた方は、民事訴訟がどのような手続で進むのか気になると思います。
民事訴訟の一般的な手続の流れを、簡単に説明します。
一 訴訟の提起
訴訟の提起は、訴える者(「原告」といいます。)が、裁判所に訴状を提出して行います(民事訴訟法133条1項。ただし、簡易裁判所には、口頭で訴えを提起することもできます(民事訴訟法271条)。)。
また、訴状の提出の際には、①訴状の副本(被告に送達するため、被告の人数分)、②書証の写し(裁判所分と被告の人数分)、③収入印紙、④郵便切手等もあわせて提出します。
また、訴訟の提起は、どこの裁判所にでもできるわけではなく、管轄のある裁判所にしなければなりません。
二 訴状の送達
裁判所書記官は、訴えられた者(「被告」といいます。)に訴状の副本を送達します(民事訴訟法138条1項、98条2項)。
送達不能の場合には、訴状は却下されてしまいますが(民事訴訟法138条2項)、被告が訴状の受け取りを拒む場合には、付郵便送達の方法(民事訴訟法107条)がありますし、被告の所在不明の場合には、公示送達の方法(民事訴訟法110条から113条)があります。
また、書証の写しや、第1回の口頭弁論期日の呼出状も被告に送達されます。
三 答弁書の提出
被告は、訴状に反論しなければ、訴状の内容を認めたことになってしまいます。
そこで、被告は、訴状に記載された請求の趣旨に対する答弁や訴状に記載された事実の認否、抗弁事実等を書面(「答弁書」といいます。)に記載して、書証の写しとともに裁判所に提出します。
また、被告側は、答弁書の副本等を原告側に直送します。
四 第1回口頭弁論期日
口頭弁論とは、公開の法廷で、裁判所が直接当事者双方の口頭による弁論を聴く手続のことです。
第1回口頭弁論期日では、訴状の陳述、答弁書の陳述が行われます。
第1回期日に、当事者の一方が欠席した場合、その者が提出した訴状又は答弁書は陳述されたものとして扱われます(「擬制陳述」といいます。民事訴訟法158条)。
また、被告が、事前に答弁書を提出せず、第1回期日に欠席した場合には、公示送達の場合による呼び出しの場合を除いて、被告は原告の主張事実を自白したものとみなされ(「擬制自白」といいます。民事訴訟法159条3項、1項)、裁判所は弁論を終結して欠席判決をすることができます(民事訴訟法254条1項1号)。
欠席判決の場合、原告の請求がそのまま認容されるのが通常です。
五 第1回口頭弁論期日後の手続
第1回口頭弁論期日で終結する場合を除き、口頭弁論期日が続行されますが、弁論準備手続(法廷以外の準備室などを利用して、争点整理のために行われる手続です。民事訴訟法168条以下)が行われる場合もあります。
各当事者は、各期日に向けて、それぞれ自らの主張や相手方の主張に対する反論を記載した書面(「準備書面」といいます。)や証拠を提出します。
これらの期日を経て、当事者の主張がほぼ出尽くし、争点が整理された後、証人や当事者本人の尋問が行われます。
また、これらの期日に、裁判所から和解を提案される(「和解勧試」といいます。民事訴訟法89条)等して、和解の話し合いが行われることもあります。
六 訴訟の終了
1 判決
当事者が主張を尽くすなどして裁判をするのに熟したら、審理は終結され、裁判所により判決が言い渡されます(「終局判決」といいます。民事訴訟法243条1項)。
第一審の判決が出ても、判決の内容に不服がある場合には、判決書等の送達を受けた日から2週間以内に判決の取消し・変更を求めて控訴ができますし(民事訴訟法285条)、控訴審の判決の内容に不服がある場合には、判決書等の送達を受けた日から2週間以内に上告または上告受理の申立ができます(民事訴訟法313条、318条5項、285条)。
そして、上訴による取消可能性がなくなることで、判決が確定し、訴訟は終了します。
2 訴訟上の和解
訴訟上の和解が成立した場合には、訴訟が終了します。
和解調書の記載は、確定判決と同様の効力があります(民事訴訟法267条)。
3 その他
訴えの取下げ、請求の放棄・認諾等により、訴訟が終了する場合があります。