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【離婚】別居中または離婚後の子の引渡請求
別居中または離婚後に,父母の一方から他方に対し,未成年の子の引渡し求める方法としては,どのような方法があるでしょうか。
一 子の引渡し調停・審判
子の引渡を求める方法としては,子の監護に関する処分として,家庭裁判所に子の引渡しを求める調停または審判を申し立てることが考えられます(民法766条2項,家事事件手続法39条,別表第二3項,244条)。
離婚後は父母の一方が親権者となり,親権者が子を監護するのが通常ですので,離婚後,子が非親権者である親の下にいる場合には,親権者は非親権者に対し,子の福祉に反することが明らかな場合等特段の事情がない限り,子の引渡を求めることができます。
また,別居中の夫婦間でも,子の引渡しの調停または審判の申立てができますが(民法766条2項類推適用),婚姻中は夫婦が共同で親権を行使することになりますので,監護権者指定の調停または審判の申立てをあわせてすることが通常です。
二 審判前の保全処分
緊急性が高い場合には,審判前の保全処分の申立てをして,子の仮の引渡しを求めることが考えられます(家事事件手続法157条1項3号)。
審判前の保全処分は,審判の申立てをしている場合だけでなく,調停の申立てをしている場合にも申し立てることができます(家事事件手続法157条1項3号)。
三 人身保護請求
1 人身保護請求とは
法律上正当な手続によらず,身体の自由を拘束されている人がいる場合には,人身保護法に基づき救済を請求することができますので(人身保護法2条),人身保護法2条に基づき子の引渡請求をすることが考えられます。
人身保護請求手続では迅速に裁判がなされますので,早期の解決を図ることが可能です。
2 要件
人身保護規則4条は「法第二条の請求は,拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り,これをすることができる。但し,他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは,その方法によって相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ,これをすることができない。」と規定されているため,人身保護請求をするには,①子が拘束されていることのほかに,②顕著な違法性,②補充性が要件となっています。
3 別居中の場合
婚姻中は父母は共同で親権を行使するものであり,別居中,父母の一方が子を監護することは特段の事情がない限り適法です。
そのため,顕著な違法性があるといえるためには,子の幸福に反することが明白であることが必要であり,子の引渡しを命じる仮処分や審判が確定しているのに拘束者が従わない場合や,請求者の監護の下では安定した生活がおくれるのに,拘束者の監護の下では,健康が著しく損なわれたり,義務教育も満足に受けられない場合等,例外的な場合には限られると解されます。
4 離婚後の場合
離婚後に親権者から非親権者に対する人身保護請求については,親権者が子を監護するのが原則ですから,請求者が子を監護することが子の幸福の観点から著しく不当でない限りは,顕著な違法性があるものと解されています。
もっとも,子が拘束者の下で暮らすことを望んでいる場合には,拘束に違法性がないものとして,請求が認められないことがあります。
四 親権または監護権に基づく妨害排除請求
その他に子の引渡しを求める方法としては,親権または監護権に基づく妨害排除請求の民事訴訟をすることも考えられますが,子の引渡しの問題は家庭裁判所で解決することがふさわしいですし,民事訴訟による解決は時間がかかりますので,父母間の子の引渡しをめぐる紛争解決方法としては,あまり利用されていません。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【相続・遺言】相続法の改正
平成30年7月6日,民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号),法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立し(平成30年7月13日公布),相続法が改正されました。
改正された点は以下のとおりです。
なお,①自筆証書遺言の方式緩和については,公布の日から6か月を経過した日(平成31年1月13日),②配偶者の居住権の保護,自筆証書遺言の保管制度については,公布の日から2年を超えない範囲で政令が定める日,③それ以外については,公布の日から1年を超えない範囲で政令が定める日から施行されます。
一 配偶者の居住権保護
1 配偶者短期居住権
被相続人の配偶者が相続開始時に被相続人の建物に無償で住んでいた場合には,一定期間,無償で建物に居住する権利が認められます。
2 配偶者居住権
被相続人の配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物について,遺産分割や遺贈により,終身または一定期間,配偶者に居住権を取得させることができるようになります。
二 遺産分割等の改正
1 配偶者保護のため,持戻し免除の意思表示の推定
婚姻期間が20年以上の配偶者に居住用不動産を遺贈又は生前贈与した場合には,特別受益の持戻し免除の意思表示が推定されます。
持戻しが免除されることにより,配偶者が遺産分割で取得できる財産が増えることになります。
2 預貯金の仮払制度
遺産である預貯金について,生活費や葬儀費用の支払等のため,遺産分割前に払戻しを受けられる制度が創設されます。
また,預貯金について家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件も緩和されます。
3 共同相続人の一部が遺産分割前に遺産を処分した場合
共同相続人の一部が遺産分割前に遺産を処分した場合(例えば,相続開始後に共同相続人の一人が無断で遺産である預金を引き出した場合),これまでは不法行為や不当利得の問題として,処分者を含む共同相続人全員の合意がなければ,民事訴訟で解決しなければなりませんでしたが,改正により処分者以外の共同相続人の同意があれば,処分者の同意がなくても,計算上,処分された財産を遺産に戻して,遺産分割をすることができるようになります。
三 遺言制度の改正
1 自筆証書遺言の方式緩和
改正前は自筆証書遺言は遺言者が全文を自書しなければなりませんが,改正後は相続財産の目録について自書する必要がなくなり,パソコン等で作成した目録を添付して,自筆証書遺言を作成することができるようになります。
2 遺言執行者の権限明確化
改正により,遺言執行者の権限が明確化されました。
3 法務局における自筆証書遺言の保管
自筆証書遺言を法務局に保管してもらうことができるようになります。
相続開始後,相続人等は遺言書の写し(遺言書情報証明書)の交付請求や遺言書原本の閲覧請求ができます。交付や閲覧されたときは,他の相続人等に遺言書が保管されている旨通知されます。
また,遺言書が保管されている場合には,検認が不要となります。
四 遺留分制度の改正
改正前は遺留分減殺請求権の行使により物権的効果が生じるものと解されてきましたが,改正後は,遺留分侵害額に相当する金銭債権が生じることになります。
例えば,改正前は,遺留分減殺請求権の行使により遺産である不動産は,遺留分侵害者
と遺留分権者の共有となり,遺留分侵害者が価額弁償しない限りは,共有関係の解消は共有物分割の問題となります。
これに対して,改正後は,遺留分権者は金銭債権を取得することになりますので,不動産について共有にはなりません。
また,裁判所は,受遺者等の請求により,金銭の支払いについて相当の期限を許与することができます。
五 相続の効力等の改正
法定相続分を超える権利の承継については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができなくなります。
六 相続人以外の者の貢献を考慮
相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養監護等を行い,被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には,相続開始後,相続人に対し金銭の支払いを請求することができるようになります。

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【離婚】夫婦がそれぞれ子を監護する場合の婚姻費用,養育費
婚姻費用分担額や養育費の算定は簡易算定表を用いて行うことが多いですが,簡易算定表は,夫婦の一方が子を監護している場合を前提としています。
そのため,夫婦がそれぞれ子を監護している場合,婚姻費用や養育費をどのように算定するのか問題となります。
なお,簡易算定方式と簡易算定表については,「【離婚】婚姻費用(簡易算定方式と簡易算定表)」,「【離婚】養育費(簡易算定方式と簡易算定表)」のページをご覧ください。
※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→https://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/
一 夫婦がそれぞれ子を監護している場合の婚姻費用分担額の算定
簡易算定方式では,婚姻費用分担額を以下の計算式で算定します。
婚姻費用分担額=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)-権利者の基礎収入
基礎収入とは,収入のうち生活に当てられる部分のことです。
生活費指数については,夫,妻を100,0歳から14歳の子を55,15歳から19歳の子を90とします。
夫婦がそれぞれ子を監護している場合の婚姻費用分担額も上記の計算式で計算することができます。
例えば,妻の基礎収入が100万円,夫の基礎収入が250万円で,10歳と15歳の子がいる場合に,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護しているときは,夫が負担すべき婚姻費用分担額は以下のとおりです。
婚姻費用分担額(年額)=(100万円+250万円)×(100+55)÷(100+100+55+90)-100万円≒57万2463円
婚姻費用分担額(月額)=婚姻費用分担額(年額)÷12≒4万7705円≒5万円
なお,上記の例で夫が妻に婚姻費用を請求した場合には,婚姻費用分担額はマイナスになりますので,妻には婚姻費用分担義務はありません。
婚姻費用分担額(年額)=(100万円+250万円)×(100+90)÷(100+100+55+90)-250万円≒-57万2463円
二 夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費の算定
夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費の算定については,いくつかの方法が考えられます。以下,述べる方法以外の計算の仕方も考えられますのでご注意ください。
1 簡易算定表を用いる場合
①権利者が子全員を監護していると仮定して,簡易算定表に権利者,義務者双方の収入を当てはめて,養育費の額を算定します。
②上記の額に,子全員の生活費指数の合計に占める権利者が監護する子の生活費指数の割合を乗じて,義務者の負担額を算定します。
例えば,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護している場合に夫が負担すべき養育費は,①妻が子全員を監護していると仮定した場合に夫が支払うべき養育費が簡易算定表によると月額10万円から12万円であり,②その金額に,子全員の生活費指数の合計(145=55+90)に占める妻が監護する子の生活費指数(55)の割合(約0.38)を乗じると,夫の負担額は,約3万8000円から4万5000円となります。
2 簡易算定方式による場合
簡易算定方式では,養育費は以下の計算式で算定します。
養育費={義務者の基礎収入×(子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数)}×{義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)}
夫婦がそれぞれ子を監護している場合の養育費も上記の計算式を用いて算定することが考えられます。
その際,①まず,権利者が子全員を監護しているものと仮定した場合の義務者の負担額を計算し,②次いで,その額に子全員の生活費指数の合計に占める権利者が監護する子の生活費指数の割合を乗じて,義務者が負担すべき養育費の額を算定します。
例えば,妻の基礎収入が100万円,夫の基礎収入が250万円で,10歳と15歳の子がいる場合に,妻が10歳の子,夫が15歳の子をそれぞれ監護しているときは,夫が妻に監護される子のために負担すべき養育費は以下のとおりです。
①妻が子を全員監護していると仮定した場合の夫の負担額(年額)
250万円×(55+90)÷(100+55+90)×250万円÷(100万円+250万円)≒105万6851円
②子の生活費指数の割合を乗じた額(年額)
105万6851円×{55÷(55+90)}≒40万0874円
他方,上記の例で,夫が妻に養育費を請求したときは,妻が夫に監護される子のために負担すべき養育費が発生します。
養育費(年額)={100万円×(55+90)÷(100+55+90)×100万円÷(100万円+250万円)}×{90÷(55+90)}≒10万4956円
その場合,夫婦がお互いに養育費を支払いあうことになりますが,双方の負担額を差引きして,負担額が多いほう(例では夫)から少ないほう(例では妻)に差額を支払うことにすることも考えられます。

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【離婚】4人以上の子を監護する場合の婚姻費用,養育費
婚姻費用分担額や養育費の算定は簡易算定表を用いて行うことが多いですが,簡易算定表では子が3人以下の場合までしかありません。
そのため,子が4人以上いる場合には簡易算定方式を用いて婚姻費用分担額や養育費を算定することになります。
なお,簡易算定方式と簡易算定表については,「【離婚】婚姻費用(簡易算定方式と簡易算定表)」,「【離婚】養育費(簡易算定方式と簡易算定表)」のページをご覧ください。
※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→https://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/
一 子を4人以上監護している場合の婚姻費用分担額の算定
簡易算定方式では,婚姻費用分担額を以下の計算式で算定します。
婚姻費用分担額=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)-権利者の基礎収入
基礎収入とは,収入のうち生活に当てられる部分のことです。
生活費指数については,夫,妻を100,0歳から14歳の子を55,15歳から19歳の子を90とします。
子が4人以上いる場合の婚姻費用分担額も上記の計算式で計算します。
例えば,妻の基礎収入が50万円,夫の基礎収入が350万円,子が8歳,10歳,15歳,17歳で妻が子4人を監護している場合に夫が負担すべき婚姻費用分担額は以下のとおりです。
婚姻費用分担額(年額)=(50万円+350万円)×(100+55+55+90+90)÷(100+100+55+55+90+90)-50万円≒268万3673円
婚姻費用分担額(月額)=婚姻費用分担額(年額)÷12≒22万3639円≒22万円
二 子を4人以上監護している場合の養育費の算定
簡易算定方式では,養育費は以下の計算式で算定します。
養育費=(義務者の基礎収入×子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数)×義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)
子が4人以上いる場合の養育費も上記の計算式で算定します。
例えば,妻の基礎収入が50万円,夫の基礎収入が350万円,子が8歳,10歳,15歳,17歳で,離婚後,妻が子4人を監護する場合に夫が負担すべき養育費は以下のとおりです。
養育費(年額)=350万円×(55+55+90+90)÷(100+55+55+90+90)×350万円÷(50万円+350万円)≒227万7243円
養育費(月額)=養育費(年額)÷12≒18万9770円≒19万円

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【離婚】離婚訴訟と反訴,予備的反訴,予備的附帯処分の申立て
離婚訴訟の被告が原告に対し損害賠償請求や財産分与請求等をしたい場合には,①離婚の反訴請求をし,あわせて損害賠償請求や附帯処分の申立てをすることや,②離婚が認められた場合に,予備的反訴として損害賠償請求することや予備的附帯処分の申立てをすることが考えられます。
一 反訴
離婚訴訟の被告が,離婚すること自体には異存がないけれども,原告の主張する離婚原因に納得がいかないときは,離婚の反訴請求をし,あわせて損害賠償請求や財産分与等の附帯処分の申立てをすることが考えられます。
例えば,原告が離婚原因として被告のDVを主張しているのに対し,被告が原離婚原因として原告の不貞行為を主張して,離婚や慰謝料の支払等を求めて反訴した場合です。
離婚訴訟の被告が反訴で離婚を請求した場合,①双方が主張する離婚原因を審理判断し,本訴と反訴のいずれか一方の離婚請求が認容され,他方の離婚請求が棄却される場合と,②原告・被告とも離婚することについて意思が一致しているので,双方が主張する離婚原因を審理判断することなく,婚姻関係を継続し難い重大な事由が認められるとして,本訴・反訴とも離婚請求が認容される場合があります。
二 予備的反訴,予備的附帯処分の申立て
離婚訴訟の被告が,離婚はしたくないけれども,離婚が認められてしまった場合には原告に対し損害賠償請求や財産分与請求等をしたいときは,予備的に損害賠償請求の反訴をすることや予備的に財産分与等の附帯処分の申立てをすることが考えられます。
予備的反訴や予備的附帯処分の申立てにより本訴と同時に解決することができ,離婚後に請求する手間を省くことができるというメリットがありますが,予備的とはいえ被告が離婚を前提とした請求をすることは,被告も離婚を容認しているものと受け取られるおそれがあるというデメリットもありますので,被告が離婚したくない場合には,予備的反訴や予備的附帯処分の申立てをするかどうかは,よく検討すべきでしょう。

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【刑事弁護】第一審公判手続の流れ
刑事裁判の第一審公判手続は,①冒頭手続,②証拠調手続,③弁論手続,④判決の宣告の流れで行なわれます。
公判手続については,通常の手続以外に,即決裁判手続,裁判員裁判制度,被害者参加制度等がありますが,ここでは基本的な手続の流れについて説明します。
一 冒頭手続
1 人定質問
被告人として出頭している人が起訴状に表示された者と同一人物であるかどうかを確かめます(規則196条)。
裁判官が,被告人に氏名,生年月日,住所,本籍,職業を質問して,人違いではないことを確認します。
2 起訴状朗読
検察官が起訴状を朗読します(法291条1項)。
朗読するのは,公訴事実,罪名,罰条です。
3 黙秘権等の告知
裁判官は,被告人に対して,黙秘権及び訴訟上の権利について告知します(法291条4項)。
話したくないことは話さなくても構わないという権利があること,終始黙っていてもよいこと,ある質問には答えて,他の質問には答えないということができること,それによって不利益になることはないこと,法廷で話した内容は証拠となり,有利にも不利にも判断される可能性があること等が伝えられます。
4 被告人,弁護人の被告事件に対する陳述
裁判官は,被告人や弁護人に事件に関し意見を述べる機会を与えます(法291条4項)。
裁判官は,被告人や弁護人に対し,検察官が朗読した起訴状の公訴事実に間違いがないかたずね(罪状認否),被告人らは,公訴事実に間違いなければ,間違いないと答えますし,間違いがあれば,どこがどう違うのか述べて公訴事実を争うことができます。また,正当防衛等の違法性阻却事由や手続違反等の主張をすることもできます。
二 証拠調手続
1 冒頭陳述
検察官は,証拠によってどのような事実を証明しようとするかを説明します(法296条)。
被告人や弁護人が冒頭陳述を行う場合もあります(法316条の30,規則198条)。
2 検察側の証拠調べ
検察の証拠には,甲号証(犯罪事実に関する証拠で乙号証以外のもの)と乙号証(被告人の供述調書や身上関係,前科関係の証拠等被告人に関する証拠)があり,それぞれについて証拠調べを行います。
また,証拠調べは,以下の順で行います。
(1)証拠調べ請求
検察官,被告人または弁護人は証拠の取調べを請求することができ(法298条1項),まず検察官が,事件の審判に必要と認められるすべての証拠の取調べを請求します(規則193条1項)。
(2)証拠調請求に対する意見
検察官の証拠調べ請求に対し,被告人側が同意するかどうか等意見を述べます(規則190条2項)。
(3)証拠決定
裁判所は,被告人側の意見を聴いた上で,証拠として取り調べるか否かを決定します(規則190条1項)。
また,裁判所は,検察官,被告人,弁護人の意見を聴き,証拠調べの範囲,順序,方法を定めることができます(法297条1項)。
(4)証拠調べの実施
証拠調べは,①証拠書類については朗読(法305条)または要旨の告知(規則203条の2),②証拠物については展示(法306条),③証人等については尋問(法304条)の方式で行います。
また,証拠調べを終わった証拠書類や証拠物は裁判所に提出します(法310条)。
3 被告人側の証拠調べ
被告人側の証拠調べについても①証拠調請求,②証拠調請求に対する意見,③証拠決定,④証拠調べの実施の順で行われます。
公訴事実について争いがない場合には,被害弁償したことを示す示談書や情状証人等,情状に関する証拠調べをすることになります。
4 被告人質問
被告人は,終始沈黙することも,個々の質問に対し供述を拒むことができますが(法311条1項),被告人が任意に供述する場合には,被告人の供述を求めること(被告人質問)ができます(法311条2項,3項)。
被告人質問での被告人の供述は証拠となります。
三 弁論手続
1 論告・求刑
証拠調べ終了後,検察官は,できる限り速やかに,事実及び法律の適用について意見を述べなければなりません(法293条1項,規則211条の2)。これを「論告」といいます。
また,その際,検察官は被告人にどのような刑罰を与えるべきかについての意見も述べます。これを「求刑」といいます。
2 弁論
弁護人も意見を述べることができます(法293条2項,規則211条)。
これを「弁論」といい,弁護人は,主張のまとめをして,被告人が無罪であるとの意見を述べたり,被告人の刑罰を軽くすべきだという意見を述べたりします。
3 被告人の最終陳述
被告人も意見を述べることができます(法293条2項,規則211条)。
これを「被告人の最終陳述」といい,最後に,被告人が,事件について思うことを話すことができます。
4 弁論の終結(結審)
裁判官が手続の終わりを宣言します。
四 判決の宣告(法342条,規則35条)
有罪か無罪か,有罪であればどのような刑罰が科されるか等の判決が出されます。
判決は,公判廷で,宣告により告知されます(法342条)。
判決の宣告は裁判長が行い(規則35条1項),主文と理由の朗読(または主文の朗読と理由の要旨を告げること)をします(規則35条2項)。
判決に不服があれば,控訴することができます。

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【離婚】離婚訴訟 棄却判決確定後の再度の離婚請求
離婚訴訟で離婚請求を棄却する判決が確定した場合,離婚はできません。
しかし,別の離婚原因を主張して,再度,離婚請求をすることはできないでしょうか。
一 判決確定後の訴え提起の禁止
1 前訴原告の離婚請求の禁止
人事訴訟の判決(訴え却下判決は除きます。)の確定後は,原告は,その訴訟で請求または請求原因の変更により主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事訴訟を提起することはできません(人事訴訟法25条1項)。
そのため,離婚請求を棄却する判決が確定した場合には,異なる離婚原因を主張して離婚請求をすることもできなくなります。
例えば,前訴で,妻が夫の不貞行為を離婚原因として離婚請求したけれども,不貞行為の事実が立証できず,請求棄却判決が確定した後に,夫からのDVを主張して再度の離婚訴訟を提起することはできません。
離婚訴訟の訴訟物は離婚原因ごとに異なると解されていることから,ある離婚原因に基づく離婚請求が認められなくても,別の離婚原因を主張して再度の離婚請求をすることもできるはずですが,身分関係を安定させるため,訴訟物の範囲を超えて失権させることで,紛争の一回的解決が図られています。
2 前訴被告の離婚請求の禁止
人事訴訟の判決(訴え却下判決は除きます。)の確定後は,被告は,反訴提起することにより主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事訴訟を提起することはできません(人事訴訟法25条2項)。
そのため,離婚請求を棄却する判決が確定した場合,被告が反訴すれば主張することができた離婚原因に基づいて離婚請求をすることもできなくなります。
例えば,夫が提起した離婚訴訟について,妻が夫の不貞行為を離婚原因とする反訴提起をすることなく,請求棄却判決が確定した場合,その後に,妻が夫の不貞行為を離婚原因とする離婚訴訟を提起することはできません。
二 再度の離婚請求
人事訴訟法25条は,前訴で主張することができた事実に基づく別訴を禁止するものです。
そのため,前訴の口頭弁論終結後に生じた事由に基づいて,再度離婚請求することはできます。
例えば,前訴の口頭弁論終結後に夫が不貞行為をした場合には,妻は夫の不貞行為を離婚原因として再度の離婚請求をすることができます。
また,前訴の判決確定後も別居を長期間継続した場合には,長期間の別居を理由に,再度離婚請求をすることも考えられます。
三 まとめ
離婚請求を棄却する判決が確定した場合でも再度の離婚請求をすることは可能ですが,前訴で主張することができた離婚原因は実際に主張したか否かにかかわらず,後訴では主張することができなくなります。
そのため,離婚訴訟をする場合には,原告は主張できる離婚原因はすべて主張しておいたほうがよいでしょう。
また,被告も,原告の主張に納得できないから離婚請求を争っているという場合には,反訴すべきかどうか検討すべきでしょう。

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【不動産問題】私道トラブルと私道通行権
私道とは,土地所有者等,権原を有する人が私的に利用する道路のことです。
私道は私有地ですので,所有者(または共有者)以外の人の通行をめぐってトラブルになることがありますが,どのような場合に私道の通行が認められるのでしょうか。また,通行が妨害された場合,どのような対応をすることができるのでしょうか。
一 私道通行権
私道は私有地ですので,私道を通行するには,原則として通行権がなければなりません。
私道通行権としては,①囲繞地通行権,②通行地役権,③債権的通行権,④通行の自由権等があります。
1 囲繞地通行権
(1)囲繞地通行権
他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行することができます(民法210条1項)。
池沼,河川,水路,海を通らなければ公道に至ることができないときや,崖があって土地と公道に著しい高低差があるときも通行ができます(民法210条2項)。
この通行権は,法律上当然に認められる通行権(法定通行権)です。
(2)通行の場所・方法
通行の場所,方法は,通行権者のために必要であり,かつ他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません(民法211条1項)。
(3)通路の開設
通行権者は,必要があるときは,通路を開設することができます(民法211条2項)。
(4)償金の支払
通行権者は通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければなりません(民法212条)。
(5)分割による場合
分割によって公道に通じない土地が生じたときは,その土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができます。この場合,償金の支払は不要です(民法213条1項)。
また,土地の所有者がその土地の一部を譲渡した場合にも準用されます(民法213条2項)。
2 通行地役権
(1)通行地役権
地役権とは,他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の便益に供する権利であり(民法280条),通行地役権とは,他人の土地を自己の土地のために通行の用に供する権利のことです。
通行地役権は,承役地の所有者と要役地の所有者との間の明示または黙示の設定契約による場合や時効取得による場合があります。
また,地役権は物権ですので,登記しないと第三者に対抗できないのが原則です(民法177条)。
(2)通行地役権の時効取得
地役権は,継続的に行使され,かつ,外形上認識することができるものに限り,時効によって取得することができます(民法283条)。
「継続」といえるには,要役地所有者が,承役地上に通路が開設したことを要すると解されています。
また,時効期間は,10年(善意無過失の場合)または20年(善意無過失でない場合)です(民法163条)。
3 債権的通行権
私道の所有者との賃貸借契約や使用貸借契約による通行権(債権的通行権)もあります。
債権的通行権は契約による通行権であり,通行権の内容は契約によって異なりますし,契約当事者間で効力を有するものですから,所有者がかわった場合に通行権が認められるか問題となります。
4 通行の自由権
現実に開設されている建築基準法上の道路(道路位置指定を受けている私道等)を通行することについて,日常生活上不可欠の利益を有している人は,道路の通行を所有者に妨害されているか,またはそのおそれがある場合,特段の事情がない限り,通行の妨害の排除または予防を求める人格的権利を有するものと解されています。
建築基準法上の道路について公衆が通行することは公法上の反射的な利益にすぎませんが,その道路の通行に日常生活上不可欠の利益を有している人については人格的な権利として私法上保護されます。
二 通行を妨害された場合の対応
1 通行権の確認請求
通行権の存否について争いがある場合には,通行権の確認請求をすることが考えられます。
2 通行地役権設定登記請求
通行地役権について未登記の場合には通行地役権設定登記請求をすることが考えられます。
3 妨害排除請求
私道に塀や柵を作る等,現実に通行を妨害されている場合には,妨害排除請求をすることが考えられます。
緊急性が高い場合には,仮処分を検討すべきでしょう。
4 損害賠償請求
通行を妨害されたことにより損害を被った場合には,損害賠償請求をすることが考えられます。

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【相続・遺言】使途不明金
被相続人の預貯金から多額の引出しがあり,使途不明金があった場合,どのように遺産分割をすればよいでしょうか。
一 使途不明金の問題
被相続人の預貯金の口座から使途不明な多額の引出しがある場合,使途不明金の問題として,共同相続人間で争いとなることがあります。
1 通帳や取引履歴の確認
まずは被相続人の預貯金の通帳や取引履歴を見て,使途不明金があるかどうか確認します。
通帳については,通帳を管理している人から見せてもらうことになりますが,見せてもらえない場合や古い通帳がない場合には,金融機関から被相続人の口座の取引履歴をとります。
金融機関は,相続開始後,相続人から開示の求めがあれば,基本的に取引履歴の開示に応じてくれます。なお,開示してくれる範囲(10年分の履歴しか開示しない等)や手数料については,金融機関により異なります。
2 使途等の確認
口座から多額の引き出しがあり,その使途が不明な場合には,通帳やキャッシュカード等を管理していた相続人や被相続人と同居していた相続人等,引出しに関係していると思われる人に説明を求める等して,①誰が引き出したのか,②使途は何なのか,③被相続人の認識はどうだったのかを確認します。
3 遺産分割手続で解決できるか
使途不明金の問題については,遺産分割手続きの中で解決を図ることができる場合とできない場合があります。
遺産分割について,家庭裁判所に申立てをしますが,使途不明金の問題について遺産分割手続で解決することができないときは,地方裁判所や簡易裁判所に民事訴訟を提起します。
二 相続開始前の預貯金の引出し
1 被相続人のために遣われた場合
被相続人が,自分で預貯金を引き出し,自分のために遣った場合には,問題となりません。
また,被相続人以外の人が預貯金を引き出した場合であっても,被相続人から預貯金の管理を任された人が,被相続人の入院費等,被相続人のために遣ったときは,金額が妥当であれば,基本的に問題とはならないでしょう。
2 他の相続財産として存在している場合
引き出した預貯金が形を変え,別の相続財産として存在している場合には,その財産の種類によって,遺産分割の対象となったり,ならなかったりします。
例えば,預貯金を引き出し,現金として保管してある場合,現金は遺産分割の対象となりますので,遺産分割手続の中で解決します。
他方,預貯金を引き出して,他者に貸し付けた場合,貸付金は可分債権であり,相続開始により各共同相続人の法定相続分に応じて当然に分割されますので,遺産分割の対象とはなりません。
3 被相続人から贈与を受けた場合
引き出された預貯金の使途が,被相続人から相続人への贈与である場合には,特別受益の問題となります。
特別受益については,遺産分割の手続の中で解決します。
4 被相続人に無断で引き出して取得した場合
被相続人に無断で預貯金が引き出された場合には,被相続人は,預貯金を引き出した人に対し,①債務不履行による損害賠償請求(預金管理の受任者が引き出した場合等),②不法行為による損害賠償請求,③不当利得返還請求をすることができます。
これらの損害賠償請求権や不当利得返還請求権は,相続開始後は相続財産になりますが,可分債権であるため,相続開始により各共同相続人に法定相続分に応じて当然に分割され,遺産分割の対象とはなりません。
相続人間で話合いがまとまれば,遺産分割手続の中で解決することもできますが,話合いがまとまらなければ,別途,損害賠償請求訴訟や不当利得返還請求訴訟で解決することになります。
三 相続開始後の預貯金の引出し
相続開始後に被相続人の預貯金が引き出された場合,相続人は,預貯金を引き出した人に対し,損害賠償請求権または不当利得返還請求権を有することになります。
これらの損害賠償請求権や不当利得返還請求権は,相続開始後に発生したものであり,相続財産ではありませんので,遺産分割の対象とはなりません。
遺産分割の対象とならない場合であっても,相続人全員で合意ができれば,遺産分割手続の中で解決することもできますが,合意ができなければ,別途,損害賠償請求訴訟や不当利得返還請求訴訟で解決することになります。
なお,引き出した預貯金を相続債務,葬儀費用,遺産管理の費用の支払いにあてた場合であっても,これらは遺産分割の対象とはなりませんので,相続人全員の合意がない限りは民事訴訟で解決を図ることになります。
相続法の改正(2019年7月1日施行)により,共同相続人の一部の人が遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合には,他の共同相続人全員の同意があれば,処分された財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができるようになります(民法906条の2)。

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【親子問題】親子関係不存在確認の訴え・調停
嫡出子(婚姻関係にある夫婦から生まれた子)について,DNA鑑定等で父子関係がないことが明らかになった場合,父子関係がないことを争うにはどうすればよいでしょうか。
推定される嫡出子の場合には嫡出否認の訴えや調停がありますが,推定されない嫡出子や推定の及ばない子の場合には親子関係不存在確認の訴えや調停があります。
一 親子関係不存在確認の訴え
1 親子関係不存在確認の訴えとは
親子関係不存在確認の訴えとは,法律上の親子関係が存在しないことについて争いがある場合に,その確認を求める訴えのことです。
法律上の実親子関係の存否を争う方法として,①推定を受ける嫡出子について父子関係が存在しないことを争う場合は,嫡出否認の訴え,②嫡出推定が重複する場合は,父を定めることを目的とする訴え,③非嫡出子について父子関係が存在することを争う場合は,認知の訴え,④非嫡出子について父子関係が存在しないことを争う場合は,認知無効の訴えや認知取消しの訴えがありますが,⑤それ以外の場合については,実親子関係の存否の確認の訴え(親子関係存在確認の訴え,親子関係不存在確認の訴え)があります。
2 親子関係不存在確認の訴えができる場合
(1)推定されない嫡出子
婚姻成立の日から200日を経過した後または婚姻の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定され,夫の子と推定されます(民法772条)。
嫡出が推定される場合には,子の身分関係の法的安定性を保持する必要性があるため,実親子関係が存在しないことを争うには嫡出否認の訴えによらなければならず,親子関係不存在確認の訴えをすることはできないと解されています。
これに対し,婚姻成立の日から200日以内,婚姻の解消・取消しの日から300日経過後に出生した子については,嫡出推定されませんので,父子関係を争うため,親子関係不存在確認の訴えを提起することができます。
なお,婚姻の解消・取消し後300日以内に子が出生した場合であっても,医師が作成した「懐胎時期に関する証明書」で,推定される懐胎時期の最も早い日が婚姻の解消・取消しの日より後の日であれば,婚姻の解消・取消し後に懐胎したものと認められ,民法772条の推定が及ばなくなります。その場合,懐胎時期に関する証明書を添付して母の非嫡出子または後婚の夫の嫡出子とする届出ができます。
(2)推定の及ばない子
民法772条2項の期間内に子が出生した場合であっても,妻が子を懐胎した時期に既に夫婦が事実上の離婚をした等の事情があり,妻が夫の子を懐胎し得ないことが外観上明白なときは,推定が及びませんので,嫡出否認の訴えではなく,親子関係不存在確認の訴えにより父子関係を争うことができます。
(3)他人夫婦の嫡出子として届け出た場合
他人夫婦の嫡出子として届け出た場合,子と戸籍上の父母との親子関係が存在しないことを争うため,親子関係不存在確認の訴えを提起することができます。
3 当事者
嫡出否認の訴えは基本的に夫しかできませんが(民法774条),親子関係不存在確認の訴えは,夫だけでなく,子や妻,その他の第三者も提起できます。
4 出訴期間
嫡出否認の訴えは,夫が子の出生を知ったときから1年以内に提起しなければなりませんが(民法777条),親子関係不存在確認の訴えには出訴期間の制限がありません。
ただし,子が生まれてから長期間経過後に訴え提起された場合には権利の濫用と判断される可能性があります。
5 認容判決が確定した場合の効果
親子関係不存在確認の訴えの認容判決が確定した場合には,親子関係が存在しないことが確定します。
戸籍の訂正が必要な場合には,判決確定の日から1か月以内に戸籍の訂正の申請をします(戸籍法116条1項)。
6 生物学上の父子関係はないが,嫡出の推定を受ける場合
民法772条の期間内に子が出生した場合であっても,DNA鑑定等により生物学上の父子関係がないことが判明したときには嫡出推定が及ばないものとして,親子関係不存在確認の訴えができないかという問題があります。
この点について,最高裁判所平成26年7月17日判決があります。この判決では,
①夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり,かつ,夫と妻が既に離婚して別居し,子が親権者である妻の下で監護されているという事情があっても,子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから,嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえず,親子関係不存在確認の訴えにより争うことはできない
②民法772条,774条から778条の規定は,法律上の父子関係と生物学上の父子関係の不一致が生じることを容認している
③民法772条2項の期間内に妻が出産した子について,妻がその子を懐胎すべき時期に,既に夫婦関係が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ,又は遠隔地に居住して,夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には,実質的には同条の推定を受けない嫡出子に当たり,親子関係不存在確認の訴えにより父子関係の存否を争うことができるが,本件ではそのような事情がないので,親子関係不存在確認の訴えは不適法であると判断されました。
また,これとは別に同日出された判決でも,「夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり,かつ,子が夫の下で監護されておらず,妻及び生物学上の父の下で順調に成長しているという事情」がある場合について,同様の判断がなされました。
そのため,民法772条の期間内に子が出生した場合,DNA鑑定等により生物学上の父子関係が存在しなかったとしても,それだけでは嫡出の推定が及ばなくなるわけではありませんので,父子関係が存在しないことを争うには,嫡出否認の訴えによらなければならず,親子関係不存在確認の訴えを提起することはできません。
二 親子関係不存在確認調停
1 調停前置主義
人事訴訟事件については調停前置主義が採用されているため(家事事件手続法257条1項),親子関係不存在確認の訴えを提起する前に調停を申し立てなければなりません。
2 合意に相当する審判
親子関係不存在確認調停事件については,公益性が強く,当事者の意思だけで解決することはできませんが,当事者に争いがない場合には,簡易な手続で処理することが望ましいといえます。
そのため,まず調停手続を行い,当事者間に申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについて合意が成立し,原因事実について争いがない場合には,家庭裁判所は,事実の調査をした上,合意が正当と認めるときに,合意に相当する審判をします(家事事件手続法277条1項)。
調停不成立の場合や,合意に相当する審判による解決ができなかった場合には,親子関係不存在確認の訴えを提起して,解決を図ることができます。

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