【離婚】別居中または離婚後の子の引渡請求

2018-09-13

別居中または離婚後に,父母の一方から他方に対し,未成年の子の引渡し求める方法としては,どのような方法があるでしょうか。

 

一 子の引渡し調停・審判

子の引渡を求める方法としては,子の監護に関する処分として,家庭裁判所に子の引渡しを求める調停または審判を申し立てることが考えられます(民法766条2項,家事事件手続法39条,別表第二3項,244条)。

離婚後は父母の一方が親権者となり,親権者が子を監護するのが通常ですので,離婚後,子が非親権者である親の下にいる場合には,親権者は非親権者に対し,子の福祉に反することが明らかな場合等特段の事情がない限り,子の引渡を求めることができます。
また,別居中の夫婦間でも,子の引渡しの調停または審判の申立てができますが(民法766条2項類推適用),婚姻中は夫婦が共同で親権を行使することになりますので,監護権者指定の調停または審判の申立てをあわせてすることが通常です。

 

二 審判前の保全処分

緊急性が高い場合には,審判前の保全処分の申立てをして,子の仮の引渡しを求めることが考えられます(家事事件手続法157条1項3号)。
審判前の保全処分は,審判の申立てをしている場合だけでなく,調停の申立てをしている場合にも申し立てることができます(家事事件手続法157条1項3号)。

 

三 人身保護請求

1 人身保護請求とは

法律上正当な手続によらず,身体の自由を拘束されている人がいる場合には,人身保護法に基づき救済を請求することができますので(人身保護法2条),人身保護法2条に基づき子の引渡請求をすることが考えられます。
人身保護請求手続では迅速に裁判がなされますので,早期の解決を図ることが可能です。

 

2 要件

人身保護規則4条は「法第二条の請求は,拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り,これをすることができる。但し,他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは,その方法によって相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ,これをすることができない。」と規定されているため,人身保護請求をするには,①子が拘束されていることのほかに,②顕著な違法性,②補充性が要件となっています。

 

3 別居中の場合

婚姻中は父母は共同で親権を行使するものであり,別居中,父母の一方が子を監護することは特段の事情がない限り適法です。
そのため,顕著な違法性があるといえるためには,子の幸福に反することが明白であることが必要であり,子の引渡しを命じる仮処分や審判が確定しているのに拘束者が従わない場合や,請求者の監護の下では安定した生活がおくれるのに,拘束者の監護の下では,健康が著しく損なわれたり,義務教育も満足に受けられない場合等,例外的な場合には限られると解されます。

 

4 離婚後の場合

離婚後に親権者から非親権者に対する人身保護請求については,親権者が子を監護するのが原則ですから,請求者が子を監護することが子の幸福の観点から著しく不当でない限りは,顕著な違法性があるものと解されています。

もっとも,子が拘束者の下で暮らすことを望んでいる場合には,拘束に違法性がないものとして,請求が認められないことがあります。

 

四 親権または監護権に基づく妨害排除請求

その他に子の引渡しを求める方法としては,親権または監護権に基づく妨害排除請求の民事訴訟をすることも考えられますが,子の引渡しの問題は家庭裁判所で解決することがふさわしいですし,民事訴訟による解決は時間がかかりますので,父母間の子の引渡しをめぐる紛争解決方法としては,あまり利用されていません。

 

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