【刑事弁護】第一審公判手続の流れ

2018-08-06

刑事裁判の第一審公判手続は,①冒頭手続,②証拠調手続,③弁論手続,④判決の宣告の流れで行なわれます。
公判手続については,通常の手続以外に,即決裁判手続,裁判員裁判制度,被害者参加制度等がありますが,ここでは基本的な手続の流れについて説明します。

 

一 冒頭手続

1 人定質問

被告人として出頭している人が起訴状に表示された者と同一人物であるかどうかを確かめます(規則196条)。
裁判官が,被告人に氏名,生年月日,住所,本籍,職業を質問して,人違いではないことを確認します。

 

2 起訴状朗読

検察官が起訴状を朗読します(法291条1項)。
朗読するのは,公訴事実,罪名,罰条です。

 

3 黙秘権等の告知

裁判官は,被告人に対して,黙秘権及び訴訟上の権利について告知します(法291条4項)。
話したくないことは話さなくても構わないという権利があること,終始黙っていてもよいこと,ある質問には答えて,他の質問には答えないということができること,それによって不利益になることはないこと,法廷で話した内容は証拠となり,有利にも不利にも判断される可能性があること等が伝えられます。

 

4 被告人,弁護人の被告事件に対する陳述

裁判官は,被告人や弁護人に事件に関し意見を述べる機会を与えます(法291条4項)。
裁判官は,被告人や弁護人に対し,検察官が朗読した起訴状の公訴事実に間違いがないかたずね(罪状認否),被告人らは,公訴事実に間違いなければ,間違いないと答えますし,間違いがあれば,どこがどう違うのか述べて公訴事実を争うことができます。また,正当防衛等の違法性阻却事由や手続違反等の主張をすることもできます。

 

二 証拠調手続

1 冒頭陳述

検察官は,証拠によってどのような事実を証明しようとするかを説明します(法296条)。
被告人や弁護人が冒頭陳述を行う場合もあります(法316条の30,規則198条)。

 

2 検察側の証拠調べ

検察の証拠には,甲号証(犯罪事実に関する証拠で乙号証以外のもの)と乙号証(被告人の供述調書や身上関係,前科関係の証拠等被告人に関する証拠)があり,それぞれについて証拠調べを行います。
また,証拠調べは,以下の順で行います。

 

(1)証拠調べ請求

検察官,被告人または弁護人は証拠の取調べを請求することができ(法298条1項),まず検察官が,事件の審判に必要と認められるすべての証拠の取調べを請求します(規則193条1項)。

 

(2)証拠調請求に対する意見

検察官の証拠調べ請求に対し,被告人側が同意するかどうか等意見を述べます(規則190条2項)。

 

(3)証拠決定

裁判所は,被告人側の意見を聴いた上で,証拠として取り調べるか否かを決定します(規則190条1項)。
また,裁判所は,検察官,被告人,弁護人の意見を聴き,証拠調べの範囲,順序,方法を定めることができます(法297条1項)。

 

(4)証拠調べの実施

証拠調べは,①証拠書類については朗読(法305条)または要旨の告知(規則203条の2),②証拠物については展示(法306条),③証人等については尋問(法304条)の方式で行います。
また,証拠調べを終わった証拠書類や証拠物は裁判所に提出します(法310条)。

 

3 被告人側の証拠調べ

被告人側の証拠調べについても①証拠調請求,②証拠調請求に対する意見,③証拠決定,④証拠調べの実施の順で行われます。
公訴事実について争いがない場合には,被害弁償したことを示す示談書や情状証人等,情状に関する証拠調べをすることになります。

 

4 被告人質問

被告人は,終始沈黙することも,個々の質問に対し供述を拒むことができますが(法311条1項),被告人が任意に供述する場合には,被告人の供述を求めること(被告人質問)ができます(法311条2項,3項)。
被告人質問での被告人の供述は証拠となります。

 

三 弁論手続

1 論告・求刑

証拠調べ終了後,検察官は,できる限り速やかに,事実及び法律の適用について意見を述べなければなりません(法293条1項,規則211条の2)。これを「論告」といいます。
また,その際,検察官は被告人にどのような刑罰を与えるべきかについての意見も述べます。これを「求刑」といいます。

 

2 弁論

弁護人も意見を述べることができます(法293条2項,規則211条)。
これを「弁論」といい,弁護人は,主張のまとめをして,被告人が無罪であるとの意見を述べたり,被告人の刑罰を軽くすべきだという意見を述べたりします。

 

3 被告人の最終陳述

被告人も意見を述べることができます(法293条2項,規則211条)。
これを「被告人の最終陳述」といい,最後に,被告人が,事件について思うことを話すことができます。

 

4 弁論の終結(結審)

裁判官が手続の終わりを宣言します。

 

四 判決の宣告(法342条,規則35条)

有罪か無罪か,有罪であればどのような刑罰が科されるか等の判決が出されます。
判決は,公判廷で,宣告により告知されます(法342条)。
判決の宣告は裁判長が行い(規則35条1項),主文と理由の朗読(または主文の朗読と理由の要旨を告げること)をします(規則35条2項)。
判決に不服があれば,控訴することができます。

 

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