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刑事弁護:執行猶予について
起訴された場合、被告人やその家族の方にとって、執行猶予がつくか、実刑(執行猶予がつかない場合)になるかどうかは非常に気になることでしょう。
実際にも、刑事弁護の依頼を受けると、被告人やその家族の方から、「執行猶予になりますか?」という質問をよくされます。
そこで、執行猶予について簡単に説明いたします。
一 刑の執行猶予とは
刑の執行猶予とは、有罪の言渡しをされた場合に、情状によって一定期間その執行を猶予し、その期間を無事経過したときは刑の言渡しが効力を失うという制度です。
例えば、懲役刑の場合、刑務所に収容されてしまうのですが、執行猶予になると、それが取消されない限りは刑務所に入らなくてもよいことになります。
刑務所に入ると入らないでは、社会生活に大きな影響があるので、被告人やその家族の方にとって、関心が高くなるのも当然です。
なお、執行猶予になったとしても有罪であることは違いがないので、前科にはなってしまいます。
二 執行猶予の要件
1 初度の執行猶予(刑法25条1項)
①ⅰ 前に禁錮以上の刑に処されたことがない者 または
ⅱ 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者が
②3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、
③情状により
判決確定の日から1年以上5年以下の範囲で、刑の執行を猶予することができます。
なお、執行猶予期間中、保護観察に付される場合があります(刑法25条の2第1項)。
2 再度の執行猶予(刑法25条2項)
①前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が
②1年以下の懲役又は禁錮の判決の言渡しを受けたときは(初度の場合と異なり、罰金は含まれません。)
③情状に特に酌量すべきものがある場合には
④保護観察付の執行猶予期間中に犯罪をした場合でなければ
再度の執行猶予ができます。
なお、再度の執行猶予が認められた者については、必ず保護観察に付されます(刑法25条の2第1項)。
三 執行猶予の取消し
1 必要的取消し(刑法26条)
次の場合には執行猶予は取り消されます。
①猶予期間内にさらに罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがない場合
②猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがない場合
③猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚した場合(25条1項2号、26条の2第3号の場合は除きます。)
2 裁量的取消し(刑法26条の2)
次の場合には執行猶予が取消される可能性があります。
①猶予期間内にさらに罪を犯し、罰金に処せられた場合
②保護観察の遵守事項を遵守せず、その情状が重い場合
③猶予の言渡しの前に他の罪について禁錮以上の罪に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚した場合
四 執行猶予期間を経過した場合の効果
執行猶予を取消されることなく猶予期間を経過すると、刑の言渡しの効力を失います(刑法27条)。
刑の執行が免除されるだけでなく、刑の言渡しの効果が将来に向かって消滅しますので、例えば、懲役刑の執行猶予期間が経過するとその件については刑務所に入らなくてすみます。

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民事訴訟の手続の流れ
民事訴訟を起こそうとお考えの方や、民事訴訟を起こされた方は、民事訴訟がどのような手続で進むのか気になると思います。
民事訴訟の一般的な手続の流れを、簡単に説明します。
一 訴訟の提起
訴訟の提起は、訴える者(「原告」といいます。)が、裁判所に訴状を提出して行います(民事訴訟法133条1項。ただし、簡易裁判所には、口頭で訴えを提起することもできます(民事訴訟法271条)。)。
また、訴状の提出の際には、①訴状の副本(被告に送達するため、被告の人数分)、②書証の写し(裁判所分と被告の人数分)、③収入印紙、④郵便切手等もあわせて提出します。
また、訴訟の提起は、どこの裁判所にでもできるわけではなく、管轄のある裁判所にしなければなりません。
二 訴状の送達
裁判所書記官は、訴えられた者(「被告」といいます。)に訴状の副本を送達します(民事訴訟法138条1項、98条2項)。
送達不能の場合には、訴状は却下されてしまいますが(民事訴訟法138条2項)、被告が訴状の受け取りを拒む場合には、付郵便送達の方法(民事訴訟法107条)がありますし、被告の所在不明の場合には、公示送達の方法(民事訴訟法110条から113条)があります。
また、書証の写しや、第1回の口頭弁論期日の呼出状も被告に送達されます。
三 答弁書の提出
被告は、訴状に反論しなければ、訴状の内容を認めたことになってしまいます。
そこで、被告は、訴状に記載された請求の趣旨に対する答弁や訴状に記載された事実の認否、抗弁事実等を書面(「答弁書」といいます。)に記載して、書証の写しとともに裁判所に提出します。
また、被告側は、答弁書の副本等を原告側に直送します。
四 第1回口頭弁論期日
口頭弁論とは、公開の法廷で、裁判所が直接当事者双方の口頭による弁論を聴く手続のことです。
第1回口頭弁論期日では、訴状の陳述、答弁書の陳述が行われます。
第1回期日に、当事者の一方が欠席した場合、その者が提出した訴状又は答弁書は陳述されたものとして扱われます(「擬制陳述」といいます。民事訴訟法158条)。
また、被告が、事前に答弁書を提出せず、第1回期日に欠席した場合には、公示送達の場合による呼び出しの場合を除いて、被告は原告の主張事実を自白したものとみなされ(「擬制自白」といいます。民事訴訟法159条3項、1項)、裁判所は弁論を終結して欠席判決をすることができます(民事訴訟法254条1項1号)。
欠席判決の場合、原告の請求がそのまま認容されるのが通常です。
五 第1回口頭弁論期日後の手続
第1回口頭弁論期日で終結する場合を除き、口頭弁論期日が続行されますが、弁論準備手続(法廷以外の準備室などを利用して、争点整理のために行われる手続です。民事訴訟法168条以下)が行われる場合もあります。
各当事者は、各期日に向けて、それぞれ自らの主張や相手方の主張に対する反論を記載した書面(「準備書面」といいます。)や証拠を提出します。
これらの期日を経て、当事者の主張がほぼ出尽くし、争点が整理された後、証人や当事者本人の尋問が行われます。
また、これらの期日に、裁判所から和解を提案される(「和解勧試」といいます。民事訴訟法89条)等して、和解の話し合いが行われることもあります。
六 訴訟の終了
1 判決
当事者が主張を尽くすなどして裁判をするのに熟したら、審理は終結され、裁判所により判決が言い渡されます(「終局判決」といいます。民事訴訟法243条1項)。
第一審の判決が出ても、判決の内容に不服がある場合には、判決書等の送達を受けた日から2週間以内に判決の取消し・変更を求めて控訴ができますし(民事訴訟法285条)、控訴審の判決の内容に不服がある場合には、判決書等の送達を受けた日から2週間以内に上告または上告受理の申立ができます(民事訴訟法313条、318条5項、285条)。
そして、上訴による取消可能性がなくなることで、判決が確定し、訴訟は終了します。
2 訴訟上の和解
訴訟上の和解が成立した場合には、訴訟が終了します。
和解調書の記載は、確定判決と同様の効力があります(民事訴訟法267条)。
3 その他
訴えの取下げ、請求の放棄・認諾等により、訴訟が終了する場合があります。

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身柄拘束されてから起訴までの流れ
ご家族やご友人が逮捕された場合、どのように手続が進むのか、心配になる方が多いと思います。
そこで、逮捕から起訴までの一般的な流れをおおまかに説明します。
① 逮捕
② 検察官送致
警察官は、身柄拘束の必要があると判断すると、被疑者が身柄を拘束された時から48時間以内に検察官に送致します(刑事訴訟法203条1項)。
③ 勾留請求
検察官は、さらに身柄拘束の必要があると判断すると、被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に勾留請求をします(刑事訴訟法205条1項)。
ただし、被疑者が身柄を拘束された時から72時間を超えることができません(同条2項)。
④ 勾留
勾留請求を受けた裁判官は、検察官からの資料と、勾留質問における被疑者の陳述を踏まえて、勾留の要件を満たしているかどうかを判断します。
勾留された場合、勾留期間は、原則として勾留請求をした日から10日です(刑事訴訟法208条1項)。やむを得ない事情がある場合には、通算して10日を超えない限度でこの期間を延長することができます(同条2項)。(なお、特定の罪名の事件については、さらに5日まで延長することができます。刑事訴訟法208条の2)
事案によっては、接見禁止となり、家族であっても面会できないことがありますが、その場合でも弁護人は被疑者と接見することができます。
⑤ 処分
検察官は、どのような処分をするか(不起訴にするか、公判請求するか、略式起訴するか等)を判断し、勾留満期までに処分します。
不起訴になった場合や略式起訴された場合(罰金、科料の納付をします。)には、釈放されます。
公判請求された場合には、身柄拘束は続きますが、身柄拘束を解く制度である保釈を請求することができるようになります(刑事訴訟法88条1項)。
以上のように、逮捕された場合には、通常、起訴までに最長で23日間身柄が拘束されることになります。
弁護人としては、被疑者が身柄拘束された場合には、被疑者と接見してアドバイスするとともに、被害者がいる場合には示談交渉をする等して、早期の身柄解放を目指すことになります。

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交通事故における損害(傷害)
交通事故により傷害を負った場合の主な損害項目について、簡単に説明します。
なお、後遺症がある場合の損害項目(後遺症逸失利益,後遺症慰謝料)については、交通事故における損害(後遺症)をご覧ください。
一 積極損害
1 治療関係費
(1)治療費
治療費については、必要かつ相当な実費全額が損害として認められます。
ただし、必要性、相当性を欠く場合には、過剰診療、高額診療として損害と認められない場合があります。
(2)鍼灸、マッサージ費用、器具薬品代、温泉治療費等
医師の指示がある場合など、治療のため必要かつ相当な場合には、損害として認められます。
2 付添費
(1)入院付添費
医師の指示がある場合や傷害の程度、被害者の年齢等の事情により、入院中に付添の必要がある場合には損害と認められます。
(2)通院付添費
被害者が幼児の場合等、通院に付き添う必要がある場合には、損害と認められます。
(3)自宅付添費
自宅での看護が必要な場合には、症状固定時までの自宅付添費用も損害となります。
3 将来介護費
重度の後遺障害があり、将来にわたって介護が必要な場合には、介護費用が損害として認められます。
4 入院雑費
入院したときには様々な雑費がかかりますが、少額で計算が煩雑なため、定額で計算するのが一般的です。
「赤い本」の基準では入院1日につき1500円として計算します。
5 通院交通費
通院のための交通費も損害として認められます。
タクシー利用が相当な場合にはタクシー代も損害として認められますが、それ以外の場合は、電車、バスの料金を損害とするのが一般的です。
また、自家用車を利用した場合は実費相当額(ガソリン代、駐車場代等)が損害となります。
6 装具・器具等の購入費
必要があれば損害として認められます。
また、交換の必要がある場合には、将来の費用も損害として認められます。
7 家屋・自動車等改造費、調度品購入費
傷害の内容、後遺症の程度等から必要性があれば、損害として認められます。
二 消極損害
1 休業損害
交通事故により休業した場合には、休業したことにより得られなかった収入が損害となります。
なお、家事従事者の場合、賃金センサスの産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎として、家事ができなかった期間について休業損害が認められます。
2 後遺症逸失利益
後遺症逸失利益とは、後遺症により労働能力を喪失し収入が減少したことによる損害です。
三 慰謝料
1 傷害慰謝料(入通院慰謝料)
交通事故により傷害を負った場合、被害者が被った精神的苦痛について、慰謝料を請求することができます。
慰謝料額は、入院期間・通院期間に基づいて算定され、「赤い本」の基準では、別表Ⅰと別表Ⅱ(むち打ち症で他覚症状のない場合)を使用して、慰謝料額を算定します。
2 後遺症慰謝料
後遺症慰謝料とは、後遺症が残存したことによる精神的苦痛についての慰謝料です。

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交通事故における損害(後遺症)
交通事故により被害者が傷害を受け、治療が終了しても被害者に後遺症(後遺障害)が残る場合があります。
交通事故により、被害者に後遺症がある場合の主な損害として
①後遺症逸失利益
②後遺症慰謝料
があります。
一般的な場合について簡単に説明します。
一 後遺症逸失利益
後遺症がなければ将来にわたって得られたであろう利益のことを後遺症逸失利益といいます。
1 後遺症逸失利益の計算式
逸失利益の額は、以下の計算式で計算します。
後遺症逸失利益
=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
2 基礎収入額
通常、被害者の事故前の収入や、賃金センサスの平均賃金を基礎として逸失利益を算定します。
例えば、給与所得者の場合、原則として、事故前の収入を基礎収入としますが、収入が平均賃金を下回る場合であっても、平均賃金が得られる蓋然性があれば、平均賃金を基礎収入とすることができます。
また、家事従事者の場合、賃金センサスの産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎収入とするのが通常です。
3 労働能力喪失率
労働能力喪失率は、後遺障害の等級によります。
原則として以下のとおりです。
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
4 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
(1)原則
労働能力喪失期間は原則として症状固定日から67歳までとされております。
もっとも、後遺症逸失利益は症状固定時を基準に算定することから、逸失利益の算定にあたっては、中間利益を控除する必要があります。
中間利息の割引率は年5%とされています。
また、中間利息の控除の方法として、ライプニッツ方式が用いられております。
(2)平均余命の2分の1とする場合
労働能力喪失期間を67歳までとすると、67歳以上の高齢者には逸失利益がないことになるのではないかと思われますが、その場合には平均余命の2分の1の期間を労働能力喪失期間として逸失利益を算定します。
また、67歳未満であっても、事故当時の平均余命の2分の1に当たる年数が67歳までの年数より長い場合には、平均余命の2分の1の期間を労働能力喪失期間として、逸失利益を算定します。
後遺症逸失利益
=平均賃金×労働能力喪失率×平均余命の2分の1に対応するライプニッツ係数
(3)18歳未満の場合
労働能力喪失期間は症状固定日からとされていますが、症状固定日が18歳未満の場合には18歳から(ただし、大学卒業を前提とする場合には、大学卒業予定時から)労働能力が喪失すると考えます。
そのため、被害者が18歳未満の未就労者の場合には、以下の計算式で計算します。
また、基礎収入については、賃金センサスの平均賃金を用いるのが通常です。
後遺症逸失利益
=平均賃金×労働能力喪失率×(症状固定時の年齢から67歳までのライプニッツ係数-18歳までのライプニッツ係数)
5 生活費控除はしません
後遺症逸失利益の場合には、生活費を控除しないのが原則です。
6 むち打ち症の場合
むち打ち症(むち打ち損傷)の場合、後遺症が永続するかどうか明らかではないため、後遺障害の等級が認定された場合であっても、労働能力喪失期間が限定される傾向にあります。
12級で10年程度、14級で5年程度に制限される場合が多いようです。
7 計算式
年収400万円の給与所得者(事故時40歳)に10級の後遺障害がある場合
基礎収入額 | 400万円 |
労働能力喪失率 | 27% |
労働能力喪失期間 | 27年 |
27年に対応するライプニッツ係数 | 14.6430 |
逸失利益
=400万円×0.27×14.6430
=1581万4440円
二 後遺症慰謝料
裁判基準(「赤い本」の基準)では、被害者に後遺障害がある場合の慰謝料額は以下のとおりです。おおよその金額ですので、事案により慰謝料額が異なります。。
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
なお、14級にいたらない後遺症の場合であっても、後遺症慰謝料が認められることはあります。
また、重度の後遺障害があり、死亡に比肩するような精神的苦痛を受けた場合には近親者の慰謝料も認められます。

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配偶者の不貞行為(離婚請求・慰謝料請求)
配偶者が、浮気や不倫といった不貞行為をした場合、不貞行為をされた配偶者はどのような対応をとることができるでしょうか。
一 配偶者の不貞行為は離婚事由にあたります
不貞行為とは、配偶者がいる者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性交渉をすることをいいます。
配偶者の不貞行為は離婚事由にあたるため(民法770条1項1号)、不貞行為をされた配偶者は、不貞行為をした配偶者と原則として離婚することができます(ただし、裁判所が一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認め、離婚を認めない場合があります。民法770条2項)。
なお、不貞行為とは性交渉がある場合をいうため、性交渉がないプラトニックな場合は民法770条1項1号の離婚事由にはあたりませんが、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)にあたり、離婚が認められることはあります。
二 配偶者が不貞行為をした場合には慰謝料請求ができます
1 不法行為に基づく損害賠償請求
配偶者が不貞行為をした場合には、不貞行為をされた配偶者は、不貞行為をした配偶者とその相手方に対し、慰謝料を請求することができます。
慰謝料請求は不法行為に基づく損害賠償請求であり(民法709条、710条)、不貞行為をした配偶者とその相手方の共同不法行為となります(民法719条1項)。
共同不法行為による損害賠償債務は不真正連帯債務であるとされていますので、不貞行為をされた配偶者は、不貞行為をした配偶者とその相手方の双方に対して慰謝料を請求することができますし、どちらか一方に対して全額請求することもできます。
2 慰謝料金額
慰謝料金額は、不貞行為をした配偶者の有責性の程度(不貞行為の期間や回数、同棲の有無等)、不貞行為をされた配偶者の精神的苦痛の大きさ、婚姻生活の状況、婚姻期間や年齢、未成年の子の有無、資力等、具体的な事情により異なります。
慰謝料の金額としては、通常、300万円以下であり、数十万円程度になることもあります。事案によっては、500万円以上の高額な慰謝料が認められることもあります。
慰謝料金額については具体的な事情によりますので、慰謝料請求をする場合には、単に不貞行為があったと主張・立証するだけではなく、不貞行為をした配偶者の有責性の大きさや自身の精神的苦痛の大きさ等、具体的な事情を主張・立証していく必要があります。
3 慰謝料請求ができない場合
(1)不貞行為より前に婚姻関係が破綻していた場合
不貞行為より前に婚姻関係が破綻していた場合には、不貞行為をしても不法行為とはいえず、慰謝料請求は認められません。
(2)消滅時効
不法行為による損害賠償請求は、損害及び加害者を知ったときから3年で時効により消滅します(民法724条)。
なお、時効の起算点について①不貞行為による精神的苦痛に対する慰謝料と考え、不貞行為を知ったときを起算点とする考えと、②離婚に至ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料と考え、離婚成立日を起算点とする考えがあります。
(3)一方が全額支払った場合の他方への請求
不貞行為をされた配偶者は、不貞行為をした配偶者とその相手方に対し、慰謝料請求をすることができますが、不貞行為をした配偶者とその相手方の債務は不真正連帯債務であるため、一方が、慰謝料を支払った場合には、支払った者の債務が消滅するだけでなく、他方の債務も消滅します。
そのため、不貞行為をされた配偶者が、不貞行為者の一方から、慰謝料全額の支払いを受けた場合には、他方に対する慰謝料請求は認められなくなります。
三 配偶者が不貞行為をしたことでお悩みの方へ
以上のように、配偶者が不貞行為をした場合には、不貞行為をされた配偶者は、①離婚請求、②慰謝料請求をすることができますが、不貞行為の事実に争いがある場合にはどうやって立証するか問題となりますし、不貞行為の事実について争いがない場合であっても、慰謝料額は具体的な事情により変わってくるため、慰謝料請求をするにあたって具体的な事情を主張・立証する必要があります。
そのため、配偶者が不貞行為をした場合には、どのような対応をするか、弁護士に相談することをご検討ください。
当事務所には、男性弁護士、女性弁護士がおり、夫側、妻側どちらの側の相談にも対応できますので、配偶者の不貞行為にお悩みの方は、安心してお問い合わせください。

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交通事故における損害(物損事故)
物損事故の場合の主な損害について簡単にご説明します。
1 修理が可能な場合
(1)修理費
事故車両の修理が可能な場合、修理費が損害となります。
ただし、修理が可能であっても、修理費用が事故前の事故車両の時価を上回る場合には、経済的には修理が不能な場合とみなされます。
(2)評価損
評価損は、事故当時の車両価格と修理後の車両価格の差額のことをいいます。
評価損には、
①技術上の評価損(修理をしても、技術上の限界等から事故車両の機能や外観に回復できない欠陥が残る場合)
②取引上の評価損(事故歴があることにより、事故車両の価値が下落する場合)
があります。
2 修理が不可能な場合
(1)買替差額
修理が不能の場合には、原則として、事故時の車両の時価相当額と売却代金の差額(買替差額)が、損害として認められます。
修理が不能な場合としては、
①物理的全損(修理技術上、修理が不可能な場合)
②経済的全損(修理費用が事故前の事故車両の時価を上回る場合)
があります。
(2)車両の買替に要する費用
被害車両が全損の場合、車両の買替が必要ですから、登録手数料等車両の再取得に要する費用は、損害として認められます。
3 代車使用料
原則として、現実に代車を使用しており、代車使用料が現実に発生している場合に、修理や買替に必要な相当期間について、事故車と同等の車種の代車使用料が、損害として認められます。
4 休車損
営業用車両が修理・買替によって営業ができなくなった場合には、買替期間や修理期間として相当な期間について、営業を継続していれば得られたであろう利益の喪失が、損害として認められます。
5 雑費
車両の保管料
レッカー代
廃車料
等についても、損害として認められます。
6 車両以外の損害
車両の積み荷を損壊した場合の積み荷の価格
家屋を損壊した場合の修繕費
店舗を損壊した場合の修繕費や営業損害
等が損害として認められる場合があります。
7 慰謝料
原則として物損について慰謝料は認められません。
ただし、例外的に物損について慰謝料が認められることはあります。

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交通事故における損害(死亡事故)
交通事故において被害者が死亡した場合に発生する主な損害として
①逸失利益
②死亡慰謝料
③葬儀費用
があります。
一般的な場合について簡単に説明します。
一 逸失利益
交通事故により亡くなった場合、被害者は収入を得ることができなくなってしまいます。
交通事故により被害者が亡くなったことで、得ることができなくなった利益(「逸失利益」といいます。)は、損害にあたります。
1 逸失利益の計算式
逸失利益の額は、以下の計算式で計算します。
逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除額)×就労可能年数のライプニッツ係数
2 基礎収入額
通常、被害者の事故前の収入や、賃金センサスの平均賃金を基礎として逸失利益を算定します。
例えば、給与所得者の場合、原則として、事故前の収入を基礎収入としますが、収入が平均賃金を下回る場合であっても、平均賃金が得られる蓋然性があれば、平均賃金を基礎収入とすることができます。
また、家事従事者の場合、賃金センサスの産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎収入とするのが通常です。
3 生活費控除率
交通事故により死亡した場合、収入を得られなくなる一方、生活費の負担もなくなります。
そのため、逸失利益の算定にあたっては、生活費の負担分を控除します。
裁判基準では、被害者が家族を支えているか否か、独身か否か等の事情によって、30%から50%の間で控除されるのが通常です。
4 就労可能年齢に対応するライプニッツ係数
(1)原則
就労可能年数は原則として67歳までとされております。
交通事故により死亡した場合、亡くなった時から67歳までの年数、就労できなくなったといえ、逸失利益が発生します。
もっとも、収入は長年にわたって得られる一方、逸失利益は交通事故発生時を基準に算定されることから、逸失利益の算定にあたっては、中間利息を控除する必要があります。
逸失利益の算定にあたって、中間利息の割引率は年5%とされています。また、中間利息の控除の方法として、ライプニッツ方式が用いられております。
(2)平均余命の2分の1とする場合
就労可能な年齢を67歳までとすると、67歳以上の高齢者には逸失利益がないことになるのではないかと思われますが、その場合には平均余命の2分の1の期間について逸失利益を算定します。
また、67歳未満であっても、事故当時の平均余命の2分の1に当たる年数が67歳までの年数より長い場合には、平均余命の2分の1の期間について、逸失利益を算定します。
逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×平均余命の2分の1のライプニッツ係数
(3)18歳未満の場合
就労可能な年齢は原則として18歳からであると考えられております(ただし、大学卒業を前提とする場合には、大学卒業予定時から就労開始すると考えます。)。
そのため、被害者が死亡時に18歳未満の場合には、以下の計算式で計算します。
また、基礎収入については、賃金センサスの平均賃金を用いるのが通常です。
逸失利益=平均賃金×(1-生活費控除額)×(死亡時の年齢から67歳までのライプニッツ係数-18歳までのライプニッツ係数)
4計算例
年収400万円の給与所得者の男性(事故時40歳)で独身の場合
基礎収入額 400万円
生活費控除率 50%
就労可能期間 27年
27年に対応するライプニッツ係数 14.6430
逸失利益
=400万円×(1-0.5)×14.6430
=2928万6000円
二 死亡慰謝料
被害者本人の慰謝料のほか、被害者の遺族固有の慰謝料も損害として認められます(民法710条、711条)。
自賠責基準では、死亡した被害者本人の慰謝料を350万円とし、遺族(被害者の父母、配偶者、子)がいる場合、1人なら550万円、2人なら650万円、3人以上なら750万円とし、被害者に被扶養者がいる場合は200万円を加算されます。
これに対し、裁判基準(「赤い本」の基準)では、
一家の支柱の場合 2800万円
母親、配偶者の場合 2400万円
赤い本平成28年版より2500万円
その他の場合 2000万円から2200万円
赤い本平成28年版より2500万円
が、本人及び遺族合わせての慰謝料の目安とされていますが、具体的な事情(被害者の年齢、加害行為の悪質性等)により金額は異なります。
三 葬儀費用
自賠責基準では、原則60万円とし、これを超えることが明らかな場合には100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費が認められます。
これに対し、裁判基準では、原則として150万円(ただし、実際に支出した金額が150万円を下回る場合には、実際に支出した金額)が、損害として認められます。事案によりそれ以上の金額が認められることもあります。
なお、葬儀費用以外に、仏壇や墓の購入費用等を損害と認めた裁判例もあります。

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離婚時年金分割制度 合意分割と3号分割
一 年金分割制度
離婚した場合、相手方に年金分割を請求することが考えられます。
年金分割というと、「年金が半分もらえるのかな」と思われるかもしれませんが、そうではありません。また、すべての年金が年金分割の対象になるわけではありません。年金分割制度によって分割されるのは、厚生年金の報酬比例部分、共済年金の報酬比例部分と職域部分(以下「厚生年金等」といいます)のうち、婚姻期間中に支払われた部分です。
離婚してから、「こんなはずじゃなかった」ということがないように、年金分割制度についてきちんと理解しておきましょう。
年金分割制度には、「合意分割」と「3号分割」がありますので、以下では、それぞれについて簡単にご紹介します。
二 合意分割
1 概要
合意分割は、夫婦の合意又は裁判手続によって、厚生年金等を分割することができるという制度です。
2 対象となる期間
婚姻期間中の加入期間全てです。
3 分割の割合
当事者双方の厚生年金等の記録を合算しその2分の1を上限として、夫婦間の合意又は裁判手続によって決められた割合で分割します。裁判手続によって決められる場合には、特段の事情がない限り2分の1になるのが一般です。
4 請求期間
原則として離婚後2年以内に請求する必要があります。
5 手続
(1)分割割合の合意等
分割割合を決める必要があるので、まず、夫婦の標準報酬の記録を確認しなければいけません。そこで、「年金分割の情報提供請求書」を、厚生年金の場合には年金事務所、共済年金の場合には共済組合(以下「年金事務所等」といいます)に、必要書類を添えて提出すれば、「年金分割のための情報通知書」という離婚時年金分割に必要な情報を入手することができます。この情報に基づいて、夫婦の合意又は裁判手続で分割割合を定め、年金事務所等に年金分割を請求することになります。
(2)年金分割の請求
年金分割の請求をする場合には、必要書類を添えて、「分割改定の請求書」を年金事務所等に提出します。必要書類には、離婚当事者の年金手帳又は国民年金手帳、基礎年金番号通知書、当事者双方の戸籍謄本、住民票、分割割合を確認するための書類などがあります。詳しくは、提出先の年金事務所等に確認してください。
三 3号分割
1 概要
3号分割、国民年金の第3号被保険者であった方が年金事務所等に申請することにより、相手方の厚生年金等を自動的に分割できるという制度です。第3号被保険者とは、会社員や公務員などの第2号被保険者の被扶養配偶者で、20歳以上60歳未満の人のことです。例えば、専業主婦がこれにあたります。
2 対象となる期間
平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間のみです。
3 分割の割合
2分の1と決まっています。
4 請求期間
原則として離婚後2年以内に請求する必要があります。
5 手続
年金分割の請求をする場合には、離婚当事者の年金手帳などの必要書類を添えて、「分割改定の請求書」を年金事務所等に提出します。詳しくは、提出先の年金事務所等に確認してください。
四 注意点
老後に年金をもらうには受給資格が必要です。原則として、公的年金に加入した期間の合計が25年以上でないと、受給資格がありません。年金の受給資格がないと年金分割請求しても年金はもらえませんので、ご注意下さい。
※平成29年8月1日から、受給資格を得るための保険料納付期間が25年から10年に短縮されます。期間が10年に満たない場合でも、後納制度等を利用することにより、受給資格が得られる可能性があります。

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交通事故を起こした場合の責任
一 3つの責任
交通事故を起こした場合、民事上の責任、刑事上の責任、行政上の責任を負いますので、自動車の運転にはくれぐれもお気を付けください。
1 民事上の責任
(1)民法709条に基づく不法行為責任
故意又は過失によって他人の権利又は法律上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。
そのため、過失によって交通事故を起こした場合、被害者に対し、治療費や車の修理費などの損害を賠償する義務を負います。
(2)自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任
事故のために自動車を運行の用に供する者(「運行供用者」といいます)は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(自動車損害賠償保障法3条本文)。
ただし、①自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、②被疑者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと、③自動車に構造上の欠陥又は機能に障害がなかったことを証明したときは責任を負いません(同条但書)。
2 刑事上の責任
危険な運転や不注意で交通事故を起こし人を死傷させた場合、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(「自動車運転死傷行為処罰法」といいます)により処罰されます。
また、救護義務等の道路交通法上の義務に違反した場合には、道路交通法違反として処罰されます。
3 行政上の責任
自動車の運転免許には、点数制度があり、自動車の運転者が交通違反をしたり、交通事故を起こしたりした場合には、内容に応じて点数が付き、点数によって、免許の取り消し又は停止処分をされます。
二 各責任の関係
民事上の責任、刑事上の責任、行政上の責任はそれぞれ目的の異なる別個の責任です。
民事上の責任については被害者救済の観点から広く認められますが、刑事上、処罰するかどうか慎重に判断されるため、刑事では不起訴になったからといって、交通事故を起こした者に民事上の賠償義務がないというわけではありません。
また、刑事裁判で有罪になったからといって、必ずしも、民事上、加害者が、過失割合100%として損害賠償責任を負うというわけではありません。

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