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【相続】相続人の範囲
遺産分割は相続人全員で行わなければなりませんので,誰が相続人か調べておかないと後で遺産分割をやり直さなければならなくなってしまうおそれがあります。
そこで,相続人の範囲について簡単に説明します。
一 相続人の範囲
1 配偶者(民法890条)
配偶者は常に相続人になります。
他に相続人がいる場合には,その者と同順位となります。
「配偶者」は法律婚の配偶者であり,内縁配偶者は含まないと解されております。
2 配偶者以外の親族は以下の順位で相続人となります。
第1順位の者がいるときは,その者が,第1順位の者がいないときは第2順位の者が,第1順位の者,第2順位の者のいずれもいないときは第3順位の者が相続人となります。
(1)第1順位 子又はその代襲相続人・再代襲相続人(民法887条)
①子
実子,養子ともに相続人になります。
②代襲相続人(孫)
被相続人の子が,相続開始以前に死亡したとき,民法891条の欠格事由に該当するとき,廃除によって相続権を失ったときは,その者の子が代襲して相続人となります(民法887条2項)。
ただし,被相続人の直系卑属でない者はこの限りではありませんので(民法887条2項但書),養子の連れ子(養子縁組前に生まれた養子の子)は代襲相続人にはなりません。他方,養子縁組後に生まれた養子の子は,被相続人の直系卑属にあたりますので,代襲相続人になることができます。
③再代襲相続人(曾孫)
子の代襲者が,相続の開始以前に死亡したとき,民法891条の欠格事由に該当するとき,廃除によって相続権を失ったときは,その者の子が代襲して相続人となります(民法887条3項)。
(2)第2順位 直系尊属(親等の異なる者の間では近い者)(民法889条1項1号)
直系尊属とは,親,祖父母等のことです。
親等の異なる者の間では,親等の近い者が先になりますので,相続開始時に親がいる場合は親が相続人になりますし,相続開始時に両親のいずれもいなければ祖父母が相続人になります。
(3)第3順位 兄弟姉妹又はその代襲相続人(民法889条1項2号,2項)
①兄弟姉妹
②代襲相続人(甥姪)
民法889条2項は,兄弟姉妹が相続人となる場合に,代襲相続についての民法887条2項を準用しておりますので,兄弟姉妹が,相続開始以前に死亡したとき,民法891条の欠格事由に該当するとき,廃除によって相続権を失ったときは,その者の子(甥姪)が代襲して相続人となります。
なお,再代襲についての民法887条3項の準用規定がないため,兄弟姉妹については再代襲はありません。
二 胎児
権利能力は出生によって発生しますので(民法3条1項),胎児については権利能力がないのが原則ですが,相続については,胎児は既に生まれたものとみなされます(民法886条1項)。
ただし,胎児が死体で生まれたときは民法886条1項は適用されません(民法886条2項)。
三 養子と実親やその血族との関係
1 普通養子縁組の場合
普通養子縁組をしても実方の父母(実親)やその血族との親族関係がなくなるわけではないので,養子は,養親やその血族の相続人となるのみならず,実親やその血族の相続人にもなります。
なお,例えば,長男の子を養子にした場合に長男が相続開始以前になくなったときには,養子が被相続人の子としての身分と長男の代襲相続人としての身分を有する等,親族を養子にした場合には,相続人としての地位を複数有することがあります。
2 特別養子縁組の場合
養子と実親やその血族との間の親族関係は特別養子縁組によって終了し(民法817条の9),養子は実親やその血族の相続人とはならないのが原則です。
四 相続の放棄をした場合
相続を放棄した者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなされます。
また,代襲相続の規定の適用もありませんので,例えば,相続人である子が相続放棄をしても,その子(被相続人の孫)が代襲相続人となるわけではありません。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【離婚】離婚原因(婚姻を継続しがたい重大な事由)
話し合いで離婚をすることができなかった場合には,裁判で離婚することになりますが,裁判で離婚するには,民法770条1項の離婚原因がなければなりません。
離婚原因は,不貞行為(1号),悪意の遺棄(2号),3年以上の生死不明(3号),回復の見込みのない強度の精神病(4号),その他婚姻を継続しがたい重大な事由(5号)の5つです。
今回は5号の婚姻を継続しがたい重大な事由について説明します。
1 婚姻を継続しがたい重大な事由とは
民法770条1項5号の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」とは,婚姻関係が破綻し,回復の見込みがないことを意味します。
5号は,1号から4号が具体的な事由がなくても,婚姻関係が破綻している場合には離婚を認めるものであり,一般的破綻主義の規定です。
裁量棄却についての民法770条2項(「裁判所は,前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても,一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは,離婚の請求を棄却することができる。」と規定しております。)は5号には適用されませんが,そのかわりに,5号については,婚姻関係が破綻しているかどうかだけではなく,回復の見込みがあるかどうかについても考慮されます。
2 民法770条1項5号の離婚事由として主張される場合
5号の離婚事由として,よく主張されるのは以下のような場合です。
①配偶者の虐待・暴力・性暴力等のDV(ドメスティック・バイオレンス)
②配偶者に重大な病気や障害がある場合
③配偶者が宗教活動に過度に専念する場合
④配偶者の怠惰な生活・勤労意欲の欠如・多額の借金
⑤配偶者の親族との不和(嫁姑問題等)
⑥配偶者の性交不能・性交渉拒否(セックスレス)
⑦配偶者の同性愛
⑧性格の不一致・価値観の相違,愛情の喪失等
⑨配偶者が犯罪をした場合
これらの原因は,1つだけでなく,同時に複数主張されることがあります。
また,1号から4号に該当するか微妙な場合には,5号の離婚事由に当たると主張されることがあります。
婚姻を継続し難い重大な事由があるかどうかは,形式的に判断されるわけではなく,具体的な事情に加え,当事者の離婚意思の強さ(当事者の離婚意思が強固な場合には離婚が認められやすくなります。),当事者の言動(例えば,訴訟中,相手方を激しく非難している場合には,離婚が認められやすくなります),別居の有無,期間(別居期間が長期に及ぶ場合に離婚が認められやすくなります。),子供の有無,年齢(未成熟の子がいない場合には,離婚が認められやすいといえます。)等を総合的に考慮して判断されます。

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【離婚】離婚原因(回復の見込みのない強度の精神病)
話し合いで離婚をすることができなかった場合には,裁判で離婚することになりますが,裁判で離婚するには,民法770条1項の離婚原因がなければなりません。
離婚原因は,不貞行為(1号),悪意の遺棄(2号),3年以上の生死不明(3号),回復の見込みのない強度の精神病(4号),その他婚姻を継続しがたい重大な事由(5号)の5つです。
今回は4号の回復の見込みのない強度の精神病について説明します。
1 民法770条1項4号の離婚原因について
民法770条1項4号は,「配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき」を離婚原因としており,配偶者が統合失調症や躁鬱病等の高度の精神病にかかり,回復の見込みのない場合(不治の場合)には離婚をすることができます。
配偶者が回復の見込みのない強度の精神病にかかった場合には,夫婦の精神的な交流ができなくなっており,婚姻関係が破綻しているといえるため,離婚が認められます。
なお,アルコール中毒や薬物中毒については精神病ではないため,民法770条1項4号の離婚原因にはあたりませんが,婚姻を継続しがたい重大な事由があるとして民法770条1項5号の離婚原因にあたることがあります。
2 今後の療養,生活等についての配慮が必要です。
配偶者が不治の精神病にかかった場合に離婚ができるとすると,離婚を求められる配偶者にとって酷な場合があります。
そのため,民法770条1項4号に該当する場合であっても,不治の精神病にかかった配偶者の今後の療養,生活等について具体的な方途を講じられ,ある程度,その方途の見込みがついてない場合には,民法770条2項(同条項は「裁判所は前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても,一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは,離婚の請求を棄却することができる。」と規定しております。)により,請求が棄却されてしまいます。
そのため,離婚が認められるためには,回復の見込みのない強度の精神病にかかった配偶者の治療費や生活費を負担する等,配偶者の今後の療養,生活等に配慮することが必要となります。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【離婚】離婚原因(3年以上の生死不明)
話し合いで離婚をすることができなかった場合には,裁判で離婚することになりますが,裁判で離婚するには,民法770条1項の離婚原因がなければなりません。
離婚原因は,不貞行為(1号),悪意の遺棄(2号),3年以上の生死不明(3号),回復の見込みのない強度の精神病(4号),その他婚姻を継続しがたい重大な事由(5号)の5つです。
今回は3号の「3年以上の生死不明」について説明します。
1 「3年以上の生死不明」とは
「3年以上の生死不明」とは,生存の証明も死亡の証明もできない状態が3年以上続くことをいいます。
単なる行方不明は,生死不明にはあたりません。
生死不明になった理由は問われませんし,生死不明になったことについて過失があるかどうかも問われません。
なお,生死不明の状態が3年未満の場合や,行方不明の場合にも,民法770条1項5号の婚姻を継続しがたい重大な事由があるとして,離婚請求をすることは可能です。
2 失踪宣告との違い
配偶者が生死不明の場合に,婚姻を解消する方法としては,失踪宣告による方法もあります。
①不在者の生死が7年間明らかでない場合(普通失踪)
②戦地に臨んだ者,沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が,それぞれ,戦争が止んだ後,船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないとき(特別失踪)
は,利害関係人の請求により,家庭裁判所は,失踪宣告をすることができます(民法30条)。
失踪宣告がなされた場合,普通失踪の場合は期間が満了したとき,特別失踪の場合は危難が去ったときに,死亡したものとみなされ(民法31条),婚姻関係は終了します。
もっとも,失踪者の生存が後に判明し,失踪宣告が取り消されることがあり(民法32条),その場合には,婚姻関係が復活します。失踪宣告後,再婚した場合,失踪宣告が取り消されると重婚状態になってしまうので注意が必要です。
そのため,失踪宣告手続と,民法770条による離婚請求のどちらの手続をするか考える必要があります。

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【離婚】有責配偶者の離婚請求
離婚のご相談を受けていると,相談者の方から,相手方が不倫・浮気をしたのですから,相手方から離婚請求をすることはできないですよねと聞かれることが多いです。
不倫・浮気等をして破綻原因を作った一方配偶者を有責配偶者といいますが,有責配偶者からの離婚請求が認められるかは大きな問題です。
1 有責配偶者からの離婚請求は認められるのか
かつては,裁判所は,道徳を守ることが法の職分であるとして,有責配偶者からの離婚請求を認めていなかった時代もありました(昭和27年の最高裁判所判決,いわゆる「踏んだり蹴ったり判決」では,そのような離婚請求が認められたら,「踏んだり蹴ったり」であると,述べています)。
しかし,昭和62年に,最高裁判所は,一定の要件があれば有責配偶者からの離婚請求でも認めるという判断をしました。
最高裁判所は,婚姻が破綻している場合には戸籍上の婚姻を存続させるのは不自然であるとしながら,離婚請求は信義誠実の原則に照らして容認されるものでなければならないとして,一定の要件のもとで,有責配偶者からの離婚請求を認めました。
2 有責配偶者からの離婚請求が認められる要件
昭和62年の判決で最高裁判所は,以下の要件を挙げています。
(1)婚姻関係が破綻していること
(2)有責配偶者からの離婚請求が信義則上容認されること
離婚を認めても信義則に反しないかは,以下の①から③を総合的に考慮して判断されます。
①別居期間が両当事者の年齢及び同居期間を対比して相当の長期間に及ぶこと
②未成熟の子が存在しないこと
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと
3 まとめ
以上のように,有責配偶者からの離婚請求は,原則として認められませんが,一定の要件のもとで認められます。
そのため,有責配偶者だからといって離婚請求を諦めるべきだとはいえませんし,離婚請求された側にとっても,請求者が有責配偶者だからといって油断してはいけません。
また,実際に当事者間で争いとなる場合には,そもそも離婚請求者が有責配偶者であるかどうか争いとなったり,相手方に婚姻関係が破綻した原因があると主張して争いになったりして,そもそも有責配偶者からの離婚請求といえるかどうか分かりませんので,注意が必要です。

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【離婚】離婚原因(悪意の遺棄)
話し合いで離婚をすることができなかった場合には,裁判で離婚することになりますが,裁判で離婚するには,民法770条1項の離婚原因がなければなりません。 離婚原因は,不貞行為(1号),悪意の遺棄(2号),3年以上の生死不明(3号),回復の見込みのない強度の精神病(4号),その他婚姻を継続しがたい重大な事由(5号)の5つです。
今回は2号の悪意の遺棄について説明します。
1 「悪意の遺棄」とは
「悪意の遺棄」とは,正当な理由なく民法752条の同居・協力・扶助義務を履行しないことをいいます。
「悪意」というのは,社会的・倫理的非難に値する要素を含むものであり,積極的に婚姻共同生活を廃絶するという遺棄の結果たる害悪の発生を企図し,もしくはこれを認容する意思をいいます。単に遺棄の事実や結果の発生を知っているだけでは「悪意」があるとはいえません。
「遺棄」とは,相手方を置き去りにして家を出てしまうこと,相手方を追い出すこと,相手方が出ざるをえないようにしむけ,帰ってこられなくすること等をいいます。
例えば,半身不随となった配偶者を,十分な看護もせずに,突然家を出て行き,生活費も入れなかった場合には「悪意の遺棄」にあたると考えられます。
2 「悪意の遺棄」とまではいえない場合
同居・協力・扶助義務違反があるからといって,直ちに「悪意の遺棄」にあたるわけではありません。
もっとも,「悪意の遺棄」とまではいえないとしても,同居・協力・扶助義務違反がある場合には,5号の「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして,離婚原因の存在が認められることがあります。

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【遺言】遺言書の検認
一 遺言書の検認とは
遺言書の検認とは、遺言書の保存を確実にして、検認後の偽造や変造を防止する手続であり、審判事件にあたります(家事事件手続法別表第1の103)。
また、手続について、相続人や受遺者等の利害関係人に通知されますので(家事事件手続規則115条)、相続人や受遺者等の利害関係人に対し、遺言書があることを知らせる手続でもあります。
遺言書の検認は遺言が有効か無効かどうかを判断する手続ではないので、遺言書の検認をしても、遺言として有効であると判断されるわけではなく、遺言の効力が争われることがあります。
二 検認が必要な遺言
公正証書遺言以外の遺言書には検認が必要です(民法1004条2項)。
したがって、自筆証書遺言、秘密証書遺言、一般危急時遺言、難船危急時遺言、伝染病隔離者遺言、在船者遺言については、検認が必要です。
公正証書遺言について検認が不要なのは、公証役場で原本が保管されるため、偽造・変造のおそれがないからです。
三 検認の手続
1 申立て
遺言書の保管者は相続の開始を知った後、遅滞なく、家庭裁判所に、遺言書の検認を請求しなければなりません(民法1004条1項)。
また、遺言書の保管者がなく、相続人が遺言書を発見した場合には、遺言書を発見した相続人は、遺言書を発見した後、遅滞なく、遺言書の検認を請求しなければなりません(民法1004条1項)。
管轄裁判所は、相続を開始した地を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法209条1項)。相続を開始した地とは、遺言者の最後の住所地です。
なお、検認の申立ては、遺言書の保管者等の義務ですので(民法1004条1項)、家庭裁判所の許可がなければ取り下げることはできません(家事事件手続法212条)。
2 審判手続
(1)期日の通知
申立後、裁判所書記官は、申立人、相続人に対し、検認期日を通知します(家事事件手続規則115条1項)。
(2)検認期日
申立人は、検認期日に、遺言書を持参して提出します。
家庭裁判所は、遺言の方式に関する一切の事実を調査し(家事事件手続規則113条)、裁判所書記官が調書を作成します(家事事件手続法211条、家事事件手続規則114条)
検認終了後、検認済証明書が作成され、遺言書に付されます。
また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できないため(民法1004条3項)、検認期日に、相続人またはその代理人の立会いのもとで開封されます(なお、相続人等に立会いの機会を与えれば足り、実際に立会いがなくても開封はできます。)。
(3)検認された旨の通知
検認後、裁判所書記官は、検認期日に立ち会わなかった相続人、受遺者その他の利害関係人(家事事件手続規則115条1項の通知を受けた者を除きます。)に、その旨を伝えます(家事事件手続規則115条2項)。
四 過料
遺言書の保管者や遺言を発見した相続人が、遺言書を提出せず、検認の手続を経ないで遺言を執行したとき、封印のある遺言書を家庭裁判所以外で開封したときは、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。

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【離婚】どこの裁判所でやるんですか?(離婚事件の管轄)
離婚事件やそれに関連する事件(婚姻費用、養育費、財産分与等)については、当事者間の協議で解決することができない場合には、調停や審判、訴訟で解決を図ることができます。
家事調停,家事審判や人事訴訟は家庭裁判所の管轄ですが、どこの家庭裁判所で手続が行われることになるのでしょうか。
夫婦が遠く離れて別居している場合には、どこに管轄があるかは重大な関心事です。
そこで、離婚事件の土地管轄について簡単に説明します。
一 調停事件・審判事件の土地管轄
1 調停事件の管轄
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所
または
当事者の合意で定める家庭裁判所(合意管轄)
(家事事件手続法245条1項)。
2 審判事件の管轄
①婚姻費用 夫又は妻の住所地(家事事件手続法150条3号)
②子の監護に関する処分 子の住所地(家事事件手続法150条4号)
③財産分与 夫又は妻であった者の住所地(家事事件手続法150条5号)
④親権者の指定又は変更 子の住所地(家事事件手続法167条)
上記のほかに、合意管轄もあります(家事事件手続法66条1項)。
3 優先管轄
2つ以上の家庭裁判所に管轄権があるときは、先に手続を開始した家庭裁判所が管轄します(家事事件手続法5条)。
4 移送・自庁処理
(1)土地管轄のない裁判所に申し立てた場合
家庭裁判所は、原則として、申立てや職権により管轄のある裁判所に移送します(家事事件手続法9条1項本文)。
ただし、家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で管轄裁判所以外の家庭裁判所に移送したり、自ら処理したりすること(自庁処理)ができます(同条項但書)。
(2)管轄がある裁判所に申し立てても移送される場合
①手続が遅滞することを避けるため必要があると認めるときその他相当と認めるとき
家庭裁判所は、5条の規定(優先管轄)により管轄権がないとされた家庭裁判所に移送することができます(家事事件手続法9条2項1号)。
②事件を処理するために特に必要があると認めるとき
家庭裁判所は、前号の家庭裁判所以外の家庭裁判所に移送することができます(同条項2号)。
二 訴訟事件の土地管轄
1 離婚訴訟の管轄
離婚訴訟の土地管轄は、夫又は妻の普通裁判籍を有する地(人事訴訟法4条1項)であり、夫又は妻の住所地(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所、日本国内に居所がないとき又は居所がないときは最後の住所)を管轄する家庭裁判所に訴えを提起することになります。
なお,人事訴訟については,合意管轄の規定はありません。
2 自庁処理
調停の経過、当事者の意見その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、申立て又は職権で調停事件が係属していた家庭裁判所が人事訴訟の審理・判決をすることができます(人事訴訟法6条)。
なお、未成年の子がいる場合、子の住所又は居所が考慮されます(人事訴訟法31条)。
3 移送
家庭裁判所は、管轄に属する場合であっても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け又は当事者の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立て又は職権で、他の管轄裁判所に移送することができます(人事訴訟法7条)。
なお、未成年の子がいる場合は子の住所又は居所が考慮されます(人事訴訟法31条)。
三 遠方に別居している場合
以上のように、離婚調停と離婚訴訟とでは土地管轄が異なります。
離婚訴訟では、自分の住所地を管轄する家庭裁判所に訴訟提起ができますが、離婚調停では、合意管轄がある場合を除き、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをしなければなりません。
また、調停前置主義により(家事事件手続法257条)、原則として、まずは離婚調停をしなければなりません。
そのため,夫婦が遠く離れて別居している場合には、申立人は相手方の住所地を管轄する遠方の家庭裁判所に調停の申立てをしなければならず,申立人の負担が大きくなります。
そのような場合、申立人としては、①合意管轄を利用することや、②家庭裁判所に自庁処理の上申をすることが考えられますが、①については相手方が合意するとは限りませんし、②については家庭裁判所が認めるとは限りません。

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離婚原因 配偶者に不貞な行為があったとき
話し合いで離婚をすることができなかった場合には,裁判で離婚することになりますが,裁判で離婚するには,民法770条1項の離婚原因がなければなりません。
離婚原因は,不貞行為(1号),悪意の遺棄(2号),3年以上の生死不明(3号),回復の見込みのない強度の精神病(4号),その他婚姻を継続しがたい重大な事由(5号)の5つです。
今回は1号の不貞行為について説明します。
1 離婚原因になる不貞行為とはなんですか
配偶者のある者が,自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性交渉を行うこと(いわゆる肉体関係がある場合)をいいます。
自由な意思に基づかない場合(例えば強姦被害にあった場合)には不貞行為にあたりません。
一緒に食事をした,デートをしただけのような場合には,不貞行為にはあたりませんが,5号のその他婚姻を継続しがたい重大な事由にあたる可能性があります。
2 婚姻関係が破綻していた場合でも不貞行為にあたりますか
すでに婚姻関係が破綻していた場合には不貞行為にあたりません。
裁判では,配偶者以外の異性と性交渉があった時点で,すでに婚姻関係が破綻していたかどうかが争いになることがよくあります。
3 不貞行為をされたら必ず離婚は認められますか
770条1項の離婚原因があったとしても,裁判所は,一切の事情を考慮して婚姻継続を相当と認めるときは,離婚請求を棄却することができます(同条2項)。
例えば不貞を許した場合には,同項により離婚請求が棄却されることもありえます。
また,不貞行為を許した場合には,信義則上離婚原因として主張できなくなることもありえます。
全面的に許したのか,条件付きで許したのか,その後の夫婦の関係はどうだったのかなど,さまざまな事情が総合的に考慮されます。
不貞行為をした配偶者に詫び状や誓約書を書かせる場合,許した証拠になる場合がありますので,内容には十分注意してください。
4 不貞行為をした配偶者から離婚請求はできますか
不貞行為をした配偶者からの離婚請求なんて認められるはずがないと思われるかもしれません。たしかに,認められないのが原則ですが,判例上は一定の要件をみたしていれば認められることがあります。
また,不貞行為をした配偶者が,別の離婚原因を主張して離婚請求をすることもあります。その場合,離婚を求められた配偶者としては,相手方が不貞行為をした有責配偶者であると主張することが考えられますが,不貞行為があったことが裁判で認められるかどうかは証拠の有無等によりますので,自分は不貞行為をされた配偶者なのだから離婚請求されることはないだろうと高をくくってはいけません。

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【債権回収】少額訴訟
一 少額訴訟とは
60万円以下の金銭の支払を求める請求についての特別な訴訟手続です。
少額の金銭請求について,簡易かつ迅速に解決することを目的とする手続であり,原則として1回の審理で終了します。また,反訴の禁止,証拠調べの制限,控訴の禁止等の特徴があります。
事実関係に余り争いのない事案では利用しやすい手続であるといえますが,複雑な事案,争点が多い事案等,事案によっては通常訴訟にしたほうが良いことがありますので,事案に応じて,少額訴訟にするか,通常訴訟にするか検討すべきでしょう。
また,訴えられた者(被告)は,通常の訴訟手続によることを求めることができます。
二 少額訴訟が利用できる場合(少額訴訟の要件)
1 訴額の制限
訴額(訴訟の目的の価額)が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えに限られます(民事訴訟法368条1項本文)。
2 回数の制限
同一裁判所に対する利用回数は年間10回までです(民事訴訟法368条1項但書,民事訴訟規則223条)。
回数について虚偽の届出をしたときは,裁判所の決定で10万円以下の過料に処されます(民事訴訟法381条1項)。
三 訴えの提起
簡易裁判所に訴えを提起します。
簡易裁判所では,訴えは口頭で提起することができますが(民事訴訟法271条),訴状を提出して行うのが一般的です。
本人で訴訟をする場合には,裁判所が用意している書式を利用するのが良いでしょう。
また,訴え提起の際,少額訴訟による審理,裁判を求める旨の申述をしなければなりませんし(民事訴訟法368条2項),その申述の際には訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理,裁判を求めた回数を届け出なければなりません(民事訴訟法368条3項)。
そのため,訴状には,少額訴訟による審理,裁判を求めること,訴えを提起した簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理,裁判を求めた回数を記載します。
四 手続の特徴
1 反訴の禁止
少額訴訟においては,反訴を提起することはできません(民事訴訟法369条)。
2 一期日審理の原則
特別の事情がある場合を除き,1回の期日で審理が終結します(民事訴訟法370条1項)。
口頭弁論が続行される場合を除き,当事者は,期日前または期日に,すべての攻撃防御方法を提出しなければなりません(民事訴訟法370条2項)。
3 証拠調べの制限
証拠調べは,即時に取り調べ得ることができる証拠に限定されます(民事訴訟法371条)。
4 証人等の尋問
証人には特別の定めがある場合を除き宣誓をさせなければなりませんが(民事訴訟法201条1項),少額訴訟では,証人の尋問は,宣誓をさせないですることができます(民事訴訟法372条1項)。
証人及び当事者本人の尋問を行うときは,まず証人の尋問をするのが原則ですが(民事訴訟法207条2項),少額訴訟では,証人や当事者の尋問は,裁判官が相当と認める順序でします(民事訴訟法372条2項)。
少額訴訟では,裁判所は,相当と認めるときは,最高裁判所規則の定めるところにより,裁判所,当事者双方,証人とが音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって証人を尋問することができます(民事訴訟法372条3項,民事訴訟規則226条)。
5 判決
判決の言渡しは,相当でないと認める場合を除き,口頭弁論終結後,直ちになされます(民事訴訟法374条1項)。
判決の言い渡しは,判決書の原本に基づかないですること(調書判決)ができます(民事訴訟法374条2項)。
判決において,必要があると認めるときは,判決言渡し日から3年を超えない範囲で支払の猶予や分割払いとすることができます(民事訴訟法375条)。
また,請求を認諾する判決には仮執行宣言が付されます(民事訴訟法376条)
なお,少額訴訟においても,和解はできますので,判決ではなく,和解で解決することもできます。
6 不服申立て
判決に対し控訴はできません(民事訴訟法377条)。
判決送達を受けた日から2週間以内に,判決をした裁判所に対する異議を申し立てることができます(民事訴訟法378条)。
適法な異議があった場合には,口頭弁論終結前の程度に復し,通常の訴訟手続により審理,裁判がなされますが(民事訴訟法379条),判決に対しては控訴はできず(民事訴訟法380条1項),特別上告ができるだけです(民事訴訟法380条2項で327条を準用)。
五 通常訴訟への移行
以下の場合には,通常訴訟に移行します。
1 被告が通常訴訟への移行を申述したとき
被告は,最初の口頭弁論期日で弁論するか,その期日が終了するまでは,訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができ(民事訴訟法373条1項),その申述があったときには通常の手続に移行します(民事訴訟法373条2項)。
2 裁判所の職権で移行する場合
以下の①から④の場合には,裁判所は職権で通常訴訟に移行させます。
①民事訴訟法368条1項の規定(少額訴訟の要件)に違反して少額訴訟による審理,裁判を求めたとき
②民事訴訟法368条3項の回数の届出を相当期間を定めて命じたが,その届出がなかったとき
③公示送達によらなければ被告に対する最初の口頭弁論期日の呼出しができないとき
④少額訴訟により審理,裁判をするのが相当でないと認めるとき

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