【離婚】どこの裁判所でやるんですか?(離婚事件の管轄)

2015-01-21

離婚事件やそれに関連する事件(婚姻費用、養育費、財産分与等)については、当事者間の協議で解決することができない場合には、調停や審判、訴訟で解決を図ることができます。

家事調停,家事審判や人事訴訟は家庭裁判所の管轄ですが、どこの家庭裁判所で手続が行われることになるのでしょうか。

夫婦が遠く離れて別居している場合には、どこに管轄があるかは重大な関心事です。

そこで、離婚事件の土地管轄について簡単に説明します。

一 調停事件・審判事件の土地管轄

1 調停事件の管轄

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所

または

当事者の合意で定める家庭裁判所(合意管轄)

(家事事件手続法245条1項)。

 

2 審判事件の管轄

①婚姻費用       夫又は妻の住所地(家事事件手続法150条3号)

②子の監護に関する処分  子の住所地(家事事件手続法150条4号)

③財産分与       夫又は妻であった者の住所地(家事事件手続法150条5号)

④親権者の指定又は変更 子の住所地(家事事件手続法167条)

 

上記のほかに、合意管轄もあります(家事事件手続法66条1項)。

 

3 優先管轄

2つ以上の家庭裁判所に管轄権があるときは、先に手続を開始した家庭裁判所が管轄します(家事事件手続法5条)。

 

4 移送・自庁処理

(1)土地管轄のない裁判所に申し立てた場合

家庭裁判所は、原則として、申立てや職権により管轄のある裁判所に移送します(家事事件手続法9条1項本文)。

ただし、家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で管轄裁判所以外の家庭裁判所に移送したり、自ら処理したりすること(自庁処理)ができます(同条項但書)。

(2)管轄がある裁判所に申し立てても移送される場合

①手続が遅滞することを避けるため必要があると認めるときその他相当と認めるとき

家庭裁判所は、5条の規定(優先管轄)により管轄権がないとされた家庭裁判所に移送することができます(家事事件手続法9条2項1号)。

②事件を処理するために特に必要があると認めるとき

家庭裁判所は、前号の家庭裁判所以外の家庭裁判所に移送することができます(同条項2号)。

二 訴訟事件の土地管轄

1 離婚訴訟の管轄

離婚訴訟の土地管轄は、夫又は妻の普通裁判籍を有する地(人事訴訟法4条1項)であり、夫又は妻の住所地(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所、日本国内に居所がないとき又は居所がないときは最後の住所)を管轄する家庭裁判所に訴えを提起することになります。

なお,人事訴訟については,合意管轄の規定はありません。

2 自庁処理

調停の経過、当事者の意見その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、申立て又は職権で調停事件が係属していた家庭裁判所が人事訴訟の審理・判決をすることができます(人事訴訟法6条)。

なお、未成年の子がいる場合、子の住所又は居所が考慮されます(人事訴訟法31条)。

 

3 移送

家庭裁判所は、管轄に属する場合であっても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け又は当事者の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立て又は職権で、他の管轄裁判所に移送することができます(人事訴訟法7条)。

なお、未成年の子がいる場合は子の住所又は居所が考慮されます(人事訴訟法31条)。

 

三 遠方に別居している場合

以上のように、離婚調停と離婚訴訟とでは土地管轄が異なります。

離婚訴訟では、自分の住所地を管轄する家庭裁判所に訴訟提起ができますが、離婚調停では、合意管轄がある場合を除き、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをしなければなりません。

また、調停前置主義により(家事事件手続法257条)、原則として、まずは離婚調停をしなければなりません。

そのため,夫婦が遠く離れて別居している場合には、申立人は相手方の住所地を管轄する遠方の家庭裁判所に調停の申立てをしなければならず,申立人の負担が大きくなります。

そのような場合、申立人としては、①合意管轄を利用することや、②家庭裁判所に自庁処理の上申をすることが考えられますが、①については相手方が合意するとは限りませんし、②については家庭裁判所が認めるとは限りません。

 

 

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