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【成年後見】居住用不動産処分の許可
老人ホームの入所費用にあてるため自宅を売却する場合等,後見事務をするにあたって不動産の処分が必要になることがありますが,居住用不動産を処分するには家庭裁判所の許可が必要です。
一 居住用不動産処分の許可
成年後見人が,成年被後見人に代わって,その居住の用に供する建物又はその敷地について,売却,賃貸,賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには,家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法859条の3)。
居住環境の変化は本人の精神状況に重大な影響を与えることから,居住用不動産の処分について後見人の代理権を制限し,家庭裁判所の許可が必要とされています。
なお,民法859条の3は,保佐人,補助人,成年後見監督人,保佐監督人,補助監督人が居住用不動産を処分する場合にも準用されておりますので(民法876条の5第2項,876条の10第1項,852条,876条の3第2項,876条の8第2項),これらの者が居住用不動産を処分する場合にも家庭裁判所の許可が必要となります。
二 居住用不動産とは
「居住の用に供する建物又はその敷地」は,生活の本拠として現に居住の用に供している不動産だけでなく,現在居住していなくても,生活の本拠として居住していた不動産や将来,生活の本拠として居住する予定のある不動産も含まれると解されます。
三 処分
許可が必要な処分は,①売却,②賃貸,③賃貸借の解除,④抵当権の設定,⑤その他これらに準ずる処分(贈与,使用貸借,譲渡担保権等抵当権以外の担保権の設定,解体工事を業者に依頼すること等)です。
賃貸借の解除にも許可が必要となりますので,老人ホーム等の施設に入る等の理由で借家の賃貸借契約を解除する場合にも家庭裁判所の許可が必要となります。
また,生活費を工面するために,リバースモーゲージ(自宅を担保に融資を受ける制度)を利用する場合にも家庭裁判所の許可が必要となります。
四 許可を得ないでした処分の効力
家庭裁判所の許可を得ないでした居住用不動産の処分は無効であると解されています。
五 手続
1 申立て
居住用不動産を処分するにあたって,成年後見人は,後見開始の審判をした家庭裁判所に居住用不動産処分許可の審判を申立てます(家事事件手続法117条2項)。
申立てにあたっては,不動産の全部事項証明書,固定資産評価証明書,処分に関する契約書案の写し,不動産業者の査定書等の資料を添付します。また,後見監督人が選任されているときは,その同意が必要となりますので(民法864条,13条1項3号),後見監督人の同意書も添付します。
2 審判
家庭裁判所は,処分の必要性や相当性,本人への影響等の事情を考慮して,処分を許可するか判断します。
3 不服申立て
条文上の規定がないので,即時抗告をすることはできません。

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【損害賠償】共同不法行為責任と求償
加害者が複数いる場合,被害者は共同不法行為責任を追及し,原則として各加害者に損害の全額について賠償請求をすることができます。
また,加害者の一人が損害賠償をした場合には,他の加害者に求償請求をすることができます。
一 共同不法行為責任
数人が共同の不法行為によって,他人に損害を加えたときは,各自が連帯してその損害を賠償する責任を負います(民法719条1項前段)。
共同行為者のうち誰が損害を加えたのか知ることができないときであっても,同様とされています(民法719条1項後段)。
また,行為者を教唆した者や幇助した者も共同行為者とみなされます(民法719条2項)。
民法719条は,被害者救済の観点から,共同不法行為者に連帯責任を負わせた規定です。共同不法行為者の損害賠償債務は不真正連帯債務であり,弁済やそれと同視できる事由(代物弁済,相殺,供託)を除いては,債務者の一人に生じた事由は他の債務者に影響を及ぼさないと解されています。
被害者が共同不法行為者の一人の債務を免除した場合も,不真正連帯債務であることから,他の共同不法行為者には影響を与えないのが原則ですが,被害者が他の共同不法行為者との関係でも残債務を免除する意思を有していたときには,他の債務者との関係でも免除の効力が生ずると解されています。
二 共同不法行為者間の求償
1 求償
条文に規定はされていませんが,公平の観点から,共同不法行為者の一人が被害者の損害の全部または一部を賠償した場合には,他の共同不法行為者に求償することができると解されています。
2 求償できる金額
求償できる金額については,各共同不法行為者の過失割合に応じて各人の負担部分が決まり,賠償した行為者は,自分の負担部分を超えて支払った分について,他の行為者に求償することができると解されています。
例えば,損害額が1000万円で,共同不法行為者AとBの過失割合が4:6の場合,Aの負担部分は400万円,Bの負担部分は600万円となりますので,Aが400万円を超えて支払った場合には,その超える分をBに求償することができますが,Aが被害者に支払った金額が400万円以下のときは,Aは自分の負担部分を超える支払はしていないので,Bに求償することができません。
3 免除の場合
被害者が共同不法行為者の一人の債務を免除したとしても,共同不法行為者の損害賠償債務は不真正連帯債務であることから,他の共同不法行為者の債務には影響を与えません。
そのため,被害者は他の共同不法行為者に損害全額の賠償請求をすることができますので,賠償した共同不法行為者は,損害額のうち自分の負担割合にあたる分を超えて支払った場合には,その超えた金額を求償することができます。
例えば,損害額が1000万円で,共同不法行為者AとBの過失割合が4:6の場合に,Aが被害者が600万円を支払い,残債務を免除されたときは,Aに対する免除の効力はBには及びませんので,AはBに対し,Aの負担部分400万円(=1000万円×0.4)を超える200万円の求償をすることができます。
これに対し,被害者が,共同不法行為者の一人が債務を免除した場合に,他の共同不法行為者の債務を免除する意思を有していたときには,他の共同不法行為者にも免除の効力が及びます。
そのため,賠償した共同不法行為者は,免除されていない金額のうち自分の負担割合に当たる分を超えて支払った場合には,その超えた金額を求償することができます。
例えば,損害額が1000万円で,共同不法行為者AとBの過失割合が4:6の場合に,Aが被害者に600万円を支払い,被害者がAだけでなくBも含めて残債務を免除する意思を有していたときには,Aが支払った600万円のうちAの負担部分は240万円(=600万円×0.4)となりますから,AはBに対し,360万円(=600万円-240万円)を求償することができます。

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【民事訴訟】反訴(訴訟係属中の被告から原告への訴え)
訴訟係属後,被告は原告の請求に対し防御活動をすることになりますが,原告に対する請求がある場合には反訴を提起することができます。
一 反訴とは
反訴とは,訴訟係属中に,その訴訟(「本訴」といいます。)の手続において,被告が原告に対して提起する訴えのことです(民事訴訟法146条)。
被告は,原告に対する請求がある場合,反訴を提起すれば,反訴と本訴は併合して審理されますので,審理の重複による訴訟不経済を避けることができますし,判断の矛盾を避けることができます。
また,例えば,売買代金請求訴訟において被告が売買契約の効力を争う一方,契約が有効と判断された場合には,予備的に目的物の引渡しを求める反訴をするというように,予備的反訴もできます。
なお,被告は,原告に対する請求がある場合には,別訴を提起し,裁判所に弁論を併合してもらうこともできますが,弁論の併合を認めるかどうかは裁判所の裁量によるものであり,当事者に申立権はありません。
二 反訴の要件
1 要件
反訴は,以下の要件をみたすことが必要となります。
①本訴が係属しており,本訴の口頭弁論終結前に反訴を提起したこと(146条1項)
②反訴請求が本訴請求または防御方法と関連するものであること(146条1項)
③反訴請求が他の裁判所の専属管轄に属さないこと(146条1項1号)
④著しく訴訟手続を遅滞させないこと(146条1項2号)
⑤本訴と反訴が同種の訴訟手続であること(136条)
⑥反訴が禁止されていないこと(351条,367条,369条)
本訴請求と関連する場合とは,本訴と反訴の請求原因が法律上または事実上共通する場合です。
例えば,交通事故の損害賠償請求訴訟の被告が,同一の交通事故について損害賠償請求の反訴を提起する場合です。
防御方法と関連する場合とは,本訴の抗弁事由と反訴の請求原因が法律上または事実上共通する場合です。
例えば,被告が本訴で相殺の抗弁を主張し,その自働債権について反訴を提起する場合です。
2 要件を欠く場合
反訴の要件を欠く場合,反訴は不適法であり,終局判決で却下されます。
なお,独立の訴えとして,弁論の分離や移送で対応すべきとの考えもあります。
三 手続
1 反訴の提起
(1)反訴状の提出
反訴は訴えに関する規定によりますので(民事訴訟法146条4項,民事訴訟規則59条),反訴提起は反訴状を裁判所に提出して行います(民事訴訟法146条4項,133条1項)。
反訴提起する際,訴額に応じた印紙を貼用して手数料を納めますが,本訴と目的を同じくするときは本訴の手数料額を控除します(民事訴訟費用法3条1項,別表第1の6)。
また,反訴状を裁判所に提出したときに,反訴請求について時効中断等の効力が発生します(民事訴訟法147条)。
(2)控訴審での反訴提起
控訴審で反訴を提起する場合には,相手方の審級の利益を保障する必要があることから,相手方(反訴被告)の同意がなければなりません(民事訴訟法300条1項)。
相手方が異議を述べないで反訴の本案について弁論をしたときは,反訴の提起に同意したものとみなされます(民事訴訟法300条2項)。
また,第一審で反訴請求について実質的に審理されている場合等,相手方の審級の利益を保障する必要がなければ,相手方の同意は不要とされることがあります。
(3)簡易裁判所での反訴提起
簡易裁判所は,被告が反訴で地方裁判所の管轄に属する請求をした場合,相手方の申立てがあるときは,決定で本訴と反訴を地方裁判所に移送しなければなりません(民事訴訟法274条)。
相手方の地方裁判所で争う利益を保障するためです。
2 反訴の審理
反訴は本訴と併合して審理されます。
ただし,裁判所が弁論を分離することも,基本的にはできると解されています。
3 訴えの取下げ
本訴が取下げられても,反訴には影響せず,単独で審理されます。
反訴の取下げは基本的に訴えの取下げと同じですが,本訴の取下げがあった場合には相手方の同意が不要となります(民事訴訟法261条2項但書)。
4 終局判決
本訴と反訴は併合審理されておりますので,一個の判決で両請求について判決(全部判決)がなされます。
ただし,一方の請求について判決すること(一部判決)も可能です(民事訴訟法243条2項,3項)。
5 上訴
本訴請求と反訴請求に対して1個の判決がなされ,その一方について上訴が提起された場合,他方の請求を含む全部の請求について判決の確定が遮断されますし,移審の効力が生じます。

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【相続・遺言】遺言無効
遺産分割の前提問題として,遺言の有効性が争いとなることがあります。
どのような場合に遺言は無効となるのか,また,どのような方法で遺言の有効性を争うのか説明します。
一 遺言の無効原因
1 方式違反
遺言者の最終意思であるかどうかを明確にする必要があるため,遺言は民法に定める方式に従わなければすることができません(民法960条)。民法に定める方式に従わないで作成された方式違反のある遺言は無効となります。
例えば,自筆証書遺言の場合,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければなりませんので(民法968条1項),日付の記載がなかったり,押印がなかったりすると無効となります。自筆証書遺言は専門家の関与がなく作成されることが多いため,方式違反で無効にならないよう注意しましょう。
2 遺言能力の欠如
遺言者は,遺言をする時に能力を有していなければならず(民法963条),遺言能力を欠いた者がした遺言は無効となります。
(1)年齢
遺言をするには15歳に達していることが必要であり(民法961条),15歳未満の者がした遺言は無効となります(民法961条)。
(2)意思能力
遺言能力については行為能力の規定は適用されませんが(民法962条),遺言をするには意思能力が必要であり,意思無能力者のした遺言は無効となります。
成年被後見人も意思能力がなければ遺言はできませんが,事理弁識能力を回復したときは,一定の方式により遺言をすることができます(民法973条)。
3 公序良俗違反
公序良俗に違反する法律行為は無効となりますので(民法90条),公序良俗に違反する遺言は無効となります。
例えば,不倫相手に遺贈する旨の遺言は公序良俗に違反するか問題となります。
4 意思表示に瑕疵がある場合(錯誤,詐欺,強迫)
遺言の意思表示についても錯誤無効の規定(民法95条)や,詐欺または強迫の取消しの規定(民法96条)が適用されます。
そのため,遺言の要素に錯誤がある場合には遺言者に重過失がない限り遺言は無効となりますし,詐欺または強迫による遺言は取消しにより無効となります。
5 相続欠格事由がある場合
相続欠格事由がある者は,相続人となることができませんし(民法891条),受遺者となることもできません(民法965条)。
そのため,相続欠格事由がある者に相続または遺贈させる旨の遺言は無効となります。
6 被後見人による後見人またはその近親者に対する遺言
後見人が被後見人の直系血族,配偶者,兄弟姉妹以外の場合に,被後見人が,後見の計算終了前に,後見人またはその配偶者や直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは,遺言は無効となります(民法966条)。
7 証人,立会人の欠格事由がある場合
遺言の証人や立会人には欠格事由があります(民法974条)。
遺言の作成に証人や立会人が要求されている場合,欠格事由のある証人等の立会いにより作成された遺言は方式違反により無効となります。
8 共同遺言
遺言は2人以上の者が同一の証書ですることはできません(民法975条)。
2人以上の者が同一の証書でした遺言は無効となります。
9 遺言者の死亡以前に相続人や受遺者が死亡した場合
遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは,遺贈の効力は生じません(民法994条1項)。
相続させる旨の遺言の場合も同様であり,遺言者の死亡以前に相続人が死亡したときは原則として代襲相続することはないと解されています。
また,停止条件付きの遺贈について受遺者が条件成就前に死亡したときも,遺言者が遺言に別段の意思表示をした場合を除き,遺贈の効力は生じません(民法994条2項)。
10 遺言の撤回
①遺言者が遺言の方式に従って遺言の全部または一部を撤回した場合(民法1022条),②前の遺言と後の遺言が抵触し,前の遺言を撤回したとみなされる場合(民法1034条),③遺言者が遺言者または遺贈の目的物を破棄して遺言を撤回したとみなされる場合(民法1024条)には,撤回された遺言は効力がなくなります。
撤回行為が,撤回され,取消され,または効力を生じなくなるに至ったときであっても,詐欺または強迫による場合を除き,撤回された遺言の効力が回復することはありません(民法1025条)。
二 遺言の有効性を争う方法
1 遺言無効確認訴訟
遺言の有効性の争いは,実体法上の権利関係に係る争いであり,家庭裁判所の審判事項ではなく,訴訟事項です。
そのため,遺言の有効性を争うには地方裁判所に遺言無効確認訴訟を提起することになります。
遺言無効確認訴訟は,原則として固有必要的共同訴訟ではなく,共同相続人全員が当事者となる必要はありません。
また,遺言者の生存中は遺言の効力が生じていませんので,確認の利益はなく,訴え提起は不適法となります。
訴訟により,遺言が無効であることが確定した場合には,遺言が無効であることを前提に遺産分割をすることになります。
遺言が有効であることが確定した場合には,遺言が有効であることを前提に対応することになります。遺産分割が必要な場合には遺産分割をすることになりますし,遺留分が侵害されている場合には遺留分減殺請求をすることになります。なお,遺留分減殺請求には期間制限があるため(民法1042条),遺言の有効性を争っているうちに期間が過ぎてしまわないよう,予備的にでも遺留分減殺請求をしておいたほうがよいでしょう。
2 遺言無効確認調停
遺言の無効確認をする手続としては,家庭裁判所に遺言無効確認の調停申立てをすることができます。
この調停は一般調停事件であり(家事事件手続法244条),調停前置主義(家事事件手続法257条)が適用されます。そのため,まずは調停の申立てをしなければならず,調停の申立てをせずに訴えを提起すると調停に付されることになりますが,調停に付することが相当でないと認められるときはこの限りではありませんので(家事事件手続法257条2項),合意が成立する見込みがない場合には最初から訴訟提起することが考えられます。
3 遺産分割手続の中での解決
遺産分割の手続において遺言の有効性が争いとなることがあります。
共同相続人間で遺言の有効性について合意できれば,それを前提に遺産分割の手続をすることができます。
また,遺産分割審判では,裁判所は遺言の有効性について審理・判断した上で遺産分割を行うことができますが,遺言の有効性についての争いは訴訟事項であり,家庭裁判所の審判には既判力がありませんので,訴訟で異なる判断がなされた場合には審判の効力が失われてしまいます。
そのため,遺産分割の手続において遺産の有効性が争いとなった場合,共同相続人間で合意ができなければ,遺言無効確認訴訟を提起し,訴訟が解決してから遺産分割の手続を進めるのが通常です。

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【交通事故】傷害慰謝料(入通院慰謝料)
交通事故で傷害を負った場合の主な損害としては,①積極損害(治療関係費,文書料その他の費用等),②休業損害,③傷害慰謝料(入通院慰謝料)がありますが,ここでは傷害慰謝料(入通院慰謝料)について説明します。
一 傷害慰謝料(入通院慰謝料)とは
傷害慰謝料は,受傷したことによる肉体的・精神的な苦痛や,治療のために入通院したことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。
傷害慰謝料の金額は基本的に入通院期間を基準に決まりますので,入通院慰謝料ともいいます。
二 自賠責保険基準
慰謝料は,1日につき4200円とされています。
慰謝料の対象となる日数は,被害者の傷害の態様,実治療日数その他を勘案して,治療期間の範囲内とされています。
基本的には,入院期間を含む実治療日数の2倍の日数(ただし,治療期間の範囲内)が対象日数となります。
三 裁判基準
裁判基準でも,基本的に入通院期間を基礎として慰謝料額が決まります。
赤い本の基準では,傷害の内容により別表Ⅰまたは別表Ⅱを使用し,各表の入通院期間に該当する金額が慰謝料の基準額となります。
別表Ⅰは通常の場合(別表Ⅱ以外の場合)です。
基本的に実際に入通院した期間を用いますが,被害者側の事情で入院期間を短縮した場合には慰謝料を増額したり,入院待機中や自宅療養の場合も入院期間とみることがありますし,通院が長期にわたる場合には症状,治療内容,通院頻度をふまえ,実通院日数を基に通院期間が修正されることがあります。また,傷害の部位・程度によって,慰謝料額が増額されることがあります。
別表Ⅱはむち打ち症で他覚的所見がない場合や軽い打撲や軽い挫創(傷)の場合です。
別表Ⅱの場合は別表Ⅰの場合より金額が低くなっています。別表Ⅱの場合も,通院が長期にわたるときには症状,治療内容,通院頻度をふまえ,実通院日数を基に通院期間が修正されることがあります。

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【離婚】離婚慰謝料
離婚する場合,離婚原因によって慰謝料が問題となることがあります。
ここでは,離婚慰謝料について説明します。
一 離婚慰謝料
離婚に伴う慰謝料(離婚慰謝料)は,一方の有責行為により離婚を余儀なくされたことによる精神的損害に対する損害賠償のことです。
離婚慰謝料には,①離婚したこと自体による精神的苦痛の慰謝料と,②離婚原因である有責行為(不貞行為や暴力等)による精神的苦痛の慰謝料があります。
いずれであるか区別されないことが多いですが,消滅時効や遅延損害金の起算点に影響します。離婚自体の慰謝料の場合は離婚時が起算点となるのに対し,離婚原因となる行為の慰謝料の場合は行為時が起算点となります。
また,DV(ドメスティック・バイオレンス)の場合には,離婚慰謝料とは別に傷害慰謝料(入通院慰謝料)や後遺障害慰謝料が認められることがあります。
二 離婚慰謝料が認められる場合
離婚に伴う慰謝料請求は不法行為による精神的損害についての損害賠償請求ですから,離婚慰謝料が認められるには不法行為による損害賠償請求の要件をみたす必要があります。
①相手方の行為に違法性がない場合,②夫婦双方に婚姻関係の破綻の責任が同程度ある場合や請求者の責任のほうが大きい場合,③有責行為と婚姻関係の破綻に相当因果関係がない場合(不貞行為をする前から婚姻関係が破綻していた場合等),④既に損害が填補されている場合(不貞相手から既に慰謝料が支払われている場合等)には,慰謝料は認められないでしょう。
また,離婚原因との関係でいえば,不貞行為やDVによる離婚の場合には不法行為にあたり,慰謝料請求が認められやすいですが,価値観の相違や性格の不一致による離婚の場合には不法行為とはいえず,慰謝料請求は難しいでしょう。
三 慰謝料額に影響を与える要素
慰謝料の額について客観的な基準があるわけではありません。慰謝料の額は,有責性の程度,精神的苦痛の大きさ,離婚に至る経過,婚姻期間の長さ,未成年子の有無,夫婦双方の年齢,資力や社会的地位,婚姻中の生活状況,離婚後の生活状況,財産分与の内容等,様々な事情を考慮して決まります。
慰謝料額は具体的な事案によって異なりますので,一概には言えませんが,300万円以下の場合が多く,500万円を超えることはあまりないです。
四 離婚慰謝料の請求方法
1 離婚と同時に請求する場合
(1)協議
離婚協議では,離婚するかどうかだけでなく,どのような条件で離婚するのか離婚条件についても話合いをすることができますので,離婚に伴い慰謝料を請求したい場合には,慰謝料についても話合いをしましょう。
慰謝料について合意ができた場合には,相手方が履行しないときに備えて,執行認諾文言付きの公正証書にしておいた方がよいでしょう。
(2)調停
離婚調停の申立てをする際,あわせて慰謝料請求の申立てをすることができますので,調停手続の中で慰謝料についても話し合いをすることができます。
調停条項で慰謝料の支払について取決めをしておけば,相手方が履行しない場合に強制執行をすることができます。
(3)訴訟
離婚の慰謝料請求は不法行為による損害賠償請求ですから,訴額によって地方裁判所または簡易裁判所に訴えを提起するのが原則です。
もっとも,離婚の訴えと損害賠償請求の訴えを一つの訴えで家庭裁判に提起することもできますし(人事訴訟法17条1項),既に離婚訴訟が係属している場合にはその家庭裁判所に損害賠償請求の訴えを提起して,両事件の口頭弁論を併合することもできます(人事訴訟法17条2項,3項,8条2項)。
また,地方裁判所や簡易裁判所に訴訟提起した場合であっても,損害賠償請求訴訟が係属する裁判所は,相当と認めるときは,離婚訴訟が係属する家庭裁判所に移送をすることができ(人事訴訟法8条1項),その場合には,離婚事件と損害賠償請求事件の口頭弁論は併合されます(人事訴訟法8条2項)。
2 離婚後に請求する場合
(1)交渉
離婚の際,慰謝料について取決めをしていなければ,離婚後に慰謝料請求をすることができます。
慰謝料について合意ができた場合には,相手方が履行しないときに備えて,執行認諾文言付きの公正証書にしておいた方がよいでしょう。
(2)調停
離婚後の紛争についても家庭裁判所の調停で話合うことができますので,離婚後に慰謝料請求をしたい場合には,家庭裁判所に慰謝料請求の調停を申し立てることができます。
(3)訴訟
離婚後に慰謝料請求する場合には,訴額によって地方裁判所または簡易裁判所に訴えを提起します。

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【交通事故】後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)
交通事故の被害者に後遺障害が残存する場合の損害として,①後遺障害逸失利益と②後遺障害慰謝料があります。ここでは後遺障害慰謝料について説明します。
一 後遺障害慰謝料とは
後遺障害とは,これ以上治療しても症状の改善が望めない状態になったとき(症状固定時)に残存する障害のことであり,後遺障害慰謝料とは後遺障害による精神的損害に対する損害賠償のことです。
自賠責保険には後遺障害等級認定制度があり,後遺障害慰謝料の額は,基本的に自賠責保険で認定された後遺障害等級認定を基に決まります。
二 近親者の慰謝料
民法711条は「他人の生命を侵害した者は,被害者の父母,配偶者及び子に対しては,その財産権が侵害されなかった場合にはおいても,損害の賠償をしなければならない。」と規定していますが,被害者が死亡していない場合であっても,死亡した場合と比肩すべき精神的苦痛を被ったと認められるときは,民法709条,710条により近親者に固有の慰謝料請求権が認められると解されています。
そのため,被害者が後遺障害を負った場合にも,1級,2級等介護を要するような重度の後遺障害の場合には,近親者に固有の慰謝料請求権が認められることがあります。
三 自賠責基準
自賠責保険の支払基準では,後遺障害に対する慰謝料等の額は,認定された等級に応じて以下のように定められています。
1 自動車損害賠償法施行令別表第1(介護を要する後遺障害)の場合
1級1600万円,2級1163万円です。 被扶養者がいるときは,1級1800万円,2級1333万円です。
また,初期費用等として,1級の場合は500万円,2級の場合は250万円が加算されます。
2 自動車損害賠償法施行令別表第2(別表第1以外の後遺障害)の場合
1級1100万円,2級958万円,3級829万円,4級712万円,5級599万円,6級498万円,7級409万円,8級324万円,9級245万円,10級187万円,11級135万円,12級93万円,13級57万円,14級32万円です。
被扶養者がいるときは,1級1300万円,2級1128万円,3級973万円です。
四 裁判基準
裁判基準でも,自賠責保険で認定された後遺障害等級を基に後遺障害慰謝料額が決まるのが通常です。
ただし,裁判所は,自賠責保険の等級認定に拘束されず,独自に等級認定することができますので,訴訟では自賠責保険で認定された等級とは異なる等級が認定されることがあります。
赤い本の基準では,被害者本人の後遺症慰謝料は,1級2800万円,2級2370万円,3級,1990万円,4級1670万円,5級1400万円,6級1180万円,7級1000万円,8級830万円,9級690万円,10級550万円,11級420万円,12級290万円,13級180万円,14級110万円が基準とされています。また,1級や2級等の重度の後遺障害の場合には,別途,近親者の慰謝料請求が認められるとしていますが,慰謝料額については基準は定められていません。
慰謝料額は被扶養者の数が多い場合や加害者が悪質な場合には増額されることがありますし,逸失利益の算定が困難または不可能な場合や将来の手術費の算定が困難または不可能な場合には慰謝料で考慮されることがあります。
また,14級に至らない後遺症がある場合でも慰謝料が認められることがありますし,後遺障害の等級が認定されているけれども,より上級の等級に至らない場合には,症状によっては認定等級の慰謝料額に相当額が加算されることがあります。

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【相続・遺言】認知症の相続人がいる場合の遺産分割
高齢化社会では高齢の被相続人を高齢の相続人が相続することが増えますので,相続人に認知症の相続人がいて遺産分割の手続に苦労することが少なくありません。
共同相続人のなかに認知症の相続人がいる場合,遺産分割をするにはどうしたらよいでしょうか。
一 認知症の相続人がいる場合
遺産分割は共同相続人全員で行わなければならず,共同相続人の一部の人だけで遺産分割をしても無効となります。そのため,認知症の相続人に判断能力がなく,その人が遺産分割の手続に加わることができないからといって,その人を除いて遺産分割をすることはできません。
また,仮に認知症の相続人を含めて共同相続人全員で遺産分割をしたとしても,認知症の相続人に意思能力(行為の結果を弁識することができる能力)がない場合には遺産分割は無効となります。
なお,認知症だからといって必ずしも意思無能力であるとは限らないため,共同相続人人のなかに認知症の人がいても,それだけで遺産分割が無効であるとはいえませんが,意思能力の有無や認知症の相続人が遺産分割の内容を理解できているのか確認せずに遺産分割を行ってしまうと,後で遺産分割の有効性が争われ,遺産分割が無効と判断されてしまうおそれがあるので注意しましょう。
判断能力がない人が法律行為をするための制度として成年後見制度がありますので,認知症の相続人がいる場合に遺産分割をするには,成年後見制度を利用すべきです。
二 遺産分割の方法
1 後見人による遺産分割
認知症の相続人に成年後見人が選任されている場合,成年後見人が法定代理人として,遺産分割協議や調停・審判の手続に加わります(民法859条,家事事件手続法17条1項,民事訴訟法31条)。
成年被後見人である認知症の相続人は行為無能力者であり,被後見人本人が遺産分割協議をした場合には取消しの対象となります(民法9条)。
また,被後見人は一定の事件を除いて手続行為能力(家事事件の手続上の行為をすることができる能力)を有さず(家事事件手続法17条1項,民事訴訟法31条),遺産分割調停や審判の手続行為をすることができませんが,法定代理人である後見人は家事事件の手続行為について代理権を有しますので(家事事件手続法17条1項,民事訴訟法28条),後見人が遺産分割調停や審判の手続を行います。
後見人は,被後見人の利益を保護するために行動しますので,基本的に相続分に見合った財産を取得するよう行動します。
2 成年後見人も相続人である場合
親族が後見人となる場合,後見人も相続人であることがあります。
後見人も相続人である場合,後見人と被後見人は遺産を分け合うことになりますので,後見人と被後見人の利益は相反することになります。
後見人が被後見人を代理して利益相反行為をしたときは無権代理行為となり,追認がない限り無効となりますので,相続人である後見人が同じく相続人である被後見人を代理して遺産分割をすることはできません。
後見人と被後見人の利益が相反するときは,後見監督人が選任されているときは,後見監督人が被後見人を代理して遺産分割を行いますし(民法851条4号),後見監督人がいない場合には,家庭裁判所に特別代理人を選任してもらい(民法860条,826条),特別代理人が被後見人を代理して遺産分割を行います。
三 まとめ
認知症の相続人に判断能力がない場合には遺産分割はできませんから,成年後見人を選任し,成年後見人と遺産分割を行うことになります。
また,成年後見人も相続人の場合には特別代理人の選任申立てをし,特別代理人と遺産分割を行うことになります。

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【交通事故】被害者が死亡した場合の損害 死亡慰謝料
交通事故で亡くなった場合の損害としては,主に①逸失利益,②慰謝料,③葬儀費用がありますが,ここでは死亡慰謝料について説明します。
一 死亡慰謝料
慰謝料とは,不法行為によって生じた精神的損害に対する損害賠償のことです。民法710条は財産以外の損害についても賠償請求できるとしておりますので,精神的損害についても賠償請求することができます。
死亡慰謝料は,被害者が死亡したことによる慰謝料のことであり,被害者本人の慰謝料と遺族固有の慰謝料があります。
1 被害者本人の慰謝料
慰謝料請求権は被害者の死亡によって当然に発生し,これを放棄,免除する等の特別の事情がなければ,被害者の相続人が相続するものと解されています。
2 遺族固有の慰謝料
民法711条は「他人の生命を侵害した者は,被害者の父母,配偶者及び子に対しては,その財産権が侵害されなかった場合にはおいても,損害の賠償をしなければならない。」と規定しており,被害者が死亡した場合,被害者の父母,配偶者,子は固有の慰謝料請求をすることができます。
また,民法711条所定の者以外の者(内縁配偶者,兄弟姉妹,祖父母,孫等)であっても,被害者との間に民法711条所定の者と実質的に同視できる身分関係があり,被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者については,民法711条の類推適用により,固有の慰謝料請求ができると解されています。固有の慰謝料が認められるかどうかは,同居の状況,扶養の状況,事故の重大性・悪質性等の具体的な事情を総合考慮して判断されます。
二 自賠責基準
自賠責保険の支払基準では,
死亡者本人の慰謝料は350万円
遺族の慰謝料については,請求権者を被害者の父母,配偶者,子とし,請求権者が1人であれば550万円,2人であれば650万円,3人以上であれば750万円とされており,被害者に被扶養者がいれば200万円を加算する
とされています。
三 裁判基準
裁判基準(いわゆる赤い本の基準)では,死亡慰謝料について,
一家の支柱の場合(被害者の世帯が主として被害者の収入によって生計を維持している場合)は2800万円
母親,配偶者の場合は2500万円
その他の場合(独身,子供,幼児等)は2000万円から2500万円
が基準とされています。
上記の金額は被害者本人及び遺族の慰謝料を合わせた金額です。
また,上記金額は
一応の目安であり,具体的事情により金額は増減するものとされています。
具体的な事情としては,扶養家族の人数や加害者の悪質性等が考慮されます。

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【相続・遺言】養子縁組と相続
養子がいる場合,相続手続はどうなるでしょうか。
一 養子縁組
養子縁組とは,親子としての血のつながりのない者の間で嫡出子と同一の法律関係を発生させる法律行為です。
養子縁組には,普通養子縁組と特別養子縁組があります。特別養子縁組は,子の利益を図るための養子縁組であり,実親やその血族との親族関係が終了する養子縁組です。普通養子縁組は,特別養子縁組以外の一般の養子縁組のことです。
養子縁組により,養子は養親の嫡出子の身分を取得しますし(民法809条),養子と養親及びその血族との間には,血族間におけるのと同一の親族関係を生じますので(民法727条),相続目的で養子縁組が行われることがあります。
民法上,養子の人数について制限はありませんが,相続税の場合では,養子縁組を利用することで不当に税額を低くすることができないようにするため,基礎控除額の計算で養子の人数を制限する等されています。
二 養子縁組による相続への影響
1 養方の相続
養子縁組により,養子は養親の嫡出子の身分を取得しますし(民法809条),養子と養親及びその血族との間には,血族間におけるのと同一の親族関係を生じます(民法727条)。
被相続人の配偶者以外の親族は①子,②直系尊属,③兄弟姉妹の順で相続人となりますので(民法887条,889条),養子縁組をした場合,①養親の相続では,養子は被相続人の子として相続人になりますし,②養子が亡くなり,直系尊属が相続人となるときは,養親が相続人になりますし,③養親の他の子がなくなり,兄弟姉妹が相続人となるときは,養子は兄弟姉妹として相続人になります。
2 代襲相続
相続開始以前に相続人の子が死亡していた場合には,その子(被相続人の孫)が代襲相続人となりますので(民法887条2項),養親の親が被相続人となる相続において,相続開始前に養親が亡くなっていた場合には養子が代襲相続人となります。
また,養子の子が代襲相続人となれるかどうかについては,代襲相続人は被相続人の直系卑属でなければなりませんので(民法887条2項但書),養子縁組前に生まれた養子の子(養子の連れ子)は代襲相続人にはなれませんが,養子縁組後に生まれた養子の子は代襲相続人になれます。
3 実方の相続
(1)普通養子縁組の場合
普通養子縁組の場合は,養子と実方の父母やその血族との親族関係がなくなるわけではありませんので,養子と実方親族との間で相続関係が生じることがあります。
(2)特別養子縁組の場合
特別養子縁組の場合には,養子と実方の父母やその血族との親族関係は終了しますので(民法817条の9本文),養子と実方親族の間で相続関係は生じません。
三 相続人の資格の重複
養子縁組をした場合には,相続人の資格が重複することがあります。
相続人の資格が重複する場合,双方の相続分を取得することができるのか問題となりますが,相続人の資格が重複するパターンは様々あり,それぞれのパターンで見解が分かれています。
1 養子にした孫が代襲相続人となった場合
被相続人が孫を養子とした後,被相続人より先に養子の実親である被相続人の子が亡くなった場合,孫には養子としての相続人の資格と代襲相続人としての資格が重複することになります。
その場合に養子(孫)が双方の相続分を取得するかについては,肯定する見解と否定する見解がありますが,登記先例では,双方の相続分を取得すると解されております。
例えば,長男,長女がいる被相続人が長男の子(孫)を養子とした場合,長男が生きているうちに相続が開始すれば,長男,長女,養子(孫)の相続分は3分の1ずつとなりますが,被相続人より先に長男が亡くなったときには,孫は,養子としての相続分3分の1と,代襲相続人としての相続分3分の1を取得することになります。
2 養子が養親の実子と婚姻した場合
養子が養親の実子と婚姻した後,その実子が亡くなり,兄弟姉妹が相続人となる場合,養子には,配偶者としての相続人の資格と兄弟姉妹としての相続人の資格が重複することになります。
その場合に養子が双方の相続分を取得するかについては,肯定する見解と否定する見解がありますが,登記先例では,配偶者としての相続分の取得のみが認められ,兄弟姉妹としての相続分の資格は認められておりません。
3 婚外子を養子とした場合
被相続人が婚外子を養子とした場合,養子縁組により婚外子が嫡出子になったものであり(民法809条),相続人の資格が重複するわけではありません。

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