【成年後見】居住用不動産処分の許可

2018-02-03

老人ホームの入所費用にあてるため自宅を売却する場合等,後見事務をするにあたって不動産の処分が必要になることがありますが,居住用不動産を処分するには家庭裁判所の許可が必要です。

 

一 居住用不動産処分の許可

成年後見人が,成年被後見人に代わって,その居住の用に供する建物又はその敷地について,売却,賃貸,賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには,家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法859条の3)。
居住環境の変化は本人の精神状況に重大な影響を与えることから,居住用不動産の処分について後見人の代理権を制限し,家庭裁判所の許可が必要とされています。

なお,民法859条の3は,保佐人,補助人,成年後見監督人,保佐監督人,補助監督人が居住用不動産を処分する場合にも準用されておりますので(民法876条の5第2項,876条の10第1項,852条,876条の3第2項,876条の8第2項),これらの者が居住用不動産を処分する場合にも家庭裁判所の許可が必要となります。

 

二 居住用不動産とは

「居住の用に供する建物又はその敷地」は,生活の本拠として現に居住の用に供している不動産だけでなく,現在居住していなくても,生活の本拠として居住していた不動産や将来,生活の本拠として居住する予定のある不動産も含まれると解されます。

 

三 処分

許可が必要な処分は,①売却,②賃貸,③賃貸借の解除,④抵当権の設定,⑤その他これらに準ずる処分(贈与,使用貸借,譲渡担保権等抵当権以外の担保権の設定,解体工事を業者に依頼すること等)です。
賃貸借の解除にも許可が必要となりますので,老人ホーム等の施設に入る等の理由で借家の賃貸借契約を解除する場合にも家庭裁判所の許可が必要となります。
また,生活費を工面するために,リバースモーゲージ(自宅を担保に融資を受ける制度)を利用する場合にも家庭裁判所の許可が必要となります。

 

四 許可を得ないでした処分の効力

家庭裁判所の許可を得ないでした居住用不動産の処分は無効であると解されています。

 

五 手続

1 申立て

居住用不動産を処分するにあたって,成年後見人は,後見開始の審判をした家庭裁判所に居住用不動産処分許可の審判を申立てます(家事事件手続法117条2項)。
申立てにあたっては,不動産の全部事項証明書,固定資産評価証明書,処分に関する契約書案の写し,不動産業者の査定書等の資料を添付します。また,後見監督人が選任されているときは,その同意が必要となりますので(民法864条,13条1項3号),後見監督人の同意書も添付します。

 

2  審判

家庭裁判所は,処分の必要性や相当性,本人への影響等の事情を考慮して,処分を許可するか判断します。

 

3 不服申立て

条文上の規定がないので,即時抗告をすることはできません。

 

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