【損害賠償】共同不法行為責任と求償

2018-01-26

加害者が複数いる場合,被害者は共同不法行為責任を追及し,原則として各加害者に損害の全額について賠償請求をすることができます。
また,加害者の一人が損害賠償をした場合には,他の加害者に求償請求をすることができます。

 

一 共同不法行為責任

数人が共同の不法行為によって,他人に損害を加えたときは,各自が連帯してその損害を賠償する責任を負います(民法719条1項前段)。
共同行為者のうち誰が損害を加えたのか知ることができないときであっても,同様とされています(民法719条1項後段)。
また,行為者を教唆した者や幇助した者も共同行為者とみなされます(民法719条2項)。

民法719条は,被害者救済の観点から,共同不法行為者に連帯責任を負わせた規定です。共同不法行為者の損害賠償債務は不真正連帯債務であり,弁済やそれと同視できる事由(代物弁済,相殺,供託)を除いては,債務者の一人に生じた事由は他の債務者に影響を及ぼさないと解されています。
被害者が共同不法行為者の一人の債務を免除した場合も,不真正連帯債務であることから,他の共同不法行為者には影響を与えないのが原則ですが,被害者が他の共同不法行為者との関係でも残債務を免除する意思を有していたときには,他の債務者との関係でも免除の効力が生ずると解されています。

 

二 共同不法行為者間の求償

1 求償

条文に規定はされていませんが,公平の観点から,共同不法行為者の一人が被害者の損害の全部または一部を賠償した場合には,他の共同不法行為者に求償することができると解されています。

 

2 求償できる金額

求償できる金額については,各共同不法行為者の過失割合に応じて各人の負担部分が決まり,賠償した行為者は,自分の負担部分を超えて支払った分について,他の行為者に求償することができると解されています。
例えば,損害額が1000万円で,共同不法行為者AとBの過失割合が4:6の場合,Aの負担部分は400万円,Bの負担部分は600万円となりますので,Aが400万円を超えて支払った場合には,その超える分をBに求償することができますが,Aが被害者に支払った金額が400万円以下のときは,Aは自分の負担部分を超える支払はしていないので,Bに求償することができません。

 

3 免除の場合

被害者が共同不法行為者の一人の債務を免除したとしても,共同不法行為者の損害賠償債務は不真正連帯債務であることから,他の共同不法行為者の債務には影響を与えません。
そのため,被害者は他の共同不法行為者に損害全額の賠償請求をすることができますので,賠償した共同不法行為者は,損害額のうち自分の負担割合にあたる分を超えて支払った場合には,その超えた金額を求償することができます。
例えば,損害額が1000万円で,共同不法行為者AとBの過失割合が4:6の場合に,Aが被害者が600万円を支払い,残債務を免除されたときは,Aに対する免除の効力はBには及びませんので,AはBに対し,Aの負担部分400万円(=1000万円×0.4)を超える200万円の求償をすることができます。

これに対し,被害者が,共同不法行為者の一人が債務を免除した場合に,他の共同不法行為者の債務を免除する意思を有していたときには,他の共同不法行為者にも免除の効力が及びます。
そのため,賠償した共同不法行為者は,免除されていない金額のうち自分の負担割合に当たる分を超えて支払った場合には,その超えた金額を求償することができます。
例えば,損害額が1000万円で,共同不法行為者AとBの過失割合が4:6の場合に,Aが被害者に600万円を支払い,被害者がAだけでなくBも含めて残債務を免除する意思を有していたときには,Aが支払った600万円のうちAの負担部分は240万円(=600万円×0.4)となりますから,AはBに対し,360万円(=600万円-240万円)を求償することができます。

 

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