【労働問題】試用期間と試用期間中の解雇,本採用の拒否
一 試用期間とは
使用者が労働者を正社員として本採用するかどうか決めるために,一定期間,試みに使用することを「試用」といい,その一定期間のことを「試用期間」といいます。
試用期間中の使用者と労働者の契約については,通常の場合,使用者に解約権が留保された労働契約であると解されており,使用者は,試用期間中,解約権を行使することができます(試用期間中の解雇,本採用の拒否)。
使用者からすれば,通常,雇った者に従業員としての適性がない場合であっても,容易には解雇することができないため,解約権が留保される試用期間の制度は重要であるといえます。
もっとも,労働者からすれば,試用期間中は地位が不安定となりますので,労働者の立場にも配慮しなければなりません。
二 試用期間の長さ
試用期間の長さについては,特に制限があるわけではありませんが,通常は1か月から6か月程度であり,3か月とすることが多いといわれています。
試用期間が,合理的理由がなく,長すぎる場合には,公序良俗違反となることもあり得ます。
また,試用期間は,就業規則などに定めがなければ,原則として延長することはできないと解されております。
三 解約権の行使(試用期間中の解雇,本採用の拒否)
試用期間中,使用者には労働契約の解約権が留保されていると解されておりますので,使用者は,雇った者が従業員としての適性を欠く場合には,解約権を行使することができます(試用期間中の解雇,本採用の拒否)。
もっとも,試用期間中であっても,使用者は無制限に解約権を行使することができるわけではありません。
1 解雇予告,解雇予告手当の規定
解雇予告や解雇予告手当の規定(労働基準法20条)は,試用期間中の労働者であっても14日を超えて引き続き使用された場合には適用されます(労働基準法21条)。
そのため,試用期間中の労働者について解約権を行使するにあたって,当該労働者が14日を超えて使用されている場合には,解雇予告をするか,解雇予告手当を支払わなければなりません。
2 解約権の行使に客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であること
試用期間中は,通常の解雇の場合よりも,広い範囲で解約権の行使の自由が認められると解されておりますが,使用者の全くの自由というわけではなく,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当な場合のみ解約権の行使が認められると解されております。
そのため,労働者に何の問題もないにもかかわらず,単に使用者が労働者のことを気に入らないという理由だけでは解約できません。
労働者の勤務態度または勤務成績が不良であり,指導をしても,改善の見込みがない等客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当でなければ,解約はできません。