どこの裁判所に訴えればいいのか~管轄

2014-09-04

裁判所には、最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所がありますし、地域によって、東京地方裁判所、さいたま地方裁判所、横浜地方裁判所等様々あります。

例えば、当事務所付近でみても、板橋区、練馬区を管轄する裁判所は、東京地方裁判所・東京家庭裁判所・東京簡易裁判所ですが、和光市、朝霞市、新座市、志木市を管轄する裁判所は、さいたま地方裁判所・さいたま家庭裁判所・さいたま簡易裁判所となり、富士見市、ふじみ野市、川越市を管轄する裁判所は、さいたま地方裁判所川越支部・さいたま家庭裁判所川越支部・川越簡易裁判所となります。

このように、様々な裁判所があるため、民事訴訟をしようとお考えの方にとって、どこの裁判所に訴えればいいのか、分かりづらいと思います。

また、相手方が遠方に住んでいる場合、遠方の裁判所に訴えなければならないとすると、裁判所に行くのに費用と時間がかかりますので、訴訟をする場合、ご自身の近くの裁判所で裁判をしたいと考えるでしょう。

しかし、訴訟の提起は、どの裁判所にでもできるわけではなく、管轄のある裁判所にしなければなりません。

そこで、民事訴訟を提起する場合の管轄について簡単に説明します。

 

 一 事物管轄

民事訴訟を提起する場合、訴訟の目的の価額(「訴額」ともいいます。訴えで主張する利益によって算定されます。)によって、簡易裁判所から地方裁判所のいずれかになります。

第一審裁判所が簡易裁判所になるか地方裁判所になるかの分担のことを事物管轄といいます。

訴額が140万円以下の場合  簡易裁判所
それ以外の場合  地方裁判所

なお、不動産に関する訴訟については、訴額が140万円以下であっても地方裁判所に提起することができます。

 

二 土地管轄

1 普通裁判籍

訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属します(民事訴訟法4条1項)。

被告が個人の場合、普通裁判籍は①住所、②日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所、③日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所地です(民事訴訟法4条2項)。

被告が法人の場合、普通裁判籍は①主たる事務所又は営業所の所在地、②それらがない場合には主たる業務担当者の住所です(民事訴訟法4条4項)。

2 特別裁判籍

被告の普通裁判籍以外の地を管轄する裁判所に提起することができる場合があります(民事訴訟法5条から7条)。

例えば、

①財産上の訴えは、義務履行地(民事訴訟法5条1号)

②不法行為に関する訴えは、不法行為があった地(民事訴訟法5条9号)

③不動産に関する訴えは、不動産の所在地(民事訴訟法5条12号)

を管轄する裁判所に訴えを提起することができます。

また、一つの訴えで数個の請求をする場合には、一つの請求について管轄権を有する裁判所に訴えを提起することができます。ただし、原告または被告が複数の訴えについては、訴訟の目的である権利又は義務が共通の場合、同一の事実上及び法律上の原因に基づく時に限ります(民事訴訟法7条)。これを関連裁判籍といいます。

 

三 合意管轄

当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができます(民事訴訟法11条1項)。

ただし、合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関するものであり、かつ書面でしなければなりません(民事訴訟法11条2項)。

合意管轄については、①特定の裁判所に専属的に管轄権を生じさせる場合と②法で定める管轄のほかに特定の裁判所に管轄権を付加する場合があります。

 

四 応訴管轄

原告が管轄違いの裁判所に訴えを提起した場合に、被告が異議を唱えることなく応訴(本案について弁論または弁論準備手続において申述)した場合には、裁判所は管轄権を有します(民事訴訟法12条)。

 

五 移送

管轄違いがある場合には、原則として管轄裁判所に移送されます(民事訴訟法16条)。

また、管轄のある裁判所に訴訟提起された場合であっても、遅滞を避けるため等一定の場合には移送されることがあります(民事訴訟法17条から19条)。

 

六 まとめ

以上のように、原則として、被告の住所地(被告が法人の場合には主たる事業所または営業所)を管轄する簡易裁判所(訴額140万円以下の場合)または地方裁判所に民事訴訟を提起することになりますが、場合により、それ以外の裁判所に訴訟提起することができます。

例えば、財産上の訴えについては、義務履行地も管轄が認められるところ、持参債務(債権者の住所地で弁済しなければならない債務)の場合には、債権者である原告の住所地を管轄する裁判所に訴訟提起することができます。

そのため、相手方が遠方に住んでいる場合であっても、近くの裁判所に訴訟提起することができる場合がありますので、どこの裁判所に訴訟提起できるかよく検討することをお勧めします。

また、訴えられた側としても、遠方の裁判所から呼び出しを受けた場合には、移送申立をすることで近くの裁判所に移送が認められる可能性があります。

どうしても遠方の裁判所で裁判しなければならない場合には、自ら裁判所に行く以外に、弁護士に依頼することが考えられます。弁護士に依頼した場合には、本人尋問等必要な場合を除き、当事者は裁判所に行かなくてすみます。

弁護士に依頼する場合、ご自身の近くの弁護士に依頼すると、通常、交通費等の実費のほか、日当がかかりますので、裁判所の近くの弁護士に依頼することを検討されてもいいでしょう。

遠方の弁護士に依頼する場合には、最低でも一度は、その弁護士に会いに行くことにはなりますが、依頼した後は、電話、FAX、手紙、メール等で打ち合わせができます。

 

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