【離婚】財産分与と特有財産

2017-02-10

夫婦の財産には,夫婦が共有する財産(夫婦共有財産)と夫婦の一方の固有財産(特有財産)があります。夫婦共有財産は,離婚に伴う財産分与で夫婦間で清算されますが,特有財産はどのように扱われるのでしょうか。

 

1 夫婦共有財産と特有財産

夫婦の財産には,①名実ともに夫婦の一方の財産であるもの(特有財産),②名実ともに,夫婦の共有に属する財産(共有財産),③夫婦一方の名義ではあるけれども,夫婦の協力によって形成された財産であり,実質的に夫婦の共有に属するもの(実質的共有財産)があります。

民法762条1項は「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は,その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。」と規定しておりますが,夫婦一方の名義の財産でも,夫婦の協力によって形成されたものについては,第三者との関係では名義人の財産として扱われるけれども,夫婦間では夫婦の共有財産として扱われます。

 

2 特有財産は清算的財産分与の対象とはならないのが原則です。

財産分与で清算の対象となる財産は,名義の如何を問わず夫婦が婚姻中に協力して形成した財産ですから,共有財産や実質的共有財産は清算の対象となります。

これに対し,夫婦が婚姻中に協力して形成した財産とはいえない,夫婦が婚姻前から有していた財産や,婚姻中であっても,夫婦の一方が相続した財産や贈与を受けた財産等,夫婦の一方の固有財産(特有財産)は,清算的財産分与の対象とならないのが原則です。

 

財産分与が争いとなる場面では,ある財産が共有財産にあたるのか,特有財産にあたるのか争いになることが良くありますが,夫婦のいずれかに属するか明らかではない財産は,共有に属するものと推定されますので(民法762条2項),特有財産であると主張する側が特有財産であることを立証しなければならないと考えられます。

 

3 特有財産が財産分与の対象となる場合

特有財産であるからといって,必ずしも財産分与の対象とならないわけではありません。

夫婦の一方の特有財産であっても,その財産の維持(減少の防止)や増加に夫婦の他方が寄与した場合には,その財産の一定割合が財産分与されることがあります。

 

夫婦として一緒に暮らしていたからといって,それだけでは特有財産の維持や増加に寄与しているとはいえませんので,特有財産について財産分与を請求する場合には,どのような寄与をしたのか具体的に主張すべきでしょう。

 

4 夫婦共有財産と特有財産が原資となっている財産について

ある財産を取得するにあたって,夫婦共有財産と特有財産が原資となっている場合には,その財産について,原資の割合に応じて,夫婦共有財産部分と特有財産部分があると考えます。

例えば,3000万円の不動産を購入するにあたって,購入代金の1割にあたる300万円を妻の親から贈与されたお金で支払い,残り9割にあたる2700万円を夫婦共有財産で支払った場合,妻の親から贈与された財産は妻の特有財産と考えられますので,不動産の1割が妻の特有財産となり,残り9割が夫婦共有財産となります。

そして,夫婦が離婚する際,不動産の時価が2000万円である場合には,妻の取得分は,1100万円(特有財産部分にあたる200万円(2000万円の1割)と夫婦共有財産部分の2分の1にあたる900万円(2000万円の9割の2分の1)の合計額)となり,夫の取得分は900万円(夫婦共有財産の2分の1)となります。

そのため,妻が不動産を単独で取得する場合には,妻は夫に対し900万円を支払うことになりますし,夫が不動産を単独で取得する場合には,夫は妻に対し1100万円を支払うことになります。

 

5 まとめ

以上のとおり,特有財産は,夫婦の一方のものであり,清算的財産分与の対象とはならないのが原則です。

財産分与が争いとなる場合には,特有財産であるかどうかが良く争点となりますが,きちんと資料や証拠をそろえて,主張・立証しなければ,特有財産であることが認められないおそれがありますので,不安がある場合には,弁護士に相談や依頼をすべきでしょう。

 

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