【相続・遺言】遺言無効確認訴訟と遺留分減殺請求の短期消滅時効

2018-05-12

遺留分を侵害する遺言がある場合,遺留分権者は侵害者に対し遺留分減殺請求をすることができますが,遺留分減殺請求については短期消滅時効の規定があり,「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間」以内に行使しなければなりません。
遺言の効力に争いがあり,遺言無効確認訴訟を提起する場合,解決まで時間がかかりますので,遺留分減殺請求権が消滅時効にかからないか問題となります。

 

一 遺留分減殺請求の行使期間

遺留分減殺請求権の行使期間については,権利関係を早期に確定させるため,民法1042条は「減殺の請求権は,遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは,時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも,同様とする。」と規定しております。
「減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った」とは,単に贈与や遺贈があったことを知ったことではなく,贈与や遺贈が遺留分を侵害し,減殺請求の対象となることを知ったことをいうものと解されています。

 

二 遺言の効力について争いがある場合

遺言の効力について争いがある場合,民法1042条の「知った時」とはいつの時点を指すのでしょうか。
この点については,遺留分を侵害する内容の遺言があっても,その遺言が無効であれば,遺留分の侵害はないことになるので,遺言が有効であることが確定した時が「知った時」にあたるのではないかとも考えられます。
しかし,最高裁判所昭和57年11月12日判決では,短期消滅時効の規定の趣旨に鑑みれば,遺留分権利者が訴訟上無効の主張をすれば,根拠のない言いがかりにすぎない場合であっても時効は進行を始めないとするのは相当でないから,被相続人の財産のほとんど全部が贈与されていて遺留分権利者がその事実を認識している場合には,無効の主張について,一応,事実上・法律上の根拠があって,遺留分権利者が無効を信じているため遺留分減殺請求権を行使しなかったことがもっともであると首肯しうる特段の事情が認められない限り,贈与が減殺することのできるものであることを知っていたものと推認するのが相当というべきであるとされています。
そのため,遺言の効力について争っていても特段の事情がない限り時効は進行し,相続開始の事実と遺留分を侵害する内容の遺言があることを知った時から1年間の経過で遺留分減殺請求権を行使することができなくなってしまいます。

 

三 まとめ

遺言の効力について争いがある場合,遺言無効確認訴訟に敗訴した後に遺留分減殺請求をしようとしても,短期消滅時効により遺留分減殺請求が行使できないおそれがあります。
そのため,遺言の効力について争う場合には,遺言無効確認請求が認められなかったときに備えて,予備的に遺留分減殺請求をしておいたほうがよいでしょう。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2016 ながせ法律事務所 All Rights Reserved.