【相続・遺言】兄弟姉妹が相続人の場合

2020-03-30

被相続人に子や親等の親族がいない場合には兄弟姉妹が相続人となりますが,兄弟姉妹が相続人となる場合と他の親族が相続人となる場合には,どのような違いがあるでしょうか。

 

一 兄弟姉妹が相続人となる場合

被相続人の配偶者は常に相続人になり(民法890条),配偶者以外の親族は①子又はその代襲相続人(孫)・再代襲相続人(曾孫)(民法887条),②直系尊属(親等の異なる者の間では近い者)(民法889条1項1号),③兄弟姉妹又はその代襲相続人(甥姪)(民法889条1項2号,2項)の順位で相続人になります。

したがって,被相続人の兄弟姉妹が相続人となるのは,被相続人に子や親等先順位の親族がいない場合であり,被相続人に配偶者がいる場合は,兄弟姉妹と配偶者が相続人となります。

 

二 兄弟姉妹が相続人となる場合の法定相続分

被相続人の配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合には,配偶者の相続分が4分の3,兄弟姉妹の相続分が4分の1となります(民法900条3号)。

兄弟姉妹が数人いる場合,各人の相続分は等しいものとされますが,父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1となります(民法900条4号)。

例えば,被相続人の配偶者と被相続人の兄と妹が相続人の場合,配偶者の法定相続分は4分の3,兄と妹の法定相続分は8分の1ずつとなります。また,兄は被相続人と両親が同じ,妹は父親のみが同じ場合には,配偶者の法定相続分は4分の3,兄の法定相続分は6分の1,妹の法定相続分は12分の1となります。

 

三 代襲相続

兄弟姉妹が相続人となる場合に,兄弟姉妹が,相続開始以前に死亡したとき,民法891条の欠格事由に該当するとき,廃除によって相続権を失ったときは,その者の子(被相続人の甥姪)が代襲して相続人となります(民法889条2項,887条2項)。

なお,兄弟姉妹が相続人となる場合には,再代襲についての民法887条3項の準用規定がないため,代襲者となる兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)が相続開始以前に死亡する等した場合に,代襲者の子が再代襲することはありません。

 

四 全血の兄弟姉妹と半血の兄弟姉妹

両親の双方を同じくする兄弟姉妹を全血の兄弟姉妹といい,両親の一方のみを同じくする兄弟姉妹を半血の兄弟姉妹といいます。
半血の兄弟姉妹の法定相続分は全血の兄弟姉妹の法定相続分の2分の1となります(民法900条4号但書)。

例えば,被相続人の両親が離婚した後,父親が再婚して,再婚相手との間で子が生まれた場合,その子は被相続人の兄弟姉妹となりますが,父親のみが同じで,母親は違いますから,半血の兄弟姉妹にあたります。

また,被相続人の親が養子縁組をした場合,養子と被相続人は兄弟姉妹となります。両親の双方が養子縁組をしたときは,全血の兄弟姉妹となりますが,両親の一方のみが養子縁組したとき(例えば,被相続人の両親が離婚した後に,被相続人の父親が,連れ子のいる女性と再婚し,その子と養子縁組したとき),半血の兄弟姉妹にあたります。

 

五 遺留分

兄弟姉妹には遺留分はありません(民法1042条1項)。
そのため,被相続人の遺言により,相続人である兄弟姉妹が相続財産を取得できない場合であっても,兄弟姉妹は遺留分侵害額請求(改正法施行前に開始した相続については,遺留分減殺請求)をすることはできません。

子のいない夫婦の一方が亡くなった場合,配偶者と兄弟姉妹が共同相続人となることがあります。将来,自分が亡くなったときには,配偶者に自分の財産を相続させたいとお考えの場合には,その旨の遺言を作成しておけば,兄弟姉妹には遺留分がありませんので,配偶者と兄弟姉妹との間で遺産をめぐって争いとなることを避けることができます。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2016 ながせ法律事務所 All Rights Reserved.