【相続・遺言】不動産の遺産分割

2018-10-13

被相続人の遺産に不動産がある場合,不動産は共同相続人の共有(遺産共有)となります。
不動産の遺産共有状態を解消するためには遺産分割が必要となりますが,不動産の遺産分割はどのようにすればよいでしょうか。

 

一 遺産の特定

まず被相続人の遺産として,どのような不動産があるか調べます。

不動産を調べる方法としては,固定資産税納税通知書の明細書を確認し,そこに記載されている不動産の登記事項証明書をとって調べることが考えられます。
もっとも,固定資産税が課税されていない不動産は固定資産税納税通知書に記載されませんので,非課税不動産である私道の存在に気付かないまま,遺産分割をしてしまうおそれがあるので注意しましょう。
名寄帳には非課税の不動産も記載されていますので,非課税の不動産を見落とさないようにするには名寄帳で確認したほうがよいでしょう。

 

二 遺産の評価

遺産分割をするにあたって,各当事者の具体的相続分を計算するため,遺産を金銭で評価する必要があります。
また,誰がどの遺産を取得するか,代償金支払の必要性やその金額等,遺産分割の方法を決めるためにも,遺産の評価が必要となります。

 

1 評価の方法

遺産の評価の方法としては,当事者の合意による場合と鑑定による場合があります。

 

(1)当事者の合意

遺産分割は当事者の意思に基づいて行うことができますので,遺産の評価についても当事者の合意により決めることができます。
当事者の合意で,不動産の評価額を決める場合には,固定資産評価額,相続税評価額(路線価),不動産業者の査定書,私的鑑定等の資料が参考となります。

 

(2)鑑定

当事者で合意ができない場合は,鑑定を行うことになります。
鑑定を行う場合には,原則として裁判所に鑑定費用を予納します。その際,鑑定費用を誰が負担するか問題となります。

 

2 評価の基準時

基本的には,遺産分割時(現実に分割するとき)を基準時として遺産を評価しますが,寄与分や特別受益が問題となる場合には,相続開始時の評価に基づいて,具体的相続分を計算します。

もっとも,遺産の評価を2時点で行うことは煩雑であり,鑑定費用も余計にかかりますし,相続開始時からあまり時間が経過していない場合には評価額に大きな違いはないでしょうから,当事者の合意があれば,一時点で評価することもあります。

 

三 遺産分割の方法

1 現物分割

遺産分割は,現物分割(個々の財産をそのまま相続人に取得させる方法)が基本です。

遺産である土地が広い場合には,分筆して,現物分割することも考えられます。

 

2 代償分割

現物分割が基本ですが,各相続人の相続分に見合う財産があるとは限りませんので,現物分割と代償分割(相続分を超える遺産を取得した相続人が他の相続人に金銭の支払等債務を負担する方法)を併用することがよくあります。
例えば,ある相続人が不動産を取得し,他の相続人が預金を取得することにした場合に,相続分を超えて取得した側から足りない側に代償金を支払うことで調整します。

 

3 換価分割

不動産以外にめぼしい財産がない場合や不動産を取得する者に代償金を支払う資力がない場合には,不動産を売却して,売却代金を分割することが考えられます。

 

4 共有分割

現物分割,代償分割,換価分割のいずれも方法もとれない場合には,共同相続人で共有すること(共有分割)になりますが,共有状態はトラブルになる可能性がありますので,できる限り避けたほうがよいでしょう。

 

四 登記

遺産分割により不動産を取得した場合,不動産を取得した相続人は,所有権移転登記手続をすることになります。

 

1 相続登記がない場合(被相続人名義の場合)

遺産分割により,ある相続人が不動産を単独で取得したときは,その相続人は,単独で,「相続」を登記原因とする所有権移転登記の申請をすることができます(不動産登記法63条2項)。

 

2 相続登記がある場合(共同相続人名義の場合)

共同相続人が相続登記をした後に,遺産分割により,ある相続人がその不動産を取得したときには,取得した相続人を登記権利者,他の相続人を登記義務者として,共同で,「遺産分割」を登記原因とする所有権移転登記手続の申請をしなければなりません。
そのため,遺産分割調停や審判で,不動産を取得した相続人が単独で登記申請ができるようにするためには,単に「不動産を取得する」と定めるだけではなく,他の相続人に対し「遺産分割を原因とする共有持分の移転登記手続をせよ」と登記手続を命ずる調停条項や審判が必要となります。

 

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