【民事訴訟】損害賠償請求事件(名誉毀損)

2014-12-05

誹謗中傷する文書をまかれたり,インターネットのブログで誹謗中傷する記事をかかれたりして名誉を毀損された場合,被害者としてはどのような対応ができるでしょうか。

名誉毀損行為は,刑事事件の問題(名誉毀損罪(刑法230条))となりますが,損害賠償請求等,民事上の問題にもなります。

弁護士に相談や依頼するケースは,主に名誉毀損した者に対する損害賠償請求等の民事上の問題です。

そこで,名誉毀損された場合の損害賠償請求について,簡単に説明します。

 

一 名誉毀損とは

1 名誉とは

「名誉」については,以下の3つの意義があるとされております。

①内部的名誉

自己や他人の評価から離れて,客観的に人の内部に備わっている価値そのもの

②外部的名誉

人に対し社会が与える評価

③名誉感情

人が自分の価値について有している意識や感情

 

これらのうち,民事事件における「名誉」は,外部的名誉であるといわれております。

(ただし,名誉感情を害する行為がなされた場合に,事案の内容によっては不法行為が成立する余地があります。)

 

2 名誉毀損

名誉毀損とは,外部的名誉を毀損することであり,「社会的な評価を低下させること」をいいます。

事実を摘示して社会的な評価を低下させた場合(事実摘示による名誉毀損)とある事実を前提として意見又は論評を表明することにより社会的な評価を低下させた場合(意見又は論評の表明による名誉毀損)があります。

 

3 名誉毀損の判断基準

ある表現がどのような意味内容を有するか,どのように受け取られるかは,読み手や読み方によって異なりますが,名誉毀損にあたるかどうかは,一般的な読者の普通の注意と読み方を基準に判断されます。

そのため,ある表現がどのような意味内容を有しているか,一般的な読者の普通の注意や読み方を基準として解釈されますし,ある表現が人の社会的な評価を低下させるものかどうか,一般的な読者の普通の注意や読み方を基準として,判断されます。

 

4 損害

①慰謝料

社会的評価が低下したこと及びそれによる精神的苦痛

法人の場合は社会的評価が低下したことによる無形の損害

について慰謝料請求ができます。

②財産上の損害

財産上の損害がある場合(例えば,名誉毀損されたことにより取引先を失った場合)には,損害賠償請求が認められるか問題となります。

因果関係の立証ができるかどうかの問題があり,損害項目として主張するのではなく,慰謝料算定において考慮される事情となることもあります。

③弁護士費用

不法行為に基づく損害賠償訴訟では,弁護士費用が一定額認められます(概ね他の損害額の1割程度)。

 

5 名誉毀損の損害賠償請求権の要件事実

名誉毀損の損害賠償請求権は,不法行為に基づく損害賠償請求権です。

以下の①から⑤の事実がある場合に発生します。

 

① 社会的評価を低下させる事実の流布

② ①による社会的評価の低下

③ 故意または過失

④ 損害の発生及び損害額

⑤ ③と④との因果関係

 

二 名誉毀損の成立阻却事由

1 表現の自由との関係

憲法21条は表現の自由を保障しております。

そのため,人の社会的評価を低下させる表現であっても,一定の事由がある場合には,保護され,名誉毀損は成立しません。

 

2 事実の摘示による場合

(1)真実性の抗弁

事実の摘示により人の社会的評価を低下させた場合であっても,

①表現行為が,公共の利害に関する事実についてのものであったこと(事実の公共性)

②行為の目的が,もっぱら公益を図るものであったこと(目的の公益性)

③摘示された事実の重要な部分が真実であること

を行為者が主張,立証した場合には,行為者は不法行為責任を負いません。

(2)相当性の抗弁

摘示事実の重要な部分が真実であることが立証できなかったとしても,

①表現行為が,公共の利害に関する事実についてのものであったこと(事実の公共性)

②行為の目的が,もっぱら公益を図るものであったこと(目的の公益性)

③行為者が事実を真実と信ずるにつき相当の理由があったこと

を行為者が主張,立証した場合には,行為者は不法行為責任を負いません。

 

3 意見・論評の表明による場合(公正な論評の法理)

意見・論評による意見表明により人の社会的評価を低下させた場合であっても

①表現行為が,公共の利害に関する事実についてのものであったこと(事実の公共性)

②行為の目的が,もっぱら公益を図るものであったこと(目的の公益性)

③意見・論評の前提事実の重要な部分が真実であること

(又は,意見・論評の前提事実につき,行為者が真実を信ずるにつき相当の理由があったこと)

④表現内容が人身攻撃におよぶ等意見・論評としての域を逸脱したものでないこと

を行為者が主張,立証した場合には,行為者は不法行為責任を負いません。

三 インターネット上の投稿による名誉毀損の場合

インターネット上の掲示板等で名誉を毀損する投稿がなされた場合,被害を受けた人は,投稿者に対し損害賠償請求をすることができます。

その場合,誰が投稿をしたのか分かっていれば,その人に対し損害賠償請求すればよいのですが,匿名で投稿がなされた場合には,投稿をした人が誰か特定する必要があります。

そのような場合,「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(いわゆる「プロバイダ責任制限法」)の発信者情報開示請求を行うことが考えられます。

発信者情報開示請求により,投稿者を特定することができれば,その者に対し損害賠償請求をすることができます。

 

 

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