【損害賠償請求】未成年の子の行為についての親の責任

2015-07-01

未成年の子が,人の物を壊したり,人に怪我させたりする等して,第三者に損害を加えた場合,親はどのような責任を負うでしょうか。

子が成人している場合には,親が責任を負うことは原則としてありませんが,子が未成年の場合には,子の親権者である親は子を監督する義務を負いますので,子の行為について責任を負うことがあります。

以下,簡単に説明します。

 

一 責任能力

未成年者は,他人に損害を加えた場合であっても,自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは,その行為について賠償の責任を負いません(民法712条)。

行為者に責任能力があることは不法行為責任の要件であり,責任能力のない未成年の子は不法行為責任を負いません。

責任能力があるかどうかは,年齢で一律に決まるわけではなく,個別具体的な事情から判断されます。12歳が責任能力があるかどうかの一応の目安であるといわれていますが,11歳で責任能力が認められた事例もあります。

 

二 未成年の子に責任能力がない場合

1 監督義務者・代理監督者の責任

責任無能力者が責任を負わない場合,その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者(監督義務者)または,監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者(代理監督者)が,責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(民法714条1項本文,同条2項)。

監督義務者とは親権者や後見人等であり,代理監督者とは託児所,幼稚園,小学校等です。

親権者である親は監督義務者にあたりますので,未成年の子に責任能力がない場合には,親権者である親が,民法714条1項により責任を負います。

2 監督義務者・代理監督者が免責される場合

監督義務者・代理監督者が,義務を怠らなかったとき,または,その義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは,監督義務者・代理監督者は責任を負いません(民法714条1項但書,同条2項)。

通常,被害者が行為者の過失を立証しなければなりませんが,民法714条が適用される場合では,立証責任が転換され,監督義務者が無過失を立証しなければなりません(中間責任)。

 

三 未成年の子に責任能力がある場合

未成年の子に責任能力がある場合には,未成年の子は不法行為責任を負いますが,実際に未成年の子に賠償できる資力があることは,あまりないでしょう。

その場合,親は,民法714条による責任は負いませんが,監督義務者に監督義務違反(過失)があり,監督義務違反と未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係がある場合には,監督義務者である親は,民法709条の不法行為責任を負います。

なお,民法714条の規定の適用がある場合と異なり,立証責任が転換されているわけではないので,被害者が,監督義務者に監督義務違反(過失)があること,未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係があることを立証しなければなりません。

 

四 まとめ

未成年の子に責任能力がない場合には,親権者である親は,義務を怠らなかったとき,または,その義務を怠らなくても損害が生ずべきであったことを立証しない限り,民法714条1項により監督義務者としての責任を負います。

また,未成年の子に責任能力があった場合であっても,親権者である親に監督義務違反(過失)があり,監督義務違反と子の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係がある場合には,親は民法709条の不法行為責任を負います。

そのため,親としては,子の監督をしなければ,責任を負うことになりますので,ご注意ください。

 

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