【後見】任意後見制度

2016-06-02

高齢で認知症になる等して判断能力が低下した場合,ご本人で身の回りのことや財産の管理を行うことができなくなってしまいます。

そのような場合に,本人を援助するための制度として,任意後見制度があります。

 

一 任意後見制度とは

任意後見制度とは,本人が任意後見人と任意後見契約を締結して,委任事項を定めておき,本人が精神上の障害により判断能力が不十分になったときに,任意後見監督人を選任して,その監督の下,任意後見人が本人を援助する制度であり,成年後見制度の一つです。

法定後見制度では,誰を後見人に選任するかについては裁判所が決めますし,後見人等の権限の範囲も法律で定められております。

これに対し,任意後見制度では,本人が,判断能力のあるうちに,自分の意思で,誰を任意後見人とするか,どの範囲で委任するか決めておくことができます。

 

二 任意後見契約

1 任意後見契約とは

任意後見契約とは,委任者(本人)が受任者(任意後見受任者)に対し,精神上の障害により事理を弁識する能力(判断能力)が不十分になったときに,自己の生活,療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部の代理権を付与する委任契約であって,任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めがあるものをいいます(任意後見契約に関する法律2条1号)。

 

2 任意後見契約の締結方法

任意後見契約は,公正証書によることが必要です(法3条)。

任意後見契約が締結されると,公証人を通じて,任意後見契約が登記されます。

 

3 任意後見契約の効力発生

任意後見契約が登記されている場合,本人が精神上の障害により判断能力が不十分となったときは,本人,配偶者,4親等以内の親族,任意後見受任者は,家庭裁判所に対し,任意後見監督人選任の申立てをし(法4条1条),家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで任意後見契約の効力が発生します(法2条1項1号)。

 

三 任意後見人

1 任意後見人の資格

任意後見人の資格については特に制限はありません。

自然人だけでなく,法人も任意後見人になることができます。

また,複数人が任意後見人になることもできます。

ただし,任意後見受任者に以下の事由がある場合には,家庭裁判所は,任意後見監督人申立てを却下しますので,任意後見人になることはできません(法4条1項)。

①未成年

②家庭裁判所に法定代理人,保佐人,補助人を免ぜられた者

③破産者

④行方の知れない者

⑤本人に対し訴訟をし,またはした者及びその配偶者並びに直系血族

⑥不正な行為,著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

 

2 任意後見人の職務

任意後見人は,任意後見契約の効力が発生した後,任意後見契約で付与された代理権に基づいて,委託された事務を行います。

事務を行うにあたって,任意後見人は,本人の意思を尊重し,心身の状態,生活の状況に配慮しなければなりません(法6条)。

また,任意後見人は,任意後見監督人の監督を受け,任意後見監督人に事務を報告しなければなりません。

 

四 任意後見監督人

1 任意後見監督人の資格

任意後見監督人の資格について法律上規定はありませんが,以下の人は,任意後見監督人になることはできません。

①任意後見受任者(法5条)

②任意後見人の配偶者,直系血族,兄弟姉妹(法5条)

③未成年(法7条4項で準用される民法847条 以下,同じ)

④家庭裁判所に法定代理人,保佐人,補助人を免ぜられた者

⑤破産者

⑥本人に対し訴訟をし,またはした者及びその配偶者並びに直系血族

⑦行方の知れない者

 

2 任意後見監督人の職務

任意後見監督人の職務は,以下のとおりです(法7条1項)。

①任意後見人の事務を監督すること

②任意後見人の事務に関し,家庭裁判所に定期的に報告すること

③急迫の事情がある場合に任意後見人の代理権の範囲内で必要な処分をすること

④任意後見人・その代表者と本人との利益相反行為について本人を代表すること

 

任意後見監督人は,いつでも,任意後見人に対し,任意後見人の事務の報告を求め,任意後見人の事務,本人の財産の状況を調査することができます(法7条2項)。

 

3 家庭裁判所の監督

家庭裁判所は,必要があると認めるときは,任意後見監督人に対し,任意後見人の事務に関する報告を求め,任意後見人の事務,本人の財産の状況の調査を命じ,その他任意後見監督人の職務について必要な処分を命じることができます(法7条3項)。

 

 

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2016 ながせ法律事務所 All Rights Reserved.