【労働問題】残業代と付加金

2023-05-23

残業代の請求とあわせて、付加金を請求することができるのは、どのような場合でしょうか。

 

一 付加金とは

裁判所は、労働基準法20条(解雇予告手当)、26条(休業手当)、37条(時間外、休日、深夜の割増賃金)の規定に違反した使用者又は39条9項(有給休暇中の賃金)の規定に違反した使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一の付加金の支払を命ずることができます(労働基準法114条)。

 

労働基準法37条に違反する残業代について付加金を請求することができますので、法外残業の場合には付加金は請求できますが、同条に違反しない法内残業の場合には付加金は請求できません。

 

また、付加金が認められるかどうかは裁判所の裁量にゆだねられていますので、労働基準法37条等の規定に違反した場合であっても当然に付加金の支払が認められるわけではありません。裁判所は具体的な事情を考慮して付加金の支払を命じるかどうか判断しますので、付加金を請求する場合には、違法性の大きさや労働者の不利益の大きさ等具体的な事情を主張立証する必要があります。

 

二 請求方法

付加金は裁判所が支払を命じるものであることから、労働者が示談交渉で付加金を請求することはできません。

 

付加金を請求する場合には、訴訟提起して請求する必要があります。

残業代とあわせて付加金請求する場合、付加金請求は残業代請求の附帯請求になりますので、付加金請求部分は訴額に算入されず、その分の印紙は不要であると解されています。

 

また、付加金の支払を命じることができるのは裁判所であるところ、労働審判を行うのは労働審判委員会であるため、労働審判では付加金は認められないと考えられております。もっとも、労働訴訟は通常訴訟に移行する可能がありますし、付加金の請求には期間制限があり、時間が経つと請求できなくなるおそれがあることから、労働審判においても残業代請求とあわせて付加金を請求しておくべきです。

 

三  付加金の遅延損害金

付加金の支払義務は裁判所が支払を命じることにより生じることから、付加金についての遅延損害金は、判決確定の日の翌日から生じます。

また、遅延損害金の利率は年3%の割合になります。

 

四 付加金が請求できる期間

付加金が請求できる期間は、労働基準法114条但書では違反があったときから5年間と規定されていますが、当分の間は3年間となっています(附則143条2項)。

 

この期間は時効期間ではなく、除斥期間だとされています。

 

残業代については発生してから3年で時効にかかり(労働基準法115条、附則143条3項)、催告することにより6か月は時効が完成しませんので(民法150条)、時効が問題となりそうな場合には、時効の完成を防ぐために、まず内容証明郵便等で催告してから示談交渉します。

これに対し、付加金については時効期間ではなく、除斥期間であるため、催告しても期間が経過すれば請求することができなくなります。

そのため、残業代の支払について示談交渉が長引き、訴訟提起が遅れると、付加金の請求ができなくなる事態がでてきますので注意が必要です。

 

 

 

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