Archive for the ‘相続・遺言’ Category

【相続・遺言】相続法の改正 遺産分割前の遺産の処分

2019-04-23

相続法の改正により,遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲についての規定(民法906条の2)が設けられました。この規定は2019年7月1日から施行されます。

 

一 遺産分割前の遺産の処分

民法906条の2第1項では「遺産の分割前に,遺産に属する財産が処分された場合であっても,共同相続人は,その全員の同意により,当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる」と規定されています。
相続開始後,遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合,共同相続人全員の同意があれば,処分された財産を遺産分割の対象とすることができるということです。

同条項は処分者を限定していませんので,共同相続人以外の第三者が処分した場合にも適用されます。例えば,第三者が遺産を処分し,共同相続人が第三者に対し損害賠償請求をすることができる場合には,共同相続人全員の同意により,第三者に対する損害賠償請求権を遺産分割の対象とすることができます。

また,同意を撤回できるとする規定はありませんので,共同相続人全員が同意し,処分された財産を遺産とみなす効果が生じた後は,同意を撤回することはできないと考えられます。ただし,同意は意思表示ですから,錯誤,詐欺,強迫等,意思表示の瑕疵・欠缺の規定の適用はあります。

 

二 共同相続人の一部が遺産分割前に遺産を処分した場合

民法906条の2第2項では「前項の規定にかかわらず,共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは,当該共同相続人については,同項の同意を得ることを要しない。」と規定されています。
相続開始後,遺産分割前に,共同相続人の一部の人が遺産に属する財産を処分した場合には,処分をした人以外の共同相続人全員の同意があれば,処分された財産を遺産分割の対象とすることができるということです。

共同相続人の一部が遺産分割前に遺産を処分した場合(例えば,相続開始後に共同相続人の一人が他の共同相続人に無断で遺産である預貯金を引き出した場合),改正前も共同相続人全員の同意があれば,処分された財産を遺産分割の対象とすることはできました。
しかし,財産を処分した共同相続人が反対した場合には遺産分割の対象とすることはできず,民事訴訟(損害賠償請求訴訟や不当利得返還請求訴訟)で解決しなければなりませんでした。
改正により,財産を処分した共同相続人の同意は不要となりますので,他の共同相続人全員の同意があれば,処分された財産が遺産分割時に遺産として存在するものとして,遺産分割をすることができるようになります。

相続法の改正 遺産分割前の預貯金払戻し,仮分割の仮処分

2019-04-15

相続法の改正により,2019年7月1日から,遺産分割前の預貯金債権の払戻請求ができるようになります。また,預貯金債権の仮分割の仮処分の要件も緩和されます。

 

一 預貯金債権の遺産分割

以前は,預貯金債権は一部を除いて法定相続分により当然分割されるので,遺産分割は不要であるという扱いでした。
しかし,その後,最高裁判所の平成28年12月19日の決定や平成29年4月6日の判決が出て,預貯金債権は,相続開始と同時に当然に分割されることはなく,遺産分割の対象となることとされました。
そのため,相続人が預貯金の払戻しを受けるには,共同相続人全員で同意をするか,遺産分割をしてから払戻請求をしなければなりませんが,葬儀費用の支払い等のために早期の預貯金払戻しが必要な場合には困ったことになります。
そのようなことから,相続法の改正では,遺産分割前の預貯金払戻しの制度が設けられるとともに(民法909条の2),仮分割の仮処分の要件が緩和されました(家事事件手続法200条3項)。

 

二 遺産分割前の預貯金債権の払戻し

相続法の改正により,遺産分割前であっても,各共同相続人は,遺産に属する預貯金債権のうち一定額については,家庭裁判所の判断を経ずに,単独で金融機関に預貯金の払戻しを請求することができます(民法909条の2)。

払戻請求できる金額は,原則として,遺産に属する預貯金債権のうち相続開始時の預貯債権額の3分の1に法定相続分を乗じた額です(民法909条の2前段)。この金額は預貯金債権(口座)ごとに算定されます。
ただし,遺産分割前の預貯金の払戻しは他の共同相続人の利益を害するおそれがあることから,払戻請求できる金額には,標準的な当面の必要生活費,平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して,預貯金債権の債務者(金融機関)ごとに,法務省令で定める上限額があります(民法909条の2前段)。法務省令では上限額は150万円とされています(平成30年法務省令第29号)。
上限額は金融機関ごとの金額であり,複数の金融機関に預貯金がある場合には,それぞれの金融機関から上限額まで払戻しを受けられることになります

また,権利行使した預貯金債権については,権利行使した相続人が遺産の一部分割により取得したものとみなされます(民法909条の2後段)。
預貯金の払戻請求をした相続人に特別受益がある等して,払戻金額がその相続人の具体的相続分を超える場合には,払戻しを受けた相続人は,超過額について,他の共同相続人に清算しなければなりません。

 

三 仮分割の仮処分の要件緩和

相続法の改正前も,家事事件手続法200条2項により,預貯金債権について審判前の保全処分(仮分割の仮処分)をすることができましたが,家事事件手続法の改正で要件が緩和されました。
改正後,家庭裁判所は,①遺産分割の審判または調停の申立てがあった場合に,②相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を申立人または相手方が行使する必要があると認められるときは,③他の共同相続人の利益を害する場合でない限り,申立てにより,遺産に属する特定の預貯金の全部又は一部を申立人に仮に取得させることができます(家事事件手続法200条3項)。

相続法改正 配偶者保護 持戻し免除の意思表示の推定

2019-04-09

相続法の改正により,2019年7月1日から,婚姻期間が20年以上の配偶者に居住用不動産を遺贈又は生前贈与した場合には,特別受益の持戻し免除の意思表示が推定されます。持戻しが免除されることにより,配偶者が遺産分割で取得できる財産が増えることになります。

 

一 特別受益の持戻しと持戻し免除の意思表示

1 特別受益の持戻し

共同相続人間の公平を図る観点から,共同相続人の中に被相続人から生前贈与等を受け,特別受益にあたる場合には,被相続人が持戻免除の意思表示をした場合を除き,持戻計算が行われます(民法903条)。

例えば,遺産総額が4000万円で相続人が配偶者と子2名の場合で,被相続人が配偶者に自宅(2000万円相当)を生前贈与していたときには,特別受益の持戻しにより,配偶者の具体的相続分は1000万円(計算式:(4000万円+2000万円)×2分の1-2000万円=1000万円),子の具体的相続分は,それぞれ1500万円(計算式:(4000万円+2000万円)×4分の1=1500万円)となります。

 

2 持戻し免除の意思表示

被相続人は持戻し免除の意思表示をすることもできます(民法903条)。
持戻し免除の意思表示をした場合には持戻し計算は行われません。

例えば,遺産総額が4000万円で相続人が配偶者と子2名の場合で,被相続人が配偶者に自宅(2000万円相当)を生前贈与するとともに,持戻し免除の意思表示をしていたときは,配偶者の具体的相続分は2000万円(計算式:4000万円×2分の1),子らの具体的相続分は1000万円(計算式:4000万円×4分の1)ずつとなります。

持戻し免除の意思表示に特別な方式はありません。また,明示の意思表示の場合のみならず,黙示の意思表示の場合もあります。

 

二 持戻し免除の意思表示の推定

相続法の改正により,婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が,他の一方に対し,居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは,持戻し免除の意思表示をしたものと推定されることになります(民法903条4項)。

被相続人が長年連れ添った配偶者への居住用不動産の贈与等をするのは,配偶者の貢献に報いるとともに,配偶者の老後の生活保障をするためであり,被相続人が持戻し計算をさせる意図であったとは通常考えられないからです。

居住用不動産に限定しているのは,居住用不動産が配偶者の老後の生活保障にとって重要だからですし,対象を広くすると配偶者以外の相続人への影響が大きくなるからです。
また,居住用不動産にあたるかどうかは遺贈や贈与をしたときを基準に判断するのが原則であると考えられます。

なお,推定規定ですので,被相続人は持戻しの免除をしないという意思表示をすることもできます。
また,改正規定が適用されるのは施行日(2019年7月1日)からであり,施行日前の遺贈等については適用されません(附則4条)。

【相続・遺言】相続法改正 自筆証書遺言の方式緩和

2019-02-06

相続法の改正により,平成31年1月13日から,自筆証書遺言の方式が緩和されました。
改正前は自筆証書遺言は遺言者が全文を自書しなければなりませんでしたが,改正により,相続財産の目録について自書する必要がなくなり,パソコン等で作成した目録を添付して,自筆証書遺言を作成することができるようになりました。

 

一 遺言書に添付する財産目録について自書が不要

改正後の民法968条では,1項で「自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければならない。」と規定しておりますが,2項で「前項の規定にかかわらず,自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合のおける同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には,その目録については,自書することを要しない。この場合において,遺言者は,その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては,その両面)に署名し,印を押さなければならない。」と規定し,遺言書に添付する財産目録については自書を要しないとして方式を緩和しています。
改正前は財産目録を含め全文自書しなければならなかったので,不動産や預金等財産が多数ある場合には相当な負担となりましたが,改正により自筆証書遺言を作成する負担が軽減されました。

財産目録について自書を要しないことから,財産目録として,ワープロで作成したもの,遺言者以外の者が代筆したもの,不動産の登記事項証明書,預金通帳の写し等を遺言書に添付することができます。

 

二 自書によらない財産目録添付の方法

1 ページ毎の署名押印

自書によらない財産目録を添付するにあたっては,財産目録のページ毎(自筆によらない記載が両面にある場合は両面)に遺言者が署名押印しなければなりません(民法968条2項)。
遺言者の署名押印が必要とされるのは,遺言書の偽造や変造を防ぐためです。

 

2 財産目録の加除その他の変更

改正後の民法968条3項は「自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は,遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押さなければ,その効力を生じない。」と規定しており,自筆によらない財産目録についても加除その他の変更をすることができます(なお,改正前は加除その他の変更の規定は2項でしたが,改正後は3項になりました。)。

【相続・遺言】代襲相続

2018-10-26

相続人となるべき被相続人の子や兄弟姉妹が相続開始前に亡くなった場合,その子が代襲相続人となります(民法887条2項,889条3項)。

 

一 代襲相続とは

相続人となるべき被相続人の子(または兄弟姉妹)が,相続開始以前に死亡等一定の原因により相続権を失ったときは,被相続人の孫以下の直系卑属(または兄弟姉妹の子)が相続人となることを代襲相続といいます。
代襲相続の制度は,相続人となるべき者の子の利益・期待の保護や生活保障,相続人間の公平を図ることを目的としています。

 

二 代襲原因

代襲相続の原因としては,①相続開始以前の死亡,②欠格,③廃除です(民法887条2項)。

相続放棄は,条文に規定されていないので,代襲原因とはなりません。
被相続人に多額の負債があり,相続人が相続放棄した場合,相続放棄した者の子は代襲相続人とはなりませんので,相続放棄の手続をする必要はありません。

 

三 代襲相続人

1 代襲相続人となることができる者

代襲相続人となることができるのは,①被相続人の子(民法887条2項),②被相続人の兄弟姉妹(民法889条2項)。

ただし,被相続人の子の子は被相続人の直系卑属でなければ代襲相続人になれません(民法887条2項但書)。養子の連れ子(養子縁組前に生まれた子)は,被相続人の直系卑属ではないので,代襲相続人になることはできません。

 

2 再代襲

被相続人の子に代襲原因があれば,その子(被相続人の孫)が代襲相続人となりますが,さらに孫に代襲原因がある場合には,その子(被相続人の曾孫)が代襲相続人となります(民法887条3項)。

兄弟姉妹についても再代襲相続があるかどうか問題となりますが,民法889条2項は民法887条2項を準用するものの,民法887条3項は準用していないので,再代襲はありません。

 

四 代襲相続人の法定相続分

代襲相続人の相続分は被代襲者の相続分と同じです(民法901条)。
被代襲者の代襲相続人が複数いる場合には,各代襲相続人の相続分は被代襲者の相続分を等分したものになります(民法901条,民法900条4号)。

例えば,被相続人に子A,Bがいて,Aが被相続人より先に亡くなり,Aの子C,Dが代襲相続した場合,被代襲者Aの法定相続分は2分の1ですので,代襲相続人C,Dの法定相続分は4分の1ずつとなります。

 

五 代襲相続人の特別受益

民法903条1項は「共同相続人中に,被相続人から,遺贈を受け,又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続人財産とみなし,前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」と規定していて,これを特別受益の持戻しといいますが,代襲相続の場合はどうでしょうか。

 

1 被相続人が被代襲者に生前贈与した場合

代襲相続人は被代襲者が取得すべきだった相続分を取得することになりますので,被相続人が被代襲者に生前贈与した場合には,代襲相続人の特別受益となるのが原則であると解されます。

 

2 被相続人が代襲相続人に生前贈与した場合

代襲原因が発生した後に被相続人が代襲相続人に生前贈与した場合には,贈与の時点で代襲相続人は相続人の地位にありますので,代襲相続人の特別受益となると解されます。

これに対し,代襲原因が発生する前に被相続人が代襲相続人に生前贈与した場合には,贈与の時点では代襲相続人は相続人の地位にはないことから,特別受益にあたるかどうか見解が分かれています。原則として特別受益にはあたらないけれども,被代襲者への受益と同視できる特段の事情があれば,特別受益にあたるとする見解もあります。

 

六 代襲相続人の寄与分

民法904条の2第1項は「共同相続人中に,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし,第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」と規定しておりますが,代襲相続の場合はどうでしょうか。

 

1 被代襲者が特別の寄与をした場合

代襲相続人は被代襲者が取得すべきだった相続分を取得することになりますので,被代襲者に特別の寄与があれば,代襲相続人に寄与分が認められるものと解されます。

 

2 代襲相続人が特別の寄与をした場合

代襲相続人が特別の寄与をした場合についても,代襲相続人の寄与が相続人の寄与と同視できる場合には,代襲相続人に寄与分が認められるものと解されます。

 

七 相続させる旨の遺言がある場合

相続させる旨の遺言とは,例えば,「○○に一切の財産を相続させる。」,「○○に□□を相続させる。」といったように,特定の相続人に遺産を相続させる旨記載された遺言のことをいいますが,その特定の相続人が相続開始以前に亡くなった場合,代襲相続人がその遺産を取得するか問題となります。例えば,相続人Aに一切の財産を相続させる旨の遺言がある場合に,相続開始以前にAが亡くなったときは,Aの代襲相続人Bが一切の財産を取得することになるのかという問題です。

この点については,通常,遺言者は,特定の相続人に遺産を取得させる意思を有していたにとどまり,遺言者が代襲者に相続させる意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り,効力が生じないものと解されております。
遺言者が,特定の相続人が先に亡くなったのであれば,その代襲相続人に相続させたい場合には,「遺言者より前または遺言者と同時に○○が死亡していた場合には,○○の子(代襲相続人)△△に□□を相続させる。」旨の予備的遺言を残しておくことが考えられます。

 

八 相続人の資格の重複

被相続人が自分の孫を養子とした後,被相続人より先に養子の親である被相続人の子が亡くなった場合,孫には養子として相続人の資格と代襲相続人としての資格が重複することになります。その場合,養子(孫)が,双方の相続分を取得するか問題となりまります。

この点については,肯定する見解と否定する見解がありますが,登記先例では,双方の相続分を取得すると解されております。
例えば,長男,二男がいる被相続人が二男の子(孫)を養子とした場合,肯定説によると,被相続人より先に二男が亡くなったときは,養子となった孫は,養子としての相続分3分の1と,代襲相続人としての相続分3分の1を取得することになります。

【相続・遺言】不動産の遺産分割

2018-10-13

被相続人の遺産に不動産がある場合,不動産は共同相続人の共有(遺産共有)となります。
不動産の遺産共有状態を解消するためには遺産分割が必要となりますが,不動産の遺産分割はどのようにすればよいでしょうか。

 

一 遺産の特定

まず被相続人の遺産として,どのような不動産があるか調べます。

不動産を調べる方法としては,固定資産税納税通知書の明細書を確認し,そこに記載されている不動産の登記事項証明書をとって調べることが考えられます。
もっとも,固定資産税が課税されていない不動産は固定資産税納税通知書に記載されませんので,非課税不動産である私道の存在に気付かないまま,遺産分割をしてしまうおそれがあるので注意しましょう。
名寄帳には非課税の不動産も記載されていますので,非課税の不動産を見落とさないようにするには名寄帳で確認したほうがよいでしょう。

 

二 遺産の評価

遺産分割をするにあたって,各当事者の具体的相続分を計算するため,遺産を金銭で評価する必要があります。
また,誰がどの遺産を取得するか,代償金支払の必要性やその金額等,遺産分割の方法を決めるためにも,遺産の評価が必要となります。

 

1 評価の方法

遺産の評価の方法としては,当事者の合意による場合と鑑定による場合があります。

 

(1)当事者の合意

遺産分割は当事者の意思に基づいて行うことができますので,遺産の評価についても当事者の合意により決めることができます。
当事者の合意で,不動産の評価額を決める場合には,固定資産評価額,相続税評価額(路線価),不動産業者の査定書,私的鑑定等の資料が参考となります。

 

(2)鑑定

当事者で合意ができない場合は,鑑定を行うことになります。
鑑定を行う場合には,原則として裁判所に鑑定費用を予納します。その際,鑑定費用を誰が負担するか問題となります。

 

2 評価の基準時

基本的には,遺産分割時(現実に分割するとき)を基準時として遺産を評価しますが,寄与分や特別受益が問題となる場合には,相続開始時の評価に基づいて,具体的相続分を計算します。

もっとも,遺産の評価を2時点で行うことは煩雑であり,鑑定費用も余計にかかりますし,相続開始時からあまり時間が経過していない場合には評価額に大きな違いはないでしょうから,当事者の合意があれば,一時点で評価することもあります。

 

三 遺産分割の方法

1 現物分割

遺産分割は,現物分割(個々の財産をそのまま相続人に取得させる方法)が基本です。

遺産である土地が広い場合には,分筆して,現物分割することも考えられます。

 

2 代償分割

現物分割が基本ですが,各相続人の相続分に見合う財産があるとは限りませんので,現物分割と代償分割(相続分を超える遺産を取得した相続人が他の相続人に金銭の支払等債務を負担する方法)を併用することがよくあります。
例えば,ある相続人が不動産を取得し,他の相続人が預金を取得することにした場合に,相続分を超えて取得した側から足りない側に代償金を支払うことで調整します。

 

3 換価分割

不動産以外にめぼしい財産がない場合や不動産を取得する者に代償金を支払う資力がない場合には,不動産を売却して,売却代金を分割することが考えられます。

 

4 共有分割

現物分割,代償分割,換価分割のいずれも方法もとれない場合には,共同相続人で共有すること(共有分割)になりますが,共有状態はトラブルになる可能性がありますので,できる限り避けたほうがよいでしょう。

 

四 登記

遺産分割により不動産を取得した場合,不動産を取得した相続人は,所有権移転登記手続をすることになります。

 

1 相続登記がない場合(被相続人名義の場合)

遺産分割により,ある相続人が不動産を単独で取得したときは,その相続人は,単独で,「相続」を登記原因とする所有権移転登記の申請をすることができます(不動産登記法63条2項)。

 

2 相続登記がある場合(共同相続人名義の場合)

共同相続人が相続登記をした後に,遺産分割により,ある相続人がその不動産を取得したときには,取得した相続人を登記権利者,他の相続人を登記義務者として,共同で,「遺産分割」を登記原因とする所有権移転登記手続の申請をしなければなりません。
そのため,遺産分割調停や審判で,不動産を取得した相続人が単独で登記申請ができるようにするためには,単に「不動産を取得する」と定めるだけではなく,他の相続人に対し「遺産分割を原因とする共有持分の移転登記手続をせよ」と登記手続を命ずる調停条項や審判が必要となります。

【相続・遺言】相続法の改正

2018-08-29

平成30年7月6日,民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号),法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立し(平成30年7月13日公布),相続法が改正されました。
改正された点は以下のとおりです。
なお,①自筆証書遺言の方式緩和については,公布の日から6か月を経過した日(平成31年1月13日),②配偶者の居住権の保護,自筆証書遺言の保管制度については,公布の日から2年を超えない範囲で政令が定める日,③それ以外については,公布の日から1年を超えない範囲で政令が定める日から施行されます。

 

一 配偶者の居住権保護

1 配偶者短期居住権

被相続人の配偶者が相続開始時に被相続人の建物に無償で住んでいた場合には,一定期間,無償で建物に居住する権利が認められます。

 

2 配偶者居住権

被相続人の配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物について,遺産分割や遺贈により,終身または一定期間,配偶者に居住権を取得させることができるようになります。

 

二 遺産分割等の改正

1 配偶者保護のため,持戻し免除の意思表示の推定

婚姻期間が20年以上の配偶者に居住用不動産を遺贈又は生前贈与した場合には,特別受益の持戻し免除の意思表示が推定されます。
持戻しが免除されることにより,配偶者が遺産分割で取得できる財産が増えることになります。

 

2 預貯金の仮払制度

遺産である預貯金について,生活費や葬儀費用の支払等のため,遺産分割前に払戻しを受けられる制度が創設されます。
また,預貯金について家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件も緩和されます。

 

3 共同相続人の一部が遺産分割前に遺産を処分した場合

共同相続人の一部が遺産分割前に遺産を処分した場合(例えば,相続開始後に共同相続人の一人が無断で遺産である預金を引き出した場合),これまでは不法行為や不当利得の問題として,処分者を含む共同相続人全員の合意がなければ,民事訴訟で解決しなければなりませんでしたが,改正により処分者以外の共同相続人の同意があれば,処分者の同意がなくても,計算上,処分された財産を遺産に戻して,遺産分割をすることができるようになります。

 

三 遺言制度の改正

1 自筆証書遺言の方式緩和

改正前は自筆証書遺言は遺言者が全文を自書しなければなりませんが,改正後は相続財産の目録について自書する必要がなくなり,パソコン等で作成した目録を添付して,自筆証書遺言を作成することができるようになります。

 

2 遺言執行者の権限明確化

改正により,遺言執行者の権限が明確化されました。

 

3 法務局における自筆証書遺言の保管

自筆証書遺言を法務局に保管してもらうことができるようになります。
相続開始後,相続人等は遺言書の写し(遺言書情報証明書)の交付請求や遺言書原本の閲覧請求ができます。交付や閲覧されたときは,他の相続人等に遺言書が保管されている旨通知されます。
また,遺言書が保管されている場合には,検認が不要となります。

 

四 遺留分制度の改正

改正前は遺留分減殺請求権の行使により物権的効果が生じるものと解されてきましたが,改正後は,遺留分侵害額に相当する金銭債権が生じることになります。
例えば,改正前は,遺留分減殺請求権の行使により遺産である不動産は,遺留分侵害者
と遺留分権者の共有となり,遺留分侵害者が価額弁償しない限りは,共有関係の解消は共有物分割の問題となります。
これに対して,改正後は,遺留分権者は金銭債権を取得することになりますので,不動産について共有にはなりません。

また,裁判所は,受遺者等の請求により,金銭の支払いについて相当の期限を許与することができます。

 

五 相続の効力等の改正

法定相続分を超える権利の承継については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができなくなります。

 

六 相続人以外の者の貢献を考慮

相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養監護等を行い,被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には,相続開始後,相続人に対し金銭の支払いを請求することができるようになります。

【相続・遺言】使途不明金

2018-07-09

被相続人の預貯金から多額の引出しがあり,使途不明金があった場合,どのように遺産分割をすればよいでしょうか。

 

一 使途不明金の問題

被相続人の預貯金の口座から使途不明な多額の引出しがある場合,使途不明金の問題として,共同相続人間で争いとなることがあります。

 

1 通帳や取引履歴の確認

まずは被相続人の預貯金の通帳や取引履歴を見て,使途不明金があるかどうか確認します。
通帳については,通帳を管理している人から見せてもらうことになりますが,見せてもらえない場合や古い通帳がない場合には,金融機関から被相続人の口座の取引履歴をとります。
金融機関は,相続開始後,相続人から開示の求めがあれば,基本的に取引履歴の開示に応じてくれます。なお,開示してくれる範囲(10年分の履歴しか開示しない等)や手数料については,金融機関により異なります。

 

2 使途等の確認

口座から多額の引き出しがあり,その使途が不明な場合には,通帳やキャッシュカード等を管理していた相続人や被相続人と同居していた相続人等,引出しに関係していると思われる人に説明を求める等して,①誰が引き出したのか,②使途は何なのか,③被相続人の認識はどうだったのかを確認します。

 

3 遺産分割手続で解決できるか

使途不明金の問題については,遺産分割手続きの中で解決を図ることができる場合とできない場合があります。
遺産分割について,家庭裁判所に申立てをしますが,使途不明金の問題について遺産分割手続で解決することができないときは,地方裁判所や簡易裁判所に民事訴訟を提起します。

 

二 相続開始前の預貯金の引出し

1 被相続人のために遣われた場合

被相続人が,自分で預貯金を引き出し,自分のために遣った場合には,問題となりません。
また,被相続人以外の人が預貯金を引き出した場合であっても,被相続人から預貯金の管理を任された人が,被相続人の入院費等,被相続人のために遣ったときは,金額が妥当であれば,基本的に問題とはならないでしょう。

 

2 他の相続財産として存在している場合

引き出した預貯金が形を変え,別の相続財産として存在している場合には,その財産の種類によって,遺産分割の対象となったり,ならなかったりします。
例えば,預貯金を引き出し,現金として保管してある場合,現金は遺産分割の対象となりますので,遺産分割手続の中で解決します。
他方,預貯金を引き出して,他者に貸し付けた場合,貸付金は可分債権であり,相続開始により各共同相続人の法定相続分に応じて当然に分割されますので,遺産分割の対象とはなりません。

 

3 被相続人から贈与を受けた場合

引き出された預貯金の使途が,被相続人から相続人への贈与である場合には,特別受益の問題となります。
特別受益については,遺産分割の手続の中で解決します。

 

4 被相続人に無断で引き出して取得した場合

被相続人に無断で預貯金が引き出された場合には,被相続人は,預貯金を引き出した人に対し,①債務不履行による損害賠償請求(預金管理の受任者が引き出した場合等),②不法行為による損害賠償請求,③不当利得返還請求をすることができます。
これらの損害賠償請求権や不当利得返還請求権は,相続開始後は相続財産になりますが,可分債権であるため,相続開始により各共同相続人に法定相続分に応じて当然に分割され,遺産分割の対象とはなりません。
相続人間で話合いがまとまれば,遺産分割手続の中で解決することもできますが,話合いがまとまらなければ,別途,損害賠償請求訴訟や不当利得返還請求訴訟で解決することになります。

 

三 相続開始後の預貯金の引出し

相続開始後に被相続人の預貯金が引き出された場合,相続人は,預貯金を引き出した人に対し,損害賠償請求権または不当利得返還請求権を有することになります。
これらの損害賠償請求権や不当利得返還請求権は,相続開始後に発生したものであり,相続財産ではありませんので,遺産分割の対象とはなりません。
遺産分割の対象とならない場合であっても,相続人全員で合意ができれば,遺産分割手続の中で解決することもできますが,合意ができなければ,別途,損害賠償請求訴訟や不当利得返還請求訴訟で解決することになります。
なお,引き出した預貯金を相続債務,葬儀費用,遺産管理の費用の支払いにあてた場合であっても,これらは遺産分割の対象とはなりませんので,相続人全員の合意がない限りは民事訴訟で解決を図ることになります。

相続法の改正(2019年7月1日施行)により,共同相続人の一部の人が遺産分割前に遺産に属する財産を処分した場合には,他の共同相続人全員の同意があれば,処分された財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができるようになります(民法906条の2)。

【相続・遺言】遺言無効確認訴訟と遺留分減殺請求の短期消滅時効

2018-05-12

遺留分を侵害する遺言がある場合,遺留分権者は侵害者に対し遺留分減殺請求をすることができますが,遺留分減殺請求については短期消滅時効の規定があり,「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間」以内に行使しなければなりません。
遺言の効力に争いがあり,遺言無効確認訴訟を提起する場合,解決まで時間がかかりますので,遺留分減殺請求権が消滅時効にかからないか問題となります。

 

一 遺留分減殺請求の行使期間

遺留分減殺請求権の行使期間については,権利関係を早期に確定させるため,民法1042条は「減殺の請求権は,遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは,時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも,同様とする。」と規定しております。
「減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った」とは,単に贈与や遺贈があったことを知ったことではなく,贈与や遺贈が遺留分を侵害し,減殺請求の対象となることを知ったことをいうものと解されています。

 

二 遺言の効力について争いがある場合

遺言の効力について争いがある場合,民法1042条の「知った時」とはいつの時点を指すのでしょうか。
この点については,遺留分を侵害する内容の遺言があっても,その遺言が無効であれば,遺留分の侵害はないことになるので,遺言が有効であることが確定した時が「知った時」にあたるのではないかとも考えられます。
しかし,最高裁判所昭和57年11月12日判決では,短期消滅時効の規定の趣旨に鑑みれば,遺留分権利者が訴訟上無効の主張をすれば,根拠のない言いがかりにすぎない場合であっても時効は進行を始めないとするのは相当でないから,被相続人の財産のほとんど全部が贈与されていて遺留分権利者がその事実を認識している場合には,無効の主張について,一応,事実上・法律上の根拠があって,遺留分権利者が無効を信じているため遺留分減殺請求権を行使しなかったことがもっともであると首肯しうる特段の事情が認められない限り,贈与が減殺することのできるものであることを知っていたものと推認するのが相当というべきであるとされています。
そのため,遺言の効力について争っていても特段の事情がない限り時効は進行し,相続開始の事実と遺留分を侵害する内容の遺言があることを知った時から1年間の経過で遺留分減殺請求権を行使することができなくなってしまいます。

 

三 まとめ

遺言の効力について争いがある場合,遺言無効確認訴訟に敗訴した後に遺留分減殺請求をしようとしても,短期消滅時効により遺留分減殺請求が行使できないおそれがあります。
そのため,遺言の効力について争う場合には,遺言無効確認請求が認められなかったときに備えて,予備的に遺留分減殺請求をしておいたほうがよいでしょう。

【相続・遺言】遺言無効

2018-01-18

遺産分割の前提問題として,遺言の有効性が争いとなることがあります。
どのような場合に遺言は無効となるのか,また,どのような方法で遺言の有効性を争うのか説明します。

 

一 遺言の無効原因

1 方式違反

遺言者の最終意思であるかどうかを明確にする必要があるため,遺言は民法に定める方式に従わなければすることができません(民法960条)。民法に定める方式に従わないで作成された方式違反のある遺言は無効となります。
例えば,自筆証書遺言の場合,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければなりませんので(民法968条1項),日付の記載がなかったり,押印がなかったりすると無効となります。自筆証書遺言は専門家の関与がなく作成されることが多いため,方式違反で無効にならないよう注意しましょう。

 

2 遺言能力の欠如

遺言者は,遺言をする時に能力を有していなければならず(民法963条),遺言能力を欠いた者がした遺言は無効となります。

 

(1)年齢

遺言をするには15歳に達していることが必要であり(民法961条),15歳未満の者がした遺言は無効となります(民法961条)。

 

(2)意思能力

遺言能力については行為能力の規定は適用されませんが(民法962条),遺言をするには意思能力が必要であり,意思無能力者のした遺言は無効となります。
成年被後見人も意思能力がなければ遺言はできませんが,事理弁識能力を回復したときは,一定の方式により遺言をすることができます(民法973条)。

 

3 公序良俗違反

公序良俗に違反する法律行為は無効となりますので(民法90条),公序良俗に違反する遺言は無効となります。
例えば,不倫相手に遺贈する旨の遺言は公序良俗に違反するか問題となります。

 

4 意思表示に瑕疵がある場合(錯誤,詐欺,強迫)

遺言の意思表示についても錯誤無効の規定(民法95条)や,詐欺または強迫の取消しの規定(民法96条)が適用されます。
そのため,遺言の要素に錯誤がある場合には遺言者に重過失がない限り遺言は無効となりますし,詐欺または強迫による遺言は取消しにより無効となります。

 

5 相続欠格事由がある場合

相続欠格事由がある者は,相続人となることができませんし(民法891条),受遺者となることもできません(民法965条)。
そのため,相続欠格事由がある者に相続または遺贈させる旨の遺言は無効となります。

 

6 被後見人による後見人またはその近親者に対する遺言

後見人が被後見人の直系血族,配偶者,兄弟姉妹以外の場合に,被後見人が,後見の計算終了前に,後見人またはその配偶者や直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは,遺言は無効となります(民法966条)。

 

7 証人,立会人の欠格事由がある場合

遺言の証人や立会人には欠格事由があります(民法974条)。
遺言の作成に証人や立会人が要求されている場合,欠格事由のある証人等の立会いにより作成された遺言は方式違反により無効となります。

 

8 共同遺言

遺言は2人以上の者が同一の証書ですることはできません(民法975条)。
2人以上の者が同一の証書でした遺言は無効となります。

9 遺言者の死亡以前に相続人や受遺者が死亡した場合

遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは,遺贈の効力は生じません(民法994条1項)。
相続させる旨の遺言の場合も同様であり,遺言者の死亡以前に相続人が死亡したときは原則として代襲相続することはないと解されています。

また,停止条件付きの遺贈について受遺者が条件成就前に死亡したときも,遺言者が遺言に別段の意思表示をした場合を除き,遺贈の効力は生じません(民法994条2項)。

 

10 遺言の撤回

①遺言者が遺言の方式に従って遺言の全部または一部を撤回した場合(民法1022条),②前の遺言と後の遺言が抵触し,前の遺言を撤回したとみなされる場合(民法1034条),③遺言者が遺言者または遺贈の目的物を破棄して遺言を撤回したとみなされる場合(民法1024条)には,撤回された遺言は効力がなくなります。
撤回行為が,撤回され,取消され,または効力を生じなくなるに至ったときであっても,詐欺または強迫による場合を除き,撤回された遺言の効力が回復することはありません(民法1025条)。

 

二 遺言の有効性を争う方法

1 遺言無効確認訴訟

遺言の有効性の争いは,実体法上の権利関係に係る争いであり,家庭裁判所の審判事項ではなく,訴訟事項です。
そのため,遺言の有効性を争うには地方裁判所に遺言無効確認訴訟を提起することになります。
遺言無効確認訴訟は,原則として固有必要的共同訴訟ではなく,共同相続人全員が当事者となる必要はありません。
また,遺言者の生存中は遺言の効力が生じていませんので,確認の利益はなく,訴え提起は不適法となります。

訴訟により,遺言が無効であることが確定した場合には,遺言が無効であることを前提に遺産分割をすることになります。
遺言が有効であることが確定した場合には,遺言が有効であることを前提に対応することになります。遺産分割が必要な場合には遺産分割をすることになりますし,遺留分が侵害されている場合には遺留分減殺請求をすることになります。なお,遺留分減殺請求には期間制限があるため(民法1042条),遺言の有効性を争っているうちに期間が過ぎてしまわないよう,予備的にでも遺留分減殺請求をしておいたほうがよいでしょう。

 

2 遺言無効確認調停

遺言の無効確認をする手続としては,家庭裁判所に遺言無効確認の調停申立てをすることができます。
この調停は一般調停事件であり(家事事件手続法244条),調停前置主義(家事事件手続法257条)が適用されます。そのため,まずは調停の申立てをしなければならず,調停の申立てをせずに訴えを提起すると調停に付されることになりますが,調停に付することが相当でないと認められるときはこの限りではありませんので(家事事件手続法257条2項),合意が成立する見込みがない場合には最初から訴訟提起することが考えられます。

 

3 遺産分割手続の中での解決

遺産分割の手続において遺言の有効性が争いとなることがあります。
共同相続人間で遺言の有効性について合意できれば,それを前提に遺産分割の手続をすることができます。
また,遺産分割審判では,裁判所は遺言の有効性について審理・判断した上で遺産分割を行うことができますが,遺言の有効性についての争いは訴訟事項であり,家庭裁判所の審判には既判力がありませんので,訴訟で異なる判断がなされた場合には審判の効力が失われてしまいます。
そのため,遺産分割の手続において遺産の有効性が争いとなった場合,共同相続人間で合意ができなければ,遺言無効確認訴訟を提起し,訴訟が解決してから遺産分割の手続を進めるのが通常です。

« Older Entries
Copyright(c) 2016 ながせ法律事務所 All Rights Reserved.