【相続・遺言】遺産分割の前提問題について争いがある場合

2022-03-22

遺産分割の前提問題について共同相続人間で争いがある場合には、まず前提問題についての争いを解決してから、遺産分割をすることになります。

 

一 遺産分割の前提問題

遺産分割をするにあたっては、まず、誰が遺産分割の当事者となるのか(相続人の範囲)、遺産分割の対象となる財産としてどのような財産があるのか(遺産の範囲)を確定する必要があります。

 

また、遺言の有無や遺産分割協議の有無についても確認する必要があります。

遺言や遺産分割協議で誰が遺産を取得するか定められた場合、その財産について遺産分割は不要となりますが、遺言や遺産分割協議が無効となる場合には遺産分割をすることになりますので、遺言や遺産分割協議が有効かどうか争いになることがあります。

 

二 前提問題についての争い

遺産分割の前提問題となる①相続人の範囲、②遺産の範囲、③遺言の効力、④遺産分割協議の効力について争いがある場合には、それらの争いが解決するまで遺産分割をすることはできません。

そのため、前提問題について争いがある場合には、まず前提問題について人事訴訟、審判、民事訴訟等の手続で争いを解決する必要があります。

 

相続人の範囲についての争いがある場合には、家庭裁判所の調停、審判、人事訴訟の手続等で解決します。争いの内容に応じて、親子関係不存在確認、養子縁組無効確認、離縁無効確認、婚姻無効確認、離婚無効確認、認知、認知取消し、嫡出否認、養子縁組取消し、離縁取消し、婚姻取消し、離婚取消し、廃除、廃除の取消し等の手続をします。

 

遺産の範囲について争いがある場合には、遺産確認請求訴訟等の民事訴訟で解決します。

 

遺言の効力について争いがある場合には、遺言無効確認訴訟等の民事訴訟で解決します。

 

遺産分割協議の効力について争いがある場合には、遺産分割協議無効確認訴訟等の民事訴訟で解決します。

 

三 遺産分割調停・審判で前提問題が争いとなった場合

前提問題について争いがある場合、当事者間の合意ができなければ、遺産分割調停や審判の手続を進めることはできません。

 

前提問題の争いが婚姻取消請求訴訟等のように判決等の確定によって法律関係が形成される事項の場合には、判決等が確定するまでは効力が生じないので、家庭裁判所が遺産分割審判で前提問題について判断することができません。

これに対し、前提問題についての争いが婚姻無効確認請求訴訟等のように法律関係を確認する事項の場合には、家庭裁判所は遺産分割審判で前提問題について判断することはできます。もっとも、家事審判には既判力が生じないため、前提問題について訴訟で争うことができ、訴訟で審判と異なる判断がなされたときは、その範囲で遺産分割審判の効力が失われることになります。

 

そのため、前提問題について争いがある場合には、遺産分割調停や遺産分割審判を進めることができませんので、一旦、申立てを取り下げ、前提問題についての争いを人事訴訟や民事訴訟等の手続で解決してから、改めて遺産分割調停の申立てを行うことになるのが通常です。

 

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