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【離婚】退職金の財産分与請求はできますか?
熟年離婚したいと思った妻が、まっさきに思い浮かべるのは、夫の退職金を財産分与請求したいということではないでしょうか。
とりわけ、妻が長年専業主婦をしてきた場合には、離婚後の生活の不安から、まとまった金額を受け取っておきたいと考え、夫の定年退職を待って離婚を迫るケースは多いようですが、将来もらえる退職金が財産分与の対象と認められることもあります。
退職金の財産分与額は離婚後の生活設計にも大きな影響がありますので、既に退職金が支払われた場合と将来支払われる場合にわけて、簡単に説明させていただきます。
一 既に退職金が支払われている場合
退職金は、労働の対価の後払としての性格があり、夫婦が協力して形成した財産であるといえますので、清算的財産分与の対象となります。
清算の対象となるのは、婚姻後別居するまでの期間(同居期間)に対応する分であり、婚姻前に働いていた期間に対応する分や、別居して夫婦の協力がない期間に対応する分については財産分与の対象になりません。
財産分与の対象額=退職金額×同居期間÷全勤務期間
そして、財産分与の対象となる退職金額のうち、財産分与請求者の寄与割合に相当する額が分与されることになります。
二 将来支払われる退職金の場合
将来退職金が支払われるかどうかは不確実ですが、退職金は労働の対価の後払としての性格があり、将来支払われる退職金についても夫婦が協力して形成した財産であるといえますので、支払われる蓋然性が高い場合には、財産分与の対象となります。
その場合の財産分与の対象となる退職金額の算定方法については、幾つかありますが、①別居時に自己都合退職したと仮定して、その際に支払われる退職金のうち、同居期間に対応する分を財産分与の対象とすることが多いといわれております。
財産分与の対象額=別居時に自己都合退職した場合の退職金額×同居期間÷全勤務期間
そして、財産分与の対象となる退職金額のうち、財産分与請求者の寄与割合に相当する額が分与されることになります。
なお、将来の退職金の財産分与対象額の計算方法としては、①のほかに、
②定年退職時に取得する退職金のうち、同居期間に対応する分から中間利息を控除したものを財産分与の対象とすること
(財産分与の対象額=定年退職した場合の退職金額×同居期間÷全勤務期間×退職時までの年数に対応するライプニッツ係数)、
③定年退職時に取得する退職金のうち、同居期間に対応する分を財産分与の対象とし、中間利息を控除する代わりに、退職した時に支払うものとすること
(財産分与の対象額=定年退職した場合の退職金額×同居期間÷全勤務期間)
等がありますが、事案によりふさわしい計算方法がとられるものと考えられます。
財産分与
離婚に際して、当事者の関心が高いのは、財産分与です。
財産分与を請求する側(請求者)としては、どれだけ分与を受けることができるのか
財産分与を請求される側(義務者)としては、どれだけ分与しなければならないのか
気になることでしょう。
そこで、これから財産分与について簡単に説明します。
一 財産分与請求権
民法768条1項「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」、2項本文「前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に変わる処分を請求することができる。」と規定しており、離婚をした夫婦の一方は他方に対して財産分与請求をすることができます。
二 財産分与の内容
1 財産分与の三つの要素
民法768条3項は「前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」と規定しておりますが、具体的には、財産分与において考慮される要素として、①清算的要素、②扶養的要素、③慰謝料的要素があります。
このうち、①清算的要素が財産分与の中心です。
2 清算的要素
夫婦が婚姻中に築いた財産を清算することです。
(1)財産分与の対象となる財産
夫婦が婚姻中に取得した共有財産や、一方の単独名義であっても実質的には共有といえる財産は財産分与の対象となります。
これに対し、夫婦が婚姻前から有していた財産や相続により取得した財産は、特有財産として、財産分与の対象とならないのが原則です。
(2)いつの時点の財産を分与するのか
夫婦が別居した以降は、夫婦が協力して財産を形成したとはいえません。
そのため、別居時点の財産が分与の対象となるのが、原則です。
ただし、別居後についても、過去の婚姻費用や養育費が財産分与において清算の対象となることはあります。
(3)財産の評価
財産分与は、金銭の支払で行われる場合が多く、その場合には、財産をいつの時点で評価するのか問題となりますが、その場合には、離婚時点で評価するのが原則です。
(4)分与の割合
夫婦は財産の形成につき、同程度の貢献をしたとみて、特段の事情がない限り2分の1とされています。
そのため、清算的財産分与については、原則として以下のように計算します。
清算的財産分与の額=(請求者の財産+義務者の財産)÷2-請求者の財産
3 扶養的要素
高齢である、病気がある等扶養が必要な状態であり、清算的財産分与や慰謝料だけでは、離婚後の生活保持が困難な場合に、補充的に考慮されることがあります。
扶養的財産分与については、①請求者が要扶養状態にあること、②義務者に扶養能力があることが要件となります。
4 慰謝料的要素
財産分与において、慰謝料的な要素を考慮することもあります。
もっとも、離婚に際して、財産分与とは別個に、慰謝料請求をすることもできますので、両方請求している場合には、財産分与に慰謝料的な要素を考慮した場合には、その分慰謝料額を少なくする、十分な慰謝料額を認定した場合には財産分与において慰謝料的要素を考慮しない等、調整されます。
三 財産分与の請求方法
1 協議
民法768条1項は、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」と規定しており、離婚に際して、夫婦の一方は他方に対し、財産分与請求をすることができ、協議の上、財産分与の取り決めをすることができます。
2 調停・審判
財産の分与について、当事者間で協議して取り決めることができないときは、当事者は、家庭裁判所に、財産分与の調停又は審判を申し立て、財産分与の請求をすることもできます(民法768条2項)。
3 離婚訴訟の附帯処分
離婚訴訟の附帯処分として財産分与を請求することができます(人事訴訟法32条1項)。
四 財産分与請求ができる期間
離婚の時から2年を経過すると、財産分与請求ができなくなりますので(民法768条2項但書)、ご注意ください。
【離婚】表面上はうまくいっています。でも、離婚したいんです。
離婚というと重苦しい話になりがちですが,近ごろは,離婚を明るく扱ったテレビドラマや書籍が,よく見受けられるようになりました。みなさんも,ドラマや本を見て,「そうそう,その気持ち分かる」という経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。自分だけじゃないんだと思うと,勇気づけられますよね。そういう意味では,以前に比べると,離婚のことを語りやすい雰囲気にはなってきているように感じます。
しかし,実際に夫婦関係で悩んでいる人にとっては,周囲に相談しても,「そんなことくらいで」とか,「あなたにも悪いところがあるんじゃないの」などと言われ,誰にも自分の気持ちを分かってもらえないと絶望して,心を閉ざしてしまうこともありがちです。夫婦の問題は,非常にプライベートな空間で起こることであり,日常の些細な出来事の積み重ねに端を発していることも多いので,他人からは理解されにくいものです。そうすると,ますます悩んでしまって,悪循環に陥り,感情的にこじれにこじれてしまいます。
離婚問題に発展する夫婦のうち,表面上はこれといって大きな問題があったわけではないのに,突然妻から夫に離婚を求めたケースでは,特にその傾向が強いように思います。
離婚問題といっても,千差万別で,人によって違うのはもちろんなんですが,妻が日頃の夫の言動に不満を募らせ,ついには,「もう,顔を見るのもイヤ」という状況になっても,当の夫は,離婚を求められるまで妻の気持ちに全く気付かないという,離婚に対する夫と妻の温度差は,多くの夫婦が共感できるのではないでしょうか。
その原因としては,すでに多くの文献でも紹介されているところですが,男女で物事の感じ方や考え方が違うということが考えられます。実際の離婚事件に関わっていると,物事の感じ方や考え方が男女でこんなに違うのかと考えさせられることがしばしばです。そのために,復縁や離婚条件の話し合いをしようにも,夫と妻で話がかみ合わず,ますます関係が悪化し,泥沼の離婚劇になってしまうこともあります。
そうならないためにも,早期に第三者を交えた話し合いをし,必要以上にお互いのことを傷つけあわないような解決を目指してください。そんなとき,私達がお力になります。
養育費
子供がいる夫婦が離婚する場合、どちらが子供の親権者となるか決めなければなりません。
また、その際、養育費の支払をどうするかについても決めることになりますが、養育費がいくらになるか、あるいは、話がまとまらない場合にどのようにして養育費を決めるのか、関心があることと思われます。
そこで、養育費について簡単に説明します。
※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→https://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/
一 養育費とは
民法766条1項は、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と規定しており、離婚にあたっては、子の監護に要する費用(養育費)を定めなければなりません。
また、民法766条2項は、「前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。」と規定しており、家庭裁判所で養育費を決めることができます。
養育費の根拠は親の子に対する扶養義務です。
扶養の程度に関し、生活保持義務(自分と同程度の生活を保持する義務)と生活扶助義務(自分の生活を犠牲にしない限度で、最低限の生活を扶助する義務)がありますが、養育費の支払については、生活保持義務であるとされております。
二 養育費の支払はいつから(始期)いつまで(終期)か
1 始期
調停で養育費の支払を決める場合、調停が成立した月から養育費の支払を始めると定めることが一般的です。
また、過去の養育費を請求して争われた事例では、請求時を始期とする例、離婚時を始期とする例、別居時を始期とする例、扶養可能時を始期とする例等がありますが、請求時(調停・審判申立時)を始期とすることが多いようです。
2 終期
子が成人に達するまでとするのが一般的です。
もっとも、未成年であっても子が学校を卒業し働いて経済的に自立している場合には扶養の必要はないといえます。
他方、親の学歴や経済力によっては、子が成人に達しても、大学を卒業するまで養育費を支払うとされることもあります。
三 養育費の算定方法
養育費は、簡易算定方式及び簡易算定表を用いて算定するのが一般的です。
1 簡易算定方式
子が義務者と同居していると仮定した場合に子のために消費される生活費を計算し、これを義務者と権利者の収入で按分して、義務者が支払うべき養育費を算定します。
(1)権利者と義務者の基礎収入を算定します。
①給与所得者の場合
総収入額から公租公課、職業費(被服費、交通費等)、特別経費(住居費等)を控除した金額であり、概ね総収入の34%から42%の範囲(高額所得者ほど低い)とされております。
基礎収入=総収入-公租公課-職業費-特別経費
②自営業者の場合
所得金額から公租公課、特別経費を控除した金額であり、概ね総所得の47%から52%の範囲(高額所得者ほど低い。)とされております。
基礎収入=総所得-公租公課-特別経費
(2)義務者の基礎収入を義務者の生活費と子の生活費に按分した上で、子の生活費を義務者と権利者の基礎収入で按分して、義務者が負担する養育費を算定します。
親の生活費の割合(生活費指数)を100とすると、0歳から14歳の子の割合は55、15歳から19歳の子の割合は90として計算します。
養育費
=義務者の基礎収入×子の生活費指数÷義務者と子の生活費指数
×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
例えば、10歳の子と8歳の子がいる夫婦が離婚し、母(年収100万円の給与所得者で基礎収入は42万円)が子2人の親権者となり、父(年収400万円の給与所得者で基礎収入は152万円)に養育費を請求した場合
養育費
=152万円×(55+55)÷(100+55+55)
×152万円÷(152万円+42万円)
=約62.4万円(月額 約5万2000円)
(3)権利者の収入が義務者の収入を上回る場合
子が権利者と同居している場合の生活費を基準とすることも考えられますが、その場合、権利者の収入が高くなるほど、義務者の支払う養育費が高くなり、義務者に酷になります。
そこで、権利者の収入が義務者の収入を上回る場合には、権利者の収入を義務者の収入と同一であると仮定して、養育費を計算します。
2 簡易算定表
簡易算定方式に基づいて算定される養育費を1万円または2万円の幅で表に整理したものです。
表には、①子1人(0~14歳)、②子1人(15~19歳)、③子2人(第1子、第2子0~14歳)、④子2人(第1子15~19歳、第2子0~14歳)、⑤子2人(第1子、第2子15~19歳)、⑥子3人(第1子、第2子、第3子0~14歳)、⑦子3人(第1子15~19歳、第2子、第3子0~14歳)、⑧子3人(第1子、第2子15~19歳、第3子0~14歳)、⑨子3人(第1子、第2子、第3子15~19歳)があります。
縦軸を義務者の年収(給与所得者の場合と自営業者の場合があります。)、横軸を権利者の年収(給与所得者の場合と自営業者の場合があります。)とし、縦軸から横に延ばした線と横軸から縦にのばした線の交わるところの数値が養育費の金額となります。
年収については、給与所得者の場合は源泉徴収票の「支払金額」であり、自営業者の場合は、確定申告書の「課税される所得金額」(ただし諸々修正されます。)です。
例えば、10歳の子と8歳の子がいる夫婦が離婚し、母(年収100万円の給与所得者)が子2人の親権者となり、父(年収400万円の給与所得者)に養育費を請求した場合、簡易算定表によると、養育費は月額4万円から6万円の範囲となります。
四 養育費の請求方法
1 養育費を決める方法
(1)協議
当事者間の協議で養育費を決めることができます。
執行受諾文言のある公正証書にした場合には、債務名義として強制執行をすることができます。
(2)調停
協議離婚後に養育費を請求する場合には、相手方の住所地または合意で定める家庭裁判所(家事事件手続法245条1項)に養育費の申立てをすることができます。
また、離婚調停の申立に付随して養育費の支払いを申し立てることができますので、離婚調停の際に離婚と共に、子の親権者や養育費の取り決めをすることができます。
(3)審判
審判の申立は、子の住所地の家庭裁判所に申し立てることができます(家事事件手続法150条4号)。
調停を申し立てずに、最初から審判を申し立てることもできますが、付調停とされることがあります(家事事件手続法274条1項)。
調停が不成立となる場合には、審判に移行し(家事事件手続法272条4項)、裁判所が養育費を決めます。
(4)離婚訴訟の附帯請求
離婚訴訟の附帯請求として、養育費の請求をすることができます(人事訴訟法32条1項)。
2 履行を確保する方法
(1)履行勧告
義務者が義務を履行しない場合、権利者は履行勧告を申し立てることができます(家事事件手続法289条)。
(2)履行命令
義務者が義務の履行を怠った場合、権利者の申立てにより義務者に対し、相当の期限を定めて義務の履行を命じる審判をすることができます。義務者が正当な理由なく履行命令に従わない場合には10万円以下の過料に処されます(家事事件手続法290条)。
(3)強制執行
調停調書は確定判決と同一の効力がありますし、確定した審判も執行力のある債務名義となりますので、強制執行することができます。
養育費の一部が不履行の場合、期限が到来していない分についても給与その他の継続的給付にかかる債権に強制執行をすることができます(民事執行法151条の2)。
また、養育費の場合、給与債権の差押禁止範囲が4分の3ではなく、2分の1とされております(民事執行法152条3項)。
五 養育費の変更
養育費の額を取り決めた後、子の進学や再婚や収入の減少等、事情が変わり、養育費の額が不相当となった場合には、養育費の増額、減額請求をすることができます。
婚姻費用
夫婦関係を見直すため、あるいは、離婚をする前提として、夫婦が別居することがあります。
同居中は、夫婦の一方に収入がなくても、他方の収入で生活することができますが、別居した場合には、収入のない方は、どうやって生活するのか問題となります。
そのような場合、収入のない方は、収入のある方に対し、婚姻費用分担請求をすることが考えられます。
これから、婚姻費用について簡単に説明します。
※算定方式・算定表は改訂されました(令和元年12月23日公表)。基本的な考え方は変わっておりませんが,このページの計算例などは改訂前のものですのでご注意ください。
算定方式・算定表の改訂についてはこちら→https://nagaselaw.com/【離婚】養育費・婚姻費用の算定方式・算定表の/
一 婚姻費用分担義務について
民法760条は、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており、同条を根拠に、夫婦の一方は他方に対し婚姻費用分担義務を負います。
扶養の程度に関しては、生活保持義務(自分と同程度の生活を保持する義務)と生活扶助義務(自分の生活を犠牲にしない限度で、最低限の生活を扶助する義務)がありますが、婚姻費用分担義務は、原則として生活保持義務であるとされております。
二 婚姻費用分担義務はいつから(始期)いつまで(終期)生じるのか
1 始期
婚姻費用分担義務が生じるかについては、
①必要時からとする見解(別居時から)
②請求時からとする見解(調停や審判申立て時から)
があります。
実務上、②請求時からとすることが多いとされています。
もっとも、事情によっては、別居時からの婚姻費用分担義務を負うとされることもあります。
2 終期
実務上、別居の解消または離婚に至るまでとするのが一般的です。
三 婚姻費用分担額の算定方法
婚姻費用分担額は、簡易算定方式及び簡易算定表を用いて算定するのが一般的です。
1 簡易算定方式
(1)権利者と義務者の基礎収入を算定します。
①給与所得者の場合
総収入額から公租公課、職業費(被服費、交通費等)、特別経費(住居費等)を控除した金額であり、概ね総収入の34%から42%の範囲(高額所得者ほど低い)とされております。
基礎収入=総収入-公租公課-職業費-特別経費
②自営業者の場合
所得金額から公租公課、特別経費を控除した金額であり、概ね総所得の47%から52%の範囲(高額所得者ほど低い。)とされております。
基礎収入=総所得-公租公課-特別経費
(2)権利者と義務者の基礎収入の合計額をそれぞれの世帯に按分します。
子がいる場合には、子の生活費も含めて計算します。
その際、親の生活費の割合(生活費指数)を100とすると、0歳から14歳の子の割合は55、15歳から19歳の子の割合は90として計算します。
権利者世帯の按分額
=(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)×権利者世帯の生活費指数÷(義務者世帯の生活費指数+権利者世帯の生活費指数)
例えば、夫婦間に10歳の子が一人いて、妻が子を連れて別居し、妻が夫に婚姻費用を請求した場合
権利者(妻)世帯の按分額
=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)
×(100+55)÷(100+100+55)
(3)権利者世帯の按分額から権利者の基礎収入額を控除した金額が婚姻費用分担額となります。
婚姻費用分担額=権利者世帯の按分額-権利者の基礎収入
2 簡易算定表(養育費・婚姻費用算定表)
簡易算定方式に基づいて算定される婚姻費用を1万円または2万円の幅で表に整理したものです。
表には、①夫婦のみ、②子1人(0~14歳)、③子1人(15~19歳)、④子2人(第1子、第2子0~14歳)、⑤子2人(第1子15~19歳、第2子0~14歳)、⑥子2人(第1子、第2子15~19歳)、⑦子3人(第1子、第2子、第3子0~14歳)、⑧子3人(第1子15~19歳、第2子、第3子0~14歳)、⑨子3人(第1子、第2子15~19歳、第3子0~14歳)、⑩子3人(第1子、第2子、第3子15~19歳)があります。
縦軸を義務者の年収(給与所得者の場合と自営業者の場合があります。)、横軸を権利者の年収(給与所得者の場合と自営業者の場合があります。)とし、縦軸から横に延ばした線と横軸から縦にのばした線の交わるところの数値が婚姻費用分担額となります。
年収については、給与所得者の場合は源泉徴収票の「支払金額」であり、自営業者の場合は、確定申告書の「課税される所得金額」(ただし,諸々修正されます。)です。
例えば、例えば、夫婦間に10歳の子が一人いて、妻が子を連れて別居し、妻(年収50万円の給与所得者)が夫(年収400万円の給与所得者)に婚姻費用を請求した場合、簡易算定表によると、婚姻費用分担額は月額6万円から8万円の範囲となります。
四 手続
1 婚姻費用分担額を決める方法
(1)当事者間の合意
当事者間の合意で婚姻費用を決めることができます。
執行受諾文言のある公正証書にした場合には、債務名義として強制執行をすることができます。
(2)婚姻費用分担調停
婚姻費用を請求する場合には、相手方の住所地または合意で定める家庭裁判所(家事事件手続法245条1項)に婚姻費用分担調停の申立てをすることができます。
(3)審判
審判の申立は、夫または妻の住所地の家庭裁判所に申し立てることができます(家事事件手続法150条3号)。
調停を申し立てずに、最初から審判を申し立てることもできますが、付調停とされることがあります(家事事件手続法274条1項)。
調停が不成立となる場合には、審判に移行し(家事事件手続法272条4項)、裁判所が婚姻費用分担額を決めます。
2 履行を確保する方法
(1)履行勧告
義務者が義務を履行しない場合、権利者は履行勧告を申し立てることができます(家事事件手続法289条)。
(2)履行命令
義務者が義務の履行を怠った場合、権利者の申立てにより義務者に対し、相当の期限を定めて義務の履行を命じる審判をすることができます。義務者が正当な理由なく履行命令に従わない場合には10万円以下の過料に処されます(家事事件手続法290条)。
(3)強制執行
調停調書は確定判決と同一の効力がありますし、確定した審判も執行力のある債務名義となりますので、強制執行することができます。
婚姻費用の一部が不履行の場合、期限が到来していない分についても給与その他の継続的給付にかかる債権に強制執行をすることができます(民事執行法151条の2)。
また、婚姻費用の場合、給与債権の差押禁止範囲が4分の3ではなく、2分の1とされております(民事執行法152条3項)。
配偶者の不貞行為(離婚請求・慰謝料請求)
配偶者が、浮気や不倫といった不貞行為をした場合、不貞行為をされた配偶者はどのような対応をとることができるでしょうか。
一 配偶者の不貞行為は離婚事由にあたります
不貞行為とは、配偶者がいる者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性交渉をすることをいいます。
配偶者の不貞行為は離婚事由にあたるため(民法770条1項1号)、不貞行為をされた配偶者は、不貞行為をした配偶者と原則として離婚することができます(ただし、裁判所が一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認め、離婚を認めない場合があります。民法770条2項)。
なお、不貞行為とは性交渉がある場合をいうため、性交渉がないプラトニックな場合は民法770条1項1号の離婚事由にはあたりませんが、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)にあたり、離婚が認められることはあります。
二 配偶者が不貞行為をした場合には慰謝料請求ができます
1 不法行為に基づく損害賠償請求
配偶者が不貞行為をした場合には、不貞行為をされた配偶者は、不貞行為をした配偶者とその相手方に対し、慰謝料を請求することができます。
慰謝料請求は不法行為に基づく損害賠償請求であり(民法709条、710条)、不貞行為をした配偶者とその相手方の共同不法行為となります(民法719条1項)。
共同不法行為による損害賠償債務は不真正連帯債務であるとされていますので、不貞行為をされた配偶者は、不貞行為をした配偶者とその相手方の双方に対して慰謝料を請求することができますし、どちらか一方に対して全額請求することもできます。
2 慰謝料金額
慰謝料金額は、不貞行為をした配偶者の有責性の程度(不貞行為の期間や回数、同棲の有無等)、不貞行為をされた配偶者の精神的苦痛の大きさ、婚姻生活の状況、婚姻期間や年齢、未成年の子の有無、資力等、具体的な事情により異なります。
慰謝料の金額としては、通常、300万円以下であり、数十万円程度になることもあります。事案によっては、500万円以上の高額な慰謝料が認められることもあります。
慰謝料金額については具体的な事情によりますので、慰謝料請求をする場合には、単に不貞行為があったと主張・立証するだけではなく、不貞行為をした配偶者の有責性の大きさや自身の精神的苦痛の大きさ等、具体的な事情を主張・立証していく必要があります。
3 慰謝料請求ができない場合
(1)不貞行為より前に婚姻関係が破綻していた場合
不貞行為より前に婚姻関係が破綻していた場合には、不貞行為をしても不法行為とはいえず、慰謝料請求は認められません。
(2)消滅時効
不法行為による損害賠償請求は、損害及び加害者を知ったときから3年で時効により消滅します(民法724条)。
なお、時効の起算点について①不貞行為による精神的苦痛に対する慰謝料と考え、不貞行為を知ったときを起算点とする考えと、②離婚に至ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料と考え、離婚成立日を起算点とする考えがあります。
(3)一方が全額支払った場合の他方への請求
不貞行為をされた配偶者は、不貞行為をした配偶者とその相手方に対し、慰謝料請求をすることができますが、不貞行為をした配偶者とその相手方の債務は不真正連帯債務であるため、一方が、慰謝料を支払った場合には、支払った者の債務が消滅するだけでなく、他方の債務も消滅します。
そのため、不貞行為をされた配偶者が、不貞行為者の一方から、慰謝料全額の支払いを受けた場合には、他方に対する慰謝料請求は認められなくなります。
三 配偶者が不貞行為をしたことでお悩みの方へ
以上のように、配偶者が不貞行為をした場合には、不貞行為をされた配偶者は、①離婚請求、②慰謝料請求をすることができますが、不貞行為の事実に争いがある場合にはどうやって立証するか問題となりますし、不貞行為の事実について争いがない場合であっても、慰謝料額は具体的な事情により変わってくるため、慰謝料請求をするにあたって具体的な事情を主張・立証する必要があります。
そのため、配偶者が不貞行為をした場合には、どのような対応をするか、弁護士に相談することをご検討ください。
当事務所には、男性弁護士、女性弁護士がおり、夫側、妻側どちらの側の相談にも対応できますので、配偶者の不貞行為にお悩みの方は、安心してお問い合わせください。
離婚時年金分割制度 合意分割と3号分割
一 年金分割制度
離婚した場合、相手方に年金分割を請求することが考えられます。
年金分割というと、「年金が半分もらえるのかな」と思われるかもしれませんが、そうではありません。また、すべての年金が年金分割の対象になるわけではありません。年金分割制度によって分割されるのは、厚生年金の報酬比例部分、共済年金の報酬比例部分と職域部分(以下「厚生年金等」といいます)のうち、婚姻期間中に支払われた部分です。
離婚してから、「こんなはずじゃなかった」ということがないように、年金分割制度についてきちんと理解しておきましょう。
年金分割制度には、「合意分割」と「3号分割」がありますので、以下では、それぞれについて簡単にご紹介します。
二 合意分割
1 概要
合意分割は、夫婦の合意又は裁判手続によって、厚生年金等を分割することができるという制度です。
2 対象となる期間
婚姻期間中の加入期間全てです。
3 分割の割合
当事者双方の厚生年金等の記録を合算しその2分の1を上限として、夫婦間の合意又は裁判手続によって決められた割合で分割します。裁判手続によって決められる場合には、特段の事情がない限り2分の1になるのが一般です。
4 請求期間
原則として離婚後2年以内に請求する必要があります。
5 手続
(1)分割割合の合意等
分割割合を決める必要があるので、まず、夫婦の標準報酬の記録を確認しなければいけません。そこで、「年金分割の情報提供請求書」を、厚生年金の場合には年金事務所、共済年金の場合には共済組合(以下「年金事務所等」といいます)に、必要書類を添えて提出すれば、「年金分割のための情報通知書」という離婚時年金分割に必要な情報を入手することができます。この情報に基づいて、夫婦の合意又は裁判手続で分割割合を定め、年金事務所等に年金分割を請求することになります。
(2)年金分割の請求
年金分割の請求をする場合には、必要書類を添えて、「分割改定の請求書」を年金事務所等に提出します。必要書類には、離婚当事者の年金手帳又は国民年金手帳、基礎年金番号通知書、当事者双方の戸籍謄本、住民票、分割割合を確認するための書類などがあります。詳しくは、提出先の年金事務所等に確認してください。
三 3号分割
1 概要
3号分割、国民年金の第3号被保険者であった方が年金事務所等に申請することにより、相手方の厚生年金等を自動的に分割できるという制度です。第3号被保険者とは、会社員や公務員などの第2号被保険者の被扶養配偶者で、20歳以上60歳未満の人のことです。例えば、専業主婦がこれにあたります。
2 対象となる期間
平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間のみです。
3 分割の割合
2分の1と決まっています。
4 請求期間
原則として離婚後2年以内に請求する必要があります。
5 手続
年金分割の請求をする場合には、離婚当事者の年金手帳などの必要書類を添えて、「分割改定の請求書」を年金事務所等に提出します。詳しくは、提出先の年金事務所等に確認してください。
四 注意点
老後に年金をもらうには受給資格が必要です。原則として、公的年金に加入した期間の合計が25年以上でないと、受給資格がありません。年金の受給資格がないと年金分割請求しても年金はもらえませんので、ご注意下さい。
※平成29年8月1日から、受給資格を得るための保険料納付期間が25年から10年に短縮されます。期間が10年に満たない場合でも、後納制度等を利用することにより、受給資格が得られる可能性があります。
離婚を求められてお困りの方へ
離婚調停や離婚訴訟を起こされてしまったけれども、どうしたらいいのか分からない
離婚を求められたけれど離婚したくない
相手方の主張する離婚理由が一方的で納得できない
相手方から提示された離婚の条件に納得できない
など、離婚問題に直面した方は、さまざまなことでお悩みのことと思われます。
人生の伴侶であるパートナーから突然離婚を切り出されたら、それまで築いてきたものが根底から覆されるような衝撃を受けてしまうでしょう。お子さんがいらっしゃる方にとっては、お子さんとの関係がどうなるかも心配でしょう。夜も眠れないほど悩んだり、食べ物も喉を通らなくなったり、自暴自棄になってしまうこともあるかもしれません。そのような場合、一人で悩まずに、弁護士にご相談ください。
離婚したくない場合、離婚しないと言えば、協議離婚や調停離婚は成立しませんが、相手方は離婚訴訟を起こしてくるかもしれません。離婚訴訟では離婚事由が存在すれば、一方が離婚に反対していても離婚は認められてしまいます。そのため、単に離婚に反対すれば済むわけではなく、離婚を避けるためにはどうしたらいいのかを考える必要があります。相手方はどうして離婚を求めているのか、その原因を考えた上で、まだやり直すことが可能であり婚姻関係が破たんしていないと説得しなければなりません。
また、離婚はやむを得ないけれども、慰謝料、財産分与、親権、養育費などの相手方の要求する条件が納得できない場合には、ご自身の言い分をしっかりと主張する必要があります。相手方が離婚の原因を作った有責配偶者であるにもかかわらず離婚訴訟を起こしてきた場合には、反訴を提起して自分から離婚を求め、慰謝料等を請求することも考えられます。
当事務所では、お客様がどのようなお考えなのかをよく確認し、法的な観点のみならず、お客様のご心情や、今後の生活、人間関係等に配慮した上で、よりよい解決を目指したいと考えております。
離婚を求められてお困りの方はご相談ください。
取扱業務案内 離婚
1 離婚問題
夫婦問題に悩まれている方で離婚を考えておられる方、既に離婚を求めている方、あるいは、離婚を求められてお困りになられている方がいらっしゃることと思われます。
離婚については、話し合い(協議)で解決することもできますが、話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所を利用して、調停や訴訟で解決することができます。
また、離婚にあたっては、慰謝料請求、財産分与請求、親権、養育費、年金分割等様々な問題がありますので、これらの問題についても、考えなければなりません。
2 離婚の手続
(1)協議離婚
夫婦は、その協議で、離婚をすることができます(民法763条)。
話し合いでの解決です。
(2)調停離婚
協議が調わなかった場合、家庭裁判所に調停を申し立て、調停で離婚することができます。
調停前置主義がとられており、原則として、訴えを提起する前に調停の申立をしなければなりません(家事事件手続法257条1項)。
(3)審判離婚
調停が成立しない場合であっても、家庭裁判所は、相当と認めるときは、当事者双方ために衡平に考慮して、職権で、事件解決のために必要な審判(調停に代わる審判)をすることができるため(家事事件手続法284条1項本文)、審判で離婚ができる場合もあります。
なお、審判に対し適法な異議が出されれば、審判は効力を失い(家事事件手続法286条6項)、訴訟をしなければならなくなります。
(4)裁判離婚
調停が成立しなかった場合、家庭裁判所に訴訟を提起して離婚を求めることができます。
裁判上の離婚をする場合には、以下の民法770条1項各号の離婚事由が必要です。
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
なお、裁判所は、①から④までの事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる(民法770条2項)とされております。
離婚請求については、判決で離婚が認められる場合もありますし、和解で離婚ができる場合もあります。
3 離婚の際に問題となる事項
(1)慰謝料請求
夫婦の一方が不貞行為(浮気、不倫)をするなどして婚姻関係を破綻させた場合には、他方に対し慰謝料請求をすることができます。
(2)財産分与請求(民法768条)
離婚をした場合、夫婦の一方は、相手方に対し、財産分与を請求することができます。
財産分与は、夫婦が婚姻中に形成した財産の生産(清算的要素)が中心ですが、それに加え、離婚後の配偶者の扶養の観点(不要的要素)や離婚による慰謝料の観点(慰謝料的要素)が考慮されます。
夫婦に自宅があるけれども、その価値を上回る住宅ローンがある場合(オーバーローンの場合)、どうするか難しい問題となります。
なお、離婚の時から2年を経過したときは、請求できなくなるので(民法768条2項)、ご注意ください。
(3)年金分割
離婚に際し、厚生年金(報酬比例部分)、共済年金(報酬比例部分と職域部分)について、婚姻期間中の保険料納付記録(夫婦合計)の分割を請求することができます。
なお、平成20年4月1日以降の離婚で、第3号被保険者である被扶養配偶者(専業主婦)は、請求により、平成20年4月1日から離婚するまでの間の相手方の保険料納付記録を自動的に2分の1の割合に分割することができます(「3号分割」といわれています。)。
それ以外の場合には、当事者の合意または裁判所の決定により按分割合を決める必要があります。
(4)親権(民法819条)
夫婦に未成年の子がいる場合、離婚の際、夫婦のどちらか一方を親権者と定めなければなりません。
協議離婚の場合は、協議で一方を親権者と定め(同条1項)、裁判上の離婚の場合、裁判所がどちらか一方を親権者と定めます(同条2項)。
(5)養育費
親権者となった者は、他方に対し、子の養育のための費用(養育費)を請求することができます。
養育費の額については、養育費算定表により、算定することが一般的です。
(6)復氏(民法767条)
婚姻によって氏を改めた夫婦の一方は、離婚によって婚姻前の氏に復しますが(民法767条1項)、離婚の日から3か月以内に届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができます(民法767条2項)。
なお、離婚によって親権者となった者が婚姻前の氏に復したとしても、子の氏が当然に親権者の氏になるわけではありません。子が父または母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可と届出によって、その父又は母の氏を称することができます(民法791条1項)。
4 離婚問題でお悩みの方へ
夫婦の一方が離婚に反対している場合には、訴訟で離婚することになりますが、裁判離婚の場合には民法770条1項各号の離婚事由が必要です。
そのため、離婚できるかどうかについては、離婚事由があるかどうか、また、離婚事由の存在を立証する証拠があるかどうかが問題となります。
また、離婚のほかに、慰謝料請求、財産分与、親権、養育費等の問題があります。
慰謝料請求をするにあたっては、浮気・不倫、DV(ドメスティックバイオレンス)の証拠があるかどうかが問題となりますし、財産分与の場合には相手方にどのような財産があるか把握する必要があります。
さらに、離婚後の生活がどうなるかも考えた上で行動しないと、後悔することがあるかもしれません。
このように、離婚については様々な要素を考えなければなりませんし、今後の生活に大きな影響を与えることになりますので、離婚問題でお悩みの方は、弁護士にご相談ください。
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