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当法律事務所の法律相談について
当事務所の法律相談は予約制です。
法律相談をご希望のかたは電話またはホームページの問合せフォームでご予約ください。ご予約の際には,法律相談に来られる方の氏名,連絡先,相談の概要,相談の希望日時をお知らせください。
当事務所は土日夜間の法律相談も行っております。
土日夜間をご希望の場合は,当日に対応できないことが多いため,事前にご予約ください。
当事務所の法律相談は面談での法律相談が原則です。
電話やメールでの法律相談は基本的に行っておりません。
当事務所では法律相談は基本的に弁護士2名で行っております。
法律相談は基本的に有料です。
法律相談料は初回1時間まで5500円,それ以降は30分までごとに5500円です。ただし,交通事故事件の被害者の法律相談については,弁護士費用特約をご利用される場合を除き,初回1時間まで無料で法律相談を行っております(それ以降は30分までごとに5500円となります。)。
法律相談を行うにあたっては,相談内容に関連する資料をお持ちください。
充実した法律相談を行うため,できる限りで構いませんので資料をご準備ください。
法律相談の予約をキャンセルする場合や法律相談の日時を変更したい場合には,お早めにご連絡ください。
キャンセル料はかかりませんのでご安心ください。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【交通事故】遅延損害金
交通事故の損害賠償請求訴訟では,遅延損害金を請求することができます。
一 遅延損害金の起算日
不法行為による損害賠償債務は不法行為時に発生し,不法行為時から履行遅滞になりますので,事故日からの遅延損害金の支払を請求することができます。
二 遅延損害金の利率
遅延損害金の利率は民事法定利率によります(民法404条)。
令和2年4月1日に改正民法が施行されたことにより,民事法定利率が変わりました。そのため,令和2年4月1日以降に発生した交通事故については,当面,年3分(3%)の割合で遅延損害金が発生します。
令和2年3月31日以前の交通事故については,改正前の民事法定利率である年5分(5%)の割合で遅延損害金を計算します。
三 損害の填補があった場合の遅延損害金
損害の填補があった場合,遅延損害金から充当するのか,元本から充当するのか問題となります。
1 自賠責保険からの支払
自賠責保険金からの支払があった場合は,まず遅延損害金に充当してから,残額を元本に充当するものと解されています。
また,自賠責保険金を元本額から控除した上で,事故日から自賠責保険金の受領日までの遅延損害金を別途請求する方法もあります。
2 労災保険の給付
労災保険の給付については,制度の趣旨目的に従い,特定の損害を填補するものであり,遅延損害金は填補の対象となるものではないことから,支給が著しく遅れる等特段の事情がない限り,不法行為時に損害が填補されたものとして,元本から控除され,控除される元本に対応する遅延損害金は発生しないものと解されています。
3 人身傷害保険
人身傷害保険は損害の元本を填補するものであり,遅延損害金を填補するものではないため,人身傷害保険の支払をした保険会社は支払時に填補した元本の請求権を代位取得し,遅延損害金の請求権は代位取得しないと解されています。
そのため,被害者は,保険金により填補された元本に対する事故日から保険金受領日までの遅延損害金を請求することができると解されています。
4 任意保険会社の支払
任意保険会社が治療費等を支払うことがあります。
任意保険会社の支払については,遅延損害金から充当される場合や,元本に充当し,充当される元本に対する遅延損害金は免除するとの黙示の合意が認められる場合があります。

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【交通事故】死亡逸失利益
交通事故により被害者が亡くなった場合には,死亡逸失利益が損害となります。
一 死亡逸失利益とは
死亡逸失利益とは,被害者が亡くならなければ,将来にわたって得られたであろう利益(収入)を得られなくなったことによる損害です。
二 死亡逸失利益の計算式
死亡逸失利益の額は,以下の計算式で算定します。
死亡逸失利益
=基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
被害者が亡くなったことにより,将来にわたって得られたはずの利益(収入)を得られなくなった一方で,被害者は,生きていれば発生していた生活費の負担を免れることになりますので,死亡逸失利益を算定するにあたっては,生活費を控除します。
また,死亡逸失利益の賠償は一時金払いによることが通常であり,一時金払いの場合には,将来にわたって得られたであろう利益を現在価値に換算することになるため,中間利息を控除します。中間利息の控除の方法にはライプニッツ式(複利計算)で計算することが通常です。
三 基礎収入
1 給与所得者の場合
原則として,事故前の現実の収入額を基礎収入とします。
ただし,将来,現実収入額以上の収入を得られる蓋然性があれば,その金額が基礎収入となります。
また,現実の収入額が賃金センサスの平均賃金を下回っていても,将来,平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があれば,賃金センサスの平均賃金が基礎収入と認められます。
若年労働者の場合は,事故時の収入が低いので,平均賃金を用いることが多いです。
2 事業所得者の場合
所得税の申告所得をもとに基礎収入を算定します。
申告額と現実の収入が異なる場合,実収入を立証できれば,その金額が基礎収入となります。
現実の収入額が賃金センサスの平均賃金を下回っていても,将来,平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があれば,賃金センサスの平均賃金が基礎収入と認められます。
家族が事業を手伝っている場合には,所得額のうち被害者本人の寄与割合を乗じた額が基礎収入となります。
3 会社役員の場合
報酬額全額が基礎収入となるわけではありません。会社役員の報酬には労務対価部分と利益配当部分があり,基礎収入となるのは労務対価部分です。
4 年少者,学生の場合
賃金センサスの産業計,企業規模計,学歴計,男女別全年齢平均賃金額を基礎収入としますが,女子年少者の場合は,全労働者の全年齢平均賃金を基礎収入とするのが一般です。
大学進学が見込まれる場合には,大卒の平均賃金を基礎収入とすることもありますが,就労開始が遅れるため,就労可能年数が短くなります。
5 失業者の場合
事故時点で就労していなかったとしても,将来も就労しないとはいえませんので,就労する蓋然性があれば,死亡逸失利益は認められます。
基礎収入は,失業前の収入を参考としますが,失業前の収入が平均賃金以下の場合であっても,平均賃金を得られる蓋然性があれば平均賃金を基礎収入とします。
6 家事従事者の場合
家事労働には,現金収入はありませんが,経済的価値がありますので,家事従事者にも死亡逸失利益が認められます。
基礎収入は,賃金センサスの女性労働者の平均賃金(産業計,企業規模計,学歴計,全年齢または年齢別)を用います。男性の家事従事者の場合も女性労働者の平均賃金を用います。
なお,兼業主婦の場合には,平均賃金と実際の収入額を比較し,高い金額を基礎収入とすることが通常です。
7 年金受給者
被害者が亡くなったことにより年金を受給することができなくなった場合,死亡逸失利益が認めらるかどうかは年金の種類によります。
退職年金,老齢年金,障害年金等,被害者が保険料を拠出しているものについては,被害者が亡くなって受給できなくなったことについて逸失利益が認められます。
これに対し,障害年金の加給分や遺族年金等,被害者が保険料を拠出しておらず,社会保障的性格のものや一身専属的なものについては,被害者が亡くなって受給できなくなったとしても,逸失利益は認められません。
なお,遺族年金の受給により,被害者に支給が停止された年金がある場合には,支給が停止された年金について逸失利益を認める裁判例があります。
また,被害者が亡くなった時点で未だ年金を受給していない場合であっても,受給資格があった場合や受給資格をみたす直前であった等,年金を受給できる蓋然性が高い場合には,逸失利益性が認められると考えられます。
四 生活費控除率
被害者が亡くなったことにより,将来にわたって得られたはずの収入を得られなくなった一方で,被害者は,生きていれば発生していた生活費の負担を免れることになりますので,死亡逸失利益を算定するにあたっては,損益相殺により,生活費を控除します。
生活費の控除率については,被害者の家族構成(被害者が一家の支柱かどうか,被扶養者の人数)や性別等により異なります。
また,年金収入が逸失利益となる場合については,年金収入は生活費に当てられる割合が高くなるのが通常であると考えられるので,稼働収入の逸失利益の場合と比較して生活費控除率を高くする傾向があります。
五 就労可能年数に対応するライプニッツ係数
1 就労可能年数
(1)原則
就労可能年数は,原則として症状固定日から67歳までの期間です。
(2)高齢者の場合
67歳以上の高齢者の場合は,平均余命の2分の1の期間が就労可能年数となります。
また,67歳未満であっても,症状固定日から67歳までの期間が平均余命の2分の1の期間より短い場合には,平均余命の2分の1の期間が就労可能年数となります。
ただし,年金の死亡逸失利益の場合は,年金は亡くなるまでもらえることから,平均余命で計算します。
(3)18歳未満の場合
被害者が18歳未満の場合には就労できる年齢ではありませんので,就労可能年数の始期は18歳となります。
そのため,被害者が18歳未満の未就労者の場合には,以下の計算式で計算します。
また,基礎収入は,賃金センサスの学歴計,全年齢の平均賃金を用いるのが通常です。
死亡逸失利益
=平均賃金×(1-生活費控除率)×(67歳までのライプニッツ係数-18歳までのライプニッツ係数)
なお,被害者が大学進学の蓋然性がある場合には,基礎収入は賃金センサスの大学卒・全年齢の平均賃金を用いますが,就労可能年数の始期は大学卒業予定時となります。
2 中間利息の控除
(1)中間利息控除の利率
令和2年4月1日に施行された改正民法では,中間利息の控除についての規定が新設され(民法417条の2),将来において取得すべき利益についての損害賠償額を定める場合に利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは,損害賠償請求権が生じた時点の法定利率を用います(民法417条の2第1項)。
また,改正前の民事法定利率は年5%に固定されていましたが,改正により,法定利率は,当面は年3%とし,3年ごとに見直されることとなりました(民法404条)。
そのようなことから,中間利息控除をする際の利率は,令和2年4月1日以降に発生した交通事故の場合,当面,中間利息を控除する際の利率は年3%となります。
改正民法施行日前(令和2年3月31日まで)に発生した交通事故の場合は年5%で中間利息を控除します。
(2)中間利息控除の方法
中間利息の控除の方法には,ライプニッツ式(複利計算)とホフマン式(単利計算)がありますが,ライプニッツ式を用いることが通常です。

東武東上線・有楽町線・副都心線・武蔵野線沿線を中心に、新座市・志木市・朝霞市・和光市などの地域で、離婚・相続・借金問題・交通事故など、暮らしに身近なご相談を多くお受けしています。事前予約で平日夜間や土日祝のご相談にも対応。法律を身近に感じていただけるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけています。お困りごとがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
【交通事故】後遺症逸失利益
交通事故により後遺障害を負った場合には,後遺症逸失利益が損害となります。
一 後遺症逸失利益とは
後遺症逸失利益とは,後遺症がなければ,将来にわたって得られたであろう利益のことであり,後遺症により,被害者の労働能力が低下し,被害者の収入が減少することによる損害です。
事故により仕事ができず,収入が減少したことによる損害としては,休業損害と逸失利益がありますが,休業損害は,事故時から治療終了時(症状固定時)までに発生する損害であるのに対し,後遺症逸失利益は,治療終了後(症状固定後)から将来にわたって発生する損害です。
二 後遺症逸失利益の計算式
後遺症逸失利益の額は,以下の計算式でします。
後遺症逸失利益
=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
後遺症逸失利益は,後遺症により,被害者の労働能力が低下し,将来にわたって被害者の収入が減少することによる損害ですが,損害賠償を請求する時点では将来いくら減収するかわかりませんので,被害者の収入(基礎収入)が労働能力の低下の割合(労働能力喪失率)に応じて減少するものと推定して,後遺症逸失利益の額を算定します。
また,後遺症逸失利益の賠償は一時金払いによることが通常であり,一時金払いの場合には,将来にわたって得られたであろう利益を現在価値に換算することになるため,中間利息を控除します。中間利息の控除の方法にはライプニッツ式(複利計算)で計算することが通常です。
なお,死亡逸失利益の場合には生活費を控除しますが,後遺症逸失利益の場合には生活費を控除しないのが原則です。
三 基礎収入
1 給与所得者の場合
原則として,事故前の現実の収入額を基礎収入とします。
ただし,将来,現実収入額以上の収入を得られる蓋然性があれば,その金額が基礎収入となります。
また,現実の収入額が賃金センサスの平均賃金を下回っていても,将来,平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があれば,賃金センサスの平均賃金が基礎収入と認められます。
若年労働者の場合は,事故時の収入が低いので,平均賃金を用いることが多いです。
2 事業所得者の場合
所得税の申告所得をもとに基礎収入を算定します。
申告額と現実の収入が異なる場合,実収入を立証できれば,その金額が基礎収入となります。
現実の収入額が賃金センサスの平均賃金を下回っていても,将来,平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があれば,賃金センサスの平均賃金が基礎収入と認められます。
家族が事業を手伝っている場合には,所得額のうち被害者本人の寄与割合を乗じた額が基礎収入となります。
3 会社役員の場合
報酬額全額が基礎収入となるわけではありません。会社役員の報酬には労務対価部分と利益配当部分があり,基礎収入となるのは労務対価部分です。
4 年少者,学生の場合
賃金センサスの産業計,企業規模計,学歴計,男女別全年齢平均賃金額を基礎収入としますが,女子年少者の場合は,全労働者の全年齢平均賃金を基礎収入とするのが一般です。
大学進学が見込まれる場合には,大卒の平均賃金を基礎収入とすることもありますが,就労開始が遅れるため,労働能力喪失期間が短くなります。
5 失業者の場合
事故時点で就労していなかったとしても,将来も就労しないとはいえませんので,就労する蓋然性があれば,逸失利益は認められます。
基礎収入は,失業前の収入を参考としますが,失業前の収入が平均賃金以下の場合であっても,平均賃金を得られる蓋然性があれば平均賃金を基礎収入とします。
6 家事従事者の場合
家事労働には,現金収入はありませんが,経済的価値がありますので,家事従事者にも後遺症逸失利益が認められます。
基礎収入は,賃金センサスの女性労働者の平均賃金(産業計,企業規模計,学歴計,全年齢または年齢別)を用います。男性の家事従事者の場合も女性労働者の平均賃金を用います。
なお,兼業主婦の場合には,平均賃金と実際の収入額を比較し,高い金額を基礎収入とすることが通常です。
四 労働能力喪失率
労働能力喪失率は,後遺症を自賠責保険の後遺障害等級表・労働能力喪失率表(1級100%,2級100%,3級100%,4級92%,5級79%,6級67%,7級56%,8級45%,9級35%,10級27%,11級20%,12級14%,13級9%,14級5%)に当てはめるのが基本です。
もっとも,被害者の職業,年齢,性別,後遺症の部位,程度,事故前後の稼働状況,収入の減少等の事情から総合的に評価されますので,労働能力喪失率表どおりに労働能力喪失率が認定されるとは限りません。後遺症の仕事への影響が大きい場合には労働能力喪失表より労働能力喪失率が高くなることもありますし,後遺症の仕事への影響が小さい場合には労働能力喪失表より労働能力喪失率が低くなることがあります。
五 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
1 労働能力喪失期間
(1)原則
労働能力喪失期間は,原則として症状固定日から67歳までの期間です。
(2)高齢者の場合
67歳以上の高齢者の場合は,平均余命の2分の1の期間が労働能力喪失期間となります。
また,67歳未満であっても,症状固定日から67歳までの期間が平均余命の2分の1の期間より短い場合には,平均余命の2分の1の期間が労働能力喪失期間となります。
(3)18歳未満の場合
労働能力喪失期間の始期は症状固定日ですが,症状固定の時点では被害者が就労できる年齢ではないことがありますので,症状固定日が18歳未満の場合には,18歳から労働能力喪失期間が始まります。
そのため,被害者が18歳未満の未就労者の場合には,以下の計算式で計算します。
また,基礎収入は,賃金センサスの学歴計,全年齢の平均賃金を用いるのが通常です。
後遺症逸失利益
=平均賃金×労働能力喪失率×(症状固定時の年齢から67歳までのライプニッツ係数-18歳までのライプニッツ係数)
なお,被害者が大学進学の蓋然性がある場合には,基礎収入は賃金センサスの大学卒・全年齢の平均賃金を用いますが,労働能力喪失期間の始期は大学卒業予定時となります。
(4)むち打ち症の場合
むち打ち症の場合には症状が永続するかどうか分かりませんので,後遺障害等級12級の場合で5年から10年程度,14級の場合で5年程度に制限する例が多いですが,後遺障害の具体的症状に応じて適宜判断されます。
2 中間利息の控除
(1)中間利息控除の基準時
中間利息の控除は,事故時とする見解や症状固定時とする見解等がありますが,症状固定時を基準時とするのが通常です。
(2)中間利息控除の利率
令和2年4月1日に施行された改正民法では,中間利息の控除についての規定が新設され(民法417条の2),将来において取得すべき利益についての損害賠償額を定める場合に利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは,損害賠償請求権が生じた時点の法定利率を用います(民法417条の2第1項)。
また,改正前の民事法定利率は年5%に固定されていましたが,改正により,法定利率は,当面は年3%とし,3年ごとに見直されることとなりました(民法404条)。
そのようなことから,中間利息控除をする際の利率は,令和2年4月1日以降に発生した交通事故の場合,中間利息を控除する際の利率は年3%となります。
改正民法施行日前(令和2年3月31日まで)に発生した交通事故の場合は年5%で中間利息を控除します。
(3)中間利息控除の方法
中間利息の控除の方法には,ライプニッツ式(複利計算)とホフマン式(単利計算)がありますが,ライプニッツ式を用いることが通常です。

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【交通事故】症状固定日
交通事故の被害者の方は完全に治るまで治療を受けたいとお考えでしょうが,加害者に損害賠償請求できる治療費は原則として症状固定日までの治療費です。
症状固定日後に障害が残存する場合には後遺障害の問題となります。
一 症状固定とは
症状固定とは,治療を継続しても,それ以上症状の改善が期待できない状態のことです。症状固定後に障害が残存する場合は後遺障害の問題となります。
二 症状固定日の認定
治療により症状が改善できるかどうかの判断は医学的な判断が基礎となりますので,後遺障害診断書の症状固定日として記載された日が,症状固定日と認定されるのが通常です。
ただし,損害賠償は法的な問題であり,症状固定日も法的に判断されますので,事故態様や治療の状況等から,後遺障害診断書の記載と異なる日が症状固定日と認定されることもあります。
三 症状固定日が問題となる場合
1 治療関係費
治療費が損害と認められるのは,原則として症状固定日までの治療費です。
症状固定後は治療による症状の改善が見込めないので,症状固定日後の治療費は損害賠償の対象とならないのが原則です。
ただし,症状固定日後であっても,症状の内容や程度によっては,症状悪化を防止するためのリハビリ費用や手術の費用等が,将来治療費として損害と認められることがあります。
入院雑費や通院交通費等,入通院に伴って発生する費用についても,症状固定日までに発生したものが損害となるのが原則ですが,将来治療費が損害と認められる場合にはそれに伴って生じる交通費等も損害と認められることがあります。
2 休業損害
休業損害は症状固定日までの休業による収入の減少が損害賠償の対象となります。
症状固定日後の休業による収入の減少については後遺障害逸失利益の問題となります。
3 入通院慰謝料
入通院慰謝料は入通院期間をもとに算定しますが,症状固定日までの入通院期間が対象となります。
症状固定日後は後遺障害逸失利益の問題となります。
4 後遺障害逸失利益
労働能力喪失期間は,原則として症状固定日から67歳までの期間です。
また,中間利息の控除についても症状固定日が基準時となると解されています。
5 消滅時効の起算点
後遺障害が残った場合の損害賠償請求権の消滅時効の起算点は,症状固定日であると解されています。
四 治療の打切りの問題
加害者側が被害者の治療費を支払っている場合,ある程度の期間が経過すると,加害者側から治療費の負担を終了する旨告げられることがあります。
被害者が,痛みや症状が続いており,治療の必要があると訴えたとしても,加害者側は,症状の固定を主張して,応じないということがあります。
被害者の中には症状固定後に痛みや症状が残っていたとしても,必ずしも後遺障害の等級認定がなされるとは限らないことから,もっと治療を続けたいと考えられる方もおられるかもしれませんが,その一方で,加害者に治療費を負担させることができず,被害者が治療費を自己負担しなければならなくなるおそれもありますので,治療を続けるかどうかは難しい問題となります。特に自由診療で治療を受けている場合には,治療費が高額となるので,より難しい問題となります。

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【相続・遺言】法務局における自筆証書遺言書保管制度
法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)が令和2年7月10日より施行されました。
この法律により,遺言者は法務局に自筆証書の遺言書を法務局に保管することができるようになりました。
一 法務局における自筆証書遺言書保管制度とは
法務局における自筆証書遺言書保管制度とは,遺言者の申請により法務局が自筆証書の遺言書を保管する制度のことです。
自筆証書遺言は,遺言者本人が手軽に作成することができるものですが,遺言者が自分で保管していることが多いため,紛失するおそれや相続人に遺言書の存在が気づかれないおそれがありますし,他者に遺言書を隠匿,廃棄,改ざんされるおそれもあります。
自筆証書遺言を法務局に保管してもらうことで,遺言書等の紛失等を防止することができ,相続をめぐる紛争を防止することができるようになります。
二 申請
1 どこに申請するのか
遺言の保管に関する事務を行う法務局を遺言書保管所といい(遺言書保管法2条1項),遺言書保管所の事務を取り扱う法務事務官を遺言書保管官といいます(遺言書保管法3条)。
申請は,①遺言者の住所地もしくは本籍地または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所,②遺言者の作成した他の遺言書が遺言書保管所に保管されている場合は,その遺言書保管所の遺言書保管官に対して行います(遺言書保管法4条3項)。
2 申請者
遺言書の保管を申請することができるのは,遺言者本人です(遺言書保管法4条1項)。
遺言者以外の人は申請できません。
また,保管の申請は,遺言者自らが遺言保管所に出頭して行わなければなりません(遺言書保管法4条6項)。
遺言者の意思による申請であることを確認するためです。
3 申請することができる遺言書
保管の対象となる遺言書は,民法968条の自筆証書による遺言書であり(遺言書保管法1条),法務省令で定める様式で作成した無封のものでなければなりません(遺言書保管法4条2項)。
三 遺言書の保管,管理
遺言書保管官は,遺言書の原本を保管します(遺言書保管法6条1項)。
また,遺言書保管官は,遺言書の画像情報等を遺言書保管ファイルに記録して,遺言書に係る情報の管理を行います(遺言書保管法7条)。
四 相続開始前
1 遺言書の閲覧
遺言者は,遺言書が保管されている遺言書保管所の遺言書保管官に対し,いつでも遺言書の閲覧を請求することができます(遺言書保管法6条2項)。
遺言者の生存中は,遺言者以外は遺言書の閲覧を請求することはできません。
2 申請の撤回
遺言者は,いつでも保管の申請を撤回することができ,申請を撤回すると,遺言書の原本が返還され,情報が消去されます(遺言書保管法8条)。
なお,申請を撤回しても,その遺言書について保管等がなされなくなるだけであり,自筆証書遺言としての効力がなくなるわけではありません。
五 相続開始後
1 遺言書保管事実証明書の交付
何人も遺言書保管官に対し遺言書保管事実証明書(自分が関係相続人等に該当する遺言書の保管の有無等を証明する書面)の交付を請求することができます(遺言書保管法10条)。
自分が関係相続人等に該当する遺言書(「関係遺言書」といいます。)が保管されている場合には,その旨の証明書が交付されますし,関係遺言書が存在しない場合(遺言書が保管されていない場合や関係相続人等に該当しない遺言書が保管されている場合)には,関係遺言書が保管されていない旨の証明書が交付されます。
2 遺言書情報証明書の交付等
相続人,受遺者,遺言執行者等の関係相続人等は,遺言者の死亡後に,遺言書情報証明書(遺言書保管ファイルに記載されている事項を証明する書面)の交付の請求や遺言書の閲覧を請求することができます(遺言書保管法9条1項,3項)。
相続人等は,遺言書情報証明書を利用して,相続手続を行うことができます。
3 相続人等への通知
関係相続人等への遺言書情報証明書の交付や遺言書の閲覧があったときは,遺言書保管官は,速やかに,相続人,受遺者,遺言執行者(既に知っている者を除きます。)に遺言書を保管していることを通知します(遺言書保管法9条5項)。
4 検認が不要
自筆証書遺言は相続開始後に検認手続をする必要がありますが(民法1004条),遺言書保管制度が利用されている場合には,検認が不要です(遺言書保管法11条)。
検認は遺言書の保存を確実にして偽造等を防止する手続であり,相続人に遺言書の存在や内容を知らされますが,遺言書保管制度が利用されている場合には,遺言書の保存は確実ですし,相続人に通知されるからです。

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【相続・遺言】相続法改正 配偶者短期居住権
相続法の改正により,令和2年4月1日から,配偶者短期居住権制度が開始します。
一 配偶者短期居住権とは
配偶者短期居住権とは,被相続人の配偶者が,相続開始時に遺産である建物に居住していた場合に,配偶者は,その建物(居住建物)を相続または遺贈により取得した者(居住建物取得者)に対し,相続開始後も短期間,居住建物を無償で使用することができる権利を有します。この権利のことを配偶者短期居住権といいます。
相続開始後,配偶者が直ちに住居を失ってしまうということがないよう,短期間,配偶者の居住権を確保させる制度です。
配偶者居住権の場合とは異なり,配偶者短期居住権には居住建物を収益する権利はありませんし,配偶者が配偶者短期居住権を取得しても,配偶者の具体的相続分に影響しません。
二 成立要件
配偶者短期居住権は,①配偶者が,被相続人の財産に属した建物に相続開始時に無償で居住していたこと,②配偶者が相続開始時に配偶者居住権を取得していないこと,③配偶者が民法891条の欠格事由または廃除により相続権を失っていないことの要件を満たす場合に成立します(民法1037条1項)。
三 存続期間
1 民法1037条1項1号に掲げる場合
居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をすべき場合は,遺産分割により建物の帰属が確定した日または相続開始時から6か月を経過する日のいずれか遅い日まで,配偶者短期居住権は存続します(民法1037条1項1号)。
2 民法1037条1項1号に掲げる場合以外の場合
配偶者以外に居住建物を遺贈した場合,配偶者が相続放棄した場合等,配偶者が居住建物について遺産共有持分を有しない場合,居住建物取得者は,いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができ(民法1037条3項),申入れ日から6か月を経過する日に短期居住権が消滅します(民法1037条1項2号)。
四 居住建物の使用等
配偶者短期居住権を有する配偶者は,居住建物(居住建物の一部のみを使用していた場合には,その部分)を無償で使用することができます(民法1037条1項)。
居住建物取得者は,第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはなりません(民法1037条2項)。
配偶者は居住建物を使用するにあたって,用法遵守義務,善管注意義務を負いますし(民法1038条1項),居住建物取得者の承諾を得ずに第三者に居住建物を使用させることはできません(民法1038条2項)。配偶者がこれらに違反した場合には,居住建物取得者が配偶者に対し,短期居住権の消滅を請求することができます(民法1038条3項)。
また,配偶者居住権の譲渡禁止の規定(民法1032条2項),居住建物の修繕等の規定(民法1033条),費用負担の規定(民法1034条)は,配偶者短期居住権に準用されます(民法1041条)。
五 配偶者短期居住権の消滅
1 消滅事由
配偶者短期居住権は,①存続期間が満了した場合(民法1037条1項),②居住建物取得者が配偶者短期居住権の消滅を請求した場合(民法1038条3項),③配偶者が配偶者居住権を取得した場合(民法1039条),④配偶者が死亡した場合(民法1041条,民法597条3項),⑤居住建物の全部が滅失その他の事由により使用することができなくなった場合(民法1041条,民法616条の2)等に消滅します。
2 居住建物の返還等
配偶者短期居住権が消滅したとき(民法1039条に規定する場合は除きます。)は,配偶者は居住建物を返還しなければなりません(民法1040条1項本文)。
ただし,配偶者が居住建物の共有持分を有する場合は,居住建物取得者は配偶者短期居住権の消滅を理由に居住建物の返還を求めることはできません(民法1040条1項但書)。
また,配偶者には,附属物の収去義務・収去権(民法1040条2項,民法599条1項,2項),原状回復義務(民法1040条2項,民法621条)があります。
損害賠償請求権や費用償還請求権がある場合には,居住建物の返還を受けたときから1年以内に請求しなければなりません(民法1041条,民法600条)。

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【相続・遺言】相続法改正 配偶者居住権
相続法の改正により,令和2年4月1日から,配偶者居住権制度が開始します。
一 配偶者居住権とは
配偶者居住権とは,被相続人の配偶者が居住していた建物(居住建物)を無償で使用収益する権利のことです(民法1028条)。
配偶者居住権制度は,配偶者が相続開始後も従前の住居で生活できるようにするため,配偶者が居住建物の所有権を取得するよりも低額で居住権を確保することができるようにする制度です。
「無償」とは,使用収益の対価を支払う義務がないということです。
配偶者が配偶者居住権を取得した場合には,配偶者の具体的相続分の中から取得することになりますので,その分,配偶者が取得できる財産が減少します。
また,配偶者が遺贈や死因贈与契約により配偶者居住権を取得する場合には,配偶者の特別受益となります。
ただし,配偶者居住権の遺贈には民法904条3項が準用されますので(民法1028条4項),婚姻期間が20年を超える配偶者が遺贈等により配偶者居住権を取得した場合には持戻し免除の意思表示があったものと推定されます。
二 配偶者居住権の成立要件
配偶者居住権の成立要件は,以下のとおりです。
①被相続人の配偶者が,相続開始時に相続財産である建物に居住していたこと(民法1028条1項)
②配偶者居住権を取得させる遺産分割(民法1028条1項1号),遺贈(民法1028条1項2号),死因贈与契約がなされたこと(民法554条)
なお,遺産分割審判により配偶者居住権を設定する場合には,㋐共同相続人間で配偶者が配偶者居住権を取得することの合意が成立していること,または,㋑配偶者が家庭裁判所に配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合で,建物所有者の不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認められることが必要です(民法1029条)。
また,条文には,特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言)は含まれておらず,特定財産承継遺言で配偶者居住権を設定することできません。配偶者が配偶者居住権の取得を望まない場合,配偶者は相続放棄しなければならなくなり,配偶者の利益を害してしまうからです。
③被相続人が相続開始時に居住建物を配偶者以外の者と共有していなかったこと(民法1028条1項但書)
所有者が建物を単独所有または配偶者と共有していた場合です。
第三者が建物に共有持分を有する場合に配偶者居住権が認められるとすると,第三者の利益を害することになるからです。
三 存続期間
配偶者居住権の存続期間は,原則として,配偶者の終身の間となりますが(民法1030条本文),遺産分割や遺言で存続期間を定めることもできます(民法1030条但書)。
四 配偶者居住権の効力
1 使用収益
配偶者は,居住建物を使用収益することができます(民法1032条1項)。
配偶者は,従前の用法に従い,善良な管理者の注意をもって,使用収益しなければなりませんが(民法1032条1項本文),従前居住の用に供していなかった部分についても居住の用に供することができます(民法1032条1項但書)。
また,所有者の承諾がなければ,配偶者は建物の増改築や第三者に使用収益させることができません(民法1032条3項)。
2 譲渡禁止
配偶者居住権は譲渡することができません(民法1032条2項)。
配偶者居住権制度は,配偶者が相続開始後も従前の住居で生活できるようにするための制度であり,第三者に配偶者居住権を譲渡することは制度趣旨と合わないからです。
3 修繕等
配偶者は建物の使用収益に必要な修繕をすることができます(民法1033条1項)。
修繕が必要であるのに,配偶者が相当期間内に必要な修繕をしないときは,所有者が修繕をすることができます(民法1033条2項)。
修繕が必要なとき(配偶者が自ら修繕するときを除きます。)や建物について権利を主張する人がいるときは,所有者が知っている場合を除き,配偶者は,所有者に対し,遅滞なく,通知しなければなりません(民法1033条3項)。
4 費用負担
配偶者は,建物の通常の必要費を負担します(民法1034条1項)。
配偶者が特別の必要費や有益費を負担した場合には,配偶者は所有者に償還請求をすることができます(民法1034条2項,民法583条2項)。
五 登記
1 登記義務
居住建物の所有者は配偶者居住権設定の登記を備えさせる義務を負いますので(民法1031条1項),配偶者居住権を取得した配偶者は建物所有者に対し登記請求権を有します。
2 対抗要件
配偶者居住権は登記を具備しなければ,第三者に対抗することができません(民法1031条2項,605条)。
登記を具備した場合には,配偶者は第三者に対し妨害停止請求や返還請求をすることができます(民法1031条2項,605条の4)。
六 配偶者居住権の消滅
1 消滅事由
配偶者居住権は,以下の場合に消滅します。
①存続期間が満了した場合(民法1036条,民法597条1項)
②配偶者が死亡した場合(民法1036条,民法597条3項)
③建物が全部滅失その他の事由により使用収益できなくなった場合(民法1036条,民法616条の2)
④所有者が消滅請求をした場合
配偶者が,用法遵守義務・善管注意義務に違反した場合(民法1032条1項違反)や所有者の承諾なく,建物の増改築や第三者に使用収益させた場合(民法1032条3項違反)に,所有者が相当期間を定めて是正の催告をしたのに,是正されないときは,所有者は配偶者に対し,配偶者居住権の消滅を請求することができます(民法1032条4項)
⑤配偶者が建物の所有権を取得した場合
混同により配偶者居住権は消滅します。なお,他者が建物の共有持ち分を有するときは配偶者居住権は消滅しません(民法1028条2項)。
⑥配偶者が配偶者居住権を放棄した場合
2 建物の返還
(1)建物の返還義務
配偶者居住権が消滅したときは,配偶者は建物を返還しなければなりません(民法1035条1項本文)。
ただし,配偶者が建物の共有持ち分を有する場合は,所有者は配偶者居住権の消滅を理由に建物返還を求めることはできません(民法1035条1項但書)。
(2)附属物の収去義務・収去権
配偶者が相続開始後に建物に附属させた物がある場合,配偶者には,その物を収去する義務(分離できない場合,分離に過分の費用を要する場合を除きます。)または権利があります(民法1035条2項,民法599条1項,2項)。
(3)原状回復義務
相続開始後に建物に損傷(通常の使用収益によって生じた損耗場合や経年変化を除きます。)が生じた場合,配偶者の責めに帰すことができない事由によるものでない限り,配偶者は原状回復義務を負います(民法1035条2項,民法621条)。
七 配偶者居住権の財産的評価
配偶者が配偶者居住権を取得した場合には,配偶者の具体的相続分の中から取得することになりますので,配偶者居住権の財産的価値を評価することが必要となります。
評価額については,当事者の合意や鑑定により定めることになります。

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【交通事故】民法改正(債権法改正)の影響
民法の債権法が改正され,令和2年(2020年)4月1日に施行されました。民法改正により,交通事故の損害賠償請求事件にも様々な影響が生じますので,主な点について説明します。
一 消滅時効
1 時効期間
(1)民法724条
改正後の民法724条により,不法行為による損害賠償請求権は,①被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき(同条1号),②不法行為の時から20年間行使しないとき(同条2号)は,時効によって消滅します。
①については改正前と同じです。②については,改正前は除斥期間と解されてましたが,改正により時効期間となりました。
(2)民法724条の2
改正により新設された民法724条の2により,人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権については,民法724条1号の期間は3年間ではなく,5年間となります。
民法724条の2の規定は,施行の際に既に時効が完成していた場合には適用がないとされていることから(附則35条2項),施行時に未だ消滅時効が完成していない場合には適用されます。
(3)人損の時効期間
人損については,民法724条の2により,損害賠償請求権の消滅時効期間は5年に延びました。
附則35条2項により,施行日前の交通事故であっても,施行時に時効が完成していなければ,民法724条の2が適用され,時効期間は5年となります。
また,運行供用者責任(自賠法3条)についても,民法の規定が適用されますので(自賠法4条),民法724条の2が適用されます。
(4)人損以外の時効期間
民法724条の2が適用されるのは人損に限られますから,物損については民法724条1号により,3年のままです。
また,自賠責保険の被害者請求(自賠法16条1項)や仮渡金の請求(自賠法17条1項)の時効期間は,被害者又はその法定代理人が損害及び保有者を知った時から3年ですし(自賠法19条),政府の保障事業への請求権(自賠法16条4項,17条4項,72条1項)の時効期間は,行使することができるときから3年です(自賠法75条)。
保険金請求権の時効期間については,行使することができるときから3年です(保険法95条1項)。
2 協議を行う旨の合意による時効の完成猶予
(1)時効の更新,時効の完成猶予
改正により,「時効の中断」と「時効の停止」の規定が見直され,「時効の更新」と「時効の完成猶予」の規定になりました。
(2)協議を行う旨の合意による時効の完成猶予
民法改正により,協議を行う旨の合意による時効の完成猶予の制度(民法151条)が新設されました。
権利についての協議を行う旨の合意が書面(電磁的記録を含みます。)でされたときは,①合意があったときから1年を経過したとき,②協議を行う期間(1年に満たないものに限ります。)を定めたときはその期間を経過したとき,③当事者の一方が他方に対し協議続行を拒絶する旨の書面(電磁的記録を含みます。)による通知をしたときから6か月を経過したときのいずれか早い時期まで,時効の完成が猶予されます(民法151条1項,4項,5項)。
猶予期間中に再度の合意をすることで,さらに時効の完成を猶予させることができますが,通算で5年を超えることはできません(民法151条2項)。
また,催告による時効完成猶予と協議を行う旨の合意による時効の完成猶予は併用することができません(民法151条3項)。
交通事故の損害賠償請求事件では,治療が長引く等の理由で解決までに時間がかかることがあります。これまでは示談交渉中に時効の完成が近づいた場合には,時効の完成を阻止するため裁判上の請求等の手段をとらなければなりませんでしたが,協議を行う旨の合意による時効の完成猶予の制度を利用することにより,これらの手段をとる負担を避けることができるようになりました。
なお,示談交渉の内容によっては,相手方が損害賠償請求権を認めたものとして,権利の承認による時効の更新(民法152条)が認められることがあります。
二 法定利率
1 法定利率
改正前の民事法定利率は年5%に固定されていましたが,改正により,法定利率は,当面は年3%とし,3年ごとに見直されることとなりました(民法404条)。
また,適用される法定利率は,利息が生じた最初の時点の法定利率となることから(民法404条1項),一旦適用される法定利率が決まれば,その後に法定利率が変動しても,適用される利率は変動しません。
なお,改正された民法404法が適用されるのは,施行日後に利息が生じた場合です。改正法施行日前に利息が生じた場合は改正前の法定利率となります(附則15条1項)。
2 遅延損害金
改正後の民法419条1項では,金銭債務不履行の損害賠償額の利率については,債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率(約定利率が法定利率を超えるときは約定利率)となると規定されています。
なお,改正後の法定利率が適用されるのは,施行日後に遅滞となった場合です。改正法の施行日前に遅滞となっている場合には,遅延損害金の法定利率は改正前の法定利率となります(附則17条3項)。
不法行為の場合は不法行為時から遅延損害金が発生するものと解されていますので,交通事故の損害賠償請求事件の遅延損害金については事故日の法定利率が適用されます。
3 中間利息の控除
(1)民法417条の2
民法改正により,中間利息の控除についての規定が新設されました(民法417条の2)。
将来において取得すべき利益についての損害賠償額を定める場合に利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは,損害賠償請求権が生じた時点の法定利率を用います(民法417条の2第1項)。
また,将来において負担すべき費用についての損害賠償額を定める場合に費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも損害賠償請求権が生じた時点の法定利率を用います(民法417条の2第2項)。
なお,民法417条の2の規定が適用されるのは,改正法の施行日後に生じた将来において取得すべき利益または負担すべき費用についての損害賠償請求権についてです。改正法の施行日前に生じた将来において取得すべき利益または負担すべき費用についての損害賠償請求権には適用されません(附則17条2項)。
民法417条の2は,不法行為による損害賠償請求についても準用されます(民法722条)。
(2)逸失利益,将来介護費用
交通事故の場合,死亡逸失利益,後遺症逸失利益,将来介護費用の額を算定する際,中間利息の控除を行います。
改正前は年5%で中間利息を控除していましたが,改正法が適用される場合には,施行当初は年3%で中間利息を控除することになります。
例えば,交通事故被害者が年収600万円,労働能力喪失率20%,労働能力喪失期間20年の場合,年5%で中間利息を控除するときはライプニッツ係数は12.4622となり,後遺症逸失利益の額は,1495万4640円(=600万円×0.2×12.4622)となりますが,改正法が適用され,年3%で中間利息を控除するときには,ライプニッツ係数は14.8775となるため,後遺症逸失利益の額は1785万3000円(=600万円×0.2×14.8775)となります。
(3)適用される利率の基準時
適用される法定利率は損害賠償請求権が生じた時点の法定利率です(民法417条の2)。
交通事故の損害賠償請求権は事故日に発生しますので,適用される法定利率は事故日の法定利率となります。
例えば,施行日前に事故が発生し,施行日後に症状固定した場合,後遺症逸失利益は年5%で中間利息を控除して算定することになります。
なお,いつの時点の利率を適用するのかということとは別に,いつの時点から中間利息を控除するのかという問題がありますが,後遺症逸失利益の場合,症状固定日を基準時として中間利息を控除するのが通常です。
三 相殺の規定の改正の影響
改正前の民法509条では,不法行為によって生じた債権を受働債権とする相殺を一律に禁止していました。
交通事故の当事者双方が損害を被った場合,当事者双方に過失があれば,お互いに損害賠償請求権を有することになりますが,民法改正前は,損害賠償請求権を相殺することはできませんでした(ただし,当事者が合意により相殺することはできました。)。
これに対し,改正後は,不法行為によって生じた債権を受動債権とする相殺がすべて禁止されるわけではなく,①悪意による不法行為に基づく損害賠償債務,②人の生命・身体の侵害による損害賠償債務(不法行為に基づくものだけでなく,債務不履行に基づくものを含みます。)を受働債権とする相殺が禁止されることになりました(債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときを除きます。)。
そのため,改正法が適用される場合には,人損については,これまでどおり相殺が禁止されますが,物損については悪意によるものではない限り,相殺することができることになりました。
なお,改正法施行日前に債権が生じた場合,その債権を受動債権とする相殺については,改正前の民法509条が適用されますので(附則26条2項),施行日後に発生した事故について,改正法が適用されます。
四 まとめ
以上のとおり,交通事故の損害賠償請求事件では,民法改正により①人損について消滅時効期間が5年になったこと,②協議を行う旨の合意による時効の完成猶予の制度(民法151条)が新設されたこと,③法定利率が変更され,遅延損害金,中間利息の控除額が変わったこと,④物損について相殺ができるようになったことが,改正前との大きな違いです。

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【相続・遺言】兄弟姉妹が相続人の場合
被相続人に子や親等の親族がいない場合には兄弟姉妹が相続人となりますが,兄弟姉妹が相続人となる場合と他の親族が相続人となる場合には,どのような違いがあるでしょうか。
一 兄弟姉妹が相続人となる場合
被相続人の配偶者は常に相続人になり(民法890条),配偶者以外の親族は①子又はその代襲相続人(孫)・再代襲相続人(曾孫)(民法887条),②直系尊属(親等の異なる者の間では近い者)(民法889条1項1号),③兄弟姉妹又はその代襲相続人(甥姪)(民法889条1項2号,2項)の順位で相続人になります。
したがって,被相続人の兄弟姉妹が相続人となるのは,被相続人に子や親等先順位の親族がいない場合であり,被相続人に配偶者がいる場合は,兄弟姉妹と配偶者が相続人となります。
二 兄弟姉妹が相続人となる場合の法定相続分
被相続人の配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合には,配偶者の相続分が4分の3,兄弟姉妹の相続分が4分の1となります(民法900条3号)。
兄弟姉妹が数人いる場合,各人の相続分は等しいものとされますが,父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1となります(民法900条4号)。
例えば,被相続人の配偶者と被相続人の兄と妹が相続人の場合,配偶者の法定相続分は4分の3,兄と妹の法定相続分は8分の1ずつとなります。また,兄は被相続人と両親が同じ,妹は父親のみが同じ場合には,配偶者の法定相続分は4分の3,兄の法定相続分は6分の1,妹の法定相続分は12分の1となります。
三 代襲相続
兄弟姉妹が相続人となる場合に,兄弟姉妹が,相続開始以前に死亡したとき,民法891条の欠格事由に該当するとき,廃除によって相続権を失ったときは,その者の子(被相続人の甥姪)が代襲して相続人となります(民法889条2項,887条2項)。
なお,兄弟姉妹が相続人となる場合には,再代襲についての民法887条3項の準用規定がないため,代襲者となる兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)が相続開始以前に死亡する等した場合に,代襲者の子が再代襲することはありません。
四 全血の兄弟姉妹と半血の兄弟姉妹
両親の双方を同じくする兄弟姉妹を全血の兄弟姉妹といい,両親の一方のみを同じくする兄弟姉妹を半血の兄弟姉妹といいます。
半血の兄弟姉妹の法定相続分は全血の兄弟姉妹の法定相続分の2分の1となります(民法900条4号但書)。
例えば,被相続人の両親が離婚した後,父親が再婚して,再婚相手との間で子が生まれた場合,その子は被相続人の兄弟姉妹となりますが,父親のみが同じで,母親は違いますから,半血の兄弟姉妹にあたります。
また,被相続人の親が養子縁組をした場合,養子と被相続人は兄弟姉妹となります。両親の双方が養子縁組をしたときは,全血の兄弟姉妹となりますが,両親の一方のみが養子縁組したとき(例えば,被相続人の両親が離婚した後に,被相続人の父親が,連れ子のいる女性と再婚し,その子と養子縁組したとき),半血の兄弟姉妹にあたります。
五 遺留分
兄弟姉妹には遺留分はありません(民法1042条1項)。
そのため,被相続人の遺言により,相続人である兄弟姉妹が相続財産を取得できない場合であっても,兄弟姉妹は遺留分侵害額請求(改正法施行前に開始した相続については,遺留分減殺請求)をすることはできません。
子のいない夫婦の一方が亡くなった場合,配偶者と兄弟姉妹が共同相続人となることがあります。将来,自分が亡くなったときには,配偶者に自分の財産を相続させたいとお考えの場合には,その旨の遺言を作成しておけば,兄弟姉妹には遺留分がありませんので,配偶者と兄弟姉妹との間で遺産をめぐって争いとなることを避けることができます。

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