【交通事故】共同不法行為責任と求償

2018-02-08

交通事故の被害者が複数の加害者に対して共同不法行為責任を追求することができる場合,被害者は各加害者に損害賠償額の全額を請求することができますが,被害者に過失があるときには,過失相殺はどうなるのでしょうか。

 

一 共同不法行為責任と過失相殺

共同不法行為の場合の過失相殺の方法としては,①損害発生の原因となったすべての過失の割合(絶対的過失割合)に基づいて過失相殺をする方法(絶対的過失相殺)と,②各行為者と被害者ごとの過失割合に応じて,それぞれ過失相殺する方法(相殺的過失相殺)があります。どちらの方法によるかは,事案ごとに検討していくことになります。

 

二 絶対的過失相殺

1 絶対的過失相殺が認められる場合

複数の加害者の過失と被害者の過失が競合する一つの交通事故において,交通事故の原因となったすべての過失割合(絶対的過失割合)を認定することができるときには,絶対的過失相殺の方法がとられます(最判平成15年7月11日)。
絶対的過失割合が認定できる場合としては,三者間で起こった交通事故など,複数当事者間に同一場所で同時に発生した交通事故が考えられます。

例えば,被害者の損害額が1000万円で,絶対的過失割合が,被害者:加害者A:加害者B=1:1:2の場合,被害者の絶対的過失割合は2割5分(=1÷(1+1+2))となり,2割5分の過失相殺がなされますので,被害者は,加害者AとBの双方に対し750万円(=1000万円×(1-0.25))の損害賠償請求をすることができます。

 

2 求償

公平の観点から,共同不法行為者の一人が被害者の損害の全部または一部を賠償した場合には,自分の負担部分を超えて支払った額について他の共同不法行為者に求償することができると解されています。
先の例では,加害者Aと加害者Bの過失割合は1:2であり,Aの負担額は250万円(=750万円×1/3)となりますので,Aが被害者に750万円を支払った場合には,AはBに500万円(=750万円-250万円)を求償することができます。

 

三 相対的過失相殺

1 相対的過失相殺が認められる場合

複数の行為について共同不法行為が成立しても,一つの事故とはいえず,絶対的過失割合が認定できない場合には,相対的過失相殺の方法がとられます。
判例では,交通事故と医療過誤が競合し共同不法行為にあたる事案について相対的過失相殺の方法が採用されています(最判平成13年3月13日)。

例えば,被害者の損害額が1000万円で,被害者と各加害者の過失割合が,被害者:加害者A=2:8,被害者:加害者B=4:6の場合,加害者Aの損害賠償債務については2割の過失相殺がされて800万円(=1000万円×(1-0.2))となるのに対し,加害者Bの損害賠償債務については4割の過失相殺がされて600万円(=1000万円×(1-0.4))となり,AとBの債務は600万円の範囲で不真正連帯債務となります。

 

2 求償

相対的過失相殺が行われる場合も,共同不法行為者の一人が不真正連帯債務となっている部分について自己の負担部分を超えて支払った場合には,他の共同不法行為者に求償することができます。
各共同不法行為者の負担割合については,被害者との過失割合の対比によるのではなく,各行為者の損害発生への寄与度によるものと思われます。
先の例で,例えば,加害者Aと加害者Bの負担割合が4:6だとした場合,Aの負担部分は240万円(=600万円×4/10)となりますので,Aが被害者に800万円(Aのみが負う部分200万円とA・Bの不真正連帯債務となる部分600万円)を支払ったときは,AはBに360万円(=600万円-240万円)を求償することができます。

 

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