【相続・遺言】遺留分の放棄

2015-12-18

一 遺留分の放棄とは

相続の開始前に,家庭裁判所の許可を受けることで,遺留分の放棄をすることができます(民法1043条1項)。

遺留分とは,遺言によっても侵害されない相続人の権利であり,遺留分を侵害された相続人は,遺留分減殺請求をすることができます。

相続開始後に,遺留分を侵害された者が遺留分減殺請求をするかどうかは,本人の意思に委ねられておりますので,本人の意思で相続開始前に遺留分の放棄をすることもできます。

ただし,被相続人や他の相続人から,遺留分の放棄を強制されるおそれがありますので,家庭裁判所の許可がなければ,遺留分の放棄はできません。

 

二 遺留分の放棄の手続

1 申立て

遺留分権を有する相続人が,相続開始前に,家庭裁判所に,遺留分放棄許可の審判を申し立てます。

管轄裁判所は,被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所になります(家事事件手続法216条1項2号)。

2 審判

家庭裁判所は,遺留分の放棄が,遺留分権利者が真意に基づくものであるかのかどうか(他者から遺留分の放棄を強制されていないか等),遺留分放棄の理由に合理性,相当性があるのかどうか(遺留分の放棄の代償として,相当な財産を得ているのかどうか等)を調べた上で,遺留分の放棄を許可するか,申立てを却下するか審判します。

申立てをした者は,申立てを却下する審判に対して,即時抗告をすることができます(家事事件手続法216条2項)。

 

三 遺留分の放棄の効果

1 遺留分はなくなるが,相続人としての地位は残ります。

遺留分を放棄したことにより,放棄した者の遺留分はなくなりますが,相続人としての地位までなくなるわけではありません。

そのため,遺留分の放棄をしても,被相続人が遺言をしない場合には,遺留分を放棄した者も相続人として,遺産を相続することになります。

2 他の共同相続人の遺留分への影響

共同相続人の一人のした遺留分の放棄は,他の共同相続人の遺留分に影響を及ぼしません(民法1043条2項)。

そのため,相続人の一人が遺留分を放棄したとしても,他の共同相続人の遺留分が増えるわけではありません。

 

四 遺留分放棄の取消し

遺留分を放棄した後に事情が変化し,遺留分放棄の状態を存続させることが,客観的に不合理・不相当と認められる場合には,遺留分放棄許可の審判を取消しができると解されております。

 

 

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