私道トラブル 私道通行権
私人が所有する道路のことを私道といいます。所有者以外の人が私道を通行しようとする場合には,所有者との間でトラブルになることがあります。私道トラブルにおいては,私道の通行権があるかどうかを検討しなければいけません。
1 私道通行権の種類
私人が所有する道路(私道)を通行する権利には,次のようなものがあります。
(1)所有権,共有持分権
私道の所有権者や共有持分権者は,その所有権(民法206条)や共有持分権(民法249条)に基づいて私道を通行することができます。
(2)袋地通行権(囲繞地通行権)
他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行することができます(民法210条1項)。
池沼,河川,水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき,又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも囲繞地を通行することができます(民法210条2項)。
これは法律上当然に発生する権利ですが,通行の場所及び方法は,通行権者のために必要であり,かつ,他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません(民法211条1項)。
また,分割によって公道に通じない土地を生じたときは,その土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができます(民法213条1項)。
(3)通行地役権
他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の便益に供する権利のことを,地役権といい,通行を目的とする地役権を通行地役権といいます(民法280条)。地役権者は,承役地を通行することができます。
(4)賃貸借契約等による通行権
私道部分の土地を借りるという契約を締結することによって,私道を通行することができます。対価を支払う場合が賃貸借契約(民法601条)であり,無償の場合が使用貸借契約(民法593条)になります。
(5)その他
建築基準法上の道路とされる私道についての通行の自由権,慣習上の通行権などにより,私道の通行権が認められる場合があります。
2 私道の通行を妨害された場合の対応
私道の通行を妨害された場合には,次のような対応をとることができます。
(1)通行妨害排除請求
私道の通行権者が通行を妨害された場合には,妨害者に対して,その妨害行為の排除や予防を請求することができます。
通行妨害排除請求権の内容は,通行権が認められる根拠によって異なります。
また,手続としては,訴訟のほか,通行妨害禁止の仮処分や妨害物除去の仮処分の申立をすることが考えられます。
(2)損害賠償請求
私道の通行権者が通行を妨害され,それによって損害をこうむった場合には,妨害者に対し,損害賠償を請求することができます(民法709条)。