借地権(建物所有目的の地上権・土地賃借権)
建物所有を目的とする地上権又は土地賃借権(借地権)については,借地借家法または旧借地法が適用されます。
一 借地権とは
借地権とは,建物所有を目的とする地上権または土地賃借権です(借地借家法2条1号)。
地上権や土地賃借権については,民法で規定されていますが,このうち建物所有を目的とするものについては,賃借人を保護する必要性が高いことから,借地借家法(または旧借地法)が適用されます。
借地借家法が適用される場合には,法定更新や更新拒絶に正当事由が必要となる等,賃借人が厚く保護される一方で,賃貸人は土地の返還を受けることが困難となりますので,借地借家法の適用があるかどうかは当事者にとって重要な問題となります。
例えば,貸主が,借地借家法の適用のない土地賃貸借契約のつもりで,契約期間を5年とし,契約が満了したら土地を返してもらえると思って貸したとしても,その契約が建物所有目的の土地賃貸借契約であると解釈される場合には,借地借家法が適用され,契約期間は30年となりますし(借地借家法3条),期間満了後も正当事由がなければ更新拒絶をして契約を終了させることができません(借地借家法5条,6条)。
二 建物所有目的とは
1「建物」とは
「建物」とは,土地に定着して建築された永続性を有する建物で,屋根,周壁を有し,住居や営業等の用に供することができるもののことをいいます。
「建物」については,用途の限定はありません。住宅に限らず,店舗,事務所,工場,倉庫等営業用・事業用の建物であってもかまいません。
「建物」は,借地権者保護の観点から広く解されており,撤去が容易な仮設建物であっても「建物」にあたると判断されることがあります。
他方,掘立式の車庫,簡易な露天設備や土地に置かれたコンテナについては,「建物」とはいえないでしょう。
2 どのような場合に「建物所有目的」であるといえるのか
「建物所有目的」とは,借地契約の主たる目的が建物所有であることを意味します。建物所有が主な目的とはいえないときには借地借家法の適用はありません。
建物所有が主な目的といえるかどうかは,契約時に目的についてどのように定めたか,建物が事業を行う上で付随的なものなのかどうか,土地面積に占める建物の敷地面積の割合等,具体的な事情から判断されます。
例えば,ゴルフ練習場の経営を目的として土地を賃借し,その土地上に事務所を建てた場合には,ゴルフ練習場として土地を利用することが主たる目的であり,建物を所有することは従たる目的にすぎないということであれば,借地借家法の適用がないと判断されます。これに対し,自動車教習所として土地を賃借し,その土地上に校舎や事務所を建てた場合には,教習所経営には,実地練習のコースと交通法規等の教習するための校舎や事務所のいずれも不可欠であり,建物所有が従たる目的とはいえないということであれば,借地借家法の適用があると判断されます。
また,当初は建物所有目的とはいえない借地契約であっても,賃借人が建物を建て,それを賃貸人が異議を述べず,黙認していた場合には,建物所有目的の借地契約であると判断されるおそれがありますので,注意しましょう。