借地権の種類

2017-07-24

建物所有を目的とする地上権または土地賃借権を借地権といいます(借地借家法2条1号)。
借地権には借地借家法(または旧借地法)が適用され借地人の保護が図られていますが,借地権の種類によって保護の内容が異なります。

 

一 普通借地権

1 普通借地権とは

普通借地権とは,借地借家法上,単に「借地権」と規定されている基本的な借地権のことです。普通借地権については,正当事由制度が適用され,契約の更新が可能です。

 

2 存続期間

(1)旧借地法が適用される場合

①堅固建物所有目的の場合

借地権の存続期間は60年ですが(借地法2条1項),契約で30年以上と定めたときはその期間となります(借地法2条2項)。
契約を更新する場合,存続期間は30年となりますが(借地法5条1項,6条),契約でこれより長い期間を定めることができます(借地法5条2項)。

②非堅固建物所有目的の場合

借地権の存続期間は30年ですが(借地法2条1項),契約で20年以上と定めたときはその期間となります(借地法2条2項)。
契約を更新する場合,存続期間は20年となりますが(借地法5条1項,6条),契約でこれより長い期間を定めることができます(借地法5条2項)。

 

(2)借地借家法が適用される場合

借地借家法では,堅固建物と非堅固建物の区別はなくなりました。
普通借地権の存続期間は30年ですが,契約でこれより長い期間を定めることができます(借地借家法3条)。
契約を更新する場合は,その期間は,最初の更新の場合は20年,2回目以降の更新の場合は10年となりますが,契約でこれより長い期間を定めることができます(借地借家法4条)。

 

3 更新拒絶の正当事由

借地権の存続期間が満了する場合に,賃借人が更新の請求をしたときや,借地上に建物があり借地人が土地の使用を継続するときは,賃貸人が遅滞なく異議を述べなければ借地契約は更新されます(借地借家法5条)。
賃貸人の更新拒絶が認められるためには,①賃貸人及び賃借人が土地の使用を必要とする事情のほか,②借地に関する従前の経過及び土地の利用状況,③賃貸人が土地の明渡しの条件又は明渡しと引換えに賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出を考慮して,正当事由があると認められなければなりません(借地借家法6条)。

 

4 建物買取請求

借地契約が終了した場合,賃借人は,賃貸人に対し,借地上の建物を買取るよう請求することができます(借地借家法13条)。

 

三 定期借地権

定期借地権とは,正当事由条項が適用されず,一定期間の経過により契約が終了する借地権のことです。借地借家法により新設されました。
定期借地権には,①一般定期借地権(借地借家法22条),②事業用定期借地権(借地借家法23条),③建物譲渡特約付借地権(借地借家法24条)があります。

 

1 一般定期借地権

一般定期借地権とは,存続期間が50年以上で,①契約の更新がない,②建物の築造(建物滅失後の再築)による存続期間の延長がない,③建物買取請求をしないことを公正証書等の書面で契約をした借地権です(借地借家契約22条)。

 

2 事業用定期借地権

(1)借地借家法23条1項の事業用定期借地権

専ら事業用建物(居住用を除く。)の所有を目的とし,存続期間が30年以上50年未満とする借地権であり,①契約の更新がなく,③建物の築造による存続期間の延長がない,③建物買取請求をしないことを定め,公正証書で契約締結しなければなりません(借地借家法23条1項,3項)。

 

(2)借地借家法23条2項の事業用定期借地権

専ら事業用建物(居住用を除く。)の所有を目的とし,存続期間が10年以上30年未満とする借地権であり,公正証書で契約締結したものです(借地借家法23条2項,3項)。
この借地権については,借地借家法3条(借地権の存続期間),4条(借地権の更新後の期間),5条(借地契約の更新請求等),6条(借地契約の更新拒絶の要件),7条(建物の再築による借地権の期間の延長),8条(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等),13条(建物買取請求権),18条(借地契約の更新後の建物の再築の許可)の規定は適用されません。

 

3 建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権とは,借地契約をする場合に,借地権を消滅させるため,借地権設定後30年以上を経過した日に借地上の建物を賃貸人に相当の対価で譲渡する特約をしたものです(借地借家法24条1項)。
賃貸人が建物を買い取り,借地権が消滅した場合に,借地人や建物使用賃借人が建物の使用継続を請求したときは,建物賃貸借契約が成立したものとみなされます(借地借家法24条2項)。
この建物賃貸借契約は,期間の定めのない契約とみなされますが,賃借人が請求した場合で借地権の残存期間があるときは,その残存期間が存続期間となります(借地借家法24条2項)。また,定期借家契約を締結することもできます(借地借家法24条3項)。

 

四 自己借地権

借地権を設定する場合においては,他の者と共に有することとなるときに限り,土地所有者自らが,自己の土地に借地権を設定することができます(借地借家法15条1項)。また,借地権が賃貸人に帰した場合であっても,他の者と共にその借地権を有する場合には,その借地権は消滅しません(借地借家法15条2項)。
借地借家法により新設されました。

 

五 一時使用目的の借地権

一時使用目的の借地権とは,臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな借地権のことです(借地借家法25条)。
一時使用目的の借地権には,借地借家法3条(借地権の存続期間),4条(借地権の更新後の期間),5条(借地契約の更新請求等),6条(借地契約の更新拒絶の要件),7条(建物の再築による借地権の期間の延長),8条(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等),13条(建物買取請求権),17条(借地条件の変更及び増改築の許可),18条(借地契約の更新後の建物の再築の許可),22条(定期借地権),23条(事業用定期借地権等),24条(建物譲渡特約付借地権)の規定は適用されません。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2016 ながせ法律事務所 All Rights Reserved.